魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者
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後日談12 修学旅行(後編)
「うわぁ………」
広大に広がる綺麗な海を見て、ライみたいな感動の声を上げる星。
とても珍しい光景だ。
………まあそれもそのはず。
「流石、沖縄だよな………」
マリンブルーの透き通った海が俺達を迎えてくれた。
ここは本島から少し離れたリゾート島で、本島の海よりも更に綺麗な海が広がっていた。
「こんな場所がまだまだあるんだからな………」
「レイ、じゃあ後で」
「ああ、ライ迷子になるなよ」
「ならないよ!?」
「レイこそナンパなどするなよ」
「しないよ」
「「「本当に………?」」」
「そんなに信用無いのか………?」
そんな俺の言葉に3人は頷き、女子更衣室に入っていった………
「………」
「アリサちゃん、零治君の事を見てるの?」
「すずか」
遠くから零治達の様子を見ていたアリサにすずかが声を掛けた。
「やっぱり未練ある?」
「………まあね。でもあの4人を見てると仕方がないなって思えるの。あの3人となら納得出来ると言うか………う~ん………」
そう言って悩み出すアリサにすずかがくすっと笑った。
「何笑ってるのよ」
「アリサちゃんの気持ちは分かるよ、私も似たような気持ちだから。要するにアリサちゃんも零治君だけじゃなくあの3人の事も好きなんだよ。だからこそ、あの3人と一緒な零治君を見ると納得出来るんだよ」
「………そうね、きっとそう。あの3人も好きなのよね………私」
「そして多分フェイトちゃんも」
「気づいてた………?」
「多分はやてちゃんも気づいているよ。気づいていなのはなのはちゃんだけ」
「………なのはって変わらないわね」
「まあそれがなのはちゃんだから………」
着替える前にボールや浮き輪を膨らませてしまい、手に持てなくなってあたふたしているなのはとフェイト見て、2人揃ってため息を吐いたのだった………
「………」
「あら?海に入らないのフェリア?」
海水浴が始まり、皆それぞれ楽しんでいる中、一人パラソルの日陰に体育座りしていたフェリア。
白いパーカーに日陰なのに麦わら帽子を被っている。
そんなフェリアに声を掛けたのは長袖のラッシュガードを着た加奈だ。その後ろには白いビニール袋を両手に持った大悟がいた。
「ああ、私はいい」
「何でだ?せっかくの沖縄なんだし、海も綺麗だよ?」
「ああ、しかし………」
桐谷にそう言われ、自分の体を見るフェリア。そして大きく溜め息を吐いた………
「このバカ!!」
「ぐえっ!?」
腹にひじ打ちを食らった大悟は思わずうずくまる。
「何すんの加奈………」
「アンタがデリカシー無いからよ。いい加減学習しなさい」
そう言ってフェリアの隣に座る加奈。
大悟の持っている白いビニール袋からフランクフルトを取り出しフェリアに渡した。
「ありがとう加奈」
「フェリア、体格なんて気にしなくて良いのよ。私だってぶっちゃけそんなに良いって訳じゃないし………それに前は全然気にしてなかったじゃない」
「そう言うが今の私は気になるのだ………」
そう言ってフェリアは自然に桐谷に目が行った。
砂浜を歩いていた有栖家と一緒に歩いており、目の前には綺麗な大人っぽい女性がいた。
「あの………良ければ一緒に遊ばない?」
「俺!?」
「違います、桐谷です。レイは全くかっこよくないので勘違いしないでください」
「そうだよアホなレイ」
「いい加減身の程を知れ」
「あのさ………お前等、俺をいじめてそんなに楽しい?」
「また逆ナンね………しかも結構な美人なお姉さんね………兄さんならドストライクって感じかしら………」
「桐谷もああいう大人っぽい女性の方がいいのだろうな………」
「桐谷が?う~ん、桐谷は別に外見では選ばないからハッキリ言って女の子の趣味がよく分からないのよね………」
「そうなの?零治とかは知ってるみたいだけど………」
「それはあの2人は互いに熟知してるでしょ………だけど私は一応女の子なんだし」
「ああ、そう言えば………」
つい漏らしてしまった言葉の所為で拳骨が落とされた神崎。
「ごめんよ………」
「全く………」
それでも何だかんだそれなりに仲が良い2人だった。
「桐谷………」
「そう言えばフェリアは何で海に入らないんだろうな………」
「そうだな、ずっとあそこで座って見てるな………」
男2人、浮き輪でぷかぷかと浮かびながら未だにパラソルから出ないフェリアを見ていた。
「フェリアって暑いの苦手だっけ………?」
「いや、別にそんな事無いと思うけど………」
桐谷の質問に零治が困った顔でそう答えた。
「………俺、ちょっと誘ってくる」
そんなフェリアに見ていられなくなった桐谷が浮き輪から降り、フェリアを誘いにパラソルに向かっていった。
「何だかんだ結構フェリアの事気になってるんだな………」
とのんびりぷかぷか浮かんで見ていた零治。
水中から迫ってきていた影に全く気がついていない。
(はやて、どっちが行く?)
