SAO─戦士達の物語
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GGO編
百二十話 導く温もり
前書き
はい!遅くなりました!鳩麦です!
今回は……長いです。
遅くなった文、すっごく長いです。正直、自分でも分けろよとちょっと思いましたが、すみません、笑いあり、シリアスあり、そして少しホロリあり(今ポロリって読んだ奴、後で体育館裏に来るように)シーン達を、一気に読む勢いを楽しんでいただきたく。
では、どうぞ!!
「いらっしゃいませ」
つい数日前にも入った銀座の喫茶店の扉を、涼人は再び開いていた。相変わらず白いシャツにネクタイを付けた上品なウェイターが深々と頭を下げるのに、「連れが居るはずなんスけど……」と言うと即座に奥から声。
「あ!リョウくん!おーい!」
シックな雰囲気ぶち壊しなその大声に、涼人は少々辟易としつつも、表情を変えずに言う。
「あぁ、居ました」
「かしこまりました」
同じく表情を変えずに一礼したウェイターに案内されて、涼人はマダムやムッシュの間を歩いていく。
「よぉ。菊っち」
「ははは、君が一番のりだよ。早いね?」
「まぁ、な。聞きたい事もあったし」
頬杖を突いてニヤリと笑って言った涼人に、菊岡は一瞬驚いたような顔をすると共に、少し面白がるような顔で笑った。
「へぇ。何かな?」
「ん。なぁ、菊っち」
涼人は特に思う所も無さそうに、それを聞いた。
「“特別国家公務員”って暇なの?」
「…………」
その言葉に、菊岡の口の端がピクリと引きつった。
次いで笑顔が苦笑に変わり、頭痛そうに額を押さえる。
「ちょっと早くないかなぁ?」
「うははは!ま、俺は俺なりに情報源有るしな。つーかお前が彼奴紹介したんだろ?カズには教えなかった癖して」
爆笑しながら言った涼人に、菊岡は「あー」と言いながら後ろ手に頭を掻く。
「まあ気付くよねー。じゃあそっちの事もあの人に聞いたのかい?」
「当たりは付けてたからな。素直に聞いたら素直に答えてくれたぜ?変わりに飛んでもねーサプライズが帰って来たけどな。アレもどーせお前の仕業だろ?」
呆れたような、しかし半ばイラついたように涼人が言うと、菊岡は白々しく両手を上げた。
「わぁ、暴力には出ないでくれたまえ。店にも迷惑だしね」
「当たり前だ。……で?何のつもりだてめぇら、彼奴と何企んでやがる」
言葉の後半は、低く、脅すような言葉だった。その言葉に菊岡は素晴らしくにこやかに笑って、上げた両手をヒラヒラと振る。
「ははは。企むなんて人聞きが悪いよ。確かに協力はしてもらってるけど、何も悪いことなんかしてないさ」
「ほざけ。彼奴が関わってる話がまともな話しなわけ有るかってんだよ。それぐらい――」
「“俺は身を持って知っている?”」
「…………!」
菊岡の一言と共に、涼人は大きく目を見開いた。いつの間にか腕を下ろし、両手の指を胸の前で組んだ菊岡の目は、光の反射で、真っ白になったメガネの向こう側にあり、その表情を読み取る事は出来ない。
「僕らが何をしているか、すまないけど今は教える事は出来ないんだ。大丈夫……何れ、手伝って貰うときも来るからさ。その時の安全は、僕の肩書きに賭けて保証するよ」
「……そうかよ」
白く光を反射する眼鏡の片側からその瞳を覗かせて、菊岡はにこやかに笑った。その瞳は明らかに、「何かを知っている」事を、涼人に訴えかけてきている。
これ以上聞いた所で、無駄な話だろう。そう判断して少し息を吐き、涼人は黙った。
「納得して頂けたみたいで何よりだよ。さて、みんなも来たようだ」
「…………」
黙り込むリョウの後ろで、店の入り口が開く音が響き……
「おーい!キリト君、こっちこっち!!」
再び菊岡の、雰囲気をぶち壊す大声が響いた。
――――
「なんだよ天松、お前カズ達と一緒だったのか」
「うん。すぐ其処でバッタリ!」
和人、詩乃、そしてアイリこと天松美雨が揃い、菊岡と詩乃、美雨の自己紹介と挨拶を一通り終えて注文を済ませると、開口一番に涼人がそんな事を言い、美雨はコクリと頷いて返す。気のせいかも知れないが、アイリの時と比べると大分大人しいような印象を受ける。まあその代わりに低い背丈の中で身長に行く分の栄養を全て其方に取られたのではないかと思うほどデカい胸部が充分に自己主張しているが。
と、別にそれに対してではないだろうが、不意に涼人の右前に美雨と隣り合って座っていた詩乃が、不機嫌そうに和人を見て言った。
「あ、そうだ。りょう兄ちゃん、ソイツに常識を教えておいて」
「は?」
「おい、おいシノン!」
行き成りの発言に何の事か分からず、涼人は首をかしげる。
「なんだ藪から棒に」
「あ、いや。兄貴」
「そいつ、私の事迎えに来るって言って、学校の前でバイク止めて待ってたのよ」
「……はぁ?」
詩乃の発言に、涼人は素っ頓狂な声を出した。
考えてみていただきたい。自分の学校の校門目の前に、バイクを止めたまっ黒黒すけな男が居たら……まあ普通は引くだろう。
「カズ、お前なぁ……」
「いや、別にそう言うつもりは無かったんだって!只その……高校にも行かなかったからそう言う知識に疎かったと言いますか……」
「中学には行っただろうが。お前がっこの校門前にバイク止めた黒ずくめが居たらどう思うよ」
言うと、和人は少し考え込むように虚空をみた後、俯いて後ろ手に頭を掻いた。
「それは、まぁ……怪しい奴ですね。ウン」
「その怪しい奴だったのよ。さっきのあんたは」
「ったく、少し考えりゃ分かんだろうがよ……」
「悪かったよぅ……」
立て続けに責め立てられた和人はがっくしと行った様子で肩を落とし、涼人は額に手を当ててはぁ……と溜め息を吐く。
と、ほわわんと笑いながら美雨が言った。
「三人とも、仲良しだねぇ。二人共涼人君の弟妹分だし、当たり前なのかな?」
「そう?少なくともコイツには今怒ってるんだけど」
「悪かったって……勘弁してくれ本当に……」
益々肩を落とした和人を見て、ひとしきり虐め倒した事に満足したのか、詩乃はクスリと笑うと肩を竦めて言った。
「ま、もう良いわ別に。二度目は無いだろうし」
「寛大なご処置に感謝します……」
頭を深々と下げたキリトに少し吹きだした時だった。
華奢なワゴンに幾つもの皿と食器を乗せて、先程引っ込んだウェイターが戻ってきた。カチャリと言う音一つ立てずに並べられ、菊岡の手振りで食べるよう勧められると同時に、美雨の眼が輝いた。
「頂きま~すっ!(はぐっ)……ん~~!」
自らが頼んだ季節のフルーツタルトを口に運んで一秒して、美雨は頬を押さえながら体をくねくねさせ始めた。こういう所は成程。確かにアイリの物だと、涼人も詩乃も素直な感想を内心で漏らす。
