魔法少女リリカルなのは~その者の行く末は…………~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
Chapter-1 First story~Various encounter~
number-11 all one's strength
前書き
全力。
この場合は、高町なのは。フェイト・テスタロッサ。三桜燐夜。神龍雅。
なのはとフェイトの手加減なしの最初から最後まで全力全開の決闘は、なのはに軍配が上がった。
始めのうちは、二人はほとんど互角だったのだ。
なのはは遠距離を得意とする砲撃型魔導師。方や、フェイトは近距離を得意とする近接型魔導師。
この組み合わせの戦いは、どちらにも軍配が上がる可能性があった。
砲撃型魔導師は、相手を近寄らせずに遠くから砲撃で封殺するのが一般的なパターンである。これが最も砲撃型魔導師の中で使われる戦法ではあるのだが、近づかれるとなすすべなく墜ちるパターンも多い。
一方、近接型魔導師は自分の持つスピードと近接ならではの物理的攻撃で相手を落とす。例に漏れず、フェイトも遠距離魔法も使えるという若干変則的ではあったが、代表的な戦い方をしていた。
勿論、二人は自分の魔法に自信を持っていた。
◯
なのはとフェイトの戦いは、序盤は砲撃戦。なのはのステージではあったが、お互いに様子見ということもあり、そこまで飛ばすことはしなかった。とは言っても、全力でAAAクラスの魔道士が戦っているのだ。生半可な威力ではない。
中盤に戦況が動くにつれて、近接戦になってきた。
フェイトの近接戦での強さは知っているなのは。必死に距離を取ろうとするが、フェイトのスピードの前では突き放すことも出来なかった。
『サンダーレイジっ!!』
『ディバイン・バスタァーー!!』
フェイトの魔法講師の卒業試験であった雷の高位魔法となのはの高威力の魔法――――現在二番目の威力を誇る砲撃がお互いに命中した。
幸い、二人には怪我がなくバリアジャケットが焼け焦げたような跡がついただけだった。
この時点で二人に限界は近かった。
だが、二人は諦めない。――――負けたくない、この想いが心の内を埋め尽くしていたから。
しかし、互いに残存魔力は10%を切っている。二人は、少し会話を挟むと魔法の詠唱に入った。ここ一番の魔法を放つために。
先に詠唱を終えたのはなのはだった。魔法チャージしたなのはは、フェイトの詠唱を止めるためにダッシュするが、何かに当たると同時に動きを拘束された。設置型のバインドである。
最初にフェイトが詠唱していたのは、このバインドであった。相手の動きを止めるだけでなく、周辺に発生する雷系魔法の威力を上げる高速魔法。
そして、改めて魔法詠唱に入った。
なのはは、悔しさからかもがいて脱出を試みるが、完全に拘束されてしまっているため抜け出すことは不可能だった。
「いいっ!?」
フェイトが詠唱に入っていくにつれてその周りに光球が構築されていく。連射型の大型の固定砲台。それが10,20,30を超えて合計38個。
「な……なにそれ! なにそれ!?」
「これが私とバルディッシュの必殺魔法。弾丸は全て非殺傷設定にしてある。……だから安心して」
「無理! 安心するのは無理!」
一瞬バインドの抵抗を忘れて慌てるなのは。
なのはは平時から、自己の攻撃を純粋魔力攻撃――――即ち、物理破壊を伴わない非殺傷性の攻撃に設定している。物理ダメージ型に変更するのは、無機物や壁を破壊する必要があるときのみである。
だが、純粋魔力攻撃とはいえ、肉体に傷がつかないだけで、撃たれて痛いことと精神的ダメージがあることには変わりはない。
38個もの砲台からの一斉射撃ともなれば、たとえ防御したとしても精神的ダメージ、またその衝撃は半端なものではない。
そんななのはの反応を見てからか、フェイトは降参を促した。
「じゃあ、降参する?」
フェイトは静かに聞いた。内心、こう思っているのだろう。というよりこう返してくれないとがっかりである。
なのはは、気合を込めてフェイトをきっと見つめ返しながら言う。
「それも無理! ぜったいしない!」
その答えを聞いてフェイトは安心した。やっぱりなのははこういう人だった。
最後まで諦めようとはせずに、自分の気持ちを魔法に込めて逃げ出すことなく真正面からぶつかり合っていく。
「そう……じゃあ、そのまま受けて、私の全力魔法」
《Photon lancer phalanx shift》
――――一撃必倒! フォトンランサー・ファランクスシフト!!
