ソードアート・オンライン〜Another story〜
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SAO編
第20話 死闘開幕
AM:11:00
第1層迷宮区到着。
PM:12:30
迷宮区、最上階踏破。
何とか、大きなトラブルも無く、無事に全員がここまでこれた。
その事に、キリトとリュウキは内心安堵していた。どのような事でも、初めてがつく行為は例外なく事故の危険性を内包しているのだから。44人と言う大人数で、決して広くは無いダンジョンを歩いているんだ。突然の奇襲にパニックを起こしてしまえば相応に危険となる。
そして、一歩間違えれば、一気にレイドが崩れかねない事もあるだろう。
この世界において、偶発的なプレイヤー同士の誤爆は、ダメージにはならない。……だが、誤爆はダメージにこそ、ならないが 同仕打ち相手のソードスキルは勿論、通常攻撃も、停止してしまう為、敵前で全くの無防備になってしまう事もあるのだ。
当然、敵前でそんな事になれば非常に危険だ。
特に長モノの武器、槍を装備しているものにはその危険が付きまとうだろう。そこでも、ディアベルの手腕の見せ所だった。
彼は適切な指示を送り、スイッチの効果的な使用。
そして、敵の行動を読んだ攻撃法。後ろで見ていたリュウキも 頷く程のもので、限りなく完璧だと感じていた。それは、日ごろからリーダー職になれていなければとても出来るようなことではない。そんな姿を見てリュウキは緊張を僅かだが解いた。
「心配は杞憂か……」
凡ゆる危険性を危惧していたリュウキだったが、認識を改め、そう言っていた。
彼の、ディアベルの指示の元、安全に、着実にモンスターを狩っていっているのだから。
「……ああ、そうだな」
キリトも始まった当初こそ『盛り上げすぎじゃないか?』と危惧していたのは真に僭越だったと思えていた。あの青髪の騎士にはそのリーダーの哲学があり、もうここに至れば全面的に信頼するのがレイドメンバーとしての義務だろう。
――そして 大人数のレイドは、ついにたどり着いた。BOSSの玉座がある部屋の前。巨大な二枚の扉を見た。
その事実が よりメンバー全体に緊張が走らせた。迷宮区に到着したその時よりも遥かに強い緊張感だ。
「……いいか」
リュウキがレイナの傍に来た。
「うん……」
レイナも静かに頷いた。
「見たところ、細剣のスキル 《リニアー》を多用しているようだが、それはそれで良い。狙いを正確に定められる優れたスキルだからな。 だが、オレ達の担当のルインコボルト・センチネル。BOSSの取り巻きとは言っても決して雑魚ではない。相手も武器を使う。ソードスキルを使ってくるんだ。……武器を使える化物は、どんな物語でも強敵と言うものだろ?」
リュウキはそう話した。
確かに、人間と言うものは頭が良かったからこそ、武器を扱えて……そして強くなっていった。それが相手は亜人種。強度的には人間を遥かに超えている。そいつが武器の使用に長けていたとしたら……侮れないだろう。
「うん」
再びレイナは強く頷いた。
「そして、取り巻き達は、全員鎧も着ている。だから、その部分は攻撃しても、現行の武器じゃ貫けない。貫けるのは……」
「解ってる。喉もとの一点だけ……でしょ。大丈夫」
はっきりとレイナは答えた。『大丈夫』と。このレイナと言う名のプレイヤー。そして、キリトと共にいるプレイヤーの2人は大した手練れだった。ここまでの戦闘を見ていた。
最初こそは確かに素人的な動きだったが、細剣の技だけは目を見張るものがあった。
2人ともシンクロするように放つ《リニアー》の細剣スキル。互いがそれを高めて必殺とも呼べるシロモノに昇華させたのだ。このリニアーは、序盤で覚える技、一番最初に覚える細剣スキルだ。
序盤だからこそ、普通ならあるレベルにまで行くと、そこまで通用できるものじゃないのだ。だが、この2人通じると言う事を体現しているのだ。
「ふふ……じゃあ、大丈夫だな」
リュウキは笑うと前を向いた。
叫び声は扉を透過してしまう為、そこではディアベルが皆に≪勝とうぜ!≫と叫ぶわけにはいかないから静かに扉に手をかけた。だが、その目は言わずとも皆に伝わっていた。雄弁に語っていた。
『勝とうぜ!』と。
重く、そして冷たいBOSSの間に通じる扉がゆっくりと左右に分れ、開いていく。
その先は非常に広い空間が広がっていた。44人、全員が慎重に一歩……一歩と、ある程度進むと空間が一気に明るくなった。
そして、それが合図だったのだろう。
『グルオオオオオオオオオオ!!!!!!!!』
奥の玉座で座っていたであろう、第1層フロアBOSS ≪イルファング・ザ・コボルド・ロード≫が その巨体からはありえない跳躍で飛び掛ってきたのだ。
そして、取り巻きである≪ルインコボルト・センチネル≫を引き連れて。
「全員、攻撃! 開始!!」
『うおおおおおおおおお!!!!』
ディアベルの声が響き渡る。
今ここに、己の命をかけた第1層目BOSS戦が開幕した。
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