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八条学園怪異譚

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第三十話 神社の巫女その九

「じゃあここは出るけれど」
「あの、まさか」
「またですか?」
 二人は茉莉也に再び抱き寄せられながら顔を曇らせて言った。
「セクハラですか?」
「さっき駄目ですって言ったじゃないですか」
「いいじゃない、これから私のお部屋に来ない?」
 茉莉也は二人の言葉をよそに楽しげな笑みを浮かべてここでも抱き寄せた。
「そうしない?お布団も敷いてるわよ」
「いえ、遠慮します」
「もう帰りますから」
 これが二人の返答だった。
「お部屋には行かないので」
「そうさせて下さい」
「つれないわねえ。それじゃあいいわ」
 茉莉也も無理強いはしなかった、それでだった。
 二人を抱き寄せたままだがそれでも倉庫を出た、そのうえで外で待っていたうわばみと天狗に対してこう言った。
「ここでもなかったわ」
「そうか、ではだ」
「今日はこれでお開きだな」
「飲みなおしましょう」
 まだ飲むと言うのだった。
「またね」
「いや、まだ飲むのか」
「三升も飲んだのにか」
「あれっ、駄目?」
「三升だぞ、いや四升か」
「毎日のことだがまだ飲むのか」
 うわばみですら言うことだった、見ればうわばみのその顔は咎めているものだった。
「わし等もかなり飲んだしな」
「ではいいではないか」
「ううん、じゃあもう寝るのね」
「というかもう寝ろ」
「十二時を回っているんだぞ」
 深夜と言っていい時間だ、それならだった。
「その娘達も解放してだ」
「そうしろ」
「わかったわ。それじゃあね」
 茉莉也も渋々ながら納得した、それでだった。
 二人をやっと解放した、それで言う。
「じゃあ今日はこれでね」
「はい、 二度とセクハラしないで下さい」
「お酒なら付き合えますけれど」
「お酒はいいのね、じゃあ今度飲みましょう」
 茉莉也はそれで我慢することにした。
「そういうことでね」
「今度って何時ですか?」 
 愛実がその時期を尋ねた。茉莉也のあまりもの破天荒さを警戒してのことである。
「それで」
「明日でいいからしら」
「早速ですか」
「そう、明日三人で飲みましょう」
「セクハラしなかったらいいですけれど」
 愛実はこの条件を出した。
「それでお願いします」
「本当につれないわね」
「つれないとかじゃないですよ」
「そうです、私達キスもまだですから」
 聖花も言う、二人共結構必死だ。
「そういうことはどうも」
「駄目なんで」
「そこまで言うのならね。私も巫女の端くれだし」
 その自覚はあるのだった。 
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