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夢遊病の女

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第一幕その一


第一幕その一

                      夢遊病の女
                   第一幕  疑惑をかけられ
 スイスのある小さな村。十九世紀になったがこの村はまだ穏やかなものだった。 
 水車が見え遠くから羊飼いの声が聞こえてくる。青い谷と白い山、そして緑の木々に囲まれたこの村は赤や白の小さな花々が見え緑の草に覆われている。ダークブラウンの家々もあり小さいが平和で美しい村である。
 その村の中で。今村人達は楽しげに笑っていた。
 白いシャツと褐色のズボン、黄色いエプロンとやはり褐色のズボンが楽しく動き。そうして朗らかに話に興じてうきうきとしていたのである。
「いやあ、よかったね」
「全く」
「幸せになってね」
「あのアミーナの奇麗なこと」
 ここで一人の娘の名前が出て来た。
「その奇麗なことといったら」
「全くだよ」
「それにとても幸せそう」
「いいことだね」
「よくないわよ」
 しかしここで一人の年頃の娘が忌々しげに言った。
「何でそれがいいのよ」
「おいリーザ」
 その娘に茶色い髪に青い目の若者が困った顔で窘める声をかけた。
「そんなことを言ったら」
「何だっていうの?アレッシオ」
「よくないよ」
 こうその如何にも気の強そうな金髪に灰色の目の娘に言うのだった。服は他の村娘達と同じ白いシャツに褐色のスカート、それに黄色いエプロンである。だがその顔立ちは鼻が高く目もきらきらとしている。美人と言っていい顔立ちでありスタイルも整っている。
 その彼女にだ。彼は言うのであった。
「何でそんなことを言うんだい?」
「これが言わずにいられて?」
 リーザは忌々しげな口調でアレッシオに返した。
「こんなに悩んでいるのにいつもと変わりなく装うことを強いられていて」
「装う?」
「そうよ、私にとっては忌まわしいものなのよ」
 今度はこんなことを言うのだった。
「あの美しさは」
「今度は何を言っているんだ」
「私から宝物を奪い取って」
 こう言うのである。
「それでどうして喜んでいられるのよ」
「それなら新しい恋に生きてみないか?」
「新しい恋に」
「そうだよ」
 おずおずとリーザに言うのだった。
「新しい恋にね。どうかな」
「嫌よ」
 しかしリーザの返答はつれない。
「そんなこと誰が」
「いや、けれどね」
「嫌よ、私はあくまで」
 こんな話をしているとだった。ここで村人達は一旦家の中に戻ってそれで立派な晴れ着を着てそのうえで楽器と花籠まで持って騒ぐのであった。
「やあアミーナ!」
「アミーナ、よかったね」
「おめでとう!」
「誰も彼もアミーナ」
 リーザも一応晴れ着になり花籠も持った。アレッシオも晴れ着であり笛を持っている。しかしそれでも二人の顔は晴れないままであった。
 そしてまた言うリーザなのだった。
「誰も彼もが私を嘲笑って」
「それは気のせいだよ」
「気のせいじゃないわ」
 彼のその言葉は最初から聞いてはいなかった。
「実際に。皆で私を」
「そんなことは言わないで。幸せにだね」
「どうして私が今幸せを」
「さあ歌おう」
 二人が言い合う間に周りは別の行動に移っていた。
 
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