(ライちゃんでもええで。どないする?)
(じゃあ僕が)
そう水中で手で指示を出し合った2人。
そしてライが零治の真下に行き………
(秘技、千年殺し!!)
「ぎゃあああああああああああ!!!」
大きな叫び声と共に零治はその場から上に飛び跳ね、海へダイブしたのだった………
「フェリア」
「き、桐谷………」
パラソルについて声をかけると恥ずかしそうに俯くフェリア。
しかしそんな反応に桐谷は………
(しまった、水滴が飛んだか?)
と違った解釈をしてしまった。
「どうしたんだ、休憩か?」
「いや、せっかく来たんだしフェリアも一緒にどうかなって………」
「わ、私は良い………」
「何で?」
「それは………」
そう言ってまた俯くフェリア。
そんなフェリアにどうすればいいか分からなくなる桐谷。
(無理に誘うべきか………いや、流石に嫌がってるのに無理やりは………)
そんな事を考えながらふと零治の居た方向を見た。
「このアホんだら!!け、ケツの穴が………!!」
「「きゃー!!」」
何があったのか分からないが、ライとはやてを怒りながら追いかける零治。
「全くアイツは………恐らく何も考えてないだろうな………」
「桐谷?」
不意に呟いた桐谷にフェリアが不思議そうに声を掛けた。
「フェリア」
「えっ!?」
いきなり手を掴まれたフェリアは驚きながらも桐谷に引っ張られ立ち上がった。
「桐谷!?何するんだ?」
「いいから!俺はフェリアと一緒に遊びたいんだ、付き合え!!」
「えっ!?」
パーカーも麦わら帽子も被ったままのフェリアだが、構わず桐谷は海に連れていき………
「おおおお!!」
「きゃああ!!」
そのまま海に突っ込んでいった。
「冷たい………」
「気持ちいいだろ?」
「ああ、気持ちいい………」
海に体を任せるように浮かぶフェリア。
「………何で海に入りたがらないんだ?」
一緒に並んで海に浮かぶ桐谷。
そんな質問どう答えればい良いのか分からなく、しばらく黙っているフェリア。
しばらく互いに浮かんでいたが、意を決したのかゆっくりと喋り始めた。
「桐谷、笑うなよ………?」
「ああ、笑わないよ」
そんな桐谷の返事を聞いて安心するフェリア。
そして桐谷に話し始めた。
「私は自分の水着姿を見られたく無かったのだ………スタイルに自信が無くてな………」
小さい声で呟くフェリア。
しかし、桐谷にはちゃんと聞こえており、フェリアの言葉を聞いた桐谷は目を点にしてその場で固まり………
「あははははははは!!」
大声で笑った!!