そんな美雨を見て微笑を浮かべつつ、詩乃は目の前にある赤いソースの掛かった白いチーズケーキを一口、口に含む。濃縮したようなチーズの味が口の中にさっと広がるとともに溶け消え、驚きつつも更に一口。さらに一口と食べている内に、何時の間にか半分ほど食べてしまいフォークを置くと紅茶を一口。ほのかなオレンジの香りと共に口の中に鮮やかな風味を残すそれを飲み込んでから、思わず。と言ったように詩乃は呟いた。
「……美味しいです」
「ほんと……こんなにおいしいケーキ食べたの始めてかも!」
「ははは。まぁ、本当なら美味しい物はもっと楽しい話をしながら食べたいものなんですけどね。また今度付き合って下さい」
嬉しそうに笑ってそう言った菊岡に、少し詩乃は戸惑う。
「は、はあ」
「あ、詩乃、きっとこれナンパだよ!」
楽しげにそんな事を言ったアイリに、詩乃は少し目を向いて慌てる
「ち、ちょっとアイリ!……じゃなくて、ええと」
「美雨で良いよ~。女の子はみんなそう呼ぶしね」
ニコニコと笑ってそう言った美雨の顔を見ながら詩乃は一瞬戸惑ったように言葉を詰まらせた。
下の名前で呼ぶと言うのは……何と言うか、距離が近すぎる気がしたからだ。詩乃の知る限り、名前同士で呼び合うと言うのは、在る程度女子としては近しい中の人間の身が行う物であって、そう言う人物が極端に少ない彼女は、そう言った経験が余りなかった。
しかし……
「……?」
奇異も、悪意も全く見えない。まるで清水のように澄んだ、そして真っ直ぐな瞳で自分を見ながら、コテンッと首をかしげた美雨を見ていると、詩乃は不意に自分がそんな事を考えているのが、馬鹿馬鹿しく思えてしまい、思わず吹き出した。
「え、なんで笑うの!?私の名前なんか変かな!?」
「別に、そう言う事じゃないけど……分かったわよ、美雨」
「はーい!」
「(ガブッ)…………」
元気よく返事をしたアイリに苦笑しながらもう一口紅茶を飲もうとして、不意に涼人と目が合う。自身が注文した五つのケーキよりも先に軽食のBLTサンドにかぶりついて居た涼人は、少し前から此方を見ていたようで、詩乃と目が合うと、ニヤリと笑って再び食事に戻った。
「…………」
それがどういう意図の笑顔なのか、何となく分かった気がして、詩乃は少し気恥ずかしくなりつつ、紅茶をもう一口飲んだ。
ちなみにキリトはと言うと、黙々とモンブランの金褐色の山を切り崩していた。
────
さて、少しの間食事を楽しんだ後菊岡の口から現時点までで分かっている今回の事件の内容が語られ出した。
といっても、それはほんの四十時間前に終結したかの事件に対する涼人達の知らない部分……特に、動悸や、新川兄弟の価値観等に対する補足の多い物で、トリックや実行の手順に関しては幸か不幸か個人情報の盗み取り、狂気の用意、タイミングや侵入の方法に至るまで、涼人や和人が推測した物とほぼ同一だった。
ならばその動悸や、彼らが其処に至るまでを軽く纏めると、つまりはこういう事だ。
元々、恭二の兄である新川昌一、涼人や和人の言う所の赤目のザザは病気がちで、中学卒業まで入退院を繰り返し、高校にも一年遅れて入学したらしい。そのため、息子を後継ぎにしたかった父親は、早々に昌一を後継ぎにする事を諦めた。と言えば聞こえはいいが、実際の所は見限った。と言った方が正しいだろう。
そして同時に、その役目を、父親は恭二に与えたらしい。まぁこれも言い方を変えれば、押し付けた。と言う事が出来るが其処は敢えて言及しない。
父親は、恭二には家庭教師を付け、自ら勉強を教えるなどした反面、昌一に対しては生活費を与える等親としての最低限の義務を果たす意外、一切帰り見なかったらしい。
結果として言うなら、昌一は期待されない事で、恭二は逆に期待されることで、人生レベルで追いつめられていったのだ。
ただだからと言ってこの二人の兄妹仲が悪かったかと言うと……そうでもない。
初め、MMORPGを始めたのは昌一の方だったらしい。所謂逃避行動の一種として始められたその行動は、すぐに弟である恭二にも伝播した。
そうして、昌一はSAOに捕らわれ、二年と言う長い昏睡状態に入るのだが、現実に生還した昌一を、恭二はある種、英雄視したらしい。
そして、自宅に戻ってから、恭二に対してのみ、自分がSAOで行った事……すなわち、殺人者として恐れられた彼を語ったらしい。
恭二に曰わくその頃の恭二に取って現実と仮想の狭間に有るようなその話しは、「気持ちの良い」類の話だったらしい。
この先は恭二自身は明確には名言しなかったらしいが、上級生からの恐喝や成績の低下による強いストレスを受けていた恭二にとっては、確かに自分の話しには解放感や爽快感を感じただろう。と昌一も話していたと言う。
さて、二人はその後、死銃としての計画と実行を行うわけだが、そのキッカケとなったのは例のボロマント……《メタマテリアル光歪曲迷彩》付きマントを手に入れた時なのだと言う。
日本円で三十万ちょっとのそれを父親から与えられていた生活費で購入した昌一は、初めは、プレイヤーを気付かれずに追跡していくのを楽しんでいたらしい。
しかしそれがやがて独りのプレイヤーが総督府の端末でリアル情報を入力し始め、思い付きで昌一が双眼鏡を使った時、大きく意味合いの違う行動へと変化した。
其処からは、まるで連鎖パズルのような偶然性と必然性の絡み合った出来事の連続だった。
昌一がそのまま他人の住所の盗み見を続け、恭二がゼクシードのせいで自分のGGOにおけるキャラ作成が行き詰っていると昌一が洩らし、
偶々昌一が手に入れた十六人の個人情報データの中にゼクシードの物が有り、そうして、まるで言葉遊びのように、少しずつ机上のハードルがクリアされて行き、やがて出来あがったのが、死銃計画だった。
「バーチャルとリアルの境に。ってか」
「ある意味で、ザザはその場所に今も居るのかもしれないな……SAOでも、これはゲームだから。と言いながら彼奴は本当に人が死ぬと知ってるからこそあそこまで殺人に魅せられてたんだ。言ってしまえば、彼奴にとっては自分にとって都合の悪い部分だけがリアルじゃない物だったんだろうな……」
涼人の言葉に、和人が考え込むようにしてそう言った。
「現実が、薄まる……か」
呟く和人に、菊岡は興味深そうに聞いた。
「ふむ……君達の現実は、どうなんだい?例えば……キリト君とか」
「……多分、いや。あの世界に置いてきた者は、存在する。だから、俺の現実の質量は、多分少しは減少している……と思う」
苦笑交じりに言った和人の目を見ながら、菊岡の眼鏡がきらりと光った。
「戻りたい。とは思うかい?」
「聞くなよ。そう言うの、悪趣味だぜ」
「……そうかなぁ?」
「え?」
和人の言葉に反応するように、高めの声が響いた。美雨だった。
