万華鏡
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第二十九話 兵学校その一
第二十九話 兵学校
合宿の朝は早かった、皆六時に起きて。
それからホテルの前で準備体操をしてから走る、そのうえでサーキットトレーニングもしてだった。
汗を流す為に風呂に入ると。
「すっきりしたわね」
「本当にね」
「飲んでも走ってお風呂まで入ったら」
「前の日もお風呂に入ったし」
それでだというのだ、五人も着替えたジャージ姿で話す。朝のランニングの時のジャージや体操服はホテルの洗濯機に入れた。
それで五人は今綺麗な体操服なのだ、その綺麗な服で夕食の時のあの広い部屋に向かう。
その中でだ、琴乃は四人にこんなことを言った。
「いや、昨日あれだけ飲んだけれど」
「すっきりしてるよな」
「かなりね」
自分の左横にいる美優に応える、美優は今も五人の中央に位置している。
「そうよね」
「お酒飲んでもお風呂入ったしな」
「二回もね」
「それで起きて走ってサーキットトレーニングもしてな」
「またお風呂に入ったから」
それだけした結果である。
「お酒残ってないのよね」
「ああ、ただな」
「ただって?」
「飲んであのまま寝たら絶対に二日酔いになってたよな」
絶対にそうなっていた、美優は言い切る口調だった。
「皆滅茶苦茶飲んでたしな」
「そういえば朝辛そうな子多かったわね」
彩夏は朝のランニングの時を思い出して言った。江田島の海を見つつ砂浜でも走ったのである。
「二日酔いで」
「お酒残るとね」
里香も応えて言う。
「どうしても辛いからね」
「だからお酒を念入りに抜いておいてよかったのに」
「絶対にそうよ」
「やっぱりお酒が残ってると」
「次の日にも差し支えるから」
ランニング然りである。
「これからのこともね」
「今は全然平気だけれどね」
美優はお風呂上がりのすっきりした顔に明るい笑顔を浮かべる。そこに酔いは何一つとして見えはしない。
「それでもね」
「お酒が残っていたら」
里香は言う。
「今も辛かった筈よ」
「幾ら強くてもね」
「幾ら飲んでも酔わない人ね」
「いるわよね、そういう人も」
「噂だけれど」
里香はこの前置きをしてからこの人物を話に出した。
「ジャイアント馬場さんね」
「あのプロレスラーの?」
景子は薔薇と聞いてその里香に問い返した。
「物凄く大きかったっていう」
「そう、あの人」
「あの人のお酒ってどうだったの?」
「幾ら飲んでも酔わなかったらしいのよ」
「そうだったの」
「幾ら飲んでも酔わなかったから」
それでだというのだ。
「面白くないから飲まなかったらしいのよ」
「お酒凄い強かったのね」
「身体も大きかったからね」
身長二メートルを超えていた。伊達に十六文キックや三十二文キックを繰り出していた訳ではない。
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