八条学園怪異譚
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第三十二話 図書館その六
「そこから先の経験もしてるから」
「確かに。あの人は」
「そうでしょ、あの人はね」
こう言うのだった。
「小柄だけれどそういうこと私達よりずっと知ってるから」
「現実の経験でなのね」
「そう、普通に会えないでしょ」
「大人は会えないっていうけれど」
「多分会えないっていうのは肉体的に子供じゃなくなってからだから」
「あっ、それって」
「わかるわよね」
聖花は自分の隣にいて共に歩む愛実にこう返した。
「言うことはかなり恥ずかしいけれど」
「確かにね、女の子なら誰でもだけれど」
「私もね、男の子の場合はね」
「そういうことよね」
「だからね」
それでだとだ、聖花は困った感じの表情になりながらさらに話していく。愛実は聖花のその話を受けている。
「そういうことがあってからね」
「会えなくなるのね」
「先輩絶対にそのね」
ここから先をあえて言おうとする、だが。
その瞬間に後ろからこう言って来たのだった。
「巫女は処女性重視だけれどそれは心の問題よ」
「えっ、まさか」
「先輩!?」
「二人共真後ろの少し下を見て」
後ろから場所の指摘が来た。
「今からね」
「あっ、はい」
「それじゃあ」
二人は茉莉也の声をうけてそこを見た、するとそこにいたのだった。
八条学園の制服だ、赤と黒で所々に白もあるアイドルグループのステージ衣装の様な制服である。スカートの丈も短い。脚は今も黒ストッキングだ。
その派手な制服で二人の前にいてこう言って来たのだ。
「巫女は清濁を合わせ飲むものよ、宗教関係者は全部そうだけれどね」
「つまりそれってあれですよね」
「先輩って」
「婚約者はいるっていったわよね」
言うのはここからだった。
「ちゃんと」
「はい、はじめてお会いした時に」
「先輩ご自身に教えてもらいました」
「そうよ、だからそうした経験はね」
「やっぱりあるんですね」
「先輩も」
「その時言ったと思うから言わないわ」
茉莉也自身あえて言わない、どうも言うにははばかれる様だ。
だがそれでもこう二人に言う。
「旦那様は一人だけ、けれど女の子は何人もだから」
「結局そうなるんですね」
「やっぱり」
「やっぱりも何も同性の相手は何人いてもいいじゃない」
相手が異性でない限り浮気や不倫にはならないからだというのだ。
そうした話をしてそのうえでだった、茉莉也は二人にさらに言った。
「それであんた達今座敷わらしの話をしてたけれど」
「はい、そのことですけれど」
「ちょっと気になることがありまして」
「私はもう会えないわよ」
二人にきっぱりと断る。
「もうね」
「そうですか、やっぱり」
「もう無理なんですね」
「あんた達の予想通り座敷わらしには肉体的に大人になればもう会えないわよ」
実際にそうだというのだ。
「その辺りは無理よ」
「ううん、子供じゃないと無理なんですか」
「私達ではもう」
「確かに私は小さいけれど」
一五〇程だ、一五五の愛実よりさらに小さい。
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