青い眼鏡の向こうで少し悪戯っぽく微笑みながら、彼女は滔々と言葉を紡ぐ。
「私達の現実の質量が減少してるなんて事、無いんじゃないかな?……だって、VRであれリアルであれ、どんな世界でも私は常に一人しかいないんだもん。SAOの中で感じた悲しさも、後悔も、GGOの中で感じた怖さも、嬉しさも、楽しさだって、全部今の私の中に残ってるよ?……なら、きっとどんな世界を旅しても、其処に質量を置いてくるなんて出来ないんじゃないかな?私達の現実は、私達が今此処に居る場所にあるんじゃない?」
「……そうね」
コテンッ首を傾げた美雨に同調するように、詩乃が言った。
「仮に今いるこの場所が、実はアミュスフィアの作った仮想世界だったしても……私にとっては此処が現実。きっと、そう」
「……まぁ、そもそも魂にも記憶にも、質量付けて何て考えるの面倒だしな……経験値の蓄積は、本人に一括。って事で良いだろ」
最後にニヤリと笑った涼人がそう言うと、和人は少し呆気にとられたような顔をして言った。
「そうか……そうだな」
そうして、ニヤッと笑うと、菊岡の方を見る。
「今の、ちゃんとメモっとけよ?この一連の事件で唯一の、価値ある真理かもしれないからな」
「えへへ~」
「離れなさい」
どさくさにまぎれているつもりなのか照れたように笑いながら詩乃の方にくっついた美雨を、詩乃が引きはがした。
────
さて、話は、事件概要の話から、死銃の共犯者の話へとなっていた。
「さて、それで、死銃は結局、三人の人物を標的に選んだってとこまで話した訳だけど、此処では前の二件とはトがって大きな障壁が有った。BoBでは実行役と死銃役、双方の連絡が取れないから、射撃時間を一致させるのが困難だった。それを一応彼等はライブ中継で解決したわけだけど……」
「移動の問題があったわけだよな……」
口をはさんだ和人の顔は少し苦々しげだ。
「そうなんだ。ターゲットになったのは昌一の自宅から近い三人だったんだが、天松さんの住む品川区二葉と、ペイルライダーの住む大森はすぐ近くでは有るものの、朝田さんの住んでいたのはずっと離れた文京区湯島だからね。しかも死銃役をそれまでやっていた恭二が、その時に限って実行役に固執したんだそうだ。昌一はスクーターを持っている物の、恭二には運転は出来ない。だから、昌一は新しい仲間を計画に加えた。名前は……金本敦、十九歳。昌一の古い友人……というよりも……」
そこで、菊岡はちらりと涼人と和人を見た。
「SAO時代のギルドメンバーだったようだね。キャラクターネームは……《ジョニー・ブラック》」
「オーイ、やっぱ彼奴かよ……」
「…………」
涼人は呆れたように額に手を当て、和人は真剣な顔でテーブルを睨む。
「その様子だと、二人とも聞き覚えがあるみたいだね」
「まーなぁ。向こうに居た時もしょっちゅうザザと一緒にみかけてたし、やたらうるせぇ奴だったからよく覚えてんよ。ったく、つーか彼奴とタメとか……精神年齢で年齢書き直せマジで」
大層だるそうに言う涼人の横で、和人は苦々しげな表情をする。
「あの頃も、何人ものプレイヤーを襲い、殺した奴だ……。畜生……こんな……こんなことなら……」
「やめとけ」
和人の発言を、途中で涼人が遮る。
みると、椅子に深く腰掛けたままの体勢で、涼人は和人の顔を正面から見ていた。その方をすくめながら、涼人は言う。
「今更言った所で、何にもならねぇよ。それにな、あの時そうしなかった事に関しちゃ、個人的にはお前に賞賛送りてぇくらいなんだ。そう卑下にするばっかりなもんでもねぇさ」
なっ?と言って二ヤリと笑った涼人に和人は泣き笑いするような表情で苦笑しながら返した。
そうしてもう一度真剣な表情に戻ると、再び菊岡に向き直る。
肩をすくめて、涼人が尋ねた。
「それで、ジョニーの馬鹿は何ていってんだ?」
「それなんだがね……彼は、まだ逮捕されていない」
「あぁ?」
「朝田さんのアパート近くの交番に、恭二が出頭して、更にその四十分後には昌一も身柄を拘束された。でもその昌一の供述で更に二時間後に金本の自宅に捜査員が踏み込んだ時には、部屋は無人だったそうだ。ちなみに被害者であるペイルライダーの家から、金本部屋で発見された物と同じDNAの毛髪が見つかっているから、彼がペイルライダーを殺害したのは間違いないだろう」
「…………」
イラついたような顔で黙りこむ涼人に苦笑して、菊岡は黙った。
「で……?んじゃ何か、ジョニーの馬鹿はまだ毒薬持ってんのか」
「そのようだね。昌一も、金本には注射器本体のほかに薬品のカートリッジを二本渡したと供述している。天松さんの家にすら入って居ない以上、使っていない一本は彼の手の中に有るとみて良いだろう」
「ったく、ぞっとしねぇぞ……って、ん?おい、ちょっと待て、天松の家にも入って無いってのはどう言うこった?」
「「あっ」」
気が付いたように眉をひそめて身を乗り出した涼人に、菊岡と美羽は思い出したように声を上げた。
「あっ……って、いや、あじゃねぇだろ。どう言うこった」
「あぁいや、そう言えば説明し忘れていたけど、天松さんの家には、実は実行犯は進入して無かったみたいなんだ」
「はぁ!?」
涼人に素っ頓狂な声に苦笑しながら、今度は美雨が続けた。
「その、実はウチの鍵、あの日だけキーレスじゃなくて普通の鍵使ってたみたいなんだよね……それで、入れなかったみたい」
「いや、みたいってお前……」
そんな下準備もせずに、彼らが計画を実行しようとするとは思えず、涼人は慌てて菊岡の方を見る。相変わらず苦笑しながら、菊岡は言った。
「いや、実は元々、天松さんは標的では無かったそうなんだよ」
「なにぃ!?」
「本来の標的は、《ギャレット》と言う別のプレイヤーだったんだそうだ。と言うか、この名前に君は聞き覚えが有るんじゃないかな?」
「あ?あっ……!」
行き成り聞かれて少し考え、思い出した。
BoBの、予選三回戦。戦艦大和の上で倒した、あのカウボーイハットの男……
「そうなんだよ。元々彼等は、ギャレットの方を狙う予定だったんだ。でも優勝候補であり、BoB本戦に出ない等と言う事は先ず無いと思われていたその彼が、在る女性のような男性プレイヤーに倒されてしまった。つまり……リョウコウ君、君だ」
「つまり、私が狙われたのは、涼人君がギャレットさんを倒したからだったって事ですか?」
其処までは知らなかったらしい美雨がそう尋ね、菊岡は頷いた。
「そうなんだ。どうやらギャレット以外でペイルライダーの家の近くに住んでいて、鍵がキーレス式だったのはアイリこと、天松さんの家だけだったみたいでね。一応一度だけ調査に行くと、どうやらその日天松さんの家には天松さんが一人だった。だけど知っての通り……」
