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めだかボックス 〜From despair to hope 〜

作者:じーくw
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第25箱 「いたいっ いたいっ いたいよーーっっ!めだかちゃんっ!!」





























それは校舎の廊下での事……。


「〜〜〜♪♪♪」


不知火が、口笛を≪吹き吹き♪≫廊下を歩いていると、めだかちゃんが歩いているのに気がついたようだ。

「あれぇ? お嬢様ぁ どこ行くんですかぁ?」

いつも通りの効果音♪  “ぽきゅ ぽきゅ ぽきゅ” っと走る。

「………………ああ不知火か 役員募集会で演説を打たねばならんので 南校舎の第4会議室へ向かうところだよ。」

めだかちゃんは珍しくため息を一つそう呟く。

どうやら、あまり乗り気じゃないみたいだ。

「得意の演説!あたしも聞きたいなぁ〜〜〜♪」

不知火はと言うと興味津々のご様子だった。

「私としてはそんな方法で人員を増やす気はないのだがな… 気を遣ってくれた先生方の顔は立てねばならん。」

めだかちゃんは、そうは言うがやはりまだ、ため息がこぼれる……。

「あひゃひゃ♪けど 人吉の奴は生徒会に入る気なんて更々なさそうですけど? そ・れ・に~、劉一も なんとっ! お嬢様から逃げ切れてるみたいだしぃ♪すっごいよね~☆」

不知火は、ケタケタと笑いながら言う。

「………………何だ不知火 私の事が心配なのか?」

めだかちゃんは、センスを構えながらそう聞く。

珍しいものが見れたと言わんばかりだった。

「まっさか!完璧超人の黒神めだかを心配する無礼者なんてこの世にいるわけないじゃないですかぁ〜♪ あっ、そだ! 人吉の奴には聞いたけど、なーんでお嬢様はあんなに≪劉一≫にご執着なんです〜♪」

不知火は、面白おかしく聞いていた。

「ふむ、…あやつは私が長年探している男に似すぎてならんのだ。劉一と言う名もそう。……そして身に纏う雰囲気などを含めてな、確認できてないのは素顔なんだ。……あの前髪が邪魔なんだがな。」

めだかちゃんは割りと本気ムスッとした表情で話す。

どうやら、あの後もコンタクトを取ろうとしたみたいなんだけど、不知火が言うとおり、逃げられてしまっているようだった。

ただただ、劉一には脱帽する。

「へぇ~〜★ でも〜 人吉にも聞いたけど〜 そんなに、お嬢様と仲のよかった幼馴染だったら再会で喜ぶんじゃないかな☆ それなのに劉一ってば逃げてばかりだよ♪ だったらさ~人違いなんじゃないの??」

不知火はケタケタ…っと。

笑いすぎだと思うんだけど。

だけども、なんと劉一のフォローをするとは思わなかったです。


「ふむ… その線もあるとは思う。せっかく私と再会したというのにあの消極的な態度には気になる所だ。私は待ちに待ったと言うのにな。」

なんと言う自信家なのだろう、めだかちゃんは、信じて疑わないと言ったご様子だった。

「あひゃひゃ~~♪ あれじゃない?案外もう本物はくたばったりしてたりして〜♪ごしゅ~しょ~さまって感じで?」

不知火は、そしてなんと言う、ブラックジョークっ!!

勝手に他人を殺すな!っと言いたい。 苦笑

「それは絶対ありえない、あの劉一だからな!私に一言もなく、くたばる奴じゃない!」

またまた…

「たはは……。(っすっごい自信…)」

めだかちゃんの言い方に、流石に不知火も苦笑気味だった。

「でもさぁ〜 勝手にいなくなったんでしょ〜?後ろめたい事あったんじゃない♪例えば…女とか☆お嬢様に内緒で浮気しちゃった~~って事も無きにしも非ず♪じゃないかなっ☆」

