Fate/stay night 戦いのはてに残るもの
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対面青き槍兵
前書き
槍兵との戦い勝負の行方は……
叔父の衛宮切嗣の死から、早くも十年近くの時が過ぎた。俺と士郎も成長し、穂群原学園に通う学生だ。
この十年近くで、俺も士郎も魔術の鍛錬などを毎日欠かさずやり、そこそこの成長をしたと言えるだろう。
特に何故かは知らないが、武器になるような物の投影はほとんど現物と同じ物を、投影出来るようになっていた。
士郎もそこそこ、投影を扱えるようになってきたが、相変わらず骨子の想定が甘く壊れやすい。
刀剣類は、けっこうもう少し頑張れば本物に迫るぐらいの物が、投影出来ると思うんだがな。
それにしても、昨日遅くまで鍛錬してたからもの凄く眠いな。
「彩雅さん、起きてください」
布団の中で二度寝をしようと思ったら、戸が開き部屋内に声が響く。もう起こしに来たみたいだな。全く眠いのによ。
「衛宮彩雅は今日は休むから、大丈夫」
布団を頭から被り、起こしに来た奴にそう言うと声の主は俺の布団を掴んできた。
「駄目ですよ彩雅さん! ちゃんと学校に行かないと!」
あぁ五月蝿い、耳元で大声で叫ぶな。そして布団を引っ張るのを止めろ。睡眠時間はかなり貴重何だよ。
「分かりました。じゃあ私も今日は休みます」
布団を引っ張るのを止めた声の主は、その場に腰を下ろしたみたいだ。それはそれで困るんだが。
一緒にサボったのがバレたら、虎に何を言われ何をされるのか分からないんだよな。
「分かった、起きる」
布団から出て声の主を見る、紫色の少し長めの髪をし目が多少虚ろな女の子が、何時も通り俺の目の前に座っていた。
「おはようございます。彩雅さん」
「おはよう。……間桐妹」
目の前に座っている女の子の名前は間桐桜、士郎と俺の友人いや悪友? の妹であり一年下の後輩だ。
ちなみに毎朝わざわざ、俺を起こしに来る大変物好きな子である。
「彩雅さん! 昨日ちゃんと名前で呼んでくださいって、言ったばかりですよ」
ずいっと俺の目前まで迫ってきた間桐妹、人をどう呼ぼうが俺の勝手だろうが全く。
しかし妹の機嫌を損ねると、虎に色々チクられるから大人しく、名前を呼んでおくとしよう。
「分かった、おはよう桜」
「はい、おはようございます彩雅さん」
目を擦りながら挨拶し桜を見ると、桜は若干顔を赤くし優しく微笑みながら、俺に挨拶を返してくれた。
ふむ、中々いい笑顔をするようになったものだ。全く、前までの桜とは大違いに見えて仕方ない。
「先輩と藤村先生が待ってますから、着替えたら居間に来てくださいね」
桜はそう言うと立ち上がり、俺の部屋を後にした。さっさと行かないと、虎が五月蝿そうだから行くとしよう。
黒の短パンと白の半袖のシャツを脱ぎ捨て、中に比較的薄い黒の長袖のシャツを着て、その上に制服を羽織りズボンを履いて俺も自室を後にした。
居間に向かうと、何時も通り飯を大量に食べている虎と、それを苦笑いで見ている士郎と笑顔の桜がいた。
何時も通りだが、やっぱりこの風景を見ていると何故か心が落ち着くな。
「起きたか彩雅? 全く桜にあんまり迷惑かけるなよ」
「彩雅ったら、本当に朝は弱いんだからね~」
「どうぞ彩雅さん」
士郎と虎の言葉を聞き流しながら座ると、桜がご飯の入った茶碗を渡して来たので受け取り食べ始める。
「喋りながら話すな虎、行儀が悪い。士郎も余計なことを言うな」
「こーら! 私の事を虎って言うんじゃぬぁぁぁい!」
「落ち着けって藤姉! 彩雅は飯食べてないで止めてくれ!」
「フフ、何時も仲が良いですね」
飯を食っている俺に、虎が竹刀を持って襲いかかろうとしたようだが、士郎が何時も通り抑え込む。
