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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?

作者:海戦型
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剣を手に入れた女のお話・2

 
前書き
総合評価150突破。こんなクオリティで評価されていいんだろうかと思わないでもない。 

 
これからどうしよう、と剣をずるずる引きずりながら考えるけど良い案が浮かびませぬ。
そもそも次元世紀末がどんな世界かも良く分からないのにどうしろと?

「お腹すいた・・・足疲れた・・・」

分からないし考えが纏まらないのでとにかく歩く。周囲は未だにお空に現れて消えた建造物のせいで騒ぎが収まってないから私の事を気にする人なんていないみたいだ。
これから私は何をすればいいんだろうか?交番に行って「何も覚えてません」とか言って記憶喪失の振りをして、一人でどっかの病院で過ごすんだろうか。


そういえば。困ったことがあると私は良く母さんに泣きついていたな~と微笑ましかった頃の思い出を掘り返し、そこでふと思う。

「そっか・・・ここは違う世界だから、もう母さんにも父さんにも会えないんだ・・・」

自分が死んだと聞いてからずっと麻痺していた思考がようやく動き出す。
もう私は家に帰ることは無くて、会社の文句を同僚や友達に聞いてもらうこともなくて、飼い猫の世話を焼くこともなくて・・・行きつけの散髪屋のおばちゃんとも魚屋のオジさんとも大家さんとも二度と会えることはないんだ。

「誰も私を知らないし、私は誰にも会えない・・・」

それって、何かやだなぁ。
確かに私は社会人として自立したけど、それが皆との今生の別れだった訳じゃない。
でも今は違う。住む世界が違うのではもう会えることなどあるはずもない。
あった筈のもの全てにもう(まみ)えることがないのか。誰に甘える事もなくずっとすごさなければならないのか。

「いやだなぁ・・・」

私が此処で斃れたら誰かが泣いてくれるだろうか。もし泣いてくれる人がいないなら、それはとても淋しいことだ。
見果てぬ異界の地で果てる事も嫌だが、私が死ぬときに誰も周りにいないのは余りにも淋し過ぎる。

「独りって、こんなに胸が痛くなるものだったんだ・・・」

脚の動きが自然と遅くなっていき、気が付けば誰もいなくなっている町のはずれで足が止まる。
孤独、不安、恐怖、叶わぬ望郷の念に言い得ぬ哀しさ。溢れ出る感情を必死に抑える。

「・・・ぐすっ」

・・・あ、あれ?おっかしいなぁ。私、これくらいで泣く子じゃなかったはずなんだけど・・・どうしてぐずってるのかな?なんか目から涙が出るのも止まらないし・・・いかん、泣くな私!ここで泣いたら泣き止んだ後に凄い恥ずかしい思いをすることになるぞ!シリアスをシリアルに変えるんだ!

「そ、そう!この魔法のステッキ『エスカリボルビング四宝剣』を振ればあら不思議!貴方の望む家族が・・・」

と言いながら剣をブンと一振りしてみると――




「・・・はれ?」




――目の前に凄く見覚えのある一軒家が出現した。





がちゃっ、とおもむろに家の玄関が開く。

「あら?そんな所でつったって何してるのアンタ?もうご飯出来たから早く上がって手を洗いなさい!」
「・・・お母、さん」

そこにいるのは見紛うことなきマイマザー。相変わらず色褪せたぼろいエプロンを後生大事に使い続けてる、しかし私の記憶にいるよりも心なしか若いような気がする母だった。

「何?」
「えっと・・・ただいま」
「おかえり。さぁさっさとしないとお吸い物が冷めちゃうわよ?」
「・・・はーい!!」

慌てて家に入り込む。台所からはほのかな醤油の香りが流れてくる。
・・・流し台の位置も昔落書きした壁の絵も、トイレットペーパーを置いてある場所まで寸分の狂いなく私の家と一緒だった。

私はそのまま両親と一緒にご飯を食べた。吸い物の正体はあさり汁。砂抜きが不十分でがりっと砂を噛んだせいで「ああ、これ作ったの私の母ちゃんだわ」と確信した。この人はだいたい砂抜きを適当にするのでこういうのは良くやるのだ。ちょっとだけ感動で泣いた。砂噛みながら。
ただ、自立してからの飼い猫である「ぽんず」までこの家に住んでるのは予想外だった。