「笑うな!!笑わないと言ったではないか!!」
「悪い悪い、だけどフェリアに笑ったんじゃない、色んな事を考えてどうするべきか迷っていた俺自身に笑えたんだ」
そんな俺にジト目で睨むフェリア。
「しかしフェリアもそんな事気にするんだな………」
「そんな事とは何だ!!私だって女の子だ!!」
「あ、ああそうだよな………」
桐谷の一言に顔を真っ赤にして怒るフェリア。
フェリア自身こんな悩みを持つとは思っておらず、一応前から気にしてはいたが、人前に出るのも恥ずかしくなるとは思ってなかったのだった。
「他のクラスの女子はどんどん魅力的になっていく中、私だけ取り残されてる様に感じて………今までこんなに中々成長しない身体を嫌だと思った事はない………」
確か原作だとフェリアはこのまま余り成長しないままだとか神崎に聞いたような………
それを思うとフェリアはずっとこれからもこの悩みを持つのか。
「俺は今のフェリアも充分魅力的だと思うぞ」
「えっ………?」
「例えばさ、フェリアの様な白い肌って女の子にとってはかなり羨ましいものだろ?それにこの綺麗な髪だって。フェリアにだって自慢出来る部分はあるだろう」
「そ、そうか………?」
「だからそこまで気にしなくて良いんじゃないのか?俺はそんなフェリアの良いところ知ってるし、零治達みんなもそんなフェリアの事が好きなんだから………」
そう言うと嬉しそうに静かにコクンと頷くフェリア。
そして………
「な、なあ桐谷………」
「ん?」
「そ、その………桐谷も………私の事「フェリア危ない!!」!?」
何かを言いかけたフェリアの顔面にゴーグルが当たった。
「わ、悪いフェリア、ケガは無いか?」
そのゴーグルの持ち主、零治がフェリアの所に慌てて泳いで行く。
「ライとはやてをとっちめている時に暴れるライがゴーグルを投げて、それがたまたまフェリアに………」
「零治の………」
「ん?」
「バカやろう!!」
そう言ってゴーグルを零治に投げつけ………
「あうっ!?」
水中ながら、フェリアに股間を思いっきり蹴られたのだった。
そしてやった張本人はパラソルへ向かっていった。
「………ご愁傷さま」
「俺のせいじゃないのに………」
そんな零治に拝んだ桐谷だった………
さてそんな海での時間を終え、クタクタになりながらも帰ってきた俺達。
夕食まで3時間ほど自由時間になり、ホテルでの自由時間になった。
「さて、決着を付けるときが来たようだな………」
「ああ………」
互いにラケットを持ち、向かい合う。
「俺が先にサーブな」
「構わん、時間が惜しいから3ゲーム3セットマッチで良いな?」
「ああ、それで構わない」
零治が先にサーブと言うことでボールを持ち構える。
「ねえ星、零治ってテニス出来るの?」
そんな2人の勝負を見に来た、有栖家+聖祥美少女軍団。
因みにギャラリーやテニスをやっている生徒達は結構いる。
「私も見たことがありません。ライや夜美は?」
「僕も無いよ」
「我もだ」
「にしては何か構えがさまになっとるな………」
そんなはやての言う通り、流れはテニスプレイヤーそのものだった。
その相手の桐谷も同様である。
「………じゃあ行くぞ!!」
ボールを高々と上げ、降りてくるボールに合わせてボールを上から打つ零治。
「速い!!」
予想以上に速いボールに思わず驚いた声を上げたなのはだったが、それだけではない。
速い打球はコーナーの隅に行き、大きくコートから外れるように進んでいく。
「相変わらずのコントロールだな、零治!!」
しかし、桐谷はその打球に追い付き、打ち返した。
「何の!!」
零治も負けじと桐谷の居ない反対側へとギリギリのボールを打ち返す。
「甘い!!」
しかし、今度も桐谷は追いつき、打ち返した。
「追い付かねえぞ普通!!」
そう言いながらボールを打ち返す零治。
(くっ、重い!)
