久遠の神話
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第四十四話 不老不死その十
「よくね」
「そうなんですね」
「私も成長したから」
それでだというのだ。
「わかってきたの。それでね」
「はい、それで、ですか」
「上城君の。そのお話だけれどね」
「グリーンのですね」
「それよ。私jは読まないけれど」
だがそれでもだというのだ。
「会えばそれでなのね」
「疑われるってことありますから」
「けれど村山さんは私達のことを知ってるから」
「安心していいですね。何でしたら」
「何だったら?」
「今彼女に連絡しますか?」
上城は念を入れる意味でもこう聡美に提案した。
「携帯のメールで」
「そうね。そうしたらね」
「僕達が自分達の口で今会っているって言えば」
「その方がかえっていいわよね」
疚しいことがあるから隠すからだ。しかしそうしたものがなければ言えるからだ。こうした人間心理を考えてのことだった。
このことを話して実際にだ。上城が樹里に携帯のメールで連絡を入れた。すると即座にメールで返信が来た。
「了解ってことです」
「わかってくれたのね」
「はい、ただ」
「ただ?」
「今パン屋さんにいるって送ったんですが」
上城が今言うのはこのことだった。
「そのお店が何処かっていうのを」
「そのことはなのね」
「教えて欲しいって言っています」
「じゃあこのお店のことを伝える?」
「そうします?」
「ええ、折角だから」
聡美は微笑んで上城にこう話した。
「そうしましょう」
「はい、それじゃあ」
こうした話もしてだった。上城は樹里にまたメールを送った。今度は二人が今いる店の名前やメニューのことを送った。そうしてだった。
また返信が来た。今度は絵文字で笑顔が送られてきた。
「今度は一緒に行こうって」
「送ってくれたのね」
「そうしてくれました」
「これで誤解されることもなくなったわね」
樹里は微笑んで述べた。
「何よりね。それじゃあ」
「はい、それじゃあですね」
「お話の続きだけれど」
グリーンから本題に戻った。彼の作品の様な世界から。
「彼についてはね」
「工藤さんは現代医学を信じるべきだって仰ってましたけれど」
「それでご家族が手術で回復することを」
「信じるべきだって」
「その通りよ。本来はね」
「それが正しいですよね」
「ええ、それでもね」
だがそれでもだとだ。聡美はここでこう言った。
「それは彼にとっては出来ないことね」
「そうですか」
「考えてみて。君のご家族がそうした状況になったらね」
「回復を信じられるかどうかですね」
「どうかしら、それは」
上城の目を見て。その緑のエメラルドの輝きの目で見ての言葉だった。
「できるかしら」
「やっぱりそれは」
口ごもって返す上城だった。ここでは。
「難しいです」
「そうよね。ちょっとやそっとではね」
「できないです」
自分のことに当てはめて考えればそうだった。それは。
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