| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

無印編 破壊者、魔法と出会う
  16話:告白される真実

 
前書き
 
二週間ぶりの更新になってしまいました。次はもう少し速く更新できればいいなぁ……
  

 
 



――次元航行艦アースラ ブリッジ――

なのはとフェイトとの戦闘後、クロノの予想通りプレシアは動きを見せた。クロノの目的は次元干渉を追跡し、場所を特定。そこへ部隊を送り込んでプレシアを逮捕するというもの。
それに伴い、士達はフェイトを連れアースラへ帰還した。

「お疲れさま。それと…フェイトさん?初めまして」

リンディが俯くフェイトに話しかけるが、フェイトは俯いたまま返事をしなかった。

[母親が逮捕されるシーンを見せるのは、忍びないわ。なのはさんとユーノ君はフェイトさんを別の部屋へ]
[あ、はい…!]
[わかりました]

「フェイトちゃん、よかったら私の部屋―――」

リンディの指示を受け、なのはとユーノはフェイトを移動させようとするが、丁度そのときブリッジの映像にプレシアの姿が映った。フェイトはそれをじっと見つめたまま、動こうとはしなかった。

『プレシア・テスタロッサ!時空管理法違反、及び管理局管制への攻撃容疑で、あなたを逮捕します!』

突入した部隊がプレシアを見け、取り囲み宣言する。そしてその部隊がいくつかに分かれ、さらに奥の部屋へと向かう。そのとき、プレシアの表情が明らかに変わった。
そして、奥へ向かった魔導師達が何かを発見した。

「え…!?」
「っ…!」

モニターに映し出されたそれは、液体の入ったポットのような筒。そしてその中身は、液体のみではなかった。

―――裸のまま膝を軽く抱えた、フェイトによく似た少女がいたのだ。

その光景に、フェイトだけでなく、ブリッジにいる全員の顔が驚愕に染まる。
だがモニターに映る状況はさらに一変する。いつの間にか筒の前にプレシアが現れ、自らの魔法で魔導師達をなぎ払ったのだ。

『アタシのアリシアに…近寄らないで!』

プレシアはそう言い、デバイスを構える魔導師達と向かい合う。魔導師達は一斉に魔法を放つが、それはプレシアの前で阻まれ、逆にプレシアは手の平を魔導師達に向け、魔法を発動する。

「いけない、防いで!」

リンディがそう指示するが、すぐに紫の雷がモニターに映り、魔導師達は全員倒れてしまった。

「いけない、局員達の送還を!」
『りょ、了解です!』

リンディはすぐにエイミーに指示を出し、魔導師達をアースラに戻す準備を始める。
そんな中、プレシアは少女の入った筒に近づき、つぶやき始める。

『もうダメね…時間がないわ。たった十個のロストロギアでは、アルハザードにたどり着けるかどうか、わからないけど……
 でも、もういいわ。終わりにする。この子をなくしてからの暗鬱な時間も…この娘の身代わりの人形を、娘扱いするのも……』

「「っ…!」」

プレシアの言葉を聞いて驚く士となのは。さらになのはは、ちらりとフェイトの顔をのぞくが、やはりフェイトの顔も驚きを見せている。

『聞いていて、あなたの事よフェイト。折角アリシアの記憶を上げたのに、そっくりなのは見た目だけ、役立たずでちっとも使えない。私のお人形』

『……最初の事故の時にね、プレシアは実の娘…アリシア・テスタロッサを亡くしているの。彼女が行っていた最後の研究は、使い魔とは異なる…使い魔を超える人造生命体の生成……
 そして、死者蘇生の秘術…「フェイト」って名前は、当時彼女の研究につけられた、開発コードなの…』

そこまで聞いた士は、ゆっくりと後ろへ下がり、ついでにユーノの手を取りブリッジを出る。

「つ、士!何を…」
「悪いユーノ。ちょっと手伝ってくれ」

[エイミー、聞こえるか?]
[士君!?いきなりなんで…]

少し声を荒げるユーノを唇に指を当て静かにし、エイミーに向け念話を飛ばす。
そんなブリッジを離れる二人を、誰も止めなかった。いや、正確にはプレシアの独白が衝撃過ぎて、そちらへと意識を持っていく事ができなかったのだ。

『だけどダメね。ちっともうまくいかなかった……作り物の命は所詮作り物。失った物の代わりにはならないわ。アリシアはもっと優しく笑ってくれたわ。アリシアは時々我がままも言ったけど、私の言う事をとても良く聞いてくれた』

「……止めて…」

『アリシアは、いつでも私に優しかった……フェイト、やっぱりあなたはアリシアの偽物よ。折角あげたアリシアの記憶も、あなたじゃダメだった』

「止めて…止めてよ!」

『アリシアを蘇らせる間に、私が慰みに使うだけのお人形。だからあなたはもういらないわ……何処へなりと、消えなさい!』

プレシアの言葉にフェイトは俯いたまま目に涙を溜める。必死に止めようとなのはが叫ぶが、プレシアは聞く耳持たずで、逆に笑い声を上げる。

『フハハ…アハハハ。いい事教えて上げるわフェイト。あなたを作り出してからずっとね…私はあなたが――――』

一拍置いて、再び口を開こうとした瞬間だった


ドゴォォォォ……!!

