吾輩は猫である
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無印
吾輩、温泉に行く 前編
いつものように朝ご飯をたかりに高町家へ向かう。
「さんま~、鮭~、モン〇チ~♪ 今日の朝食はな~にかな~♪」
ネコアルク状態でスキップしながら道を進んで行く。まだ朝7時であるため人が少ない、もしこんな状態を一般人に見られたら一発で警察に通報され、怪しい研究所を調べ尽くされるだろう。本当に早朝で良かったと後で思うだろう。だが、今のカオスは高町家でのまともな朝食を喰うということしか考えられていない。美由希のダークマターを喰ってからまともに朝を迎えてない気がする。
そうこうしてると高町家の玄関に着いていた。
「おっと、この姿じゃなのは嬢達に怖がられかねないな」
ネコアルク状態からどんどん縮んでいきいつもの姿に変えていく。
もし、ネコアルクの姿のまま出て行ったなら、化物として高町家の戦闘民族達に殺られかねん。いや、殺られる。
ただの物理攻撃なら怖くないのだが、あの戦闘民族達なら氣が使えても不思議ではない。それに恭也は話を聞かないからな。きっと「やぁ」と言ったら「Die!!」って返ってくるだろう、こだまでしょうか? いいえ、死刑宣告です。
さて、準備も出来たし、あの空いてる窓から入るか。
「にゃ~」
こんちゃー、朝ご飯をもr―――
「ユーノ君、あーん」
「きゅ、きゅ~」
「あっ、なのは次私ね~」
―――吾輩のいるべき所に黄色の生物がいた。
えっ、何あれ。あの位置っていつも吾輩がいたとこだよね? あの黄色の生物が使ってる皿、なのは嬢が吾輩用に少ない小遣いをやりくりして買ってくれた物だよね? なんであの生物が何食わぬ顔でその皿で飯を喰ってるのかな? かな?
「なのはがイタチを飼いたいと言ってきたときはどうなることかと思ったが、大丈夫そうだな」
「士郎さん、イタチじゃなくってフェレットよ」
「俺はカオスがユーノを食べてしまわないか内心ヒヤヒヤしてるんだが、最近カオスを見ないな」
「どっかで拾い食いでもしてるんじゃないか? 食い意地が張ってるからなクロは」
「たしかに、クロならそこらに落ちてる物を食べそうだ」
「「HAHAHAHAHAHAHA!!」」
士郎さんと恭也が吾輩のことどう思ってるのかよく分かったよちくせう。
き、きっと皿だって動物用として吾輩のを代用したからに違いない。なのは嬢が我輩を裏切るなんてことあるわけない! ……ないよね?
「ん~♪ ユーノ君もふもふだよ~♪ かわいいよ~♪」
「本当になのはったらその子にデレデレね」
「小さいから食費が掛からないのが嬉しいね。クロの場合、人一人分の食費が掛かるからな~、いったいあの体のどこに閉まってるのやら」
「きゅーきゅー」
キーーーーーッ! なによ! なんなのあの黄色の生物は! イタチだかフェレットだか知らんが吾輩の居場所をを奪うのならば、その毛皮を剥いでやろう! もう、きゅーきゅー言えなくしてやる!
吾輩はあの黄色の畜生を殺るために突撃しようとする。
「なのは、そのフェレットのことはいいんだが、クロのことはどうするんだ?」
「クロもモフモフで可愛いんだけど、ユーノ君の方がちっちゃくって可愛いんだもん。最近のクロはなんかもう中型犬くらいになってきて可愛くなくなってきたの」
「なのは……さすがにそれはひどい」
「なんで? ちっちゃい方が可愛いよ?」
うわぁぁぁぁぁぁっぁあああああぁぁん!? あぁぁぁぁんまぁぁぁあぁぁりぃぃぃだぁぁぁぁぁああ!!
なのは嬢に悪気がないってことはわかってるから余計にキツイ。あのイタチ野郎、せいぜい月の出てない夜は気を付けておくんだな。確実に一口で喰ってやるからな! うわぁぁぁぁぁああぁぁん!!