ニヤリンッ不知火は笑いながらとめだかちゃんに言う。


「何を言う… 劉一に限ってそんなことあるわけがなかろう………。……………。」


めだかちゃんは信じているようだが……。

当時の記憶が頭の中を過ぎる。

それはもう鮮明に……。


(だが、あやつはこの私の超えるべきほどの器を持つほどの男…… そして… 押しには弱い性格… 頼まれたら断れない。)

「…………………………むっ」

めだかちゃんは、完全には否定できないと言う事に気が付く。

「不知火の言う可能性もあるな。ふむ……。ならば そのあたりも踏まえて、捜索するとするか、これまでの何十倍もの規模を増やしてな………。勿論≪今≫の劉一に対しても……な。」

にやり…とめだかちゃんは、素晴らしい笑顔だ。

僅かに殺気も感じられる………。


「……………にゃはは。(汗ッ)」


不知火も流石にココまで食いつくと思ってなかったのか若干…どころかかなり引いていた。

今のお嬢様には、どうやっても逃げられないんじゃ?とも思っていた。


(ん〜 あたしは劉一がばれないよ〜に、するつもりだったんだけどねぇ〜 これ、ひょっとして 逆効果だった? まっ いっか☆面白そーだし?)

………本当にそう思ってる?不知火ちゃん? 唯劉一の反応を楽しんでるだけじゃないの?っと思ってしまう。この時の不知火の顔を見てみると。



とまぁ とりあえず置いといて………。



某場所では… ≪ある人物≫に悪寒がかなり走っていたそうです… 苦笑



「ま〜それはそれでいいと思うよん☆ でさ!剣道場の件はどうなったんですか?」

不知火は、これ以上の話題は、飽きたといわんばかりに、別の話題に変えた。


「私が戻るまでの間 自主練を言いつけておる。少々きつめにしてやらんとな。前に邪魔もされたことだし、それに一刻も早く剣道少年に戻してやらんといかんからな!」

邪魔された?

「(あっ なっるほどー 劉一縛ってた時かぁ〜 勘違いしたままだし〜)へーーーーー… でもその件なんですけどね そーいや 当初の差出人って一体だれだったんでしょうね?」

「む?」

めだかちゃんは特に問題視してなかったため全く考えてなかったようだ。

「確かに迷惑ちゃ迷惑でしたけど、 使ってない剣道場に不良がたまってたトコで実際困る生徒なんていないはずなのにねぇ〜?」

まあ…普通ならそうだと思います!はい…でも 相手はめだかちゃんです、

「知らん。 そして知る気もない 匿名性がなければ目安箱の意味がないし 私は誰からの相談でも受け付ける。」

そんなの、なんのその!関係ないようです!

そして 不知火がそれを聞くと…

「……じゃあ 例えばあたしのクラスメイトで剣道の腕は全国クラスだけど 正確に問題があって中学時代に暴力事件ばっか起こしていたって過去を持つ日向君が差出人であっても?」

まるで最初っから 既に答えを知ってるみたいな言い方。

でも、それでもめだかちゃんは。


「一向に構わん」


だそうです。

矢でも鉄砲でも持ってこいと言わんばかりだった。

「だったらぁ……」

不知火がウインクしながら、

「あたしの投書でも受け付けてはくれるんですよね♪」

そう言って、投書を取り出し、笑っていた。















場所は変わり。



【剣道場】




タムロしていた……じゃなくっ。自主練習に励んでいた、男子全員が血まみれで倒れていた…


「ったくよ〜〜 高校じゃいい子ちゃんで通したかったんだけどナ〜〜」


そう言って日向は眼鏡を上に上げていた。


「だ… 誰だ…お前は…」


1人が…頭から血を流しながらも…立ち上がろうとしていた。

「僕?僕は真面目な1年生ですよ… 真面目に剣道がしたい、真面目で真面目な男です。」

日向は、そう言い起き上がろうとした男を蹴り倒す。

「だけど聞いてくださいよ! 僕団体行動とか上下関係とか苦手でしてね…先輩とか顧問とか揉めていっつもボコっちゃうんですよ。それで試合でれねーの、」

まあ、間違いなく出れないと思う。

だって…ねぇ… それで真面目?


