【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
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役者は踊る
第十七幕 「転入生は突然に」
前書き
一話の長さはあまり長くし過ぎると読んでいてダレる・・・しかし書きたい話を全部書いてると話数ばかりが膨れてしまう。悩みどころです
前回のあらすじ:来日のちゅうごく?
いい加減に寒さが和らいできた4月下旬。
そろそろ5月病の足音が近づいてきた頃、一夏の下にセシリアがある情報を伝えに来た。
「転入生?」
「ええ。何でも中国から代表候補生が来るそうですわ」
クラス代表戦以来少しずつ話すようになり、偶にISの訓練にも付き合ってくれるようになったセシリア。
話してみると全然悪い人ではなく、むしろあの一件以来クラスの皆との距離が縮まったりしている。
まぁそれにはセシリアに親鳥を追いかけるように付いて回っている彼女が放つ個性が原因かもしれないが・・・
「ふーん?何で突然その話を?」
「それは・・・」
「お姉さまに変わりご説明いたします!!」
「うおっ!?」
突然セシリアの陰から出現した女生徒。彼女こそがセシリアについて回っている例の“彼女”、峰雪つららさんだ。何でもセシリアに陶酔しているらしく最近は常に彼女にべったり。セシリアは困った顔をしつつも何だかんだで世話を焼いているため「ああ、セシリアさんって優しい人なんだな」というイメージがクラス内で定着している。・・・なお、一部の生徒につららさんに倣って “お姉さま”と呼ばれるようになり、彼女の頭痛の種が増えているという話も聞いたが。
「実は2組は未だにクラス代表を決めていないのです!!よって来月のクラス対抗戦にその転校生が出てくる可能性があるのです!」
「え、てっきりシャルロットさんかジョウさんがなってるのかと思ってたぜ。何で決めてないんだ?」
「何でも後から転入してくる例の生徒さんが参加してないのに勝手に決めるのは良くない、という話になったそうです!2組の人たちはとっても奥ゆかしいですね!!」
「へ、へぇ~・・・」(凄い元気だな・・・何所から湧いてくるんだその活力?)
「そういう事ですわ・・・」(嗚呼、口煩かったチェルシーに今だけは無性に会いたい・・・)
驚くほどのハイテンションに若干引く一夏と頭を抑えるセシリア。つららさんの動力源?多分セシリウムとかそんなのでしょ。ちなみにチェルシーとは彼女の家での専属メイドです。
代表候補生という事は・・・強いんだろうなぁ。俺、勝てるかなぁ?あれから随分マシになったとは思うが、セシリアとの戦いでの惨敗が頭をよぎる。
・・・いや、弱気でどうする。そんな風では勝てる者にも勝てない。
「事情はどうあれあなたはこのクラスの代表ですから、一応伝えておきましたわ」
「頑張ってね織斑君~」
「優勝すれば一組は半年間デザートフリーパスを得られるからね?」
「私たちの求める甘味の為に!」
「責任重大だよ?」
「専用機を持ってる2組と4組には要注意だよ!」
「ははっ、そう言われちゃ無様な戦いは見せられないな!」
(それにしても中国か・・・)
何とはなしに2年前突然中国へ旅立った友人を思い出す。
連絡も取れないため元気にしているかも分からない彼女は、今どこで何をしているのか。
「おーい、一夏!いるか!?」
「?」
「この声は・・・ゆーゆーだねぇ?」
(ゆーゆーってユウのことか?)
