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神葬世界×ゴスペル・デイ

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第一物語・後半-日来独立編-
  第三十八章 戦場で踊る者達《1》

 
前書き
 今回もまた戦いです。
 始まりスタート。 

 
 今、町民グラウンドは騎神の激突により土煙を上げ、一人の半獣人族がそれをナイター照明の上から見ていた。
 今の状況に至ったのは、少し前のことだ。
 日来の学勢三人と辰ノ大花の騎神三機が戦闘を開始し、それぞれが攻撃を行った。
 グラウンドに激突した騎神は相手の攻撃をまともに食らい、操作を行う前に地面へとぶつかったのだ。
 対する相手の半獣人族は騎神が攻撃を行わなかったため無傷で、ただただ騎神の様子を伺っているだけだった。
 その半獣人族であるネフィア・ルルフは二十メートルはあろう高いナイター照明の上に立ち、下を眺めていた。
「調子に乗ってしまい、力み過ぎてしまいましたわ。騎神の方は大丈夫なのでしょうか。潰れていればそれでいいんですけど……」
 風によって流れる土煙は地面を隠し、グラウンドの地が見えるまで時間が掛かった。
 右の手に握る鞭状の銀冠|《ジィルバーンクローネ》をゆらゆらと、上下に揺らしながら相手の姿を探す。
 すると土煙のなかが青く光り、土煙を払うように騎神が加速機を噴かせ現れた。
 頭を手で押さえながら、ネフィアと同じ高さまで騎神は上昇する。
 対するネフィアは身構え、何時でも戦闘に入れるように準備した。
 赤に光る、人でいう瞳にあたる視覚機器がネフィアを見詰め、その騎神から声が発せられた。
『頭に一撃とか、いささかボーイに対して酷過ぎない?』
「騎神に対して、の間違えでは?」
『そういやあ、今、オレって騎神なんだったな! 忘れてたわ!』
 ははは、と騎神が笑う。
 テンションが高い人だということは解った。さて、どうしたものか。
『お前って、あれだろ? 日来の覇王会隊長だろ?』
「ええ、そうですが」
『やっぱりな! 日来学勢院の伝域|《サイト》に写真あったしな。つまりお前が日来学勢院の強さそのものってわけだから、お前を倒せばオレは大出世! 将来は辰ノ大花の騎神隊エースまっしぐらってわけだ! こりゃあ、面白い話しじゃねえか!』
「……貴方、学勢ですわね?」
『ビンゴ、ビンゴ。宇天学勢院高等部三年生だ。オレも三年生だからな、来年は社交院にいって騎神隊に所属して、そしてその騎神隊のエースを目指してるんだぜ』
 陽気に話す騎神を見ていた、ネフィアが握る銀冠の動きが止まった。
「貴方は自身の学勢院の長が死ぬというのに、自分の将来を選ぶのですわね」
『それがどうした?』
 だからなんだと、その一言にネフィアは銀の鞭による一撃を放った。
 しかし、それは騎神の手によって容易く受け止められ、握り、離さなかった。
 ため息を吐き、肩を落とす騎神がこちらを見て、
『何そんなに熱くなってんだ?』
 首を傾げ、意味が分からないという様子だった。
 騎神の目に映るのは、髪の毛が逆立ち、獣のような鋭い目付きとなったネフィアだ。
 銀冠を握る右の手は怒りにより震え、何時襲い掛かって来てもおかしく無い。
 ネフィアが立っているナイター照明にはひびが走っており、そのひびからは欠片が落ちる。
「同じ学勢院なのに、どうしてそうも冷たいのか不思議ですわ……。長を救いたいとは思いませんの!」
