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ソードアート・オンライン 《黒の剣士と白の死神》

作者:桜狼
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第一部 全ての始まり
  第六話 迷宮区に乗りこむ(中編)


「ボス部屋が見つかった、か。本当かヒースクリフ?」

「ああ。とあるプレイヤーが見つけたらしい。」

とあるプレイヤーって誰だよ、と思いつつ聞いた。

「で、何で俺のところに?……どうせまた何か裏があるんだろ。」

ヒースクリフは微笑を浮かべつつ言う。

「結論から言おう。我々もボスとの戦いに出ることになった。」



「本当か?」

「嘘を言うとでも?」

「……まあ見つかってもおかしくはないけどな。もうあれから一月たつし。」

あの、死のゲームが始まってから一ヶ月がたつ。

当初のプレイヤーのパニックは凄かったが、落ち着いた状況だ。

「で、戦いに参加するやつらとはいつ会うんだ?」

「明日、12時30分に黒鉄宮前の広場で集合となっている。そこで会えるだろう」

「ありがとなヒースクリフ。あ、何かすることあるか?」

「君はいいのかね?君は私と契約を交わしているわけだが。」

「宿食事代ぐらいの働きはするさ。」

(宿代の総額はかなり辛いからな……あとで請求されても払えないし。)

「それは頼もしいな。では、君には……」



____________________________________

《黒鉄宮前広場―12時30分》

「皆!よく集まってくれた!私はディアベル!―――」



声が響く中、とある集団では不安そうな声があった。

「遅いな……先生。もう12時30分なのに……」

「そろそろ来てもいいころだと思うのにね……」

「……ずいぶんと遅かったな。」

「へ?そんな事いったってヒースクリフさん、まだ来ていな―――――

「うらああああああああ!!!」



「ちょっと待ったあああああ!!!!!  ……ふにゃ!?」

声の主は、皆が注目する中、見事に段差につまづいた。

(((あ、こけた)))

「……はあ。何やってんだキョウヤ。……ったく人に荷物持たせておいて。」

キリトが道から出てくると、キョウヤは無言で立ち上がった。

「……遅くなったなヒースクリフ。」

「そんな予感はしていたよ、キョウヤくん。それで、全員分そろったかい?」

「ああ。結構もってきたぜ。」

「俺の気持ちも考えろよキョウヤ。」

「悪かったから落ち着け。なんとなくで頼んで悪かった。

……キリト、オブジェクト化してくれ。」

キリトはため息をつくと、ウィンドウを操作し、それらをオブジェクト化した。

「おい、これ……」

「ポーションから始まっていろいろな回復系アイテムだ。一層の店が全部売り切れになりそうなほど買ってきたぞ。」

(売り切れないから実際は比喩だけどな)

「万が一、と言う事もある。だが、持っていて損ではないと思うぞ。」

「ちょっと待てや!」



「誰だお前?」

「ワイの名前はキバオウ!あんた、いきなり来たと思ったら怪しすぎるで!」

「どこが怪しいんだ?俺の身なりか?」

「そういうことやあらへん!信用ならへんのや!それにそのポーションやって!」

「おい、キョウヤは……」

キリトを手で制し、キョウヤはいう。

「どこが信用できないんだ?」

「βテスターやからや!あの時からわいらと情報は共通せんし、

狩りやすい所も教えへん!そこが信用できへんのや!」

場の緊張が高まる。一触即発のように張り詰める。

「情報だってなるべく共通してるし、狩りやすいところも教えてるぜ?」

「犯罪プレイヤーの被害を受け取るのはわいらや!」

「止めろ!!!」

ディアベルの声が響く。

「!!」

「……」

「今仲間内で争ってどうする!喧嘩でもするんだったらこのゲームをクリアしてからにしろ!」

「チィ!」

「は~い」

「……それでは、―――――


_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _


結局、その日は会議だけで終わった。

(原因は俺と、確かキバオウ?ってやつだな。)

あの後は少しβと普通のプレイヤーとでギスギスしてしまったが。



……一つ気にかかることがある。

俺は、始まりの町で購入した黒パンをかじりながら思った。

ボスは、βと同じなのだろうか。

―――議題でも出たが、武器や、行動パターンなど。

同じなら何も問題はないが、……妙に気にかかる。

あの茅場晶彦のことだ。もしかすると、最悪ボスそのものも変えているかもしれない。

一度手札をさらしたなら、普通のやつなら手札を変えるはず。

今のところ、茅場っぽい人物は、

―――――ディアベル。やつが茅場なのか?

だがどうどうと目立つような行為をするのか……?

ああもうこんがらがってきた!



「寝るか……」

おれはベッドに倒れこみ、目をつぶった。

アイテム集めで疲れていたのだろう、すぐに夢の世界にまどろんでいった。

___________________________________

《第一層迷宮区》

「それでは、乗り込むぞ!」

「「「「うおおおおおおお!!!!」」」」



やはり、仮想の死が現実の死につながるためなのか、

数千人の中でも百人ぐらいしか攻略パーティーにいない。

しかし、皆が同じ情報を共有し、話し合っている様子はとても頼もしい感じだ。

「?そういえば先生は?」

「まだ来て」

「いるぞ。」

「頼もしい限りだよ。片手剣の狩人くん?」

「そういわれて光栄です、団長さま?」

あいさつ代わりの皮肉を言い合った後、俺は盾をオブジェクト化した。

「ほう……君は盾をつけないと思っていたが。」

「普段はつけないほうがなれてんだよ。剣道とかも持たないし。」

現実世界での俺は、そこそこ運動もできて、頭も働く一般的な学生だ。

蛇足だが、今は中学生だ。だが、この容姿のせいで……。

「キョウヤ!?目がうつろだぞキョウヤ!?」

「キリト~」

そんなこんなで。



《第一層迷宮区 ボスの間》

「そこだ!」「回復頼む!」

「くそ!何でこんな!」「ぎゃああああ、―――!」

「雑魚を先にしとめろ!」「キリト、交代!」

「ふっ!」「怯むな!前だけみればええ!」

地獄と化していた。



たとえプログラムが作ったとはいえ、それはリアルすぎる。

慣れていても、心のどこかで恐れる。

「まだ倒れないのか!」

その声が、戦場に絶望を引く。

「があ―――――!!!」

一つ一つの声の間に、硬質な音。



「くらえええええ!!!」

俺は、ボス―――『イルファング・ザ・コボルト・ロード』にスキルを叩き込むと、キリトと交代した。

「めんどくさいな、こいつは!」

ポーションを飲みながら俺は言う。

その瞬間、



その瞬間、

『ぞくっ』

言い表しがたい嫌な感じ。

「キリト!一回戻れ!」

キリトも、何かを感じたらしく、いったん戻ってきた。

「ボスの動きが止まった!今だ!」



一斉にかかろうとするプレイヤー。

「みんな止めろ!様子がおかしい!」

俺が言うが、誰も耳を傾けない。

一部の人は、ボスから離れているが。

「何で止めるんだよ!手柄は渡さねえよ!」

「指揮官も進めって言ってるしな!」

俺の声を無視して進むプレイヤー。

その中には、―指揮官―ディアベルの姿も―――



ボスの目が、笑っている。

俺には、そう見えた。



そこから俺は、あまり覚えていない。

 
 

 
後書き
桜狼です。

投稿がかなり遅くなりました……

数少ない読者の方、すいません。

次回をお楽しみに! 
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