「あの日は旅行で、ウチ、キーレス錠の合鍵が無いから、普段掛けない普通の鍵閉めてたみたいなの……だから入れなかったったんだって」
「いやまて、お前何で自分ちなのにそれ知らなかったんだよ」
「あぁ、それは……私、小学生のころからずっとなんだけど……勝手口から家に入ってるの。それで……」
「家の鍵がその日だけパーフェクトな事になってるのに気が付かなかった?」
「うん……」
「おーい、マジかよ……」
言って、涼人は頭を抱え込んだ。
「えーっと……涼人君、大丈夫?」
「いや……なんつーか……先の引っ込むナイフのおもちゃあるだろ?あれで刺された時みてぇな、ぶつけようのない怒りがだな……」
等と訳の分からない事をのたまう涼人に苦笑して、菊岡は話を続けた。
「あぁ。それとこれは別事件とは関係ないかもしれないけど、リョウ君、君の言った通り、大会に参加していた“キョロ”。問言うプレイヤーを調べてみたんだがね」
「あぁ。どだった?」
涼人が問うと、菊岡は少し資料をよく見るように眼鏡を掛け直しながら言った。
「君の言う通りだ。確かにキョロは、最近幾つかのMMO、大体が殺伐とした雰囲気の物だが……それらで結果を出している。ちなみにBoB時のダイブ場所も……君の言う通りだ。都内のネットカフェだね」
「どーせ、防犯カメラにもフードかなんかで顔映ってねぇんだろ」
心底面倒臭そうに言った涼人だったが、それを聞いてますます菊岡は驚いたようだった。
「その通りだけど……凄いね、どうして其処まで分かるんだい?」
「別に。勘」
「えぇ……」
それ以上何も言う気がなさそうな涼人に諦めたように、菊岡は苦笑して問うのをやめた。
まぁ……単純な話だ。大会後、本戦に参加したメンバーの名簿を見て、ピンと来たのだ。
理由自体は何と言うか、凄まじくくだらない。つまり……
Ryoko
↓
Kyoro
こういう事だ。
『ったく、からかってるつもりかってのあの馬鹿』
はぁ。と小さな溜息をついて言った涼人に気が付いたかどうかは別として菊岡が話を続ける。
「こほん……さて、そう言う訳でそれを一応今朝まで朝田さんや天松さんに護衛が付いて居たのもそれが理由だったんだけど、計画自体既に崩壊している訳だし、恐らくは金本が捕まるのも時間の問題だろう。さて、後の事については……君達の方がよく知っているかな。新川恭二は大会後、朝田さんの家を訪れた物の……直前で、どう言う切っ掛けによってか狂気的なその目的を破棄。正気に戻ったためか自責の念から自殺を図るも、朝田さんの貢献あってそれも直前で踏みとどまらせる事が出来た。直後には新川昌一も逮捕され、金本は手配中。兄弟の身柄は今は警視庁本富士署に在る。長くなったが、以上が事件のあらましだ。何か質問はあるかな?」
「あの……」
「はい?」
声を上げたのは、詩乃だった。本当の事を言うならば、確信を持って答えられるような問いではないだろう事は分かりつつも、詩乃は聞かずには居られなかった。
「新川君……“恭二君”は、これから、どうなるんですか……?」
「うーん……」
菊岡は少し考えこむような顔で、眉をひそめると、眼鏡を指先で上げてから言った。
「新川兄弟は、一応二人とも少年法による審判を受ける事になる訳だけど、何しろ三人も死んでる大事件だ。家裁から逆送されるだろう。そこで精神鑑定が行われるだろうが……これは幸か不幸か……いや、それは正しく無いか。間違いなく幸運だったんだが少しばかり都合の悪い事に、今の新川恭二少年は、自分自身の理性と正気を完全に取り戻している。だから、そこでは引っかからないだろう。当然、自分の罪から出る罰を正面から受け止めなければならない訳でだが……」
そこで少しだけ息をついて、胸の前で軽く手を組むと、菊岡は少しだけ嬉しそうに微笑んで言った。
「これは間違いなく幸運な事に、彼は自分の罪に対して心から反省している。それに、在る程度は同情すべき点もある。“誰か”が、彼の弁護的な立場の証人として立ってくれるなら、裁判官はともかく、裁判員達の判断を温かな物にしてくれる可能性も十分にあると思いますよ。……っと、これを僕が言ったのはご内密に」
「……は、はいっ!」
企むように、あるいは面白がるように笑って、菊岡は言葉を結んだ。
詩乃が焦ったように返事をすると、嬉しげにニコリと微笑んで、時計を見た。
「おっ……と、それじゃ、そろそろ行かなくては。閑職とは言え、雑務に追われていてね。これにて失礼」
「あぁ。悪かったな。手こずらせて」
和人が言うと、詩乃と美雨がぺこりと頭を下げた。
「あの、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「いえいえ。貴方方を危険な目に会わせてしまったのは我々の落ち度ですから、これくらいはしないと。また、新しい情報が有ればお伝えします」
それを聞いてから、涼人が口を開いた。
「ごっそさん」
「あ、うん」
簡潔なその言葉に苦笑しながら頷いた菊岡は、ビジネスバッグにPCをしまうと、そのまま立ち上がり伝票に手を伸ばしかけて……その手を止めた。
「そうだ、二人とも」
「ん?」
「あ?」
「これ、頼まれていたものだ」
言うと、菊岡は二人の前に一枚のメモを差し出した。
「死銃……いや。赤目のザザこと新川昌一は、捜査員がキリト君からの質問だと伝えると、迷わず答えたそうだ。それに加えて、涼人君のメモ。あれを捜査員が読んだ途端、凄まじい形相でそのメモを睨みつけたらしい。それで……二人に対してメッセージを返せと要求してきた。勿論それを君等が馬鹿正直に聞く必要はないし、そもそも被疑者のメッセージなど外部にはもらせる筈も無いので公式には警察内部で止まるものだが……どうする?聞くかい?」
「「…………」」
和人と涼人の二人は、一瞬目を合わせるように互いを見ると、同時に菊岡に向き直り、同時に言った。
「「いや。いい」」
「……そうかい?それじゃ……」
菊岡は胸ポケットから取り出しかけていたもう一枚の紙切れをポケットにしまいなおして、店から出て行った。
────
涼人は、これからとある用事により、詩乃と美雨を御徒町のダイシー・カフェにつれて行くため、車の中に乗せて運転をしていた。
「ねぇ、りょう兄ちゃん」
「ん?」
助手席に座った詩乃に不意に話しかけられ、涼人は信号が変わるのを待ちながら、返事をする。
「新川君のお兄さんに当てたメモって……何書いたの?」
「あぁ?」
「あ、それ私も気になる!」
後ろから顔を出した美雨が元気よくそんな事をのたまい、立て続けに言った。
「赤目のザザを怒らせるって、涼人君、一体何書いたの?」
「んー……」
その問いに、涼人は考え込むように一瞬上向いて……
「別に、大したことじゃねぇよ」
