ソードアート・オンライン 《黒の剣士と白の死神》
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第一部 全ての始まり
第一章
第七話 迷宮区に乗り込む (後編)
前書き
ニセモノの世界に囚われて、
何故君達は抗おうとするのかな?
それは、きっと…………
「……くそったれが…………!」
切り飛ばされた瞬間、ディアベルはこう言っていたのだろう。
(声が出てないから読唇術で判断したが)
そんな、と。
くそったれが、ともう一度つぶやいて俺は前を向く。
ボス部屋は、疲れきったプレイヤーばかりだ。
……数は、はじめより少ない。
もちろん、次層の転移門をアクティベートしに行ったプレイヤーもいる。
だが…………。
彼らが脳を焼ききられて死んだのか、
現実世界に戻れたのかは知ることもできない。
「ここからが本当の、デスゲームの開始だな……。」
俺は一人つぶやいた。
キリトは居ない。
あいつ、一人で背負いやがった。疑心暗鬼の状況を防ぐために……
ふざけんな!
確かに、その選択はベストと言い切れるかもしれない。
だが、
俺は、キリトを追う……!
「ヒースクリフ。」
「……そろそろ来るかと思っていたよ。」
あれ~?おかしいなこの人。さっきは生きるか死ぬかの状況だったのに、もう指揮を執ってるよ~?
「じゃあ、俺の言いたいこともわかるだろ?」
「ああ。……何処へとも行くが良い。ただ、君とはまた会うことになるだろう。」
「…………宿代はその時払うよ。」
「ふ……そうしてくれたまえ。」
ヒースクリフはそう言うと、俺に背を向けた。
行っても良い、と言う事だろう。
俺は何も言わず、次層への階段を上り始めた……。
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《サイド・キリト》
草原を走る。
俺は、いつの間にか着いて来た謎のプレイヤーから逃げていた。
そいつは俺より敏捷力は低いが、しつこく追ってくる。
俺は逃げるのを止め、岩を背にして片手剣を構える。
「そこにいるんだろ?出て来い!」
「……よお。」
フードの下から出てきたのは、見知った顔―――キョウヤだった。
「キョウヤか……脅かすなよ。」
「キリト、ちょっとこっちに来い。」
「なんだよ……?」
とりあえずキョウヤの隣に行く。
「目をつぶれ。数秒で良い。」
「……?」
まさか、強盗するつもりか……?
「すうーーー……」
キョウヤが息を吸い込む音。
やばい、と思ったのもつかの間、
『お前、馬鹿じゃねえの!!!!!』
耳に鋭い声が刺さった。
「お前なあ!本当に馬鹿なの!?あの状況でそれ行ったら自分が恨み買うとかわかってんの!?
確かにあの選択はベストといっても良いけどよ、残されたやつとか知り合いの気持ち考えねえの!?
うん。お前は馬鹿だ!」
一息でそれを言うと、ぜえぜえ言うキョウヤ。
「うるせえよ!と言うかあの状況でそれ以外に何か方法あったか!?」
耳が痛い。すごく痛い。
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《サイド・キョウヤ》
「だとしても、お前は一人で背負い込みすぎるんだよ!」
「じゃあ、どうしろっていうんだ!」
反論するキリトに、俺も返す。
「悪役なら俺がなれば良かったんだよ!お前はソロ、だけど俺はいろんな人と面識持っているんだよ!」
「それが……」
と言った時、キリトの顔が変わった。
「そういう事か……。俺は人との接点が少ないから関係が直りにくい。だけど、」
「俺は接点が多いほうだと思うから、そういうのは直りやすい。」
「……ともかく、お前は昔から無茶をし過ぎだ。だから、俺がお前を監視する!」
「……はあ!?お前何言ってるんだ!?」
「だから、わかりやすく言うとお前とコンビ組ませて下さい!というか組め!」
「最後はもはや脅迫だろ!?
……いや、だけど断る。俺についていれば、キョウヤの信頼性だって……!?」
キリトのHPバーの周りがグリーンに点滅する枠に囲まれている。
「ったく……手荒なまねはしたくなかったが……。」
俺は、PoHから貰った短剣と、麻痺しているキリトを見比べた。
「この毒、小動物を麻痺させるだけって言ってなかったっけ……?」
「……か、…キョウヤ……何…を………!?」
「お前がいつまでも拒否するから悪い。」
俺はそう言い、自分のメニューを操作しつつ、キリトの腕を持ってメニューを操作する。
「よし。これでフレンドの手続き完了だな。」
「…………」
「安心しろよ。麻痺はすぐ消えると思う。」
(思うって何だよ!?)
「なあ、キリト。ココからは俺の独り言だ。」
「…………」
「フレンドを解除したければすれば良い。今回は無理やりだったからな。だけど、これは覚えておいて欲しい。」
(キョウヤ……)
「お前がもし、一人になって誰もがお前のことを責めたとしても。俺はお前の味方だ。それだけだ。」
「…………」
「麻痺ももう回復しただろ?……どうする、キリト。」
キリトが起き上がり、こっちを向く。
「……わかったよ。だけど、俺からも言わせろよ。」
「どうぞ。俺はいつでもできてますよ。」
「俺も、お前の味方だ。この中では違うけど、お前は大切な友達だ。」
「……ま、そう言うと思ったよ。」
「ま、まあお前が絶対って言うからコンビ組むんだからな!」
(別に絶対って言って無いけど……ツンデレ?)
「何か失礼なことを考えてないか?……これからもよろしくな、キョウヤ。」
「ああ。 …………ありがとう。」
「何か言った?」
「いや。そろそろ行くぞ。日が暮れる。」
「そうだな。良い宿があるといいよな……」
この場所はニセモノかもしれない。
だけど、この世界でなら、俺は輝ける気がした。
それも、この友人がいたから。
たとえどんな事があっても、俺は、
……いや俺たちは上を目指す。
後書き
どうも。桜狼です。
投稿が遅くなってすいません!数少ない読者の方、すいません!
さて、いかがでしたか。これで第一部 全ての始まりは終わりです。
次回からは《月夜の黒猫団》がメインテーマとなります。そして急ぎ足で行きます。
ちょっと序章が長くなりすぎるし、時間もあまり取れなくなってきたので……。
それでは。
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