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ドン=ジョヴァンニ

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第一幕その十五


第一幕その十五

「私は」
「何という。恐ろしい」
「これでわかってくれたわね」
 オッターヴィオの顔を見ての言葉だった。
「誰が私の操を襲ったのか。そして人を欺いたのは誰か、御父様を殺したのは誰か」
「うん」
 オッターヴィオはアンナの言葉を受けて力強く頷いた。
「よくね」
「私は貴方に復讐を果たして欲しいし貴方も同じですね」
「勿論です」
 オッターヴィオの言葉には迷いがない。
「だからこそ僕は今ここにいるのです」
「この胸の痛みを、悲しみの涙を思って」
 涙をまだ流しながらオッターヴィオに告げる。
「例え貴方の心の中で正義の怒りが弱まることがあろうとも」
「それは有り得ません」
 オッターヴィオもオッターヴィオで己の正義に対して述べるのだった。
「どうして僕が騎士がその様な罪を犯すことが信じられましょうか」
「騎士がなのですね」
「そうです、騎士がです」
 オッターヴィオは騎士と貴族を同じにして話していた。
「疑いの覆いを取り除くことで真実を見極めなくては。僕は自分の中に貴女に未来の夫として、友人として求められた果たすべき務めを感じています」
「何と有り難い御言葉」
「僕は貴女の憂いを払い取り復讐を果たしましょう」
 そしてこうも言うのだった。
「貴女の心の安らぎこそ僕の願いです」
 こう言うのだった。
「貴女を喜ばせるものは僕にも喜びを与えてくれますし不安に陥れるものには不安を感じます」
「私達は同じだと」
「そうです」
 これは誓いの言葉だった。
「貴女の溜息に僕も嘆き貴女の怒りも涙もぼくのものです」
「オッターヴィオ・・・・・・」
「貴女が不幸ならば僕も不幸です。ですから」
「その不幸を取り払いましょう」
「ええ、是非」
 二人でこう誓い合い彼等もジョヴァンニを追う。また彼を追う者が生じたのだった。 
 別の道でレポレロは一人とぼとぼと歩いていた。そしてそのうえでぶつくさと呟いていた。
「もう決めた」
 俯きながらの言葉だった。
「もうあの滅茶苦茶な旦那から別れよう。さもないと」
「おお、レポレロ」
「早速出て来られた」
 ジョヴァンニの姿を見て溜息をつくことしきりであった。
「全く。何事もなかったかのように。もうこんなことから足を洗わないと」
「どうなった?」
「滅茶苦茶になりましたよ」 
 むっとした顔をジョヴァンニに向けての言葉だった。
「本当にね。何もかも」
「何もかもだと」
「そうですよ。旦那が仰った通りね」
「村の者達を私の屋敷に案内したな」
「はい」
「ならいい」
 それを聞いてまずは満足した顔になるジョヴァンニだった。
「それならな」
「それでもてなして派手にやってもらいましたよ」
「さらにいい」
「特にあの花婿。ええと」
 話しながら彼の名前を思い出す。
「マゼットね。あの男の心を和らげて焼き餅を解きほぐそうとしましたが」
「私の思い通りだ。やはりわかっているではないか」
「皆に食べてもらって飲んでもらって」 
 レポレロはさらに話す。
「そうしてもらったのですが」
「それでどうなったのだ?」
「乱入ですよ。もう台風がね」
「今はそんな季節ではないが」
「人間の台風ですよ」
 顔を顰めさせての今のレポレロの言葉だった。
 
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