ニヤリと笑いながらそう言って、車を発進させた。
恭二の兄……赤目のザザへと当てたメモ。
その内容は、リョウコウやキリトにとってはごくごく簡潔で、そしてザザにとっては非常に、屈辱的な物だった。
──テメェは此処で幕引きだ。あばよ。三流役者──
────
「……ここ?」
「おう。此処だ」
「何か“隠れ家”って感じだね~」
そんな事を言っている二人に苦笑しつつ、和人がドアを開ける。かららんっと言う音と共に、中から溢れだしてきたコーヒーの匂いと、スロージャズの音に誘いこまれるように中に入ると、オレンジ色の光に照らされた子の温もりを感じる良い雰囲気の空間に、四人は包まれた。
「いらっしゃい」
相変わらずの低いバリトンボイスで彼等を出迎えたのは、カウンターの向こうに立つチョコレート色の肌の巨漢。エギルだ。そしてその後から……
「おっそーい!!」
そのほぼ逆方向に先客として座っていた、和人や涼人、美雨と同じ制服の三人の少女の内、茶色っぽい髪をはねつけた少女が、和人と涼人に向けてスツールから降りながら言った。リズベット……もとい、篠崎里香である。
と、三人の内、もう一人の僅かに茶色がかったストレートヘアの方では無く、肩のあたりまで伸びた、黒髪の少女が見知った顔である事に、詩乃は気が付いた。
「え、お姉ちゃん!?」
「うん。こんにちは。しーちゃん」
可愛らしく微笑んでそう言ったのは、サチ……と言うか、彼女の姉代わりである、麻野美幸だ。隣でニコニコと微笑んでいる少女と共に、床に降りると、アップルパイがどうこうと言っている二人の間に手慣れた様子で割って入った。
「それよりキリト、ほら、ちゃんと紹介してあげないと」
「あ、お、おう。そうだった……」
「あぁ、待って待って!」
慌てたように少し前に出て詩乃の紹介をしようとした和人を、里香が制止した。と、奥の手洗い場が開き、中からもう一人、美羽や和人と同じ制服を着た人物が現れる。
「……げ」
「ふぅ……って、あら、ようやくご到着?」
「はい。先輩もこっちこっち!」
「はいはい」
里香の言葉に駆け寄ってきた人物は、涼人や美雨にとっては特に見慣れた人物……生徒会長事、風巻杏奈だった。
「あれ、アン!?」
「うぉい!なんで居んだよ風巻テメェ!!」
「私が放課後に何処にいようと私の勝手でしょ」
怒鳴るような涼人の声に冷やかにそう返して、杏奈は明日奈の隣に立った。
「それじゃ、今度こそ、キリト君」
明日奈がそう言うと、和人は慌てたように頷く。
「お、おぉ。って言っても、このなかで知り合いじゃないのは、シノンとBoB組とサチ以外の他の皆か。それじゃ……」
和人が涼人の方を向くと、涼人が詩乃の背中を押す。初対面の人物と向き合うと毎度のように這い出て来る怯えを押し殺しながら、詩乃は頭を下げる。
「此方、ガンゲイル・オンライントップガンナーの一人。シノンこと朝田詩乃さん」
「ち、ちょっと!」
不意打ちな紹介の仕方に、小声で抗議するが、和人は気にした様子も無く笑いながら先程のアップルパイ云々を言っていた少女を示して言う。
「そんでそっちが、ぼったくり鍛冶屋のリズベットこと篠崎里香」
「このっ!」
即座に攻撃してきた里香のそれをスルっと回避して、今度はストレートヘアの少女に左手を向ける。
「で、こっちはバーサク治癒師のアスナこと結城明日奈」
「ひ、ひどいよー!!」
微笑みながらも手をぶんぶん振って抗議する彼女に笑いかけながら、和人は涼人の右手を叩く。
「兄貴、タッチ!」
「おうよ」
二ヤリと笑って前に出た涼人が、先ずは美雨を示して言う。
「ま、知らん訳でもないだろうが一応な。此奴、ウチの生徒会の副会長で……切り裂き少女(リッパー・ガール)のアイリこと、天松美雨だ」
「わぁぁぁ!!それもう言わないって言ったのに!!」
明日奈と同じく手をぶんぶん振って抗議する美雨の言葉をからかうように笑い飛ばして、次は杏奈を示した。
「で、此奴は、ウチの生徒会長、まぁ俺と天松の上司の鬼生徒会長……が、実を言うと……「だぁ!言うな!」おっと!」
話途中に飛んで来た杏奈の鉄拳を軽く躱して、そのまま涼人は続けた。
「黒鬼(オーガ・ネーロ)、闇風こと……風巻杏奈だ」
「えっ!?……や、闇風!?」
「あぁぁ!もうっ!!」
言われてしまっては仕方ないとばかりに地団太を踏んで杏奈は引き下がる。が、その眼が詩乃とアウト、やりずらそうに苦笑した。
「この間はどうも、かしらね。シノン」
「え、えぇ……って、まさか貴女までりょう兄ちゃんの知り合い……」
「不本意だけどね」
「ほれほれ、まだ終わってねぇぞ。当然此処まで来て此奴だけ除外はねぇ」
「ふぇっ!?」
涼人が示した先に居たのは、皆の紹介を楽しげに見ていた美幸だった。まさか全員と知りあいである自分が示されると思っていなかったのか、飛びあがって驚く。
「ま、あえて言うのもあれだけどな。所がどっこいこの気弱、誰が読んだか黒魔女(シュヴァルツ・ヘックス)サチ。麻野美幸」
「あうぅぅ……」
「シュヴァ……え?」
大仰……問言うよりもやたらと格好の付いた二つ名と目の前に居る姉代わりの態度がかみ合わず、少し混乱したように聞き返した詩乃に、項垂れた美幸が弱弱しく返した。
「うぅ……お願いしーちゃん、深く聞かないで……お願いだから……」
「あ、う、うん……」
「んで……おっと、忘れるとこだったそんでもってあれが……」
そう言うと最後に、涼人はカウンターの向こうの巨漢を顎でしゃくって言った。
「……壁の《ウォール》エギル」
「おいちょっと待て!昔そんな感じのネーミングを何かの漫画で見たぞ!!」
「お!よく知ってんなエギル!」
嬉しげに言った涼人に、エギルは苦笑しながら大声で返した」
「よく知ってんなじゃねぇ!大体、俺にはママからもらった立派な名前があるんだ」
「あぁ。分かった分かった。此処の店主で何とあの顔で既婚。アンドリュー・ギルバード・ミルズさんだ」
「あの顔では余計だ。始めまして。今後ともよろしく」
渋い顔で涼人に言ってから、深々と頭を下げた巨漢に、慌てたように詩乃と美雨は頭を下げ返した。
「それじゃま、座ろうぜ」
既につなげてあった二つ在る四人掛けテーブルに歩み寄って、和人は椅子を引いた。
詩乃、美雨、里香、明日奈、杏奈、美幸が座るのを待ってから、最後に涼人が座ると、和人がエギルに指を鳴らす。
「エギル、俺ジンジャエールシノンとアイリさん、何飲む?」
「あ、えと、じゃあ同じので」
「私アイスコーヒー!」
二人から帰って来た返事を確認して、和人は付け加える
「ジンジャエール二つ!アイスコーヒー一つ!」
「おれアイスココアな」
「あいよ」
そうして、和人と涼人は、飲み物が来るのを待って、他のメンバーに話を始めたのだった……
────