「ねぇぽんず」
「なーお」
「この家が出来たのって、この世界における私の家族の存在確率を弄ったせいなのかな?」
「なーお」
「・・・ご都合主義どころの話じゃないよ。しかも何故かお前もいるし」
「なーお」
「私の感じたあの絶望感は何だった訳?あのシリアルな空気を如何してくれんのよー」
「なーお」

ちなみにぽんずはカナダオオヤマネコという猫だ。耳先にピンと立った毛と首元のモフモフに惹かれて買ってしまった可愛い相棒である。高くついたがね。ぽんずの名前の由来はポン酢の入っていた容器に異常に固執していた事に由来する。

「お風呂沸かしたわよー!とっととぽんずを離して入りなさーい」
「うーい」

やがて私はチートソードに関して深く考えるのを止めて風呂に入った。(身体がロリ化していた。解せぬ)

ぽんずを思う存分もふった。もふりながらふと思ったけど、体が子供になってるせいで集中力や体力が低下してることに気付いた。簡単に言えば、まだ午後8時なのにすげえ眠い。

寝た。

朝起きて、何を思ってか寝ぼけたまま四宝剣を呼び出して振ってたら家の建ってる位置が変わってた。超焦ったけど両親も近隣住民も何も気にしていなかった。心臓に悪いし周囲の無反応が逆に怖かったので、これから絶対に剣を呼び出すまいと心に誓った。



で・・・・・・



「今日からこの学校に転校してきました、(おおどり)(なえ)っていいまふ・・・」
(噛んだ)
(噛んだね)
(噛んでやんの)
「・・・コンゴトモヨロシク」


何故か私は転校してきたことになっていた。まぁ顔に覚えのない友達とかいても困るけど。

ちなみに、学校の名は私立聖祥大附属小学校、学年は3年生である。同級生たちの髪の色が妙にバリエーション豊かなのは突っ込んじゃいけない感じかな?・・・い、いや!止めておこう!うっかり四宝剣を持ったままそんなこと考えたらみんなの髪の色が変わりかねない!!
おちおちツッコミも出来ないこんな世の中なんて、という本を書こうかな?と思う程度に怖い力である。


何でも出来るってこんなに怖い事だったのか・・・と一人頭を抱えずにはいられない私であったとさ。おわれ。





 ~そのころ時空管理局艦船アースラ~


あの後、超大型ロストロギア反応は謎の消失を遂げ、もう一つのロストロギアは断続的な発動を2回確認した。どうにか正気を保ったリンディは息子であり空管理局執務官であるクロノと共に情報を整理していた。いやぁ、あの反応を見た後ならS+なんて大したことないと思えてくるため何だか気が楽である。・・・S+といったらロストロギアの危険度の最高位なのでこの心理状態は非常に危ないのだが。

「超大型の方に関しては突然の事だったので全く行方が掴めていません。ただ、もう一つの方はごく狭い範囲で発動しているため、見つけるのはそう難しくないと思われます」
「・・・その『発動している』というのがネックなのよね。一体どんな効果を発揮しているかが全く分からない、しかも発動するたびに極小の次元震が発生している・・・」
「本部と問い合わせようにも目標についての情報が少なすぎます。こうなったら直接足を運んで確認するしか・・・」
「はぁ・・・この艦の戦力で対処できるものであることを切に願うわ」

無論そんな装備で大丈夫ではないのだが、放置すれば何が起きるか分からないので行かざるを得ない。
どちらにしろアースラの乗員の胃薬の量が増えるのは決定事項のようだ。


続く・・・?  
 

 
後書き
オリ娘の名前は鳳苗(おおどりなえ)になりました。何でか知りたい人はウィキで「女禍」って調べてみれば分かるかもしれない。分からないかもしれないけど。

ちなみに苗っちの肉体は天然道士と道士の中間(封神演義の設定を参照)へと変貌してます。歳は普通に取る、宝貝は普通に使える、微妙に怪力。本人は気付いてません。あと魂魄を目視できる(霊感)。
なおヤマネコのぽんずについては、リニスを無理やりこじつけで苗っちに助けさせようとした名残だったり。断念した理由は前の話で思いついた設定のせいです。

シリアル・・・シリアスになりきれないためサックサクになってしまった様。 
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