リリカルなのは~優しき狂王~
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第三十八話~日常と動き出す歯車~
前書き
今回は早めに更新できました。
そう言えば、トレス絵なのですが自分の中のイメージ補完の為に描いたライの絵をギャラリーの方にUPしてみました。よければそちらも方も見ていただければ幸いです。
では本編どうぞm(_ _)m
???
その空間を進む幼い少女がいた。
その少女は何かを探すように、何かを求めるように、何かに縋るようにその足を進める。
その少女は自分が今歩いているのか、走っているのか、這っているのかもわからない。
ただ何かに突き動かされるようにただ進む。
そこに彼女の意志があるのかも既に定かではない。
そして、とうとう力尽きたのかその少女は進むのをやめてしまう。
「…………………………ァ……」
その少女は弱々しい声で何かを呟く。
「……………………………マァ………」
その声が少しだけ大きくなる。
「…………………ママァ…………………」
その言葉は彼女が求めた救いの形。自分を見てくれる存在を求める願い。
「ママァ………」
少女の声が湿る。その瞳からは雫が溢れる。しかし彼女はその存在を求め続ける。
そんな少女の願いが届いたのか、その少女の前に1人の女性が姿を見せる。その女性の存在に気付いた少女はその女性を見上げる。
「……ママ?」
願うようなその言葉に女性は答える。
「失礼なやつだ。私はまだ結婚もしていないぞ」
その声はとても不機嫌で、その言葉を聞いた少女は再び大粒の涙を流す。
「ああ、もう泣くな。まったく、声が聞こえて来てみればその声の主がこんな子供とはな」
その女性はどこかめんどくさそうにその少女を宥める。
「それで?お前はこんなところで何をしていたんだ?」
少し落ち着きを取り戻した少女に女性は問いかける。
「ママ………いないの……みつからないの…………」
言葉にすると悲しくなったのか、少女の目尻に涙が滲み始める。その様子を見ていた女性はやれやれと思いながらもその少女を慰める。その時、悪戯を思いついたような表情を浮かべた女性が少女に話しかける。
「お前のママは知らないが、パパになってくれそうな奴なら心当たりがあるぞ」
「え?」
「こういう奴だ」
女性がそう言うと、少女の脳裏にある人物の姿が浮かぶ。
「……この人が?」
「そうだ……………そろそろ時間か」
「え?」
女性がそういうのと同時に少女の輪郭が段々とぼやけてくる。
「い、やぁ……」
自分が消えていくことに恐怖を覚えた少女は声をあげる。だが、女性が優しい笑顔を見せながら少女に話しかける。
「安心しろ。お前は消えるわけじゃない。お前のいる世界にもどるだけだ」
その言葉を聞いて少女はよくわからないという表情をする。
「そうだな……“ここ”に来られたということはお前のパパになってくれる奴のいる世界に行くということだ」
「ほんとう?」
「ああ、だから今は眠れ。目覚めた時、そこがお前にとっての生きる世界だ」
その言葉を最後に少女は女性の前から姿を消した。
ライが自分の過去を明かしてから数日が経過した。
その間、ライに対する六課メンバーの態度は以前よりも軟化していた。当初はライを捉えたことや疑ったことに罪悪感を覚えていた人が多くいたが、その人たちにライは言う。
「貴方がたのしたことは至極当然で、そして仲間を心配してやったことですから気にしていません。もしそれでも自分に罪悪感を覚えるというのなら、それは自分自身が許したくないだけの筈です。」
ライはシャーリーがスザクに残した言葉を使うと、その人たちも最初は戸惑ったが徐々にライとの接し方に違和感を無くしていった。
そしてライの方も、以前よりも六課の人達と接することが多くなった。正確には、ライの元に行く頻度が増えた人が多くなった、というものだが。ライもそれまでどこか一歩引いた付き合い方をしていたのをやめ、より砕けた付き合い方をするようになっていた。
機動六課・訓練場