和人、美雨、詩乃、涼人が自分達の身に起こった事を離し終えるためには、互いが互いの話を補てんし合い、ダイジェストでも十五分は掛かった。
「と、まぁまだマスコミには発表されてないから実名とか細部は伏せたけど、そう言う事が有ったのでした」
言いながら二杯目のジンジャエールをのみほして、和人は椅子にもたれかかった。
「成程ね……ラフコフの残滓……か」
息を尽きながらそんな事を言った杏奈に続いて、里香が呆れたような様子で言った。
「なんて言うか……あんた達兄弟って、よくよく巻き込まれ体質よねぇ」
「ま、今回ばっかしゃ一概にそうとも言えねえかも知れんけどな」
「あぁ、俺の……いや、俺達の因縁、って言うのかな……そう言うものから生まれた事件でもあった訳だしな」
「……そっか」
和人の溜め息が混じった声に、里香が少し気遣わしげな声で呟いた。と、そんな少し暗めの自分の声に上塗りするように、彼女は続けて言葉を吐き出す。
「あーあ……私もその場に居たかったな……死銃って奴に、言ってやりたい事山ほどあるよ」
「それは同感ね。私も、一発怒鳴りつける位はしてやりたい所だわ」
里香の言葉に続くように、杏奈がふてぶてしい声でそう言った。
『命拾いしたなザザの奴』
正直このメンバーの中でも断突で口うるさいこの二人から同時に説教など受けようものなら、涼人としては正気を保っていられる自身は無かった。
と、そんな涼人の思考に気が付いた訳ではないだろうが、不意に杏奈が涼人の方を睨んだ。
「って言うか、それはそうと桐ケ谷君!そんな事が起きてるならなんで弟君伝って私に連絡しようとしない訳!?そんな奴倒すなら一人でもメンバー多かった方が良かったじゃない、おまけにアイリまで危ない目に会わせて!」
「あ、あぁ!?」
「あ、アン……!?」
少し、と言うか普通に怒った口調で怒鳴りつけて来た杏奈に、涼人と美雨が目を向いた。慌てて、涼人は言葉を変えす。
「言えるわけねぇだろ!あの状況でお前に伝えてみろ!お前こっちにすっ飛んで君だろうが!」
「当たり前でしょ!?」
「それじゃ困っから言わねぇでおいたんだろうが!」
「ふーん?それじゃ何?桐ケ谷君は私の心配をしてくれたってわけ?」
そんな訳が無いと言わんばかりに厭味ったらしく言った杏奈に対して、涼人はふんっ、と鼻を鳴らして言った。
「ったりめぇだろ。何言ってんだお前」
「……へっ?」
「……あ?」
面食らったように目を見開いて停止した杏奈に、涼人が逆にテンポをくじかれたように、停止した。
「えっと……あ、そう……ならまぁ……心配してもらった身で言うのも……あれ、なのかしら?」
「……おう?おう」
なんとも妙なテンポになった会話に、少しの間沈黙が降りる。
「…………」
「まぁ、納得したみてぇだし、もう良いか?」
「え?あ、えぇ」
コクリと頷く杏奈に苦笑して、涼人は話を戻す。
「そいつは結構……で、あぁ。ザザに言いたい事。の話だっけか」
「あぁ……まぁでも、今回で最後。ってわけでもないだろうからな。SAOに魂を歪められた人間は……きっと他にも居るはずだ。」
「だな……」
そうして、少し空気が暗くなる。しかし……その空気を、アスナの微笑みと声が打ち消した。
「でも……魂を救われた人だって、きっとたくさん居ると思うよ、私みたいに。SAOを……団長を擁護する訳じゃないけど……いっぱい、亡くなった訳だし……それでも私はあの二年間を否定したり後悔したり、したくないな」
そう言った明日奈を一度見てから、和人はふと美雨を見た。もしこの中で最もそれらに否定を示すとしたら彼女だと感じたからだ。そして明日奈は、その事を知らない。
しかし……和人と目の有った美雨は……意外にも、問言うべきか。微笑みながら、首を横に振った。まるで、「怒って無いよ」と言うかのように。
そうして、アスナの言葉に続くように、美幸が口を開く。
「そう……だね。私も……沢山、辛い事有ったけど……それだけじゃなかったから……」
胸の前に手を置くようにしてそう言った美幸の言葉に、頬を書いた涼人が続いた。
「まぁ……俺も今回は、美幸に助けられたとこ有るからな……あっちでお前とまた会って無かったら、アレだったかも知れねえし……向こうに居たことにも、価値は会ったのかねぇ……」
「きっとそうだよ……きっと」
涼人の言葉をしめくくるように、美羽がそう返した。一瞬驚いたように美羽の顔を見て、涼人は少し苦笑気味に微笑む。
「……あぁ」
「……?お姉ちゃんに助けて貰ったって?」
「ん?あぁそうか、お前は知らねえんだもんな」
詩乃の言葉に気が付いたように涼人は言うと、自分の本戦中、元ラフィン・コフィンの首領だった男との交戦中に、美幸がずっと涼人の手を現実で握って居たこと、その温かさがBoB内の涼人に確かに伝わり、それによってやる気の向上した涼人が力を入れた為勝てた云々。等と言ったことを、美幸の照れたように赤い顔を見ながら、あるいは涼人の少々話しにくそうな顔を見ながら聞いた後、詩乃は楽しげに笑いながら言った。
「へー……」
「「(ニコニコ)」」
「「「(ニヤニヤ)」」」
因みにニコニコしている二人は明日奈と美雨。ニヤニヤしているのは和人、里香、杏奈である。
「って、そんな事あって、それでもまだな訳?」
杏奈が呆れがちな様子で聞くと、涼人が眉を潜めて返す。
「まだ?何が」
「まだみたいだね〜」
「はぁ……」
少し苦笑気味の微笑みを浮かべたままで、美雨がそう言うのに呼応するように、杏奈はため息を吐いた。
ちなみに美幸はと言うと、終止真っ赤なままだ。
と、其処に……
「そう言えば……お姉ちゃん、昔はよくりょう兄ちゃんと手つないでたよね」
「むぐっ!」
「「「「「!?」」」」」
「しし、ししししし、しーちゃん!?」
無為か、或いは故意にか。いやまあ彼女の楽しげな顔を見れば十中八九は後者であると分かったが、とにかく詩乃が更なる爆弾を投下した。
お陰で涼人は飲もうとしていたアイスココアで噎せ、美幸に至っては目を回しながらわたわたとパニクる。
「え!?詩乃それどういう話!?」
「ちょ」
即座に反応した美雨を、涼人は慌てたように制止しようとする。しかし……
「え?朝田さんどういう事?」
「詳しく聞きたいわね」
「だってさ、シノン、kwsk(クワシク)」
「わ、わ、わ」
「だぁ!テメェ等も目ぇ輝かしてんじゃねぇ!」
普段涼人にからかい倒されているのもあって、まさしくここぞとばかりに話に食いついてくるメンバーに、涼人ギャーギャーと喚く。まぁしかし、涼人にからかわれた経験が有るのはズバリ詩乃も同じな訳で……
「どーしようかな」
などと惚けた事を言っている。……しかしである。
涼人の唇の端がピクリと引きつり……若干怒ったような笑みを浮かべた。