4秒間続いた砲撃。
フェイトは勝ちを確信した。いくら非殺傷設定とはいえ、1064発もの雷の槍がなのはに命中したのだ。これで墜ちない筈が――――
「……そんな、どうして」
なのはのバリアジャケットのあちらこちらが焦げてボロボロになっているが、なのはは健在だった。
「……防御魔法の遅延発動……?」
最初にお互いがチャージしたのは、攻撃のための魔法ではなかった。
なのはは広域防御魔法を、フェイトは拘束魔法を。
そしてフェイトをバインドで拘束したなのは。これで切り札発動の条件は整った。
なのはは最後の気力を振り絞って魔法陣を構築した。
深呼吸と共にレイジングハートを掲げ、周辺の空域に浮遊する魔力を収束し始める。
なのはの周囲の空間に次々と桜色の輝きが現れ、なのはが展開した魔法陣に吸い込まれるように集まっていく。
星空から流星が落ちるように、それは集い、輝きを増していった。
《星の光》の名はここから来ている。
辺りに拡散した魔力の残滓を集めることはSランクに相当する。
そんなことを思っているうちになのはのもとに集いゆく流星は速度と量を増し、光球は光を強める。
「集束砲……」
「見てて! フェイトちゃんっ!!」
フェイトのつぶやきをかき消すようになのはが叫ぶ。
拡散した残滓はすでに直径1メートルを超える巨大な光球になっていた。
「うけてみて! これが私の全力全開っ!」
《Starlight Breaker》
巨大な光球がより強く光りを放って、魔法陣の輝きと共鳴する様に閃光を放った。
なのはは残りの全魔力を光球へと注ぎこんだ。
トリガーを引く力さえ残っていればそれでよかった。あとは空っぽでも、この攻撃が通らなければ自分に勝ちなどないのだから。
「スターライト……っ!」
フェイトはあの1メートルを超す巨大な光球の色彩に金色が混じっていることから自分の魔力まで使われたことを知り、ずるいと思いつつも辛うじて右手だけバインドから解放した。
そして、フェイトは必死に、魔力を防御魔法に使う。
再利用の再利用まではできない筈だから。双方魔力ゼロなら勝ち目はある。
目を閉じることなく、フェイトはなのはを見つめる。
なのははその視線に答える。
そこに過去も未来もない。あるのは今だけ。
――――愛機のレイジングハートを振り下ろした。
「ブレイカ―――ッ!!」
なのはの指によってトリガーが引かれ、空から海に向かって一筋の桜色の光が貫く。
フェイトはこの攻撃を耐え凌げば勝てると予想していた。だから、さらに防御魔法を行使。5層の防御魔法の壁を作った。
だが、これ以上ない形での直撃に防御などあってないようなもので簡単に打ち破られ、フェイトを桜色と若干金色が混ざった魔力の奔流が巻き込んだ。
決着。
戦闘時間合計27分15秒。――――なのはの勝ちで幕を下ろした。
◯
なのはとフェイトの決着がついたころ、燐夜は苦戦を強いられていた。機械兵に。
それもただの機械兵ではない。推定魔力ランクSSS。管理局内でも一人いるかいないかの魔力の持ち主。
しかもその場にいるのは、機械兵と燐夜だけではない。
「何故、お前がここにいるんだ」
その他の誰か――――第三者の問いに燐夜は応じようとはしない。
ただ静かに何処からともなく小さな妖精のような人を出して、手のひらに載せて呟く。
「エクレイア、ユニゾン」
「はい、マスター」
そのつぶやきが聞こえたのか、誰かが驚きの声を上げた。
だが、燐夜は気にすることなくさらに呟いた。小さな妖精のような人、管理局でも知っている人は数を数えるほどしかいない『ユニゾンデバイス』と一緒に。
「「ユニゾン・イン」」
燐夜は光に包まれる。
そして、その光が空気に交じって消えるとそこには先ほどよりも髪が長くなって銀髪から若干金髪が混ざり、瞳の色が深紅から薄紫になり、結わえていない紙が風に靡いて揺れる様は、まるで天使のようで。
「行くぞ」
(はい、マスター)
透き通るその声は、逆に聞くものを畏怖させるような力があった。
燐夜の双眸はただ真っ直ぐに相手を捉えていた。
『どうしてまた、戦っているの!?』
双方の間にモニターが現れ、そこになのはの顔が映し出される。
だが、どちらも立ち止まることはない。
今この場にいる者は、全員がSSランク以上の魔力を持っている。
「戦っちゃダメっ!! やめて! 燐夜君! 龍雅君!」
3対1の戦い。
辺りにはAランク相当の機械兵の残骸が無残にも転がっている。それらは燐夜の相手にはならなかった様だが、今目の前で相対している者たちは違う。
燐夜対龍雅とSSSランク相当の機械兵に2体。
過去に類を見ない激戦が今、火蓋を切って落とした。
ページ上へ戻る