その日の朝もいつものように空間シミュレーターを使用し、六課フォワード陣は訓練を行っていた。
そして新人達となのはとの模擬戦が終了し、今はもうひと組の模擬戦が始まろうとしていた。
今回使われているシミュレーターの環境設定は自然が豊富な林であった。その中にある少し開けた場所にその2人は立っていた。
「全力で行くよ!」
「うん」
片ややる気満々な女性。片や少し疲れた表情を見せる青年。その2人がある程度の距離をとって対峙している。
その女性、フェイトは愛機であるバルディッシュを構える。それに応じて、ライも展開した蒼月を構えた。
(フェイト、やる気に満ちてるなぁ~)
どこか現実逃避気味にライはそう考えていた。
こんなにもフェイトがやる気満々なのにはある理由があった。先日なのはがライに依頼した、ティアナの指揮官としての指導。その内容はライにチェスで勝つことであった。
初め、それを聞いたティアナは困惑した。しかしその困惑も一度やってみるとすぐに吹き飛ぶ。
初戦でお互いに十手ずつ打ち合ったところ、ライが紙とペンを取り出し何かを書き始める。そしてその紙をその場にいたなのはに預け、チェスを再開する。それを見ていた一同はライのその行動に理解できなかった。だが、ライがチェックメイトと言って決着が着いた後、先ほどのライの行動の意味が判明する。
「なのは、さっきのメモを読んでくれる?」
「え、うん」
なのはが読み上げていったのはチェスの棋譜。しかもその手筋は今行われたライとティアナの対局の内容そのままであったのだ。その場にいたライ以外の全員が呆然とする中、ライは言う。
「ゲームの勝敗は置いておいて、まずは僕の予測を超えられる思考を身に付けようか」
それを聞いた何人かは「それは予測じゃなくて、予知の域だ」と、内心でツッコミを入れていた。
そしてその場にいたはやてもライのその特訓に参加したいと言い出し、今ではライはティアナとはやての2人と一日一回はチェス、もしくは将棋を指している。
それを知ったフェイトはとても分かりやすく拗ねた。何故なら、ライと予定していた模擬戦は行えず、しかも間が悪いことにフェイトの執務官としての仕事の都合であまり時間を取ることもできず、結局は今までライと一回も模擬戦ができずにいたのだ。
それまでは仕方ないと我慢していたフェイトであったが、はやてやティアナへの指導をあっさり了承したライを見て我慢の限界がきたのか今朝の訓練に参加できることが決まった瞬間、フェイトが宣言したのだ。
「ライ!今度こそ私と模擬戦してね!」
その剣幕に一同は驚き、ライもこくこくと頷くしかなかった。
そして現在、フェイトにとっては待ち望んだ瞬間が来たのであった。
「蒼月、パラディン、セットアップ」
「イエス マイ ロード」
「ラジャー、セットアップ」
ライが蒼月とパラディンの2機を起動させる。そして蒼月のバリアジャケットとパラディンの装甲を纏う。しかしその姿はなのはとの戦闘の時と違い、エナジーウイングの羽は折りたたまれていた。そして更に、ライの手にそれぞれ1本ずつのショートソードが握られている。これはそれぞれ、蒼月とパラディンの展開状態である。
蒼月単機でも形態を変えれば剣を2本にすることはできる。だがそれでは2本とも剣が細くなり、どうしても扱いが難しく、そして戦闘に耐えられる時間が短くなってしまうのだ。
それを嫌ったライは、パラディンの形態をヴァリスとショートソードの2つを設定していた。これにより、蒼月とパラディンの二刀は蒼月単機の二刀よりも長時間戦闘に耐えれるようになる。
『じゃあ、始めるよ』
通信でなのはが2人に声をかける。対峙する2人はその声に頷いて返す。
『それじゃあ、模擬戦開始!』
その言葉が聞こえると同時、ライの視界からフェイトが消える。
「ッ!」
それと同時に背後から聞こえた砂を踏む音。その音が聞こえた瞬間、ライは姿勢を低くし、前方へ転がるように跳んでいた。
直様振り返ると、そこにはハーケンフォームのバルディッシュを斜めに振り下ろしたフェイトの姿が見えた。
(今のを避けちゃうんだ。やっぱりライってすごい!)