「上等だ詩乃、もしバラしてみろ……」
言うと、涼人は凄まじいスピードで携帯のキーを叩き始め……
「こうだっ!」
ピロリン♪
と、おおよそ怪しい笑みを浮かべる涼人の顔には似つかわしくない音が響いた。詩乃の携帯に、メールが届いた音だった。
「……?」
訝しげな顔で、詩乃は携帯を取り出し画面を覗き込む。と……
「……っ!?」
カァァッ!と、みるみるうちにその顔が真っ赤に染まり……
「へ、へへ、変態!変態!!な、なんでこんな事……!?」
彼女にしては随分と珍しく、取り乱した顔でそう喚いた。
「っは!俺が何歳の時からお前と一緒の家に居たと思ってやがる!この位知らねえとでも思ったか!」
「ぐ……」
自信満々の(何を誇ってるのか誰にも分からなかったが)顔でそう言った涼人に、詩乃は悔しげに唸る。
「うわー、何かすごいどうしようも無いもの見てる気がする」
呆れかえった顔でそう言った里香を綺麗にスルーして、勝ち誇った顔で(しつこいが、何を誇って(ry)自分を見る涼人の顔を詩乃は暫く睨んでいたが……やがて深くため息を吐いた。
「はぁ……分かった。言わない」
「宜しい」
「「「「「えぇー!」」」」」
「うるっせぇ!」
詩乃の言葉にその場にいた美幸と涼人、詩乃を除く五人全員が残念そうな声を上げるのに対して、涼人が怒鳴る。実に不満げに、杏奈が言った。
「女の子を脅すなんて……其処まで外道とは思わなかったわよ、桐ヶ谷君」
「やかましい。つーか、お前等が俺をからかうのは良いんかよ」
「当たり前でしょ?」
「ぶっ飛ばすぞ風巻テメェ」
顔をひきつらせながら言った涼人の言葉を肩をすくめて流しつつ、風巻は美雨を見る。
「ねーねーどうしても駄目ー?」
「悪いけど、流石にこれは無理。ごめん」
「うぅ。残念」
心底残念そうに俯く美雨に苦笑して、杏奈は少し微笑みながら言った。
「その様子だと、大丈夫みたいね」
「え?」
聞こえない程度の音量だったのに、聞こえてしまったらしく、詩乃が此方を向いた。
「大丈夫って……」
「あーうん、美雨がかなり興奮してたから、ちょっと心配してたのよ。今話を聞くまでちゃんとはしんじられなかったんだけどね」
さしたる事も無げに言うが、実際の所それなりに気をもんでいた彼女に少し驚いたように詩乃が返す。
「そう、なんだ……意外。闇風そう言う事殆ど言わないのに」
「ま、向こうではね。けど流石にリアルにまで云々いわれたら心配にもなるでしょ。一応知らない仲じゃ無いんだし」
闇風は、GGOに置いてシノンの友人……と言うより、好敵手の独りだった女性だ。ただ実はシノンとしては珍しく、彼女との関わりは他にも有る。
数回だが、ソロでダンジョンに潜って居たときに助けられた事が有るのだ。
GGOを始めたのはシノンの方が遅かったので、彼女からはダンジョンの歩き方やAGI型との戦い方等、多くを教わった。
無論交わした言葉よりは、弾丸の数の方がずっと多いが。
「そっ、か……ありがとう」
別に何もしてないけどね。と言いながら苦笑する杏奈の言葉に暖かいものを感じて居ると、自分の方を見てニコニコしている美雨が目に入った。
「な、何よ美雨」
「うぅん。ちゃんと友達になれそうだな〜って思って」
「っ……」
再び、無意識の内にその言葉に身体が反応して、身が竦むしかし俯き身体を凍らせた彼女の名を、聞き慣れた声が読んだ。
「詩ー乃ー」
「…………?」
その声に導かれるように、恐る恐る顔を上げた彼女の瞳に自嘲気味に苦笑して此方をみている涼人の姿があった。
その瞳は、とても優しい光を湛えながらに自分を見ていて、ふと周囲をみると自分の周りにいる全員が、各々の表情で、しかし同じ光を宿したままで、彼女の事を見つめていた。
そうして、今更ながらに思い出す。彼等は皆、涼人の事も、和人の事も受け入れてきた。この人達ならば、血塗れた自分の手も、或いは……
「よし!じゃーねー……」
そんな期待を胸の内に抱いたことを、まるで読み取ったかのように隣に座って居た美雨が立ち上がり、トテトテと詩乃の前に回る。明日奈と里香が彼女が何をしようとしているかを察したように少しだけスペースを空け、美雨がそこにストンと収まった。
「改めまして!朝田詩乃さん!」
「…………」
どうするつもりなのか分からず呆然としている詩乃の前で彼女は、そう前置くと、あの世界となにも変わらぬ輝くような笑顔で、真っ直ぐに、詩乃に向かって手を差し伸べた。
「私と……ううん、私達と友達になって下さい!」
何の含みもなく、躊躇いもぎこちなさもなく、素直と言う言葉その物を行動に表したかのような清らかさで自分に向けて差し伸べられたその言葉は、自分でも驚く程素直に心の奥底にストンとはまり込み……
「……あ」
「えへへ……」
気が付くと、彼女は無意識のうちに、今までならば必ずこばんだであろう、その手を取っていた。
「…………!」
自分の手を包み込むその手の暖かさを、詩乃は言葉に出来なかった。それ程にその温もりは全くの異質だったからだ。遥か昔に忘れてしまった感触、小学校の同級生に触れるなと言われて以来、長く触れていなかった為に、記憶の彼方に忘れ去られてしまっていた、無機質でない物のそれ。
その感触が、身体の芯の凍りついた部分を、いとも容易く溶かして行く。
そのまま、何秒の間そうしていたのだろう。
硬直したまま美雨と手をつなぎ続けていた詩乃に、涼人が言った。
「さて……そんじゃ良いか?あと一つ、俺らがお前に伝えたい事が残ってる」
「え?」
この上に更に何を?そう思って、詩乃はそちらを向く。其処には予想していたよりも真剣な顔をしている涼人が居て、詩乃もつられて背筋が伸びた。
「……初めに、だ。先ず謝っとく。お前は怒るかもしれん、と思ったが……ここの連中だが、全員にあの事件の事を話した」
「っ!?」
突然の発言に、反射的に動こうとした詩乃がアクションを起こすよりも前に、涼人は間髪いれずに言葉を続ける。
「その上で、全員がこの場に来てる。だから、其処に関しては気にするなとはいわねぇが、せめてこいつ等の気持ちは信じてやって欲しい。頼む」
「え……え……」
頭を下げながらそう言った涼人に、詩乃は戸惑ったように周囲を見た。メンバーの顔には先程までとは違う、緊張したような、しかし、誰一人として詩乃から目をそらそうとはせず、真っ直ぐな目で涼人と詩乃を見ている。それを見て、かすかに、詩乃は頷いた。
「……うん、分かった」
「……ありがとよ」
少し嬉しそうに言った涼人は、しかしすぐに真剣な表情へと戻る。
「その上で、だ。詩乃、俺と美幸……それに、カズと、美雨、明日奈で、昨日、ばーちゃん達のとこ行ってきた」
「えっ!?」
尋ねるように瞳を大きく見開く詩乃に、涼人は続ける。
