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ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~

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レーヴァティン~クロスクエスト~
  VS焔の龍騎士団

 赤い炎の巨人の王の近くには、常に巨大な龍達がいる。その龍の背中には、必ず巨人の龍騎士がいる。

 彼らの名は《焔の龍騎士団》。巨人王とともに、世界を焼き尽くす終末の龍騎士たち―――――。



                    *


「久しぶり、セモン兄ちゃん、ゲツガ兄ちゃん」
「……レンホウ」
「レン?!何でここに……」
「決まってるじゃない。ボクもこのクエストを受けに来たんだよ」

 
 レンホウはそこまで言うと、スルトの方を見て

「と、言うわけなんだけど、ボクも参加していいかな、オジサン」

 なんかすごいことを言った。

「お、オジサン…?」
「なんかすごい子ねあの子……さすが《冥王》…」

「我を《オジサン》呼ばわりとは……おもしろい。実に愉快だッ!!よかろう。せいぜい我を楽しませよ、小さき妖精の騎士どもよ!!」
「言われなくても」

 次の瞬間には、レンホウが飛び出していた。先ほど首を落とした騎士の乗っていた飛龍に向けて右手をふるうと、そこから銀色の細い鉄糸(ワイヤー)が飛び出した。龍の尻尾に巻きついたそれは、レンホウが一思いに引っ張るとそれを一瞬にして切り落とした。

「グガァアア!?」
「……硬いね。さすがに首を落とすのは無理か……ボスには《心意》の効き目も薄いしな…」

「俺らもやろうぜ」
「お、おう……」
「危うく何しに来たのか忘れるところだった」

 ゲツガ、セモン、ハザードがそれぞれ武器を構えなおす。


「レンホウ君!その龍は君に身任せても大丈夫か!?」
「だいじょーぶだよ!まかせて!!」
「ありがとう!!……よし、それじゃぁセモン、コハク、ハザードは右側の龍騎士を。ゲイザーさん、ゲツガ君は僕と一緒に左側のを頼む!」
「「「了解!!」」」
「まかせろ!」


 セモンが刀を構える。キリトの友人の鍛冶屋の少女が鍛えた刀は、エンシェント・ウェポンに匹敵するだけの力を秘めている。コハクも長槍を構える。両手で握っているということは、今は《両手用槍スタイル》だ。
 
「……レノン」
「くるぁっ!」

 ハザードの肩にとまっていた真紅の小竜が、翼を広げて……


「――――ゴァアアアアアアアアアアアアアッ!!」


 巨大化した。

 そのサイズはアインクラッドボスモンスタークラス。

 ハザードがかつて《王者を従えし者(ボスモンスター・テイマー)》の名で呼ばれた由縁である、アインクラッドのとある階層の最終フィールドボス。名を《ザ・バーニングバーン・ドラゴン》。

 本来、ALOには存在しないモンスターだ。しかしALOはSAOの上に立っている、いわばコピーサーバーである。さらにソードスキルと共に《SAOデータの取り込み》を行った際に、レノンのデータも引き継がれたようだ(もっとも、SAO時代のデータを受け継いでいないプレイヤーは、テイムしていたモンスターが違うモンスターとなって出現したらしいが。そもそも注目すべきはモンスターは外見は違っても中身は同じである、というところにある)。


「レノン、やれッ!!」
「グラァアアアアアッ」

 レノンの剛爪が龍騎士に迫る。しかしサイズは圧倒的に向こうが上。レノンは押し返される。しかし負けじと両腕をふるって敵の巨龍の攻撃を防ぎ、カウンターを決める。

「俺達も行くぞ!」
「ええ!」

 セモンも刀を構える。その刀に燃えるようなオレンジの輝きが宿った。

 《神話剣》一連撃、神速の薙ぎ払い攻撃……《アラブル・スラッシュ》。

 
 ALOを救ったそのベンチャー企業は、SAOシステムのデータ取り込みの際に、エラー反応の出たスキル――――噂では十三個あったらしい――――を削除してしまった。そのため、もうキリトの《二刀流》も、今は亡きヒースクリフの《神聖剣》も。セモンの《神話剣》もハザードの《獣聖》も、コハクの《妖魔槍》も。シャノンの《太陽剣》と《帝王剣》も。ゲイザーの《流星拳》も。カガミの《舞刀》にアルテミスの《星衝剣》も、ケイロンの《三日月弓》も。そしてついに会いまみえることのなかった残り二つのユニークスキルも、すべて消えてしまったことになる。