打球に押されながらもなんとか打ち返す零治。
しかし………
「もらった!!」
ふわっと高いバウンドで桐谷のコートに落ちたボールに桐谷はタイミングを合わせ、
「くらえ!!」
桐谷の打ったスマッシュは零治が反応出来ないスピードで抜けていった。
「15ー0だ」
「くそっ………ボールの勢いに負けた………」
「何これ………プロの試合?」
「凄いね2人共………」
アリサとすずかが思わず言葉を漏らしたが、他の皆も同じ様で、言葉が出ない。
しかし………
「レイ頑張れー!!」
「桐谷も負けるな!!」
ライとフェリアは気にせず普通に応援していた。
「行くぞ、桐谷………」
「来い、零治!!」
2人の試合は続く………
「ねえこれいつまでやるつもりかな………?」
「試合終わるまでなのでは………?」
なのはの質問に星が答える。
試合は熾烈を極め、タイブレークに入り、 20ー20と接戦を繰り広げていた。
セット数も少ないながらも既に1時間を超え、見ていた星達も呆れ始めていた。
「レイ、集中!!」
「桐谷もここが勝負だぞ!!」
そんな中相変わらず応援に熱が入ってるライとフェリア。
「………あかん、まだ時間かかりそうやしもう私達で遊ばへん?私パターゴルフしたいんやけど………」
「そうね、アイツらに付き合ってるとせっかくの自由時間も全部無駄にしそうね」
「星ちゃん、勝負しよう!ボールを使う競技なら星ちゃんには絶対負けないから!!」
「なのは、甘いですね。ゴルフなら大丈夫なんですよ。ここで格の違いを見せてあげます!」
「じゃあみんなでパターしよっか」
「そうだね」
「そうだな」
すずかの最後の提案にフェイトと夜美の乗った事により、ライとフェリア以外の7人はパターゴルフをしに向かった………
「「疲れた………」」
「何でそんなにくたくたになってるの2人共?」
夕食と風呂を終え、部屋に戻って早々自身のベットにダイブする零治と桐谷。
「テニスで本気を出し過ぎた………」
「しかも決着つかずか………」
試合はタイブレーク120-120と接戦が続き、自由時間をフルに活用したにも関わらず終わらなかった。途中ライとフェリアが互いにコーチみたいに世話をしていたりとツーマンセルみたいになっていたが誰も突っ込む者はいなかった。
因みに他の7人はしっかり自由時間を満喫していた。
「確か昨日前世からの因縁だっけ?………別にここで決着付けなくてもよかったと思うんだけど………」
「うるさい………そして眠い」
「うそ!?修学旅行最後の夜をもう寝ちゃうの!?」
「スースー………」
「桐谷寝ちゃってるし!!」
「そんなに騒ぐなら出てけ、加奈でも夜這いしてこい」
「撲殺されるから!!!ちょっと零治!?」
「クークー………」
「マジで寝ちゃったよ2人共………」
悲しい最後の夜を過ごす神崎であった………
「レイ~早く!!」
「ま、待てって………」
「海ぶどう買っていきましょうか………レイ、どう思います?」
「ああ、あの味噌汁美味しかったからな………」
「じゃあ買いましょう!」
「ふむ………レイ、似合うか?」
「ああ、似合ってるよ!」
「レイ、タピオカ~!!」
「分かった!!………ってか自分で買えよライ!!」
修学旅行最終日、那覇の街で2時まで自由時間となり、星達とみんなへのお土産や食べ歩きをしている俺達。
普通4人で歩いているなら順番に歩くものだが、皆それぞれ好きなように店を見ている。
今は露店が並んでいる市場にいるおかげではぐれていないが、俺は1人しかいないので順番にして欲しい………
(まあでも………)
「レイ、これ美味しいよ!!はいあーん」
「………ドラゴンフルーツだっけ?うまいな!」
「でしょ!!」
ライにタピオカジュースを飲ませて貰ったり。
「レイ、これはレイに似合うんじゃないか?」
「麦わら帽子か………似合うか?」
「ああ、似合ってるぞ」
夜美とショッピングしたり。
「ゴーヤも買っていきましょうか………でもキャロも優理も苦いゴーヤは駄目そうですし………」
「まあそこは星の腕次第だな。………それでお土産はどうする?」
「………ちんすこうやサーターアンダギーを買うとして………パイナップルとかも買っちゃいます?」
「そうだな………そうするか!」
星とみんなへのお土産を選んだり。
「やっぱり楽しいよ星達と一緒にいると………」
「はい、私も………」
「僕も!!………でも1つ腑に落ちない事があるんだ」
「何だライ?」
「何でいつも『星達』みたいに星が始めなの!?」
「えっ!?何でと言われてもな………」
「………確かにいつも星だな。我でも良かろうに」
「まあ確かにな。じゃあ………」
「いいえ、駄目です。こういうのは一番上の私が最初って決まってるんです!」
「星さん!?」
何でむきになってるの!?