「ぐっ… それでか… 剣道部休部中のココに来たのか…」

「ピンポーン!ココでなら1人で好きに出来ますからね。でも計算外!立派な剣道場には招かざる先客が!!だから例のバケモン女こと生徒会長に草むしりをお願いしたんですけど いやいやうまくはこばねーもんですねえ!! あっ 助けを期待しても無駄ですよ?今頃あの女は役員募集演説の真っ最中ですから♪」

日向は、用意周到だと思っているようだ。

…でも めだかちゃんの演説後どうすんだろー?

どうやって、誤魔化す?

まあ、いっか………。


………………………………………

………………………………………


1人叩きのめされたの男は…これまで…のことを。

……といってもたった1日だが、

めだかちゃんとの練習を思い出していた。

それは、初めての事だったんだ。

自分達の…初めて頑張った姿を見てくれていた。

こんな俺達にかまう奴なんか教師にもいなかったと言うのに…

心のどこかで、それが凄く嬉しく心に響いてきたんだ。


「ま…まてよ…」


だから、立ち上がる。

この程度じゃ、音を上げない。

生ぬるいんだ!


「勝手なこと…吼えてんじゃねぇよ!たった今思い出したわ!オレは昔 剣道少年だったんだよ!!」


木刀をビシッ!っと突きつける。

それに続いて、全員立ち上がった。

誰一人欠けてない。

あの地獄を切り抜けた同士たちだったのだから。


「オレも…」
「あっ おれもだ…」
「 オレなんか日本一めざすなんて事言ってたよ。」


っといいながら。

曲げない決意を胸に立ち上がった。

めだかちゃんの言った通りに。



「うぜえ…ドロップアウトした奴が簡単に改心して立ち直ろうとしてんじゃねーよ!!」

日向は怒号と共に木刀を構えなおす!

「剣道三倍段ってしってっか!?僕はあんたらの3倍強いって意味だ!」

そして更に弩声を上げ、木刀を振り上げた!





その時だ!



「………簡単に改心しちゃ悪いの?」




日向の後ろに…男が立っていた。

「あ゙あ゙ッ!!誰だ!!邪魔しやがんのは!」

日向は声のした方に振り向く。



「改心する……って簡単なことじゃないよ。だって、それは、今までの事を……弱い自分の事を……認めて、だけど、それでも立ち上がるってことだよ。昨日の自分に負けないように、間違ってた自分を否定して、………それだけ大変な事なんだ。……改心して、立ち直って何が悪い。」



そこには、……劉一が立っていた。

いつもとは違う雰囲気を纏って・


「お前ッ!!劉一!??ってか、いつの間にそこにいたんだよ!!」

日向はまさかの訪問者に驚きつつも、木刀を突きつけながら叫ぶ。


「うん。……不知火の情報通りだ。……ほんと凄いね、的中したよ。 」


そして、劉一は、倒れてる善吉を見る。

頭から血を流している≪友達≫を……。


「僕の友達に何をしてくれてんだ?日向!」


そして、日向を睨みつける、

それは、 冷徹な寒気が走るかのような瞳だった。

当然、善吉を傷つけた日向の事を怒ってるようだ。

普段の劉一からは考えられない雰囲気だった。だが、今の日向は頭に血が上っており…

「うるせぇ!邪魔をすんじゃねぇ!!僕は学園施設を不当に占拠してる雑草どもをむしってやってんだ!正しいのは僕だろうが!!」

吼えながらそう言っていた。

そして、劉一に木刀を振り上げた。

善吉同様、脳天目掛け、振り下ろそうとしたその時!





“ガシッ!”




