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魔法少女リリカルなのは~その者の行く末は…………~

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Chapter-1 First story~Various encounter~
  number-13 meet again promise

 
前書き



再会を誓って。



この場合は、高町なのは。ユーノ・スクライア。フェイト・テスタロッサ。アルフ。リンディ・ハラオウン。クロノ・ハラオウン。三桜燐夜。


 

 


「……つうっ…………ここは……」


燐夜が痛みを感じ、目を覚ますと見慣れない天井だった。どうも、日本でよく見られるものではなく、機械でできているようで、けれども見たことがある天井。
管理局の次元航空船『アースラ』の内部、医務室であることは昔の経験からすぐに思い出すことが出来た。


そのまま体を起こそうとするが、体中に痛烈な痛みが奔り、起こすどころか動かすことさえ叶わなかった。叫びそうになるほどの痛みだが、唇が切れそうになるくらい強く噛むことで何とか堪えた。
ここで思い出す。
自分はあいつと戦った後、出血が止まらなかったのだと。それで、そのままにしておいてプレシアにあの計画のことを聞いてから倒れた。それ以降の記憶がない。フェイトがプレシアと話している間に来たことは覚えているが、その先は何もわからなかった。


ただ、本当の黒幕の正体を知ることが出来た。いつ会いまみえることになるか分からないが、あったときは絶対に殺してやる。自分と母親を見捨てた親父のことなど知らないが、女手一つで育ててくれた母親の敵。


今となっては、何のために管理局に入局したか分からなくなってしまったが、結果として目的を果たすことが出来たので問題はない。執務官になったのも、少しでも権限を強くしてより多くの情報を手に入れるためだけになった。難関と言われていたが、全く難しくなかった。最後の実技試験には、ちょっと苦戦したが問題なし。


――ガアアアッ


ここまで過去を振り返ったところで医務室の自動ドアが開く音がした。燐夜は誰が入ってきたか気になったが、少しでも体を動かそうものなら激痛が体を襲うため、気になっても確認することは叶わなかった。


「目が覚めたかしら? かつて私を圧倒的な力でねじ伏せた三桜燐夜君?」
「げっ」


そう言ってしまった燐夜は悪くないと思う。
昔にお前なんて視界にない的な感じでぼろくそに倒した相手に誰が今更会いたいと思うだろうか。絶対に首を縦に振る奴なんていない。それにあの時はまだ、目の前にいる人は大切な人を失ったショックから立ち直ったばかりなのだ。そんな最中に、また心を折るようなことをしてしまった。気まずいにもほどがある。


目の前にいる人――――リンディ・ハラオウンは、そんな気まずそうにして目を逸らす燐夜を見てくすくすと笑う。
意外な反応から燐夜は一瞬呆けてしまうが、すぐに顔を引き締める。


「久しぶりね。前にあったのはあの時の実技試験だから6年ぶりかしら、あなたのこと忘れたことはなかったわよ」


ただの再会であれば、長らく会っていない二人の再会であれば感動的になったとは思うのだが、そんなことはない。
リンディは何とかして長年の壁を取り除こうとしているが、燐夜はそれを知ってか知らずか、露骨に顔を背ける。


燐夜のそんな様子を見てリンディの顔に陰りが入るが、すぐに振り払ってベットの近くに備えられている椅子に腰かける。先ほどよりも距離が近くになったが、燐夜は顔を向けようともしない。痛みのせいもあるのかもしれないが、もう首ぐらいを動かす程度であれば大丈夫なはずだ。
けれども、燐夜はリンディの顔は見たくなかった。


「今更、何のようだ。この無様な姿になった俺を笑いに来たのか?」
「そんなことあるわけないじゃない。ただ、私はただあなたのことが心配だったから……」


リンディのこの言葉は心の底からの言葉だった。
本当に心の底から燐夜のことを心配して紡いだ言葉だったのだ。しかし、燐夜はそれを素直に受け取ることはしない。いや、出来ないのだ。


醜い姿になった母親に頼まれてこの手で殺し、一人生きていくためには他人の言葉なんぞ信用してはいけない。そう知ったのは一人になってすぐになってのことだ。
高町家に拾われた時もだれも信用しなかった。唯一の例外を除いて。――――そう、高町なのはである。


彼女は、自分と同じだったのだ。孤独を一人で抱えて偽りの仮面をかぶって過ごしているなのはが、燐夜と全く同じだったのだ。そんななのはであったからこそ、燐夜は自分の過去をなのはに話したのかもしれない。