『――――っ!』

プレシアのいる部屋の扉が、爆音と共に吹き飛びプレシアの足下まで飛んでくる。その出来事に、話す途中だったプレシアも、モニター越しに見ていたなのはやアースラの面々も驚きを見せる。
そして、扉の向こう側に拳を突き出した状態で立つ人影を、プレシアは睨みつける。

『誰かしら?こんな時に…』

『―――お初にお目にかかる、プレシア・テスタロッサ』

人影から聞こえる声は、声変わりがされていないよく響く少年のもの。その人影の姿はマゼンダと黒を基調とした色合いに、緑色の複眼と仮面を持つ、なのはやフェイト、アルフにはよく見慣れた、リンディやクロノにとっては予想外な人物。


―――仮面ライダーディケイド















「あなたは確か…フェイトから報告があった魔導師ね?名前は…ディケイド、だったかしら?」
「偉大な大魔導師様に名前を覚えていただけているとは、光栄だな」

そう言いながら、一歩一歩確実にプレシアの元へと歩いていく士。

『な、なんで君がそこに!?』
『僕が送ったんだ』

向こう側ではクロノが声を荒げながら叫ぶが、それを抑えるようにブリッジに入ってきたユーノが話す。

『き、君は自分がした事を…!』
「いいんだクロノ、俺が頼み込んだんだ。ユーノが悪いわけじゃない」
『ううん、いいんだよ士。僕も望んでやったことだから』

そう言葉の受け答えをした後、プレシアの数メートル前で足を止める。

「あなたは一体ここに何をしにきたのかしら?」
「…別に、アンタを止める為さ」
「私を…止める?―――フフフ、ハハハハハ!!」

士の言葉を聞き、プレシアは大声で笑い出す。

「そんなに可笑しいか?」
「あなたのような輩に、私が止められるとでも?少し浅はかなんじゃないかしら?まぁ何にせよ―――」

と、笑いを止め杖の先を上に上げる。するとプレシアの周りに魔力弾が形成される。

「―――私の邪魔をするつもりなら、消えてもらうわ」

その言葉と共に杖が振り下ろされ、周辺の魔力弾が一斉に照射される。士は後ろへ飛び、転がりながら魔力弾を避ける。
魔力弾が着弾した事で爆煙が発生するが、それが晴れる前にプレシアがアリシアの入っている筒を浮かせながら、爆煙の中を突っ切ってくる。

「邪魔しないでくれるかしら?」
「残念ながら、邪魔しない訳にはいかないんだよ」

士はゆっくり立ち上がりながらライドブッカーから一枚のカードを取る。

「魔導師には―――魔法使いで行こうじゃないか」
〈 KAMEN RIDE・WIZARD! 〉

そう言いながらディケイドライバーに装填し発動し、士が左手を横にかざすと、士の左横に赤い魔法陣が現れる。だがその魔法陣はなのは達が使う物ではない特殊な物だった。

〈ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!!〉

それがゆっくりと士を通ると、士の姿が新たな物へと変わる。
全身を黒い魔法衣・ウィザードローブで纏い、胸やマスクに赤い宝石を埋め込んだライダー、『仮面ライダーウィザード』へと変身する。

『なんだ今の音は!?』
「気にするなクロノ。いつもの事だ」

部屋を出た両者。先に出た士はそこに佇み、プレシアはアリシアの入った筒を浮かしながらやってくる。

「私達の旅を、邪魔されたくないのよ」
「旅?一体何処へだ?夢の島とかいうんじゃねぇだろうな」

プレシアの言葉に、士はそう少しふざけながら言う。プレシアがゆっくりと両手を上に掲げると、プレシアの目の前に十個のジュエルシードが浮かぶ。

「忘れられた都、アルハザード……そして取り戻すわ…全てを!!」

とプレシアが言うと、宙に浮かんでいたジュエルシードが回転しながらその円を大きくしいく。

「だから…行かせねぇって!」
〈 ATACK RIDE・BIND 〉
〈バインド・プリーズ〉

その音声と共に士が右手を前にかざすと、プレシアの周りに赤い魔法陣が数個展開される。そしてそこから鎖が現れ、プレシアを拘束する。それと同時に、ジュエルシードの動きも若干鈍る。

「ぐっ!?な、何!?」
「少しおとなしくしていてもらうぜ」
〈 ATACK RIDE・EXTEND 〉
〈エクステンド・プリーズ〉

必死に抵抗するプレシアだが、対怪人用の技に人間の力が通用する訳もなく、プレシアを拘束する鎖はピクリともしない。

士はそこでさらにカードを取り、ディケイドライバーへ。そして音声が鳴ると右手をかざし、魔法陣を展開。そこへ両手を突っ込むと、両腕がゴムのように伸び、動き回るジュエルシードをつかみ取り、自分の元へ引き寄せる。
魔法陣を再び通り、士の両手には十個のジュエルシードがあった。それをディケイドライバーの近くへ持っていき、ジュエルシードをトリスの中へしまう。

