戦国異伝
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第百二十八話 促しその四
「大叔父上も朝倉家の者ならおわかりであろう」
「それはそうですが」
「どうして神主に従えようが」
こう言うのだった。
「無理じゃ」
「しかし織田家は七百六十万石、兵は十九万です」
宗滴は織田家の力をよくわかっていた、それでこう義景に言うのだ。
「これに対して我等は八十万石、兵は二万」
「勝てぬか」
「とても」
相手にもならないというのだ。
「ですから」
「そうですか、しかし」
「どうしてもと仰るか」
「はい」
宗滴も引き下がらない、家がかかっているが為に。
「やはりここはです」
「しかしわしは行くつもりはない」
「どうしてもと仰るのなら」
それならばというのだった、宗滴はどうしても頷こうとしない義景に対して代案としてこう言ったのだった。
「ここはそれがしが」
「大叔父上が上洛されるのか」
「はい、その上で」
織田信長に会おうというのだ。
「そうさせて頂きます」
「他にはおらぬな」
義景もこのことはわかった。
「今の当家にはな」
「そうですな、殿の名代となりますと」
「やはり宗滴様しかおられませぬ」
「では宗滴殿に」
「お願いすべきかと」
「では大叔父上、頼めるか」
義景は実質的に朝倉家の柱であるその大叔父に顔を向けてあらためて言った。
「ここは」
「そうですな、では」
「そうしてもらう。苦労をかけるが」
宗滴の高齢についても話す。
「行ってもらいたい。しかし思えば大叔父上も」
「八十を越えていますからな」
「最早」
朝倉家の者達もここで言うのだった。
「昨年の一向一揆でも采配を執られましたし」
「この度もとは」
「何、どうということはない」
しかし宗滴はこう返す、表情は厳格なものである。
「わしは働ける限り働く」
「だからですか」
「戦われますか」
「うむ、そうする」
こう言うのである。
「そしてこの度もじゃ」
「上洛して頂きますか」
「その様に」
「織田信長は一筋縄ではいかぬ」
それは決してだというのだ、宗滴は信長の脂質も見抜いていた。これは彼がまだ尾張を統一する前からだ。
「だからわしが行こう」
「織田信長はそこまで凄いか」
「間違いなく」
また義景に話す。
「武田信玄や上杉謙信に比肩します」
「確かにあれだけの勢力になるのは尋常ではない」
信長を嫌っているのは事実だがだからといって義景も信長のことを見ていない訳ではない、それでなのだ。
「では織田信長は」
「天下でも屈指の傑物です」
このことは間違いないというのだ。
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