『だから何でそんなに熱くなってんだよ、キモいって。オレから言わせればあの長は赤の他人だし、一度も話したこともねえし。そんな奴のために将来犠牲に出来ねえって』
 当たり前のように、そう言う。
『てか、日来みたいに辰ノ大花追い込まれてねえから、黄森との関係を悪くさせたくねえんだよ。それが理由で社交院の取り決めで今回、黄森と手を組んでこうして一緒に日来と戦ってるわけだし? まああ? 今後のことを考えればそれは当然だし、上から言われたんじゃ従うだけだよな』
「なるほど、つまり辰ノ大花は彼女を見捨てるのですわね。さすがは神州瑞穂の主戦力の一つ、誰であろうと辰ノ大花を脅かす存在ならば容赦は無いですわね。それが今日、いや、これからも辰ノ大花を治める筈だった委伊達の者であっても」
『しょうがねえよ、そういう世の中なんだ。やらなければやられる世の中じゃねえ。力が無きゃあ何にも出来ねえ、そんな世の中なんだよ』
 だから、
『黄森に劣る辰ノ大花が、黄森に逆らえるわけねえだろおがよ!』
 騎神は握っていた銀の鞭を勢い良く下に振り、鞭を持っているネフィアをナイター照明から振り落とす。
 今度はネフィアが、グラウンドに土煙を立たせ激突した。
『オレ達はお前ら日来と違う。身勝手に動くようなお前らとはな』
「言ってくれますわね。ならば、ここは力付くで行かせてもらいますわ!」
 銀冠をゼリー状にし、それをクッション代わりに用いたため無傷で済んだ。
 周りに立つ砂煙を銀冠を鞭状にし、それを振った際の風圧により吹き飛ばす。続けて土のグラウンドを踏み込み、騎神へと跳んだ。
 地面を蹴った。ただそれだけで騎神と高さを同じにし、勢いそのままに騎神へ銀冠を振る。
『幾ら獣人族って言っても騎神相手の近接戦闘は不利だろ』
「獣人族ではなく半獣人族ですわ。それに騎神との戦いは一概に不利とは言い切れませんわ。特に障害物の多い町なかでは」
 相手の攻撃を避けた騎神は後ろへバックし、短機関銃に手を掛けようとした。
 が、伸ばした手がある瞬間動かなくなった。
 どうなっているのかと、背にやった右の手を見ればあの半獣人族が持っていた銀の武器が手に密着していた。
 動かない。
 この銀の武器によって、動きがロックされているのだ。
 ならばと、左手で長銃を手にしようとするが止めた。
 長銃は近接戦闘向けではないからだ。
 遠距離射撃が売りのこの長銃では近過ぎる敵相手に充分な性能を発揮出来無いし、連射性に欠ける為、獣人族の血を引いている者にとって単発は容易に避けられる。
 これらを踏まえ、脚型加速機|《レッグスラスター》に備え付けらていた流魔刀を抜き取る。
 流魔の刃を出すために柄に設けられたトリガーを引き、青の光と共に刃が現れた。
 長刀となった流魔刀を握り、片手で重力に引っ張られて落ちている半獣人族へと振り下ろす。
 命までは奪わない。ただ身体を動かなくするだけだ。
 迷い無き一撃はネフィアに向かうが、急にネフィアが宙で落下の方向を変えた。
 否、落下ではなく何かに引っ張られ方向を変えたのだ。
 青の斬撃は空気を切るだけで、他には何もなかった。
『はあ!? 獣人族だろ、あいつ。なんで空中で方向転換出来んだよ』
「右手を良くご覧になってはいかが?」
 言われ、右手を見た。
 あの銀の武器の一部が線となり、何かを吊るしていた。
 半獣人族だ。
 自身、と言うよりも騎神の手を軸にした公転運動により背後へと移動したのだ。
『そう言うことかよ。ならこの変な銀の武器ごとぶつけてやる!』
 地面へと再び振り落とすために振り上げた腕から、半獣人族の重さが抜けた。