別に順番でも良いじゃん………
「ずるい星!!僕も!!」
「それにいつ星が一番上に決まった!!我は元王だぞ!!」
「元ですよ。Tシャツにもあったじゃないですか、『長女星』って」
「確かに………」
「ライ、余計な物作るから………」
「じゃあ決定「長女なら時には我慢もしないとな」そんな、レイ………」
そう俺が言うとライと夜美が笑顔に。
「じゃあ決定!!レイ、ちゃんと順番にね!!」
「了解」
その後も俺達は買い物を楽しんだのだった………
「加奈、まだ買うの………?」
「当たり前よ!!せっかくの沖縄なんだし買えるだけ買っておきたいじゃない!!」
そんな加奈の答えにはぁ~と溜め息を吐く神崎。
両手には大量の紙袋が。
「じゃ、じゃあ先に宅配便に送ってもらわない?このままじゃ荷物が多くて昼食も食べれないよ」
「………まあ確かにそうね。ならそうしましょうか。………でも最後にあそこの店を見てからね」
「えっ………?」
神崎の苦労はまだまだ続くのだった………
「ふむ………」
「フェリア?」
フェリアと一緒に買い物に出ていた桐谷はずっと店の前でかじりついているフェリアに気がつき、見に行った。
「何を見てるんだ?」
「シーサーの置物だ。ウェンディの奴がお土産で欲しいと言っていたのでどれにするのか選んでいたのだが………」
「そういえば言ってたな………」
修学旅行前の夜にゲームに付き合った際に言われたのだった。
『桐谷兄………お土産期待してるっス………』
『私も………何か沖縄らしい物が欲しい』
『私は………その………桐谷とお揃いの………』
「そうだ、それぞれお土産頼まれてんだった………ウェンディには何にすればいいんだろ?」
セインは沖縄らしいもの、ノーヴェを俺とお揃いな物と具体的に言ってくれてるので決めやすいが、ウェンディは特に指定してないので自身のセンスの問題になる。
「私はシーサーの置物にしようと思ったが………どうだろう?」
「いや、な………」
恐顔のシーサーの置物を手に取り、俺に見せるフェリアだが、女の子にそれはどうだろう………
「でもウェンディなら喜びそうだな………」
「私もそう思う。………よし、これにするか!」
フェリアはシーサーの置物にするようだ。
「じゃあ俺は………」
とその隣の店に面白そうな物があった。
「これにしよう」
「いや、桐谷、それは流石に………」
「いや、ウェンディはこれでいい」
まあそのお土産はおいおい話そう。
「お兄ちゃん!!」
「レイ!!」
「零治!!」
長かった修学旅行を終え、家に帰ってきた俺達家のインターフォンを鳴らすと勢いよく扉が開き、3人が飛びかかって来た。
「おっと!!」
何とか倒れずに受け止める零治。
「ちゃんと良い子にしてたか?」
「はい、良い子にしてました!!」
「私も」
「まあ2日目に沖縄に飛んでこうとしたけどな………」
そう言って呆れた目で優理を見るアギト。
「私なら半日で沖縄に行ける」
「優理なら本当に出来そうだから止めてくれ………」
と優理に言っている間にキャロは他の姉達に抱きついてる。
「アギトはどうだった?」
「………まあ大分楽だったよ。優理もメガーヌさんやゼストさんには逆らえ無かったみたいだし」
「そんな事無いもん」
「まあそこは流石子の親って事だな」
「それよりお土産は?アタシサーターアンダギー食べたいぞ!!」
「私も!!」
「サーターアンダギーね………えっと………」
確か手持ちのリュックに入れた筈だったけど………
「えっとね2人共………」
そんな中おずおずと2人に話しかけるライ。
………そう言えばライに預けたっけ?