 しかしいま、こうやってセモン達はかつてのソードスキルをつかえている―――――――。シャノンもそれに関しては理解不能だと言っている。

 ALOのソードスキルは、SAO時代のソードスキルに、この世界特有の《魔法》を掛け合わせたもの――――つまり《属性攻撃》に分類される。そのため、全てのソードスキルには火水風地闇光などの属性がつくはずなのだ。

 しかし。セモン達の《復元されたユニークスキル》にはその《属性》が付与されていない――――つまり実質のところ《完全再現》なわけだ。

 
 いったい誰が。何のために―――――。


「セモン!!」
「!!」

 セモンはコハクの声で現実に帰った。

 見れば、巨龍の腕が自分に振り下ろされるところではないか。

「くっ!」

 セモンはソードスキル《アラブル・スマッシュ》で攻撃を受ける。刀には珍しい重厚な打撃攻撃だ。それを利用した防御にも使える。
 
 しかし巨龍の攻撃は思った以上に重い。

「ぐぅううう……」

 このままでは押しつぶされる―――――――

 その時。紫色の衝撃波が、龍の上に座る騎士を直撃した。ほんの一瞬流の動きが止まる。その隙をついてセモンは脱出。

「サンキュー、コハク!」
「どういたしまして!――――来るわよ!」
「おう!!」


 巨龍の攻撃を避けて、上に座る騎士を攻める。レンホウの攻撃から分かったことだが、どうやら首などの関節部分が非常に脆弱なようだ。

「くらぇえええ!!」

 セモンの刀がオレンジの光を再び纏う。

 《神話剣》ソードスキル、《アラブル・リープ》。鎌の要領で振るわれた刀が、龍騎士の首に食い込む。

「やぁああああ!!」

 コハクの槍が紫の光を宿す。

 《妖魔槍》薙刀系ソードスキル、《アザレア・バース》。両腕と胴体を斬りつける。


 これにより騎士のHPはあえなくゼロになり、騎士は四散した。

「オオオオオオオッ!!!」

 同時にレノンが、龍を鷲掴みにすると、大きな咢一杯に炎を溢れさせ―――――

 彼の本領であるバーニングブレスを放った。



                     *


「さて、僕らも行くかな」
「了解した」


 ゲイザーが地面を蹴る。鍛え上げられた敏捷値パラメーターがゲイザーをブーストし、瞬く間に龍騎士に接近する。

「……ッハ!!」

 ほのかに青い燐光を纏ったゲイザーの掌が龍に押し当てられる。次の瞬間に激しい閃光。

「グギャァアア!?」

 《流星拳》ソードスキル、《スプラッシュ》。


 さらにゲツガが地面を蹴り……恐ろしく高くまで、跳ねた。


「うわすげ」


 感嘆の声を漏らすシャノンをよそに、ゲツガは空中で大剣を逆手に構えて、落下の勢いも合わせて振り下ろす。

 
 ズバァアアアアアア―――――ン!!