「ってなことがあってだな」
「いや、そんなことを聴いてるんじゃない。私はなんでカオスがさも当然のように私の席に座って、さも当然のように私の朝ご飯を食べてるのかを聴いてるのだ」
やれやれ、これだから美緒は……。
「何言ってんだ? そんなこと決まってるではないか」
「な、なんなのだ?」
吾輩は茶碗をテーブルに置き、美緒にサムズアップして答える。
「い・や・が・ら・せ♪」
「うがーーーーーっ!!!」
今のやり取りで一気に美緒の沸点を超えたのか突然奇声を上げて襲ってきた。しかし、いつもの攻撃と変わらないのでカウンターで吹き飛ばした。
「あびばっ!!?」
向かいの壁にぶつかり、不思議な断末魔を上げて沈んだ。
「カオス、少しは手加減してやたらどうだ? 那美、その醤油を取ってくれ」
「そうだよ、さすがに美緒が不憫でならないよ。はい、どうぞ」
「飯を喰いながら、こっちを無視してたお前らには言われたくないわ。てか、吾輩が美緒の席に座ってもスルーしただろ」
「「「「「寝坊したあいつが悪い」」」」」
「ですよねー」
なんてシンクロだ。皆の頭の中で美緒の位置づけが既に残念なことになってるな。
「手加減をするにしても、最近攻撃に霊力が込められてるから痛いんだよ」
そう、最近美緒が攻撃に霊力が込められるようになった。そのせいで今まで効かなかった攻撃が効くようになり、調子こいて手加減すると予想外の大怪我を負う可能性が高くなった。前みたいに尻尾を引きちぎられたらたまらんしな。
「当然だ、私が鍛えてやってるんだからそのくらい出来てもらわんと困る」
「そのせいで美緒が我輩を襲ってくる頻度が増したんだがどうしてくれる。おちおち日向ぼっこもできないじゃないか」
薫が美緒に霊力を教えたせいか今まで1日2回程度から、1日4、5回も襲撃されるようになった。だがいくら霊力を拳に込められるようになっても、薫ほどの霊力は無いため実はそこまで大きなダメージはない。ただ美緒は常人を大きく逸脱した身体能力の持ち主である。込めた霊力は痛くないが、霊力が込められた攻撃そのものはかなり痛い。ただでさえ高い身体能力が霊力で強化されたことによりさらに凶悪になった。
「それはお前の自業自得も入ってるだろ。陣内のやつをあんなに弄らなければそんな風にはならなかっただろう」
「仕方ない、美緒を弄るのが楽しいのが悪い」
「美緒ェ……」
美緒の朝ご飯を喰べ終え、吾輩は久遠と十六夜と一緒に日向ぼっこへ、那美は気絶した美緒を学校に連れて行く、薫は仕事のようだ。
ああ、平和だ……。
前回はあまりにも残酷な本音を聴いて逃げ出したが、今度こそ高町家で朝食を喰うためにもあの黄色イタチをどうにかしたい。できればモグモグしたいが確実になのは嬢が泣く。その涙で発狂する戦闘民族高町の男性陣。そして切り刻まれる吾輩。
あれ、なんか皆集まってるな。すずか嬢やアリサ嬢もいるし、あの荷物はどっかに旅行でも行くのか?
「温泉楽しみだね!」
「そうね、行くとこは最近CMにも出てたとこみたいだしね」
「どんな温泉があるかな気になるね~」
「早く温泉に入ってのんびりしたいな……」
「ああ、温泉に入りながら熱燗をちびちび飲みたいもんだ」
子供組は実に子供らしい意見を言っている。たいして大人組はあまりにも枯れていた。
「さて、そろそろ行くから忘れ物がないか確認しろよ~」
皆車の中に乗り込んで行く。あの黄色いイタチも含めて……。
おい、俺は呼ばれず、なんでお前はさも当然のように乗り込んでんだよ。
吾輩が黄色いイタチに嫉妬していると、なのは嬢たちを乗せた車が発進した。吾輩は慌ててその車を追いかけ、車の後ろに爪と突き立てて落ちない用に体を固定する。
道路で人とすれ違うたびに人が振り返る。走行してる車に中型犬並の大きさの猫が張り付いていたら誰でも振り返るだろう。
「なあ父さん、なんか音しなかったか?」
「いや、何も聞こえなかったが」
士郎さんには気づかれなかっただけでも結果オーライだ。
それから数時間後、やっと宿に到着した。途中カーブでふり落とされかけたがなんとか無事だ。
「にゃ~」
「あれ、クロ!」
「え、クロ? なんでこんなとこにいるんだろ?」
「もしかして車に張り付いて来たとか?」
「さ、さすがにそれはきついんじゃないか?」
皆が皆吾輩の登場に驚きを隠せないようだ。
「そうだ! クロ~、この子が新しい友達のユーノ君だよ。仲良くしてあげてね」
「きゅ、きゅー(よ、よろしくお願いします)」
挨拶されたからには挨拶で返さんといかんな。
「にゃ~ん、にゃ~(吾輩はカオス、コンゴトモヨロシク)」
「きゅっ?(え、カオス?)」
「とりあえず部屋に荷物を置きに行こう。クロの事もその後で考えればいいさ」
士郎さんが吾輩たちに呼びかける。皆その言葉に従い各々の部屋に向かう。
この黄色いイタチを喰うのは温泉に入ってからでも遅くないな。温泉に浸かりながら考えればいいか。
「申し訳ございません。その大きさの動物は温泉に入ってはいけない決まりになってますのでご了承ください」
チクショォォォォォォォォッォオォォオッ!!!!
今日の食事
さざなみ寮の料理
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