日向の木刀が止まる。

「ッ!何!? 人吉ィィっ!!」

振り下ろされる寸前の木刀を握り締めていたのは善吉だった。

「無刀取りはムリっと… たりめーか……………。」

それは、どうやらめだかちゃんの技を真似ようしたようだ。

だけど、無刀取りはちょーーーっと難易度高いと思うけどね… 普通に奥義だから。

見様見真似で習得できるものじゃない。

そして、劉一は起き上がった善吉を見て。

「ッッ!!善吉君っ!? 大丈夫ッ?」

驚きながら、心配しながら善吉の方を見た。

倒れていた姿を目の当たりにしてしまったから……。

本気で心配していたようだった。

「ん…?ああ、大丈夫……だ。…………ッ。(善吉…君? この感じは… まさか……ッ!!)」

善吉は、劉一からの呼ばれ方が気になった。

懐かしいこの感じ。

忘れてしまった遥か昔の感覚。

「っと……今は後だ。」

…一瞬考え込んだが、今は考えるのをやめた。

「?」

劉一は、今回ばかりはミスを犯した事に気が付いていないようだった。


「へぇ……劉一の奴は予想外だったけど、お前の妨害は予想してたぜ。でもよー寝てりゃ良かったのによ♪」

日向は後ろに下がり、劉一・善吉どちらにも仕掛けられる位置へと立つ。

たとえ2人相手でもいけると思っている?ようだった。


「さっき…言ってたことだけどよ、お前は正しいよ日向。だけど めだかちゃん………はもっと正しい… めだかちゃんのやることはいつも正しいんだよ。 オレは2歳の頃からその正しさをずっと見てきた。それにな、その事はそこ(・・)の劉一も勿論知ってるはずだ。一緒に見てきたんだからよ!」

善吉は、親指で劉一を指してそう言う。


「うん… そうだね。 僕もそう思うよ… 」


かく言う劉一も、普通にうんうん 頷きながら… そう言う…。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






その答えを聞いた善吉は、心底笑顔になった。

カマかけたんだ。

普段の劉一なら、こんな手にかからないが、あの片鱗を見せた劉一ならばと思って……。

結果は予想以上。

「…やっぱりめだかちゃんは正しかったな・・・ お前… あの・・劉一…なのか?」

「あ゙あ゙……………!!!」

劉一は思わず口元を抑える。

(……しまった! 痛恨の…ミス………。)

まさか、善吉に、いっぱい食わされるとは思ってもみなかったから。



「まあ…それについては後で追求するとして…」



劉一を見た、善吉はめだかに負けないほどのにやけ顔をつくった後、

日向の方をみなおした。

「……ってなわけだ、俺達はあいつの正しさをよく知ってる! 他人のためだの人助けだの高尚な気持ちは持ち合わせていないが。 もしも めだかちゃんの正しさを否定しようってんなら オレはゆるさねぇ!!」

そう言って善吉は、日向の方を睨みつけた。

「…………ケッ お前が許さねーからなんだっつーんだよ!」

日向も木刀を握りしめる。

そして善吉も拳を握り締めた。



2人の間に緊張に包まれる……。




だけど、その緊張感を縫って……。


「善吉君……。随分とカッコいい事言ってなんだけど、ココ剣道場だよ?なら素手よりは剣道しないと。」


後ろで…ちょっとトリップしていた、劉一が再び始動する。

そして、壁にかけてあった、木刀をいつの間にか持って、日向と善吉の間に立つ。


「っておい!オレの見せ場取るなよ!」

「やかましぃ!!それにあれだよ!元々僕のほうが先だったんだだし!そうだよっ!何より 引っかけなんてずるいじゃないかっ!!誘導尋問だ!!」

「はぁっ?? ずりーってなんだよそれ! んなんだったら、それを言うなら、ずっと逃げ回ってた劉一のほうがずっとずりーじゃねーかよ!!」

「めだかちゃんにバレたらどうなるか 身を持って知ってるじゃんか! 僕も知ってるんだ!!」

やいのやいのと口げんかする2人。

随分と仲の良いことだ。

まるで、昔なじみの様な…… 兄弟の様な……。



「……………………………。」



日向はせっかく臨戦態勢に入ったと言うのに…無視されてることに腹が立ったのか、プルプルと震えていた。


「てめーら!!僕を無視するんじゃねーーー!!2人纏めてぶっ倒して!!!」


ぐわーー!!っと殴りかかる!!