そんな何時もの光景を、桜は笑いながら見ている。騒がしいが、相変わらず何時も見ていて心が落ち着く光景だな。
「うわ、遅刻遅刻!」
騒がしい朝食が終わり、虎は慌てて玄関から飛び出して行く。食べてからすぐ走るのは、身体によくないと思うんだけどな。
「藤姉は何時も慌てて出て行くよな。わざわざ家に来なきゃ、慌てる必要何かないのにさ」
「別にいいだろ。見てて面白いから」
「あんまり面白がって、藤村先生をからかっちゃ駄目ですよ」
虎の少し後に俺達も家を出て学校に向かう。並び方は士郎が左側で俺が真ん中桜が右側という並びだ。
何時も通り、他愛ない話をしながら登校している俺達。特に何事もない日常、……しかし何かな。
士郎と桜の話を適当に返しながら聞いていると、正面に俺達の通う穂群原学園の正門が見えた。
「授業は退屈だ。寝ていたいな」
「サボりはよくないぞ彩雅、また藤姉の説教を聞きたいのか?」
「彩雅さん、よく藤村先生に怒られてるのはサボってたから何ですか?」
「ああ、毎回それで彩雅は説教されてるよ」
「五月蝿い奴だ、眠い時に寝て何が…………!」
そんなことを話ながら正門をくぐった瞬間、身体に妙な感覚を感じた。何だこの妙な違和感は?
「あの彩雅さん、何処か具合でも悪いんですか?」
「……いや、大丈夫だ」
俺の顔色が悪くなった為か、桜が心配したようだが片手を振りながら大丈夫と、とりあえず伝えておく。
この妙な感覚の正体は一体何なのだろうか?
「彩雅本当に大丈夫か?」
「やっぱり何処か具合が悪いんですか?」
「問題ない、ただ眠いだけだ」
見たところ、二人は全く違和感に気付いていないようだ。ただの気のせいなのか、それとも……
考えながら校舎に入り、桜と別れた後俺と士郎は自分の教室を目指し歩いていると。
「おお衛宮に彩雅おはよう」
俺と士郎に気付いた一人の生徒が俺達の元へ来た。名前は柳洞一成この学園の生徒会長だ。
「おはよう柳洞、士郎に用があるんだろ? 俺は先に教室に行ってるからな」
「二人いたほうが都合が良いのだが、何か急ぎの用でもあるのか彩雅よ?」
「別に、眠いから少しでも睡眠を取りたくてね。後は任せた士郎」
「はあ、何でも俺任せはいい加減止めてくれよ彩雅」
溜め息を吐きながら、愚痴る士郎と柳洞を残し教室を目指そうとすると、目の前に赤い上着を着た女子生徒がいた。
「な、女狐! 貴様性懲りもなくまた」
「相変わらずの嫌われようね。おはよう柳洞君に衛宮君」
黒髪ツインテールが特徴の女子生徒の遠坂凛が、柳洞の言葉を笑顔で受け流し俺達三人に挨拶する。
美人で成績優秀の優等生で、学園ではかなり有名だが何故か柳洞は毛嫌いしている。きっと何か秘密があるんだろう。
しかしながら、俺と士郎が彼女の中では衛宮君で統一されているのが、些か納得出来ないな。
「おはよう遠坂、朝早いんだな」
「優等生だから、常に余裕を持って登校してんだろ?」
「別に私は、意識せず普段通りにしてるだけよ」
普段通りねぇ。まぁ俺にとってはどうでもいいんだが、柳洞が常に遠坂に構えているのは何故なのだろう?
「二人共迂闊に話をするな! 女狐の毒牙に掛かるぞ!」
「柳洞お前は五月蝿い、俺は眠いから教室に行くからな」
「そう、それじゃあね衛宮君」
「あんまり居眠りばっかして、藤姉に怒られるなよ」
聞こえた声に返答はせず、手をひらひら振りながら俺は自身の教室を目指し歩き出した。
教室に入りあまりにも眠かった為に、鞄を机の横に掛けた瞬間に机に突っ伏して寝てしまい、起きたら案の定夕方頃になっていた。
「いけねぇ、またやっちまった」
一度伸びをした後外を見てみると、空は暗く予想より時間が過ぎていた。まさか夜になってるとは予想外だ。
鞄を持ち立ち上げりドアに手を掛けた瞬間、何か嫌な予感が全身を駆け巡った。何だ? 何故身体は逃げろと言うんだ!?
