久遠の神話
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四十五話 二度目の激突その九
「使いました」
「突きを応用したか」
「そうです」
まさにそうだというのだ。
「そうしました」
「成程な。そうしたか」
「力をぶつける時に」
斬るがその瞬間にだった。
「力を鋭く放ちました」
「それで一点を集中させたか」
「そういうことです」
「俺は力を広い範囲でぶつけた」
それが加藤の力の使い方だった。ここでの。
「そうしたがな」
「そうですね。ですが」
「君は集中させた。俺は拡散させてな」
「その二つの力がぶつかって、ですね」
そしてその結果だった。
「この結果だ。俺も君もだ」
「ダメージを受けました」
「大した傷ではないがな」
だがそれでもだと言う加藤だった。
「面白いそれならだ」
「まだ闘われますか」
「気が変わった」
これが加藤の今の返事だった。
「今はもういい」
「いいってことは」
「帰るとしよう」
そうするというのだ。
「今はな」
「じゃあ闘いは」
「これで終わる。また会おう」
「ですか」
「ではだ」
ここまで話してそうしてだった。
「また会おう」
「はい、じゃあ」
「そして再び会った時にだ」
加藤は剣士として話していく。
「また闘おう」
「そしてその時こそ」
「それは出来ないとだけ言っておく」
そこは断る加藤だった。、
「決してな」
「決してですか」
「俺は次は勝つ」
だからだというのだ。
「必ずな」
「そして戦ってですか」
「最後の一人まで生き残るつもりだからな」
その考えは変わらなかった。そうしてだった。
加藤は己の周りに紫の霧、魔の霧を出してその中に消え去った。こうして彼はその姿を消したのだった。
後に残ったのは上城、そして樹里だった。樹里はすぐに上城のところに駆け寄って彼を気遣う顔で尋ねた。
「大丈夫!?」
「うん、斬られた傷とかじゃなくて」
「そうした傷じゃないの」
「衝撃を受けたっていうかね」
こう言うのだった。
「そんな感じだから」
「さっきの力と力のぶつかり合いで」
「受けたよ」
つまり打撲に近いものだというのだ。先程の闘いで上城が受けたダメージは。
ページ上へ戻る