ブリティッシュ=バンド
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第一章
ブリティッシュ=バンド
アーサー=マックローンは名前からすぐにわかる通りケルト系だ、生まれは北アイルランドのある町である。
ジュニアハイスクールの頃からギターをしていてハイスクールの頃にスカウトを受けてロンドンに来た、その時事務所の社長にこう言われた。
「実はイギリスで最高のグループを考えてるんだよ」
「それは俺一人で充分だがね」
「いい自信だな、しかしだよ」
「俺以外に最高な奴がいるってんだな」
紫の目で社長を見る、アイルランドでも滅多にない目の色だ。
「そんな奴がいたら見たいものだね」
「言ったな」
「ああ、言ったぜ」
社長に不敵な笑みで返す。
「そして俺は嘘を言わない」
「わかった、じゃああと三人連れて来るからな」
「三人もいるかも」
「お前さんみたいなのが三人な」
「面白いな、じゃあ見せてもらうか」
「よし、それじゃあな」
こう応える彼だった、そして。
彼はその三人と会うことになった、それで出て来たのは。
ベースのヘンリー=クラーク。ブラウンの髪に青い目のイングランドの青年だ。
ドラムのチャールズ=ブライアン。名前とは違い白髪にグレーの目のスコットランドの背の高い青年である。
キーボードのウィリアム=ローズ。赤い髪に黒い目のウェールズの青年だ。
四人共ロッカーらしくすらりとした細い身体だ、髪型はそれぞれかなり派手だ。
その三人を見てだ、マックローンはその口をシニカルに歪めて社長に言った。
「おい、面白いな」
「期待通りだったか?」
「ああ、今にも殴り合いたい位にな」
そこまでだというのだ。
「アイリッシュだけじゃないんだな」
「イギリス中からこれだっている面子を集めたんだよ」
「社長さんは何処出身だよ」
「俺はスコットランドさ」
そこからロンドンに出て来たというのだ、その禿げた頭を自分の右手で撫でながら言う。
「ちなみに好物はハギスだよ」
「それは絶対に食わないからな」
ハギスはまずいと評判がある、だからだというのだ。
「まあとにかくこの四人でか」
「グループを組んでくれ」
「悪いが願い下げだよ」
マックローンはすぐにこう答えた。
「他を当たってくれ」
「それは国の問題か」
「言うまでもないだろ、それは」
見れば四人共お互いに睨み合っている、社長と話しているのは今はマックローンだけだが実に剣呑な雰囲気である。
「俺はアイリッシュだぜ」
「他の連中とは組めないか」
「ああ、そうさ」
まさにその通りだというのだ。
「俺はな」
「しかし契約の直前にハイスクールの頃のバンドのメンバーと喧嘩して解散してるな」
「まあな」
よくある音楽的な違いで、である。それで丁度一人でベルファストで路上ライブを行っていたに社長に声をかけられたのだ。
「それがどうかしたのかよ」
「全員同じだよ、それは」
「どいつもこいつも喧嘩っぱやいって訳か」
「似た者同士さ、似た者同士で才能がある奴を揃えたんだよ」
「国は違っててもか」
「同じイギリス人だろ」
社長はここでこうマックローンに言った。
「そうだろ」
「おいおい、そこでそう言うのかよ」
「その意識はないみたいだな」
「ねえよ、そんなの」
はっきりと否定した、その考えは。
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