劉一は一瞬目を細める。

背後だったけれど、後ろに目が付いているかのように、最短の動きで……。




“ヒュン……”




瞬時に日向の間合いに入る!





“ビシッ!ドガッ!!ッズギャン!!!”





さっきまで…善吉と言い合っていた、劉一がいつの間にか、日向の後ろにいた。

そして、音だけが後から聞こえてくる。

……音速を超えてる??



「がはぁぁぁぁ!!!!」



そして日向は…糸が切れた人形の様に崩れ落ちるように倒れた。




「なんだ…今の…」
「あいつ何かしたのか…?」
「あの女が忍術なら……こっちは妖術使いか…?」



忘れられていた剣道部の皆さん… 苦笑

劉一の技を目の当たりにして、驚いていた。


「妖術って… はぁ… 今のも剣道だろ?基本技だ。《面》《胴》《小手》。それら全ての場所に殆ど同時に打ち込んだ一撃だ。あの速さなら…何が起きたのかわかんねーかもだけどな。通り抜けたって感じ出し。 ……ってか 九頭○閃?」


善吉君解説ありがとう…でも9発もいれてないよ?

自分でも《面》《胴》《小手》って言ってるし。

それに、9発もいったら下手したら死んじゃうんじゃないかな? 


「ふぅ……。 でも 剣道なんて久しぶりだよ。」


劉一は、そう言って木刀を元に戻した。


「ッ…………。」


善吉は…今度は信じられないようなものを見る目に変わっていた。

さっきまでは、冷静に解説できたのに、劉一の姿を見て……。

もう言葉まるでが出てこない。

言いたかった言葉すら……出てこない。

ずっとずっと、言いたかったはずなのに……。





「それで?……あんた達は、自力で保健室にいけるかな?」

劉一は、そう 聞くと皆「馬鹿にするな!」と言った様子だった

流石、一日とはいってもめだかちゃんに鍛えられただけはあると劉一は、感じていた。

ゾクッ…っと悪寒がする。





そして…善吉に肩を貸し、剣道場を離れた。





保健室へ向かう途中だ。

善吉は暫く無言だったが………。

いや、言葉が、よく出なかった。

出てこなかった。

でも……。


「…………なぁ、本当に…劉一…なのか…?」



保健室へ行く間際… 善吉が確かめるように聞く。

搾り出すように……。


「………見逃して…って言っても無理だよね…?《善吉君》」

逆に劉一は聞き返した。

そして、自分を《善吉君》と呼んでいたのは……。

最早確定って事だった。


「……見逃すか。見逃すかよッ!!一体……一体何年お前を探したと思ってんだよっ!!この馬鹿野郎ッ!!」


善吉は力の限りそう言って…

最後には俯いた……。


「善吉……君……。」


劉一は言葉が出なかった。

その両目からは…光るものが、落ちていたから。

「……ッ。違うッ。くそっ… オレはお前に一発重いやつを入れるつもりだったのに。何で……こんなんがでてくるんだ……。」


善吉は…その後も暫く、無言で泣いていた…。

それは傷の痛みなんかじゃない。

きっと……きっと歓喜の涙なんだろう。







そして、数分後。




【保健室】




「……じゃあね、その怪我……先生にちゃんと診てもらってよ?」

劉一は、そう言って保健室を出ようとする。

「待て……。」

善吉は…出て行く劉一を引き止める。

「お前……この後、また消える気じゃないだろうな…?」

確かめたかった。

このまま、いなくなったら……と考えたら怖くて仕方が無かったんだ。

「消えないよ……。何処にも。 それに、僕だって… 悪いって思ってるんだ… でも、めだかちゃんに明かすのはちょっと…心の準備が欲しいだけだよ。」

劉一は、そう言って苦笑する。

