ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
レーヴァティン~クロスクエスト~
シンモラ
「ここが《スルトガルド》か」
セモン達が辿り着いたのは、岩石でできた大きな城塞だった。その周辺だけ、熱気がほかの数倍に跳ね上がったような凄まじい情報圧を感じる。
「ここにその巨人族の王がいるんだな?」
「そうだ。そしてここが、今回のクエストのスタート地点となる」
ゲツガの問いにハザードが応える。
「よし!!行こうぜみんな!!」
シャノンが叫んで、
『『おう!!』』
皆もこたえる。
こうして、セモン達はスルトガルドへと足を踏み入れた。
*
スルトガルドの中身は、炎の水晶でできた城塞、といった感じだった。時々、壁がチラチラと炎のように光る。
「すっげ~……どうやってできてるのかな…」
「すごいな……ALOにこんなダンジョンがあったとは…この世界がうらやましいぜ」
しばらく進むと、急に開けるところに出た。
「ここは……?」
「よく来ましたね、アルヴヘイムの妖精たちよ」
よく通る声が響いた。
「!?」
「誰だ!?」
よく見ると、開けた場所の通路のそのさらに先。
そこに、燃え盛る太陽の様な金色の長髪をもった女性が、二人の巨人に守られて座っていた。
女性としてはかなりの長身だ。この中で一番背が高いゲイザーよりも高いのではないだろうか……
女性は微笑を浮かべると、燃える空気を冷やすような涼やかな声で先ほどの問いに答えた。
「私の名はシンモラ。この世界の長たるスルトの妻……そして、そなたたちが求める《総てを焼き払う業炎》の守り手……」
シンモラ、と名乗った女性のセリフを聞いた琥珀が首をかしげる。
「《総てを焼き払う業炎》……?なにそれ。私たちそんな物知らないわよ…?」
するとシャノンが笑顔になって言った。
「ああ、《総てを焼き払う業炎》っていうのは」
「《魔剣レーヴァティン》のことさ。北欧神話の中では、レーヴァティンを《スルトの炎》って呼んでるからな。たぶんそれが由来なんだろ」
ゲツガがセリフを横取りした。
「ひ、ひどい……僕が言おうとしたのに……」
「まぁいいじゃないか。コラボなんだし」
ゲイザーがシャノンをなぐさめる。
「そなたたちの世界ではそう呼ばれているようですね。そう、《総てを焼き払う業炎》とは我が夫、スルトの持つ剣。そしてあの剣は今、スルトの剣ではなくなっています」
「何?」
「どういうことだ」
シンモラは真剣な表情になって言った。
「スルトは今、常闇の国より現れたものにより意志を拘束されています。今のスルトはスルトであってスルトではありません。スルトは、闇の者たちに操られ、そなた達の住まうアルヴヘムを、さらにはその先、アースガルズまでを焼き尽くさんとしています」
「マジか!!」
「ラグナロクの危機再びってか……」
シンモラが訴える。
「このままでは、地上のあらゆる生き物が死滅してしまう。勇気ある妖精の騎士たちよ、我が夫を救ってください。そうすれば闇は去り、世界は救われるでしょう」
そして……視界右端に、クエストロールが流れた。受注完了だ。
「任せろ。スルトを目覚めさせてきてやるぜ!!」
「よ~し……久々に本気になれそうだな」
シャノンとゲツガも叫ぶ。
「ありがとう、妖精たちよ……スルトは、この《スルトガルド》よりはるか北、ムスペルヘイム首都の《ドラグ》近くに居を構え、機が熟すのを待っています」
「よし、行くぞみんな!!」
『『おう!!』』
セモンが叫び、皆もこたえる。
セモン達は、スルトガルドを出て北に向かった。
*
「しっかし……スルトを縛る闇か。そんなの聞いたことがないぞ?」
「たぶん……ヘルのあたりが出張ってきてるんじゃないか?ALOはあくまでもゲームだ。 原作と違うところもあるさ」
「……もしかしてさ、ゲツガ君って神話の知識ある?」
「え?あ、まぁな。小さいころ読み漁ったことがあって……ほら、キリトんち結構そういう本あってさ」
「へぇ!!君とはいい話ができそうだ」
どうやらシャノンとゲツガは意気投合したようだ。
「スルトかぁ……どうやって倒そうか……セモン?」
「あ、ああ。どうしたコハク」
「もう、聞いてなかったの?……そのスルトってやつをそうやって倒そうかって話よ」
「ははは。気が早いぜ。シャノンの話しなら、スルトだけじゃないんだろ、敵は」
「そうだけど……」
セモンはさも当然とばかりに宣言した。
「大丈夫。その時になればどうにかなる。うまくいけばそれでいいじゃないか」
「もうっ……相変わらずだね。セモンは。……がんばろ!」
コハクが笑顔になって、セモンに言う。セモンも笑顔で返す。
「ああ」
しかしセモンは、実はコハクの話をあまり聞いてすらいなかった。
何か嫌な予感がするのだ。
闇にとらわれた焔の巨人族の王。
実はセモンは、すでにこのクエストに挑んで失敗した何人かのプレイヤーに話を聞いていた。しかし、彼らはこんなことを言ってはいなかった……。
「気になるのか。誰も闇化の話をしていなかったこと」
「ゲイザーさん……」
どうしてそのことを、といいかけて口をつぐむ。
ゲイザーは、考えてみれば情報屋なのだ。それぐらい知っていて当然だろう。恐らく彼もこのクエストに挑戦したことがあるプレイヤーたちに話を聞いていたはずだ。そして、違和感に気付いている。たぶん、シャノンも。ハザードも……いや、ハザードは違うか。
「なんか失礼なこと考えてないか」
「いや!?な、何もないぜ?」
「……あやしいな」
「見えたぞ、あれが《ドラグ》だ」
シャノンが指差したそこには……
ひときわ異彩を放つ、真紅の都市があった。
後書き
さぁて、コラボ編第三話。そろそろもう一人のコラボ相手が登場するかな?
次回もお楽しみに。
ページ上へ戻る