「その言葉、素直に受け止められると思うか?」
「……いいえ、思わないわ。けど、いずれは素直に受け止められるようにして見せるわ」


燐夜はちらっとリンディの顔を見た。そして、すぐに目を背けた。
燐夜は思う。


――――どうして、どうしてそんな儚げな顔をするんだ……


それから二人の間に会話は無くなった。
間にあるのは沈黙だけ。二人を無音の空間が覆っていた。


それから数分もしないうちにリンディは椅子から立ち上がった。


「みんなに燐夜君が目を覚ましたことを伝えて来るね」


そう言い残して医務室から出ていった。
医務室を去っていくときのリンディの顔はとても悲しそうなもので、今にも泣きそうなものだった。


      ◯


あれからすぐになのはとフェイトが息を切らして医務室まで来て、燐夜に抱きついてきた。間一髪二人を留めることはできたが、もしできなければもっと怪我が悪化していただろう。
その最悪の状態を回避できたのだからよかった。


ただ、今回は二人に心配をかけ過ぎた。
人に迷惑はかけたくなかったが、今回はなのはに至っては、いきなり姿を消したりと迷惑をかけっぱなしだった。申し訳ないとは思っているが、自分の目的のために動いたのだ、後悔はしていない。それに、なのはやフェイトにあの計画のことを知られるわけにはいかない。二人が知ったら絶対に協力することを申し出るのは決まっている。
そんなことは絶対にさせたくない。何よりも、この件は自分で決着をつけなければならないのだ。


……もう今はあの件を考えたくない。
つい先ほど決意した燐夜だったが、やはりずっと気を張り詰めていたことと、ようやくひと段落ついたこともあって少し休みたくなったのだ。
今は、勝手に姿を消した燐夜に対して管理局はどういう処罰を下すのかが心配であった。


フェイトの件に関しては、フェイトは母親であるプレシアが目的も知らさせずにただジュエルシードを集めさせていたということもあって、無実判決はほぼ間違いないそうだ。
ただそれでも、裁判はしなければならないので、半年はミッドチルダの方に行かなければならないらしい。


あいつ――――神龍雅の件は、デバイス三か月の没収だそうだ。いくら事件解決のために行動したとはいえ、独断専行はやはり規律に反するとしたこと。それに、三桜燐夜との戦闘の件もある。ほとんど変わらない目的を持つ者同士が戦ったこともいただけないそうだ。


まあ、別にデバイスがなくたって戦っていられる燐夜とは違って、龍雅はデバイスがないとそこら辺の一般人よりも強い子供程度なのだ。まあまあ重い罰なのだろう。元執務官の燐夜からして見れば、甘っちょろいものだという判断しか出さないが。


…………そして、燐夜の処遇については先ほど、アースラ艦長のリンディから告げられた。
姿を消す前に机の上に置いておいた辞表は、見事処理されたようだ。
燐夜が行うべきことは、何故いきなり姿を消したのかということと。この空白の時間の間に自分の身に起こった報告なのだそうだ。
別にあの計画のことについては、報告する気がない。
報告する義務があったとしても、あの計画については管理局の黒い部分であることは間違いないので、報告なんてした日には、もみ消されているに違いない。
あの計画のことも、三桜燐夜という人物も。


それを聞いてめんどくさいとは思ったが、仕方のないことだと割り切ってしまうしかない。
燐夜もまた、ミッドチルダの方に戻る必要があるのだが、半年程度のことのようでフェイトの裁判が終わる頃には戻れるのだそうだ。運が良ければフェイトと一緒になのはに会いに行けるかもしれない。
その確率は極僅かなのだろうが。


明日にでもアースラに乗ってフェイトとアルフ、それに燐夜はミッドチルダに移送される。
けれど、その前に面会の時間が作れるそうなのだ。
クロノは、もうすでに家の方に帰ってしまったなのはの携帯に電話をかけ、その旨を伝える。すると、喜んで会いに行くと言っていたそうな。
その時は、なのはとフェイトだけだとばかり思っていたが、なのはが燐夜も一緒でないとダメと言っていたらしい。


そして、同じようにフェイトにも伝えたが、やはり燐夜がいないとだめらしい。
燐夜がフェイトに行かないと言ったら、裾をつまんで涙目で訴えかけてきた。
それにはさすがの燐夜も敵わない。


そして翌日、早朝。


フェイトと燐夜は先に待ち合わせ場所でなのはが来るのを待っていた。
クロノの話によると、そんなに時間は取れないからできるだけ手短に頼むと言っていたが、まあ、無理だと思う。何せ、別れと再会を誓うのだから。


「フェイトちゃーん! 燐夜くーん!」


ちょっとした物思いに耽っていると、なのはが手を振りながら走ってこちらに向かってきていた。
その姿を見て、クロノとアルフは邪魔しないように場所を動いた。
アルフの肩にはフェレット姿のユーノが乗っている。


