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久遠の神話

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第四十五話 二度目の激突その三

「仕事もあるしな」
「えっ、働いておられるんですか」
 加藤からの話を聞いて思わず目を瞠る上城だった。
「加藤さんも」
「驚くことか」
「いえ、何か働いておられるって感じじゃないですから」
「生憎だが俺も働いている」
 加藤はにこりともせず上城の言葉に返す。
「そうしている」
「そうなんですか」
「そしてだ」
 さらに言う加藤だった。
「俺は表は清掃業をしている」
「それも驚きですね」
「割かし給料がいい。そしてだ」
「そして?」
「何かを奇麗にすることは気持ちがいい」
 意外な事実だった。何と加藤は八条大学の卒業生でしかも働いている。尚且つ奇麗好きだった。これには上城も驚きを隠せない。
 それでだ。こう彼に言うのだった。
「本当の話ですよね」
「嘘に思えるか」
「ええ、まあ」
 その通りだと返す。
「申し訳ないですけれど」
「俺は嘘は言わない」
 加藤はにこりともせず述べる。
「ただ戦いたいだけだ」
「そうだったんですか」
「俺も生きなくてはならないからな」
 加藤はこうも言った。そういう方面からも働かないとならないというのだ。
「仕事が必要だ」
「それで清掃業なんですか」
「生きる為に働いている。それにだ」
「奇麗にすることが好きだからですか」
「部屋も風呂場も台所もトイレもな」
 部屋の中にあるあらゆる場所がだった。
「そしてだ庭も窓もだ」
「とにかくお掃除が好きなんですか」
「そうだ。かなり好きだ」
 実際にそうだというのだ。
「掃除はいい。何もかもが奇麗になる」
「加藤さんのことはわかりましたけれど」
 上城はそれはいいとした。しかしだった。
 その彼にだ。上城はこうも言った。
「加藤さんが戦われる理由は」
「戦いたいだけだ」
 実に素っ気無くかつ何でもないといった言葉での返答だった。
「だからだ」
「それでなんですか」
「そうだ、俺は奇麗にすることと戦うことが趣味だ」
 この二つが趣味だった。加藤の。
「その趣味を満喫しているだけだ」
「そうなんですか」
「安心しろ。殺しても苦しませることはしない」
 戦いを殺し合いと認識している言葉だった。
「もっとも裏の仕事でも殺したことはまだないがな」
「裏?戦われてるんですか」
「裏の仕事はストリートファイターだ」
 それで戦っているというのだ。
「中々楽しい」
「ですか」
「言ったな。俺は戦うことが好きだ」
 掃除とそれがだというのだ。
「だから戦う、それだけだからな」
「そして剣士としてもですか」
「戦い最後の一人になり」
 そしてだというのだ。
「またはじめる」
「また、ですか」
「そうだ、まただ」
 目が赤く燃えている。それは好戦そのものの目だった。
「俺は戦うのだ」
「そんなに戦いたいんですか?」
「悪いか、それが」
「戦いで多くの人が傷付いて倒れるんですが」
「それが戦いだ」
 話がかみ合っていないのではなかった。加藤は上城の言葉を否定したのだ。だからこう言ったのである。 
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