「一夏!いるんなら返事してよ!」
慌てた様子で教室に駆け込んでくるユウ。いったい何事だろう。
「何だよユウ?またジョウさんが修行の旅に出たのか?」
「そんなにしょっちゅう旅には出てないよ!!」
本当に修行の旅に出たことあるんかい!とクラス中の心が一つになったがそれはさておき、ユウはかなり焦っているようで、額にはうっすら汗がにじみ出ている。
「いいからホラ、来てよ!一夏もいないと収拾がつかないんだよ!!」
「な、何だよそんなに焦って・・・」
「来れば分かる!!」
むんずと手を掴まれ、そのまま連行される一夏。「きゃー!結章くんってばだいたーん!!」とか「一夏×ユウかユウ×一夏か・・・それが問題よ!」という黄色い声が聞こえたがきっと気のせいである。いや、気のせいであってくれ。
~2組教室~
「 う が ぁ あ ぁ ぁ ぁ ぁ あ ぁ ぁ あ ! ! 」
「ぎゃぁぁぁ!!た、助け――ぐはぁ!!」
「綾部!?大丈夫か、傷は浅いぞぉ!!」
「いやぁぁぁ!誰か、誰か凰さんを止めてぇぇ!!」
「お、落ち着いて話を聞いて・・・わわっ!」
そこには妖怪・津院帝琉が鬼のような形相で暴れていた。茶色の頭髪を振り乱しながらその小柄な体躯を大暴れさせている。その力たるや凄まじく、片手で机を投げ飛ばしたりついでに生徒を投げ飛ばしたりしていた。
あの天才ジョウさんさえ思うように近づけず、シャルロットさんに至ってはISを展開しながら説得を試みている。
果たしてあれは数年前に離れ離れになった親友とよく似ている、声もそっくりだ。恐ろしい偶然もあったものだ。
そう、これはただの偶然だろう。俺のセカンド幼馴染が妖怪な訳がないのだし。
畏れの廃れたこの時代に何故現世に妖怪がいるのやら、余り頭のよい方ではない自負がある一夏は神妙な顔つきでユウを見やる。
「なぁ、ユウ」
「何だ!」
「篠ノ之流は確かに歴史ある剣術だが、流石に妖怪を祓えるかは・・・こういうのは陰陽師に頼むべきだと思う」
「真面目な顔してマジボケ!?違うよ!説得のために連れてきたに決まってるでしょ!!」
「いやだって・・・言葉が通じるかもわからない妖怪相手じゃ俺も自信が・・・」
「 う゛うぅぅぅぅ・・・ 一 夏 ァ ・・・!!」
妖怪がこちらを見る。その瞳には悲しみと怒りに満ちているような気がする。心なしか自分の名を呼ばれたような気もするが、多分きっと恐らく空耳なのは確定的に明らかだ。はて、自分の妖怪の知り合いはいないはずだが。
あ、そうか。妖怪もTVか新聞で俺の顔と名前を知ったのか。最近の妖怪はハイカラだなぁ。
一夏を見て一時的に動きの鎮静化したタイミングを見計らってユウが一夏の背中を押す。
「ほら一夏!今のうちに鈴を説得して!」
「ははは、おまえは何を言っているんだユウ。あの妖怪は確かに鈴に似てるけど、世界には同じような顔をした人が30人くらいはいるって言うだろ?妖怪だってそうかもしれ・・・」
「本・物・だよ!!むしろどこから妖怪だっていう発想が湧いたの!?現実逃避してないで止めるよ!!」
「だって・・・どう止めるっていうんだよ!っていうかアレ本当に鈴なのか!?」
「 グ オ ォ ォ オ オ ォ ォ ォ オ ! ! 」
もう女の子云々以前に人があげちゃいけない雄叫びを上げる鈴。どこぞの暴走した人型決戦兵器みたいである。
昔から見た目以上に強くはあったが・・・ねぇ?流石に何故鈴が此処に?という理由は当たりがついている。
恐らく中国からの転入生が鈴だったということだろう。だが・・・何故怒り狂っていらっしゃるのかが分からない。
ただ、一つだけ分かることがある。どうやら俺はこれからあれを止めなければならないらしい。
マジで体が震えてきやがった・・・今の鈴は本当に怖いんですが!
状況を収拾できずに手をこまねいていたジョウさんが意を決したように足を踏み出す。
「くっ・・・こうなったら止むを得ん!シャル、一夏!ガジェットエクストリームアタックを仕掛けるぞ!!
ユウはその隙をついて縄かワイヤーで取り押さえろ!!」
「合点承知の助だよ!あと技名には突っ込まないよ!」
「良く分からないけど・・・もうやけくそだぁ!!」
「ゴメンね鈴!恨まないでよ!?」
その後、4人の決死の特攻と加勢に来た箒の協力もあって、何とか暴走転入生を止めることに成功した。しかし被害は大きく、2組の教室と2組担任教師の心は廃墟同然と化したのであった。
= = =
さて、ようやく落ち着きを取り戻した凰鈴音こと鈴。未だに暴走に危険があるため特殊ワイヤーで簀巻きにされている。いたずらをした子供を諭すような口調でジョウが鈴に質問する。
「さて、鈴。本当はいろいろ積もる話もあるがとりあえず聞いておく。・・・何で暴れたんだ?」
「・・・っ!だって・・・だってぇ・・・!!」
「「「だって?」」」
涙ぐんだ鈴は魚のようにビチビチ跳ねながら一夏、ユウ、ジョウの3人をキッと睨みつける。
その瞳には先ほどと同じ、怒りと哀しみに満ちている。いったい何が理由でこんな愚行に至ったのか・・・それは。
「あんた達が悪いのよ!!」
「「「・・・・・・???」」」
つまり、どういうことだってばよ?
後書き
漸く鈴の出番が回ってきたと思ったらコレだよ!
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