 銀の武器を巻き取るように自身の元へと戻し、近くになるナイター照明に向かって宙を移動したのだ。
 ナイター照明に向かって、騎神との距離を離す。
 だが、そのお陰で騎神は右の手の自由が得られた。
 短機関銃を手に取り、グラウンドから離れて空へ上がる。
 わざわざ地上で戦う意味も無い。だから空へ上がり、上からの攻撃を行う。
 当たるかは心配だが、何事も安全第一だ。
 小さくなったグラウンドのナイター照明には、そこに立つ半獣人族がこちらを見ている。
 空中ではどうしようもないのか、動きはせずにそのままだ。
 だったらと、こちらから先に動く。
 行うのは加護を弾に加えることで出来る、追尾弾による連続射撃。
 放つ弾数は十。
 加護付きであることを示すように、銃弾は青の軌跡を描きながら進む。
 微妙に加護の効力を変化させているため、それぞれの弾が複雑な軌道を描いた。



 空の色とは違う青を見て、警戒体勢へとネフィアは入った。
 合計十発の銃弾。
 追尾付きであり、避けられるかはやってみなければ分からない。
 自分が幼い頃、母から教わったもの一つは騎神との戦い方であり、銃弾の回避の仕方は教えられていない。
 獣人族、半獣人族は当たり前に出来るからだ。
 死角から必ず来るのは予想出来るが、どのような軌道までかは予想出来無い。
 勘に頼るのもあれなので、今までの経験を存分に生かす。
「Laufen――!」
 行動開始の合図を告げ、ナイター照明から身を投げた。
 地上には障害物となるものがあり、それを活用すれば回避が出来るかもしれないと考えたのだ。
 落ちるネフィアを追うように、空からは十の銃弾が追尾してくる。
 大気を裂き、その際に鳴る音を耳で捕らえながら地面へ足を着く。
 先程のようにクッションは必要無い。
 先程は騎神によって必要以上の勢いを付けられたためにクッションが必要なだけであって、今回のように高さが二十メートルからの落下は、獣人族にとってはスリルを味わう為の遊びでしかない。
 尻を落とし、脚を曲げ、衝撃を吸収しそれだけだ。
 曲げた片足で地面を蹴り飛ばし、迷い無く素早く走り出す。



 町民グラウンドの周りには体育館や公園やらがあり、またその周辺には飲食店や家などが建てられていた。
 基本、どれもが日来の住宅と同じ木造で、オシャレ感覚で幾つかの飲食店が煉瓦やコンクリートで外装を固めている。
 横目でそれを見ながら疾走するネフィアの背後、銃弾が勢いそのままに追って来る。
 今、見える数は三。
 だからここで打ち落とす。
 走り、前に進む為に地面から離れた片足を地面に着け、その足を軸に反転した。
 正面に見える弾丸。目に捕らえられる速度だ。
 螺旋を巻いて、一直線にこちらに向かう。
「起きなさい、銀冠|(ジィルバーンクローネ)」
 その言葉に腕輪となった銀冠は震え、応えるように鞭へと形を変える。
 右の手に握る銀冠を左右に、交差に振りながら地面を叩き付ける。
 数回繰り返した後、一つの銃弾に向かい鞭を振った。
 鞭も銃弾と同じく一直線に、しかし鞭はその長い縄を真っ直ぐに伸ばし固まった。
 先端を尖らせた、ランスへと形を変えた。
 開いた間を縮めるように銃弾は進み、銀のランスを避けることもなく向こう側にいる目標に向かい行く。
 次の瞬間、一つの銃弾が弾けた。
 まだだ。ランスを平たく潰し、長剣とし、それを両手を使い左へと振り抜く。
 家の持ち主には悪いですが、悪くは思わないでくださいな。
 建っていた建物に長剣が当たり、裂いていくが今は気にはしていれない。