「なっ!?」
「ふぅ、これで暴走はしない…筈なんだけど」

士はそう言い、右手を横に払う。するとプレシアを拘束していた鎖が消え失せ、プレシアが自由になる。

「…なんの真似かしら?」
「これでアンタは俺を倒さない限り目的を果たせない訳だが……さぁ、どうする?」
「―――なめるなぁーー!!」

プレシアの叫びと同時に、プレシアの周りに魔力弾が形成される。それは先程とは比べ物にならない程の量だ。

「―――さぁ…ショータイムと行こうか…!」

士は手を払うように叩き、構えを取りながらプレシアに向けて言い放つ。
















二人の戦いが始まり、アースラのモニターを見続けていた人達は声を漏らす。

「士君……」
「あの子…一体何を…?」
「………」

「あのバカは…!なんであんなところに」
「私がユーノ君に座標を教えたの」
「なっ!?エイミィなんで!?」
「ご、ごめん!本当は教えない方がいいのはわかるんだけど、あんなに真剣な物腰で頼まれたら……」
「……それにしても、彼にあんな力があったなんて…」

ブリッジにいるなのはは士の名前を呟き、リンディはモニターに映る二人の戦闘を見入っていた。クロノやエイミィもそれぞれ言葉を交わすが、フェイトは相変わらず顔を垂らしたままだった。
















プレシアの魔力弾が飛び交う中を、士は走りながらかいくぐる。時々その魔力弾を身に纏うローブで受け、自身の魔力へと変える。

「さっさと…ジュエルシードを返しなさい!」
「返せって、元々アンタのじゃないだろ!」
〈 ATACK RIDE・WIZERSORDGUN 〉

襲い来る魔力弾を避けながらカードを発動。士の横に魔法陣が展開され、底に手を突っ込み引き抜くと、士の手にウィザードの専用武器『ウィザーソードガン』が握られていた。

[トリス、この武器の弾丸の種類を非殺傷のものに変えておいてくれ]
[了解です]

「はぁ!」
「フンッ!」

トリスに念話でそう指示し、手にしたウィザーソードガンを一回転させ、プレシアに向けて駆けながら引き金を引く。銃口から放たれた魔力で形成された弾丸は、プレシアの前で見えない壁に阻まれる。

「はぁああ!」
「くっ…!」

プレシアの元に来た士はソードモードのライドブッカーを振りかざす。しかしそれもまたプレシアの見えない壁に当たり、火花が飛ぶ。

「アンタは知ってたか!?フェイトがあのジュエルシードにかける気持ちを!アンタに対する思いを!」
「そんなもの、私とアリシアには関係ないわ!」

プレシアは士の問いに見えない壁を弾くように押す。押された士は、その勢いのまま飛びながら後退する。

「フェイトはアンタの為に…アンタの笑顔を見る為に戦ってたんだ!」

下がった先に落ちる紫電の雷を避け、士は叫ぶ。そして再びプレシアへウィザーソードガンの引き金を引く。

「だから関係ないって言ってるでしょ!」

その弾丸を障壁で防ぎ、さらに魔力弾を放つ。それを士は更なる弾丸で防ぐ。

「それにフェイトはアリシアの代わりだと…アリシアのように笑いかけてくれなかったと言ったな?」
「そうよ…あの子は所詮作りもの!結局アリシアの代わりにはならないし、アリシアのように笑ってはくれない!」

「それじゃあアンタは…フェイトに心からの笑顔を見せた事があるのか!?」
「っ!?」

士の言葉に、プレシアは言葉を詰まらせる。

「アイツがアリシアの代わりにならない事ぐらい、親だったアンタなら早い段階で気づいた筈だ。ならなんでフェイトを一人の人間として見てやれない!」
「……るさい…」
「どうして家族の一人として見てやれなかったんだ!?」
「…うるさい…!」

「何故自分の一人の娘として見てやれなかったんだ!!」
「――――黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

士の叫びにプレシアは自らが持つ杖を振り下ろし、士へ紫電の雷を落とす事で答える。雷によって士の周りには爆煙が立ちこめ、士の姿が見えなくなる。

「私は…アルハザードで取り戻すのよ!アリシアを…アリシアと一緒に過ごす筈だった時間を…そしてこれから先の未来も!!」

そう言い、杖を掲げ再び魔力弾を形成するプレシア。爆煙が晴れていく中、士の姿が見えてくる。


「―――『過去』にすがって、『現在(いま)』に向き合えない人間が……『未来』を語るな!!」


そんなプレシアに、ウィザーソードガンを銃として、ライドブッカーを剣として持ち、士は銃口をプレシアに向けて駆ける。



  
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