 ……激しいインパクトが巻き起こった。巨龍が弾き飛ばされてこちらに吹っ飛んでくる。


「それじゃぁ、僕も出番を増やしますかね」

 シャノンは二本の巨剣を構えて、呟いた。

「《ビットスタンバイ》」

 するとシャノンの周りにエネルギーでできた無数の小剣が現れる。

「……《ホーリースター》」

 無数のビット達は次々と射出され、巨龍を突き刺していく。そして、シャノン自身も両の大剣を構え―――――


「……《アメンラー・インティカ》」

 振り下ろした。

 巨龍の翼は真っ二つに断ち切られ、そのまま龍は後方へ吹っ飛んでいく。

 そこを狙ってゲツガが跳躍。あらゆるパラメータボーナスを筋力値につぎ込んだ彼の跳躍力は恐らくこの場にいるだれよりも高い。 

 大剣ソードスキル唯一の逆手持ち剣技、《イラトゥス・エスト・ドラコ》が巨龍を騎士ごと切り刻んだ。

 落下した龍は、騎士を失ってなお持ち前の(?)しぶとさでHPをわずかに残していた。しかし

「終わりだ。往生際が悪い」

 上から降ってきたゲツガと、

「……せめて安らかに眠れ」

 殴りかかってきたゲイザーの攻撃を受けてあっけなく四散した。



              
                     *

「行くよ、クー」
「グル」

 レンホウはワイヤーを構えると、ひらりと隣に立つ犬とも狼ともつかない黒い獣……《フェンリル・ラウンダー》のクーの背に飛び乗った。


 まるで龍騎士ならぬ獣騎士となったレンホウは、残った巨龍に向かって攻撃を開始した。


 ワイヤーで打つ。斬る。斬る。打つ。

 攻撃はクーの見かけによらぬ機動力で回避。時折接近して噛みつき攻撃。


「……ふっ!」

 レンホウのワイヤーが龍の翼に巻きつき……

「やぁッ!!」

 断ち切られた。

「ゴカァアアアア!!」
「あ~もう。うるさいなァ……クー、やっちゃっていいよ」
「グルルル……ガァァッ」

 クーが飛び掛かり、力を失った巨龍に噛みつき……


 その首を引きちぎった。


 あっけなく四散した龍をよそに、レンホウはセモン達に近づく。

「レンホウ……」
「お疲れ様~みんな!これでオジサンと戦えるね!」

 そしてレンホウは狂喜的な表情でオジサンことスルトに向き直った。


「それじゃ、はじめようか?」
「ククク……まさか竜騎士どもをすべて蹴散らすとはな。面白い。実に愉快だッ!!よかろう。我が炎で消し炭となる権利を与えてやる」

 スルトが立ち上がる。

 同時にその頭上に今まではなかったモンスターを示す赤いアイコンが。四段重ねの恐ろしく長いHPバーが出現し、ネームタグが出現。

 《The flame-giant’s-king Suruto》―――――焔巨人の王、スルト。
 

「あいにく、消し炭になる気はないけどね」
 
 シャノンが尊大に言う。

「せいぜい我を楽しませよ」

 スルトがレーヴァティンを構える。



 戦闘、開始だ。 
 

 
後書き
 はい皆さんお久しぶりですAskaです。いよいよスルトと直接対決!

 今回は個人的には今までにないほど長かったと思います。いや~疲れた疲れた。

ハザ「この程度で疲れるなよ」

 はい。


 そして皆さんの中にはお気づきの方がいらっしゃるかもしれません。そう。


 三話ほど前にはいたはずのグリヴィネがいないことに。


 彼女は次回、ちょっとすごい参戦の仕方をいたしますので、彼女のファンの方(いるのか?)、ご安心ください。


ハザ「お前の文章ですごいかどうかはわからんよ」

 ……これでも精いっぱい頑張ったんだよう……


 ちなみにレンホウ君は『イノセント・アサシン』の世界からやってきました。『神話剣』とも『ウイルス』ともそれなりなつながりがある世界ですが、ゲツガ君の『ウイルス』は『神話剣』とつながりがない――――というか『ウイルス』を読んだことのある暗黒少年先生のファンの方ならわかる、あのゲツガ君の「存在が一度消滅した」場面で、そのままゲツガ君が消えてしまった世界の方とつながっていると考えてください。そのため『ウイルス』本編を知っているレンホウ君はゲツガ君を知っていて、『ウイルス』本編を知らない『神話剣』キャラはゲツガ君も知らない、ということで。

 ↑こう解釈していただけると幸いです。

 なんかあとがき長いな今回。

 それではっ! 
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