 自分を穿とうと銃弾が迫っているのだ。
 そして、左側を行く銃弾が銀の長剣により真っ二つに切断された。
 安心はまだ出来無い。
 もう一つ、いや、正確にはもう八つ。
 一先ずは視界に映る残りの銃弾を落とす。
 長剣は急に縮まり、ネフィアの掌に球状として戻って来る。
 銀の球ですることは一つだけ。
 投てきだ。
 銃弾に掛けられている加護は対象物が直線上にいる時、軌道修正の精密度が下がるようだ。
 だからこのように、真っ直ぐに投げても問題は無い。
「ふっ――」
 息を短く吐き、全身を使った投てきを行う。
 速度は銃弾とほぼ等しく、生み出される結果は銃弾の崩壊だ。
 実弾は銀の球に負け、粉々に砕け散った。
「こら、何時まで進んでますの。戻って来なさいな」
 目的を達成しても、なお、宙を行く自身の武器に戻ってくるようにと言う。
 と、まるでペットのように銀の球は宙を行くなかで液体状になり、自身の使用者であるネフィアの元へ帰る。
 横に垂直に上げた右の手首に集まり、待機状態である銀の腕輪となった。
 ふう、と身体の熱を吐き出すように息を付く。
「残り七発ですわね……。いいえ、それにしても、幾らなんでも――」
 今だかつて、経験したことのないことが起こっている。
 どうしたものかと、少し不安になる。
「これはさすがのわたくしも困りましたわね」
 振り返れば確かに見える。
 空から銃弾の群れが、こちらを穿とうと狙いを定め向かって来る。
 先程の三発を打ち落とした時にでも、残りの銃弾を加護付きで撃ったのだろう。
 丁寧に消音を加え、ただのお調子者だと思えばそうではなく実力はあるようだ。
 冷静に考えれば、今は関心している場合では無い。
 視界に映る銃弾の群れを、どのようにして防いだらいいものか。
 逃げたのでは駄目だ。追尾され、退路を絶たれればお仕舞いだからだ。
「物は試しと言いますし、試みるのもいいでしょう……」
 出来るかは分からない母が教えてくれた技。と言うよりも、大きな声を出すための発声の仕方だ。
 声による攻撃。
 一般的に、これを獣咆哮|《ロアー》と呼ぶ。
 自分は声帯やら何やらが原因で上手くいっていないらしく、獣咆哮が出来無いことは獣人族の血を引いていてる女にとっては恥らしい。
 なので時々、皆に聞こえないように影ながら努力していたが成果は実らなかった。
 しかし、こういう緊張感を持った場所ならばと思ったのでやる。
 それに獣咆哮は広範囲攻撃の一種なので、上手く行けばいいと思う。
 ので、
「すう――」
 と、口から息を肺、腹へと送り込む。
 ゆっくりと、銃弾を引き寄せるように。
 これ以上吸えないというところまで吸い続け、そして吐く。
 送り込んだ空気を、邪魔だからと外へと追い出す。
 全ての空気を抜き、今度は鼻から大きく息を吸う。
 予備動作であるため、きちんとすればする程成功の確率は上がるし、同時に威力も上がる。
 胸が膨らむ感覚を得たら、放つ――。
「う」
 お、と高い声を上げた。
 声帯を震わせ、口は縦に開き空気を振動させるように。
 肺に送り込んだ息を長く保つために、一気には吐かない。
 周囲に獣の咆哮、遠吠えとも思える声が響き渡る。
 遠吠えに似ていたが、次の瞬間爆発したように声量が上がり風が生まれた。
 これに一番影響を受けたのが銃弾だ。
 ネフィアを狙い、迫る銃弾が最初は微弱に左右に揺れ、次に大きく左右へと揺れた。
 それにより銃弾同士がぶつかり合い、自爆を引き起こす。
 いい感じですわ……!
