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環の理

作者:三島 渓山
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鋼の錬金術師
  中央2






 よっす!オレはエドワード・エルリック、国家錬金術師だ。南部でドンパチした後、人造人間(ホムンクルス)について調べようと再び中央に戻って来たんだ!



 「の筈だったんだけどなあ……」

 「あ、ホークアイ中尉だ」



 そう……オレがのっけからナーバスなのはホークアイ中尉の事なんだよ。ホークアイ中尉がいれば……、



 「やあ鋼の」

 「大佐もいるって事だよな……」



 頭が痛くなってきたぜ……。



 「先日から中央勤務になってな。今日はどうした?」

 「ああ、情報収集に来たんだ。賢者の石と人造人間(ホムンクルス)について調べてんだけどさ」

 「「人を造るべからず」、国家錬金術師の三原則の一つだ。その原則の大元からそんな情報が出てくるものか」

 「そりゃそーか」



 当たり前っちゃ当たり前だよな。しっかし、中央が駄目となると行き場所がないな……あ。



 「ヒューズ中佐に挨拶しに行こうと思ってんだ。中佐元気?」

 「……ああ、元気だ。今日は非番の筈だから会いに行ってみてはどうだ?」

 「じゃあそうするとすっか」



 翻って来た道を再び歩こうとする。



 「鋼の、先走って無茶をするなよ」

 「?ああ、程々にしとくよ」



 珍しいな。嫌味しか言わねえ癖に……ま、気にしないとするか!





 ~~~~~~





 「……いいんですか?あの事を伝えなくて」

 「張本人から聞いた方が良いだろうさ」



 ヒューズは賢者の石に関わったばかりに先日謎の人間?に襲われている。賢者の石に関わるようになったのは間違いなく兄弟の影響だろう。



 「まあ私も詳しい事は知らんというだけでもある。直接関わっているのは犯人とヒューズとシルバーバーグ大佐だけだ」

 「……そうですね」



 さて、仕事場に戻るとしますかね……。



 「……その犯人の事についてですが」

 「うん?」

 「アームストロング少佐の部下がヒューズ中佐殺害未遂の重要参考人として聴取を受けています」

 「本当か!?」

 「マリア・ロス少尉です。本人は犯行を否定していますが」

 「…………」



 ホークアイ中尉から受け取った書類に目を通す。



 「ロス少尉に関する資料を集めろ」

 「どこまでですか?」

 「洗いざらいだ。急げ、だが極秘だぞ」

 「はい」



 どう考えてもこの拘置劇は……茶番だ!





 ~~~~~~





 「あ~かったるい」

 「そんな事言わないで欲しいアルよ」

 「ぐーぐー(気が滅入ります)」



 何で日没後も特命部(ここ)で働いてなきゃいけないんだよ……暇な部署なのに。



 「大佐ー新聞ですー」

 「?」



 ブラックホールから受け取った新聞を見る。



 「えっと……「マリア・ロス少尉を先月のヒューズ中佐殺人未遂事件の犯人と断定!!」……なんじゃこりゃ?」



 犯人の特徴はちゃんと大総統に伝えた筈なのに……まさか?



 「っち、そういう事かよ……」

 「ぐーぐー(?)」

 「どういう事アルか?」

 「ですかー?」

 「全部茶番だよ。軍上層部は真っ黒だ」



 くそ……呆れた奴達だ。国民全員を賢者の石にするつもりか。



 「お前らも犯人の特徴知ってるだろ?」

 「変身出来るって事アルか」

 「ああ。その特技を持つ奴を簡単に探し出す事なんて不可能なんだよ」

 「ぐーぐー(ならこれは可笑しいね)」



 そう、断定が早すぎるのだ。聴取だけでも行動が大きいと言うのに……大総統が秘密裏に動くと言ってた癖にな。



 「どこで情報が漏れたのか……お前らもカマかけたら喋るしな」

 「わっはっは!ワタシに秘密は作れないアルね!」

 「お前に漏れてるという事は上層部は全員知っているだろう」

 「……酷くないアルか?」

 「問題は「全員黒か?」「大総統は味方なのか?」の二つに絞られる」

 「大総統は黒っぽいよー。あんなお爺ちゃんで前線出れるなんて異常だよー」

 「ぐーぐー(何か体の構造が違うかも?)」

 「大総統とは違うグループが行動してるっぽいアル。雑過ぎるアルよ」



 うーん……現段階ではどっちも分からないか。



 「で、この状況下でどう動くアルか?」

 「動かない」

 「ん?」

 「多分少尉は明日には絞首刑か銃殺刑だ。被害者の証言を無視してな。一兵卒の言葉はいくらでも封殺出来るという腹だろうよ」

 「まーねー」

 「下手に動けばヒューズが危ないかもしれん。少佐には悪いが傍観を決めさせてもらおうか」



 私の行動は見られてると思う。ヒューズは体の良い人質故、迂闊には動けない。



 「それにマスタング大佐の部下が慌ただしかった。奴が動くなら私も動く必要はない」

 「人任せだねー」

 「ぐーぐー(ねー)」

 「うっせぇ!さっさとマスタング大佐を調査して来い中華娘!」

 「了解アルよ!」



 うん、これで煩い奴を排除出来たぞ。 



 「今日は二人とも帰っていいぞ」

 「えー?」

 「ぐーぐー(あの子はどうすんの?)」

 「私がここで報告を待つよ」

 「そっかー。じゃー安心だねー」

 「ぐーぐー(それでは)」



 二人ともあっさりと帰って行った。お前達……薄情だな。





 ~~~~~~





 「……派手、だな」

 「そうネ」



 マリア・ロス元少尉が脱走するも、マスタング大佐に殺される。炭屑になるまで焼かれるが歯の治療痕により本人と断定、か。



 「どう見る?」

 「自作自演乙アル」

 「それにしても粗が目立つがな」



 治療痕なんてカルテさえあれば簡単に錬成出来る筈。マスタング大佐程の腕前なら尚更だ。



 「焼死体も偽物でそれっぽく錬成してるんだろうな」

 「そうアルか?」

 「伊達にイシュヴァール経験者じゃないよ」



 何百人もの人間を焼けば、嫌でも詳しくなるだろうよ。



 「ご苦労だった。ボーナス一割増だ」

 「やったアルよ!大佐大好きネ!」

 「はいはい」



 そろそろヒューズ中佐の身を他の場所に移すべきか……軍じゃあ安心できないだろうし。本人と相談してみるか。中華の話を受け流しながらそう考えた。
 
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