「ごめんね………飛行機でお腹が減ったから食べちゃった………」
と申し訳なさそうに言うライ。
「星、夜美………?」
「私は知りませんでした!私も疲れて帰りは寝てたんです!」
「我は気がつくのが遅くてな………気づいたときには全てが空に………」
なるほど………まあそれはともかく………
「夜美、星の寝顔は?」
「ちゃんと撮っておいた」
「後で送ってくれ」
「分かっている」
「いやー!!」
顔を真っ赤にして夜美の携帯を取ろうとする星。
「大丈夫だ、郵送で送った荷物にもサーターアンダギーはある。それまでは我慢してくれ」
「………分かったフェリア」
「食べたかったのに………」
「まあまあ………」
「本当にごめんね………」
少し不満げなフェリアと優理をなだめるキャロ。
ただ、キャロ自身も楽しみにしていたのか少し残念そうだ。
「星達もいい加減騒ぐのは止めてさっさと片付けをするぞ!」
フェリアにそう言われ、皆それぞれ片付けを始める4人。
「ねえフェリアお姉ちゃん?」
「ん?何だキャロ?」
「沖縄、楽しかった?」
そんなキャロの普通な質問。
「ああ。今度はみんなで行きたいな」
フェリアはとても良い笑顔でそう答えた………
「えへへ………」
「ねえセイン?」
「何?」
「ノーヴェが気持ち悪いっス。昨日までの暗い雰囲気は何だったんスかね?」
「まあ理由は分かるけど、おかげでご飯は散々だったし、出前はウェンディがバカ高いうな重注文したせいで殆どすっからかんになっちゃったし………散々だった………」
「そして今は………」
「聞いているのアンタたち!!」
「「すいません………」」
「えへへ………」
加藤家のリビングではフローリングの上で正座をさせられ、加奈に説教を受けている女の子が3人。
当然、ダメっ子の3人である。
「しかしノーヴェはしっかりやってくれたと思ったんだけど………」
「まあ彼女にも色々悩みがあったのでしょう」
現在桐谷がリビングに散らかっている洗濯物の片付け、エタナドがキッチンに放置になっている食器やカップ麺の容器などを片付けている。
『ますたぁ~』
「お前はいい加減生活を変えろ。じゃないとジェイルさんの所に当分預けるぞ!!」
『それは絶対に嫌ぁ!!』
こんな状況にも関わらず相変わらずの生活をしていたレミエルに流石の桐谷も黙っておれず、当分人で居られないように、持ち歩く事にしたのだ。
『もう少しでクリア出来るのに………』
「さて、ジェイルさんに連絡を………」
『済みません、済みません!!』
「それほど嫌か………」
そんな事を思いながらノーヴェを見る。
「あんなに気に入ってくれたとはな………」
説教をされながらも未だに嬉しそうに桐谷から受け取った小さな箱を大事そうに見ているノーヴェ。
中身はシーサーの絵がプリントされたピンクのカップだ。
因みに桐谷もコーヒーにと同じ水色のカップを買っている。
「さて、さっさと片付けてノーヴェとコーヒーでも飲むか」
それに他の2人にもお土産をあげないとな………
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