その答えに善吉は少し怒る。

「言わねーってんなら!オレは許さねーぞ!知ってるだろ!めだかちゃんだって どれだけお前を探していたと思ってんだよ!!」

善吉の叫び……。

劉一に伝わらないはずが無い。


「言わないわけない… ちゃんと言うよ。『ただいま』って…。だから、安心して……。」


そう言って劉一は軽く笑うと、保健室を出て行った…




そして、劉一が出て行った後、善吉は安心していた。




彼の目は、劉一の目は嘘をついていない目だった。

……それに、そもそも、人を傷つけるような嘘を言う奴じゃないことは一番善吉がよく知ってる。

だけど、まだわからない事もある。

なぜ、あの男が姿を消したのか。

あんな優しい男が……。


「それはまた今度だな。てってーてきに問い詰めてやる!」


善吉はにやけ顔をつくる。


そして。

安心して、横になっていた。

















そして、出て行った劉一はと言うと。

「善吉には…あー言ったけど…やっぱり怖い…なぁ…」

そう考えていた。

でも、善吉の反応を…見ると、やはり罪悪感が劉一を襲う…。

傍にいる資格なんてない…そう勝手に思い、姿を消したのに…そのせいで………。

長年苦しめてしまった。

でも、こんな自分をあんなに想ってくれている事には嬉しい。

本当に……嬉しいんだ。

それに申し訳も無い。

だから……。


「言わないわけには…いかないね… とりあえずは…」


劉一は、そう呟く。





で!あることを思い出した!




「……おっとその前に!日向に木刀返さないと、あれ 多分自分のだと思うし!僕、普通に道場の置き場に片付けちゃったし。」

劉一は、そう言って、木刀を取りに剣道部のほうへ…





ん?現実逃避じゃないよ!!

ほら…あれだよあれ…  苦笑

剣道少年にとっては、木刀って宝じゃん?






「さぁっ…行こっと………。」

すたこらと 剣道場へ向かった。

















そして、丁度その時。

「くそ… 御神劉一… っ無茶苦茶じゃねーか!なんだよ…あれ… 剣道で… 僕を…」

日向は壁にもたれかかりながら、歩いていた。

あの瞬速の3連撃を受けちゃった日向は歩く事が出来るまでには回復したようだった。

「…アイツ……いっつもいっつも、不知火の奴に、服従してんのに… 反則だろっっ!!……だが!」

そう言うと日向は気合を入れなおし、拳を握る、

「絶対に!!このままじゃすまねぇ!! いつか ギッタンギッタンにしてやるぜ!!」

グググ…っと拳を握り締める!!

リベンジオーラをバンバン出す!

その背後で……。


「……ん?いつかって、言わず 今でもいいよ?僕は、」


いつの間にか、日向のすぐ後ろで、劉一が立っていたのだ。

「ひええええ!!おっ おまえ!!!」

日向は思わずびっくりして 後ろに倒れこんでしまった。

「え……っと。僕としては、そこまで驚かすつもりじゃなかったけど……。 まあいいや、はい!これ。」

劉一はそう言って倒れてる、日向に木刀を返す。

「ッツ!!」

武器を、木刀を向けられたと思った日向は一瞬ビクつくが、それは勘違いと言う事に気が付いた。

「……これ 君のだろ?手入れも剣道場にあったやつより遥かにいい。本当に手入れも良くやってるみたいだ。何だか、惚れ惚れしちゃうよ?この木刀。よっぽど剣道好きなんだね?ちゃんと持って帰りなよ。」

劉一はそう言うと日向に背を向ける。

帰るようだった。

だけど……。


「まっ… まちやがれーー!!じょーとーだ!!今からリベンジだぁーー!!」


日向は、そう言って…木刀を振り下ろす!

