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八条学園怪異譚

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第三十話 神社の巫女その四

「斧っていうのは」
「後どうするんですか?」
「後はどうとでもなるわよ」
 茉莉也は二人の怪訝な言葉に平然として返した。
「そもそも開かないのが悪いんでしょ」
「ですからそれは幾ら何でも」
「もっと普通にしないと」
「じゃあどうしようかしら」
「わしが手伝おうか?」
 うわばみが呆れている顔で申し出てきた。
「確かに斧はない」
「うわばみさんが?」
「そうだ、そもそも大酒を飲んで刃物なぞ使うな」
 うわばみは茉莉也にこのことを言った。
「大怪我の元だぞ」
「ですよ、しかも斧ですよ」
「普通の刃物じゃないですよ」
 ナイフや包丁と比べてだ、斧は確かに普通ではない。
「下手したら手が滑ってばっさりとか」
「そういうのありますよ」
「それもそうね」
 やっと納得した茉莉也だった、本当にやっとである。
「じゃあうわばみさんが手伝ってくれるのね」
「斧なぞ使わせるか」
 茉莉也を心配してのことである、酒を飲んで危険な刃物なぞ使ってはいけないという若い、彼から見れば幼い友人を気遣ってである。
「全く、毎度ながら酔うとさらに危ないな」
「だから危険だぞ」
 天狗も言って来た。
「まして女の子が斧なぞ」
「女の子だって薪割りするわよ」
「今頃するか」
 天狗はこう返した。
「そもそもこの神社にまだ斧があったのか」
「あるのよ、それが」
「薪なぞないのにか」
 ガスや電気になった、もう薪の時代ではないのだ。
「まだあったのか」
「薪のあった時代に使っていたのがまだあったのよ」
「それでか」
「そうよ、まあとにかくね」
「わしも行くからな」
 天狗もこう行ったのだった。
「心配で放ってはおけん」
「言うわね、これ位酔ったうちに入らないのに」
「三升も飲んでいるぞ」
 桁外れに飲んでいるのは誰が見ても明らかだ。
「それでまだ飲むつもりだな」
「そのつもりだけれど」
 実際に今もラッパ飲みする、しかも愛実と聖花は左右にはべらせたままだ。
「今日もね」
「つまり普段から何升も飲まれてるんですね」
「こうして」
「お酒は女の子を磨いてくれるのよ」
 こんなことも言い出す始末だった。
「だからいいのよ」
「とにかくだ。今からその倉庫に行くぞ」
「神社の裏の一番古い倉庫だな」
「そう、藏をそのまま使っているね」
 そうした倉庫だというのだ。
「あそこよ」
「あの倉庫か、確かにあそこならな」
「泉であっても不思議ではないな」
 うわばみも天狗もそれぞれ納得する。
「では行くか」
「飲むことは一時中断だ」
「勿論あんた達も一緒よ」
 茉莉也ははべらしているままの二人にも声をかける、相変わらずその胸を露骨に触りながらそうしている。
「いいわね」
「宜しくお願いします」
「それじゃあ」
「ここからすぐだからね」
 裏、だからだというのだ。 
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