ドアから手を離し隠れようと思った直後、ドアが開き朝まで元気だった義弟が胸から血を流し倒れてきた。
「士郎!?」
慌てて士郎に駆け寄ろうとしたが、俺の行く手を真紅の長物? が塞いだ。
「ち、やっぱりまだ居やがったか。一日に二人も殺すはめになるとはよ」
長物の主は全身青いタイツ? みたいな服を着た青髪短髪の男だった。
「じゃあ坊主、悪いが死んでくれ」
長物の正体はよく見ると槍である。先に血が付いているのを見ると、コイツが士郎を殺したのだろう。
青タイツが俺に槍を突き刺そうとするが、ギリギリのところで右に身体を傾け上手く回避した。
「ほう、少しはやるようだな。だが!」
「く!」
先程より早いスピードの突きに反応は出来たが、僅かに左脇腹を掠めた。幸い制服が斬られただけで済んだが。
不味いな。このままスピードを上げられたら、何れ反応は出来ても身体が追い付かなくなる。
そうなったら見えるビジョンは死、このままでは必ず俺はあの槍に心臓を貫かれ殺される。
死ぬ訳にはいかない。切嗣に託された事を成すまで俺は……死ぬ訳には!
「スタート(投影・開始)」
回路を開き、即座に左手に投影で刀を作り出し青タイツに構える。
「ほう、面白れーな坊主。それは魔術だな? ならてめえが七人目の可能性もあるな。だがそんな物持ったところで何分持つかな!」
再び槍を手に向かってくる青タイツ、倒せなくてもいい寧ろ逃げる為に俺は刀を構えたまま、迎え撃つ。
左右上下至る場所からくる、紅い閃光とも言える高速の突きをかする程度に全て反らす。
何とかギリギリ反応は出来る、このままの速度ならまだ何とかなる筈。
「おらおらどうした!? この程度で安心すんのは早えぞ!」
「な…………に!? がはっ!」
何がおきたのか分からなかった、いや見えていたのだが全くと言っていいほど反応出来なかった。
突如早くなった穂先の横殴りに反応出来ず、俺の右脇腹に紅いの穂先がめり込み、そのまま窓を破り外に投げ出された。
「終わりだな坊主」
青タイツが哀れんだ目で、窓から俺を見ている。何て事だ、俺は何て……
あのままの速度を常に保っていた事から、あれ以上の速度の攻撃が出来ないと早計に思い過ぎた。
それが俺の敗因の一つ、もう一つは迎撃ではなく素直に全力で逃げればよかったと言うこと。
「悪い士郎、それに切嗣俺は何も出来ずに終わるようだ」
「じゃあな」
数秒後、窓から出た青タイツの槍が俺の左胸を貫いた。…………本当にすまない切嗣に士郎。
「あららら、全くやらかしてくれるよ」
水晶玉で彩雅を見ていた管理者が、溜め息を吐きながら彩雅の無惨な姿を見て呆れている。
折角転生させたと言うのに、原作が開始した瞬間にサーヴァントにあっさり殺されてしまった。
元の記憶も経験もなくなり、力の使い方もろくに分かっていないのでは、こうなるのも当然だと思われるが。
「また死なれても困るし、さてどうしたものかな?」
うーんと考え始める管理者、そんなこと考えるのならさっさと彩雅に、記憶と経験を返しておけばよかったものを。
「しょうがないちょっと早いと思うけど」
水晶玉に数秒間手をかざすと、水晶玉が赤く発光し数分後元の水晶玉の色に戻った。
「介入はそう何度も出来ない、次は死なないでほしいね」
管理者はそう言うと、水晶玉と横に置いてあった刀を持ち何処かに消えてしまった。
後書き
更新遅れてすいません。次は一ヶ月以内には更新したいと思います。
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