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久遠の神話

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第四十五話 二度目の激突その七

 その顔で上城を見て言うのである。
「面白い。戦いで重要な要素はだ」
「強さ以外にもですね」
「強さは剣の腕、身体能力だけじゃない」
「勘もですか」
「そうだ。直感もだ」
 ここでは直感と勘は同義語だった。
「それを使ってだ」
「そうしてですか」
「闘うことも大事だ」
「僕は今のこの瞬間まで直感とかは信じていなかったです」
 彼の剣道、そして闘いではそうだったのだ。
「そういうことは全く」
「全くか」
「自分で稽古をして強くなって」
 そして戦っていた。直感に頼らずに自分の腕を磨き強くなることにより戦ってきた、それは確かにその通りだった。
「そうしていました」
「しかしだ」
「何か。急に」
「直感は自然に出る」
 加藤は言いながら剣を出した。突きだ。
 その突きで上城の胸を貫こうとするが上城はそれを身体を左に捻ってかわした。彼は上城のその動きも見て言った。
「今の動きもだ」
「これもですね」
「直感でかわしたな」
「はい、何となくですが」
 相手の目や動きを見たがそれよりも前に感じ取りそれでかわしたというのだ。
「こうさせてもらいました」
「そういうことだ。今度もだ」
「直感ですか」
「如何にな」
 上城は今言った加藤に彼の方からも剣を出した。それは上からの斬撃だった。それで唐竹割りにせんばかりだった。 
 しかしそれは。加藤は右にすっと動いてかわした。
 そこから反撃を出す。上城もそれを受けて。
 また斬り合いに入る。お互いに縦横に繰り出すがそれでもだった。
 二人の応酬は続く。青と紫の火花が飛び散り場を照らす。その激しいやり取りは二百合は続いた。それが三百に達した時に。
 加藤は攻防を続けながら上城に言った。
「前に会った時よりもな」
「前よりも?」
「強くなったな」
 そうなったというのだ。
「前との戦いよりも」
「それなりに鍛錬してきて怪物を倒してきました」
「それでだな」
「はい、そうしてきたせいだと思います」
「しかも直感も備わった」
 それもだというのだ。
「だからこそ余計にな」
「強くなってますか」
「面白い。こうでなくてはな」
 加藤は己の剣にまた魔を宿らせた。そうして。
 その魔で上城を横薙ぎに斬ろうとする。真っ二つに。
 それに上城も刀に水を宿らせて向ける。水と魔がこれ以上はないまでに強くぶつかり合おうとしていた。
 刃と刃がぶつかる。すると。
 二色の光が場を包んだ。その光で。
 何も見えなくなった、樹里はそれを見て彼の名を呼んだ。
「上城君!」
 しかし返事はない。光が瞬く時は永遠に思われた。
 本来ならば違うと感じられた。その瞬きは時間的には一瞬のものだったからだ。しかし今の樹里にはそれは永遠に思われた。
 その永遠の時の中で青ざめる。そして。
 光が消えた時樹里は見た。そこにいたのは。
 二人いた。加藤は立っていた。
 上城も立ってはいた。だが。
 足元がふらふらとしていた。その彼を見て即座にだった。
 樹里は彼の傍に駆け寄ろうとする。だがその前に。 
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