まず二人だけで話してもらうのがいいだろう。
燐夜はそう思い、静かに少し距離を取り、欄干に背中を預けて腕を組む。


なのはとフェイトは話し始めた。


「その……もう、行っちゃうんだよね」
「うん、少し長くなるかもしれない」


なのはとフェイトは互いに向かい合い、相手の姿を自分の目に焼き付けるかのように見ている。


「けど、それでも、戻ってくる。ここに」
「……! うん、待ってる、ここで」


満面の笑みでなのはは答える。
フェイトはさらに言葉をつづける。目の前にいる少女に言わなければならないことを。あの事に返事を返したいのだ。


「あと、君が言ってくれたこと。友達になりたいって。私も友達になりたい。……けど、どうしたら友達になれるのか分からなくて」
「……簡単だよ。相手の名前を呼べばいいの。私の名前は、高町なのは」
「……なのは」


ここで初めてフェイトは、なのはの名前を呼んだ。ここまで君と呼んでいたのに。
なのははそのことに感極まって、涙が目に溜まって来ていた。


「なのは」
「うん、うん…………うん」


遂にこらえきれずになのはは涙を流した。
フェイトはそれにつられるようにして、同じように涙を流し始めた。


「少し分かったことがある。友達が泣いてると自分も悲しんだって」
「……っ、フェイトちゃん!」


フェイトの言葉をきっかけにしてなのはが、フェイトに抱きつく。
フェイトは、抱き着いてきたなのはを支えるとなのはを抱きしめた。


だが、その涙を誘う心温まる会話も終わりを迎える。


「間を刺すようで悪いが、もう時間だ」


クロノがやって来てもう時間であることを告げる。
隅にいた燐夜もなのはとフェイトのもとへ向かう。


燐夜が二人のもとにたどり着くと、抱きしめあっていた二人は離れたところだった。
そしてなのはは、おもむろに自分の髪を纏めている白いリボンを解き、フェイトに向ける。


「思い出になるようなものがこんなものしかないけど。私たちが出会った記念に」
「じゃあ、私も」


そう言い、フェイトも自分の髪を纏めていた黒いリボンを解いた。


「きっと、きっとまた」
「うん、そうだね。きっと」


二人はリボンを交換した。
それは、二人の出会いと別れの記念であり、再び会うことを誓う二人の絆。


「フェイト、俺からも」
「え?」


燐夜は、ポケットから水晶のついたペンダントを渡した。水晶の色は黒。フェイトのイメージカラーを基本にして燐夜が用意したもの。


「なのはにもあるぞ」
「ほんと!?」


なのはにも同じようなもの、水晶の色は青。なのはには白と青があったが、ここは青がいいと燐夜は思った。
燐夜は二人に渡し終えると上着の中に手を入れ、何かを取り出した。
それは燐夜が二人に渡したものと同じもの。違う点は、水晶の色が赤い所。


「これは三人の絆の証。できれば肌身離さず持っていてくれるとうれしい」
「分かった、ありがとう、燐夜」
「うん、ありがとうなの!」


三人はひもを首の後ろで結んでかける。
朝の日差しに反射して輝く水晶。


「また会おう」
「うん、元気でね」


そしてアルフがユーノをなのはの肩に乗せる。


「色々とありがとね、なのは、ユーノ」
「こちらこそありがとう」


涙を浮かべ、感謝の言葉を口にするアルフ。


「じゃあ、僕も」
「クロノ君もまたね」


なのは以外の人が魔法陣の上に乗った。


出会いがあれば、別れもある。
だが、それは二度と会えなくなるわけではなく。また会おう、そう約束した。


魔法陣が輝くと、そこには誰もいない。リボンで結わえていた髪を風に靡かせたなのはが一人、たっているだけだ。


なのはは、笑顔を浮かべて新たな絆と約束を胸に新たな一歩を踏み出した。


      ◯


なのはは、アリサの部屋でアリサとすずかと一緒に制服姿のまま若干緊張しながらソファーに座っている。
そんな三人の前には一台のビデオカメラが。
そのビデオカメラはもう録画を始めている。


なのはが紡ぐ最初の一言は決まっていた。


「親愛なるわたしの友達フェイトちゃん、そして、私たちの友達燐夜君へ」


紹介したい友達のこと。今の自分のこと。大好きなあの子のこと。
言いたいことはたくさんあった。
直接会うことはできなくても、こうして気持ちを伝えることはできる。





五月の空は晴れ渡り、風が爽やかに吹き抜ける。
今は別々の場所で過ごす三人。
それぞれが過去を抱いて、自分の想いを強さと笑顔に変えて。


三人が再会するのは、そう遠くない日であった……











   First story ~Various encounter~ Fin


 
 

 
後書き

これで無印編完結っ!!
短いようで長いように感じました。これでひと段落。

アニメでも映画でも泣いたあのシーン。うまく表現できていれば……

次はA's編。
あんまり時間を空けないうちに投稿することを目標として、ドライブ・イグニッション!! 
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