 やはり自分は本番向きなのだろう。
 だが、母のようには出来無かった。荒々しくも綺麗なあの声は、今の自分からは出ない。
 何時かはと、悔しい思いを胸の奥底へと秘める。
「ん……」
 と、口を閉じる。
 まだ慣れていないせいか、喉に違和感を覚えるが戦いに支障はきたさない。
 不慣れな獣咆哮が取りこぼした銃弾を、手に掛けた銀冠により打ち払う。
 冷たい金属音が響き、銃弾が地面へと落ちると同時に銃弾から青が弾け、加護が解かれたことを示した。
 銃弾の群れは全て、対象を穿つことなく打ち払われた。
 あ、と言う言葉を数回出し、ネフィアは喉の調子を整える。
「かなりの銃弾を使いましたわね。後、何発残っているいるのでしょう……」
 喉に手を当てながら、今の状況を確認する。
 視界を動かしても騎神の姿は映らず、遠くから唸るような音が聴こえる。
 加速機による音なのかは不明だが、それは遠く、あらゆる方向から聴こえてくるものだ。
 戦場の声とも言うべきだろうか。
 ふ、と笑うネフィアの耳が動いた。
 日来では聞き慣れない音。機械により生まれた音で、それはこちらに近付いて来ている。
 ぴんと立った獣の耳を動かし、何処から来ているのか探す。
 その答えは思ったよりも早く分かり、それは今自分の身体が向いている方。
 あの銃弾の雨を捕らえた方向で、自分が今立っている道を真っ直ぐ行ったところ。
 ティー字路、否、間違った。
 丁字路となったところ、その右からから来ている。
 身構えるネフィアの元へ、幾分も待たないで音を立たせながらそれが来た。
 騎神。
 町民グラウンドで相対した、あの騎神だろう。
 腰と脚の四つの加速機を噴かせ、高速でこちらに来る。
 距離二百ぐらいといったところか。
『見付けたぜ! 町のなかだと小さくてなかなか分かんなかったが、もうそうはいかねえぜ?』
「あの銃弾の雨は、こちらの位置を捕らえる為のものだったのですわね」
『ご名答――! 追尾が多ければ多い程、相手を捕らえる確率も上がるってもんだからな』
 砂煙を立たせ、前進してくる騎神をどのように向かえるか考える。
 左右には建物が建ち並び、それが道と一緒に長く続いている。
 空は見え、上には邪魔なものはない。
 とすれば、やはり上へと行くのがいい。
 距離が縮まればその分こちらには不利なので、早々に行動に移す。
 腕輪状の銀冠を鞭状に変形させ、握るやいなやすぐ横の建物の屋根へ鞭を振る。
 振ったことによって伸びる鞭はそのまま屋根を貫き、鞭の先端に返しが現れ、屋根とネフィアとを繋いだ。
 何をするかは騎神の方にも伝わったようで、
『おい、逃げるのかよっ!?』
「ふふ、ご免遊ばせ」
 言い、屋根へと縄を縮め飛んだ。
 一方の騎神の方は速度を上げ、腕を伸ばし捕らえに来るが間に合わず、物体ではない空気を握るだけだった。
 屋根に足を着き、振り返ると騎神が空へと翔んだ。
 弧を描き、再びこちらと正面会わせとなる。
「攻撃はしてこないのですわね」
『殺す気でやってないものでね。
 ――それに、ここなら幾らか分からねえだろ』
「どういうことですの?」
 言葉の意味が理解出来無い。
 ここなら幾らか分からない、とかこちらの姿がだろうか。
 首を傾げるネフィアに、近付き騎神の操縦者は言う。
 戦意が無いことを武器を納め、両手を上げることで示しながら。
 そして、笑いながら。
『黄森の指示を無視し、オレ達の長を救出する』
「え?」
 また理解出来無なかった。
 何を言っているのだろうか、彼は。
 掌を返したようにさらっと長の救出を口にし、先程言っていたこととは矛盾している。
 理解出来ず、とうとうネフィアは空に向かってこう叫んだ。
「どういうことですの――――!?」 
 

 
後書き
 な・ん・で・す・と――――!?
 ということで、まさかの一言で今章は終わりました。
 長を失うのを黙って見てるわけないだろ、黄森めがwww
 こんな感じです。
 なら、何故救いに行かないのか?
 読者の方々は、そう思ったに違いありません。
 強い敵に正面から攻める天才がいないのと同じに、辰ノ大花より強い黄森にわざわざバラるように長を救いに行くわけがありません。
 なので、見えない影からこっそりと、と言うことです。
 ですが辰ノ大花に住む者達の全員が全員、長の救出を望んでいるわけではありません。
 それによって黄森から何らかの仕返しが来るのが、目に見えて分かっているからです。
 セーラン君は何故、日来独立の為に奏鳴ちゃんを救うのか。
 独立後に行う、世界に持ち掛ける崩壊進行解決の協力。
 日来を生かすために行うその行いは、世界にどう映るのか。
 話しは逸れましたが、地位が高くなるに連れ、背負う責任も強くなるのいうもの。
 他人の責任の重みを知る者は、今の世にどれ程いるのか。
 そして、責任の重みを理解せず、他人のことも理解しようとしない者もどれ程いるのか。
 綺麗事を笑って語り合える、そんな世界は嫌いですか? 
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