「あの事件の話をお前の口から聞いてて、俺はどうしても一つだけ納得できねぇとこが有ったからだ」
「納得……できない?」
「あぁ。そうだ」
そう言って、涼人は美幸の方を見る。視線が重なり、頷いた美幸はすぐに立ち上がると、店の奥へと歩いて行く。
「お前にはまだ」
《PRIVATE》と書かれた部屋を、美幸が開く。
「知るべき事と、会うべき人が残ってる」
その部屋には、二人の人物が居た。
一人は、三十代くらいの落ち着いた服装の女性。そしてもう一人は、彼女とよく似た顔立ちをした、まだ幼稚園くらいの少女。
初対面……の筈だ。少なくとも、詩乃はその顔に見覚えは……
『……あれ?』
無い。と思おうとした時、詩乃の頭に何かが引っ掛かった。詩乃に向かって深く一礼し、美幸に促されて、スペースを開けた詩乃の前の席に座ったその二人。見覚えは無い。ない筈なのだが……頭の何処かに、その顔が引っ掛かった。赤の他人の筈だ。ならばこの感覚は一体……
そんな風に詩乃が戸惑っていると、エギルによっておかれたカフェオレと、ミルクを挟んで座った女性が再び深く一礼し、少し震えたような声で言った。
「始めまして……朝田、詩乃さんですね……?私は、大澤祥恵と申します。この子は……瑞恵。四歳です」
やはり、聞き覚えのない名前だった。しかし記憶の何処かに引っかかる感覚に戸惑い、挨拶も返せずに目を見開き続ける。詩乃に、女性ははっきりとした声で、話し始めた。
大澤祥恵と名乗るこの女性が、瑞恵を生む前まで、詩乃と同じ街に住んでいた事。そして、その時、詩乃と母親があの事件に会った、あの郵便局で働いて居た事。
「あ…………」
其処まで聞いて、詩乃はようやく、目の前の女性が誰であるのかを思い出した。
あの日、局員が即座に行動しない事にいらついた犯人の男は、詩乃の母親を打とうとした。しかし、それには少しだけ抜けている部分が有る。
寄り正確には、偶々すぐ近くに居た詩乃の母親と、二人いた女性局員のどちらを撃とうか、迷った様子を見せたのだ。そしてそのうちの一人が、確かに、目の前の女性だった事を詩乃はようやく思い出した。
しかし、其処まで思い当っても尚、詩乃は分からなかった。恐らく、涼人達が昨日学校を休んで、この女性を探しだしたのだろう事は分かる。しかし、ならば、何故そんな事をしたのだろうか?
そう疑問を涼人に投げかけそうになって、しかしそれよりも前に、祥恵の声が響いた。
「ごめんなさい……。本当に、ごめんなさいね、詩乃さん…………私、あの事件の事、忘れたくて……夫が転勤になったのを良い事に、そのままで東京に出て来てしまって……貴女が、ずっと苦しんでいる事くらい、少し考えれば分かったはずなのに……もっと、もっと早く、貴女にお会いしなきゃいけなかったのに……謝罪も、お礼すら、何一つ言わないで……」
彼女の瞳から、涙が零れ落ちたのを、娘……瑞恵が、心配そうに見た。
その頭を撫でながら、彼女は続ける。
「あの事件の時……私、お腹にこの子が居たんです……だから,、貴女は、私と……このこの命を、救ってくれたんです……本当に……本当に、ありがとう……」
涙を流しながらそう言った祥恵の言葉を、詩乃は一瞬、意味ある言語として理解する事が出来なかった。
唯……
「命を……救っ、た……?」
唯、その言葉だけが、頭の中で何度も何度も反射し、反響していた。
──救った
彼女は今、確かに、そう言ったのだ。
命を“奪った”ではなく、“救った”と。
「……詩乃」
聞きなれた、優しい声が聞こえた。
まるで人形のように、上手く働かない頭の命じるままに、詩乃は横に居た涼人へと、その瞳を向ける。
「これが……お前のした全てだ」
「え…………」
「お前が、一つの命を奪って、罰されなかった自分を罰しようとして来た事は、間違った事じゃねぇ。けど同時に……お前のした事は、二つの命を、未来を救ってる……お前は、自分が罰されるべき人間何だと思ってる……でもな、同時にお前は、赦されるべき人間だ」
「赦、される……?」
呟くように漏れたその言葉に、涼人は深く頷いた。
「俺はお前に、自分のした事から逃げるな。償い続けろ。そう言ったな?……同じだ。自分が殺した人間の事は、忘れるべきじゃねぇ。けど同じように……お前が救った人間の事を、考える権利も、確かにお前には有る。だからそう考える事で……誰でもねぇ。お前自身が、お前を赦してやれ。それは間違いなく……お前の権利だ。」
「私の……」
そうして、詩乃は再び正面に目を向ける。
口を開こうとするが、何を言えばいいのかが分からない。と、小さな足音がした。
見ると、瑞恵と言う名らしい少女が、椅子から降り、トコトコと詩乃の下へとやってくる。
母親に、編んでもらったのだろう三つ編み。すこし薄いピンク色に染まった頬と、一切の濁りの無いキラキラとした瞳で詩乃を見上げた少女は、幼稚園か何かの持ち物入れらしいポシェットの中から、四つ折りの画用紙を引っ張り出し、広げて、詩乃に手渡した。
其処には、クレヨンで描いたのだろう。髪の長い女性と、三つ編みの女の子、眼鏡の男性の、三人の絵が有った。
それが誰なのか、それは問うまでも無いだろう。そうしてその上に、黒いクレヨンで描かれた、ひらがなで、「しのおねえさんへ」と言う文字が並んでいる。
詩乃が震える手でそれを受け取ると、ニパッと笑った少女は、たどたどしいながらも、はっきりと、一音一音の、言葉を紡いだ。
「しのおねえさん、ママとみずえを、たすけてくれて、ありがとう」
その言葉は、他の何よりも強く、詩乃の心に響き渡り……他の何よりも温かく、詩乃の心を溶かした。
溶けた心の氷が、水となって溢れだし、瞳から、頬を伝って流れおちる。
胸の内で、水色の髪の少女が、あの世界では有りえない筈の、蒼い蒼い空を見ている。
まるで、晴れた心の内を見るように。
詩乃は、思う。
“生きる”と言う事には、間違いなく、苦しみが伴い続ける。
この現実と言う世界に伸びてゆく先の見えない暗い暗い道は、とても険しい。
けれどその上には、青空が広がり、歩みゆく暗い道を照らしている。
きっと、この世界は、そんな場所だ。
ならば、歩き続ける事は出来る。今の私は、心から、そう思える。
きっと、つないだ手と、涙から伝わる温もりが、私を導き続けてくれるから。
後書き
はい!いかがでしたか!?
やっとついたぁぁぁ!
これにて、GGO編、原作分は終了となります!いやー長かった長かった。
しかし見ての通り、まだAct end の表示は出しておりません。まだもう一話だけ、お付き合い願いたいと思います。
やっぱ最後には、主人公に〆てもらいたいからねw
ではっ!
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