なぜなら、相手は丸腰!!

今なら!!行けるって思ったんだろう。




でも…




“フサァァァ…………”





その一閃は、劉一の前髪を掠らせた程度で、空を切った…。


「うん…。 ほんとに一撃の早さも踏み込みも悪くないと思うよ。 でもさ、《道》の名がついてる武道をこれ以上汚すもんじゃないよ。日向。」


そういって、日向を見なおす。

何かの達人なのか!!??


「て…てめぇは宮本武蔵かよ!!一寸の見切り!!??」


更に驚いていた…日向君。

完璧に背後を取って振り下ろしたのに、華麗に避けられてしまった姿を見て驚いてしまったようだ。

「はぁ…だれが武蔵?僕 そんな無双じゃないし……、穏やかに暮らしたいだけなんだけど……。 まあいっか、 でも、君には後でめだかちゃんに説教をしてもらった方が良さそうだね?全然、僕より効き目があると思うし。喜んで引き受けてくれるだろうし!」

劉一がそういうと露骨に嫌がっていたのは日向君。



まあ、知らないけどね♪

匿名で目安箱にでも入れておこう!



「さて…、 目的の木刀も返したし…善吉も保健室に。うん、これ以上情けをかけるのは、日向に大して失礼だし… ……よし 今日は帰るかぁ!明日……考えよ……。」



ぐーっと…腕を伸ばす。

明日に伸ばそう。

めだかちゃんとの接触は……。



そして、歩いて出て行こうっとしたその時……。

誰かが………道場入り口、劉一の帰り道をふさがんとするよーに立っていた…。

その姿はわなわな……っと体を震わせていて……。



「え゙………?」

誰が立っているのか。

よくわかった。



「りゅ…りゅういち…………?」



立ってるの、めだかちゃんだ…。

(あれ……?何で?? 何度も…顔を合わせてるし…初対面じゃあるまいし…何この「正体はわかったー!」って感じの空気…?だって……だって、そもそも……僕にはカツラが…って…)

「あ゙ッ!!まさか、さっきの一撃で!?」

そう、日向の振り下ろした木刀は見事にカツラを……前髪を……吹き飛ばしていたんだ。

何か言い訳をする暇も時間も無かった。




「りゅういちぃぃぃーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」



途端にめだか ロケットスタートしたから!!

一呼吸する間もない。

まるで亜音速??




“ドガアアアアアアアア!!!”




「ひゃあああああああああ!!!!!」


抱きつかれながら、劉一が吹き飛んでいったのは言うまでもないだろう…

10m?いや… 道場に当たってなかったら、多分…もっと…飛んでたって思う。



「ばかものーーーー! やはりお前だったんだな!!私は間違ってなかった!何故だ!何故黙ってた!! それに…… いったい…いったい… 今までどこにいたのだーー!!」



めだかちゃんは、劉一を抱きしめながら… ただただ泣き叫ぶ……。





“ミシミシミシ…”

“ミシミシ…”

“ミシ…”

“………ボキ?”



「いたいいたいたいっ!!いたいよー!!めだかちゃん!!」


劉一の体中の骨が悲鳴をあげる……。

でも、 前も…あったなぁ… こんなの…あの時の比じゃないけど…

っと劉一は、薄れ逝く意識の中で………。




(ひええ! 気絶できない!!)




「いたぁーーーーい!!!!」

ひええええっ!!!!!っと叫ぶ劉一くん。

「うわぁーーーーん!!!!」

感慨極まり嬉し泣きを続けるめだかちゃん。




この…パワーアップ版、めだか・鯖折?

それは、暫く続きました。

何せあの時と違い、止めてくれる人がここにいない。

でも、とても痛かったけれど……。

劉一はどこか、本当にどこかで、安堵を感じていたようだった。







 
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