自分が興奮していることを自覚しながらも、フェイトはそれを恥ずかしくも沈めようとも考えてはいなかった。
一方、ライはフェイトの立ち位置が自分の間合いの一歩先であるのがわかった瞬間、身を低くしたまま一歩を踏み出していた。
ライのその動きが見えた瞬間、フェイトはバルディッシュを構えなおそうとした。だがそれはライの予想外の行動で動きを止めてしまい出来なかった。
「え?」
口から無意識に出る間の抜けた声。その原因を作ったライの行動。それはライが自分のデバイスである2本の剣を手放したからだ。
熟練した魔道士なら、ある程度デバイスとの距離が離れていても展開されているバリアジャケットを維持することはできる。しかしライは戦闘について熟練者であるが、魔法に関しては素人である。その魔法の力量の足りない部分の底上げはデバイス任せといってもいい。その為、デバイスを手放すとライの纏っていたバリアジャケットは当たり前のように解除される。その事もフェイトを混乱させる要因の1つになっていた。
「え?え?」
そのまま自分に近づいてくる生身のライにどう対処していいか分からないフェイトはその場で立ち尽くす。
お互いに手を伸ばせば届く位置になったとき、ライは両手を伸ばしバルディッシュを掴む。そのままバルディッシュを回転させフェイトの手からむしり取ろうとする。少なくともフェイトにはそう見えた。
フェイトは魔道士としての訓練や実戦を経験している。その為、無意識に愛機であるバルディッシュを手放さないようにする。それが今回は裏目に出た。
バルディッシュを回転させると同時に、ライはフェイトに足払いをかける。それが原因でフェイトの体が一瞬浮く。バルディッシュを回転させた勢いもあり、フェイトは空中で体勢崩す。
その隙にフェイトの懐にまで近づいたライはフェイトの腕とバリアジャケットを掴み、柔道の背負い投げの要領でフェイトを地面に仰向けの状態で落とす。
何が起こったのか理解できずに、ポカンとした表情をするフェイトにライは問いかける。
「頭は冷えた?」
ライのその一言でフェイトは顔を赤くして羞恥の表情を浮かべる。
見透かされていたのだ。フェイトが舞い上がっていたことを。その事がバレていると分かった瞬間フェイトの表情はバツの悪いものに変わった。
ライはフェイトから距離を取ると蒼月とパラディンを拾う。
「戦いを楽しむのはいいけど、今は模擬戦でしかもみんなも見ている前だから」
仕切り直しの意味を込めてライは構えなおす。それを見たフェイトは慌てて立ち上がり構えなおす。
「ごご、ごめんね!え~~と、その」
ライの言葉を聞いて慌て出すフェイト。その姿を見たライはその彼女の姿が可笑しくて笑みを零した。
機動六課・訓練場付近
一部始終を見ていた六課のフォワード陣はそれぞれ個別の反応をしていた。フェイトの様子に苦笑いしたり、呆れたりしている人。他にはライの技量に感嘆している人もいた。
特にそれが顕著に現れていたのは恐らくティアナである。
彼女はなのはにあの時言われていた。
「相手が自分よりも強いのなら、相手に勝てる自分に有利な状況を作り出す」
それを言われた時、ティアナはライの記憶で見た事を思い出していた。ルルーシュやライは極少数の味方だけでブリタニアの軍勢に拮抗する戦いをしていた。そのことを思い出したのだ。
そして今、ライはそれを実際にやってみせた。以前までのティアナならそれを簡単にやってのけるライに嫉妬していた。だが、今のティアナの胸中にあるのは純粋な尊敬と憧れ。そしてそれを自分でも出来るようになろうとする向上心が渦巻いていた。
そんな彼女から少し離れた位置にいるヴィータはなのはに話しかけていた。
「なぁ…………あいつを、ライの奴を本当にまた戦わせるのか?」
「うん。それをライ君は望んでいると思う。それに何もできない方がライ君にとっては辛いことだと思うの」
「けどさ、あいつをこれ以上戦場に立たせるのはまずいんじゃねーか?」
それは純粋にライを心配しているヴィータの言葉であった。彼女は六課の中でも特に優しい部類に入る。その為、身内が何かをしようとする際には一番にその身内のことを考えるのは彼女であるのだ。本人にそのことを言えば強く否定するのだろうが。
だからこそ彼女はライが元の世界で、これ以上ないほど傷ついていることを心配してその質問をなのはに聞いてみた。
「ライ君は大丈夫だよ」
ほぼ即答に近いなのはの言葉にヴィータは面食らう。
「確かにライ君はこれ以上ないくらいに傷ついていると思う」
「なら――」
「でも、これ以上ライ君が傷つかないように私たちが頑張ればいいんだよ」
それを聞いたヴィータは驚いた顔をしたあとに微笑みが溢れていた。何故ならその言葉を言った時のなのはの表情がなのはが大怪我を負う以前の表情であったからだ。
その表情を見れて安堵すると同時に、なのはの言葉に素直に納得するのも少し癪に触るので彼女は軽口を叩いた。
「単純」
「にゃ?!それは酷いよ!」
なのはの言葉が虚しく響いた。
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ラ「毎度お馴染み、司会進行のライです。今回のゲストはこの2人です」
ヴィ「リリなの代表、鉄槌の騎士ヴィータだ」
ジェ「ギアス代表、ジェレミア・ゴットバルトと申します」
ラ「今回はある意味心機一転の回でした。2人から何か質問は?」
ジェ「御一つだけございます」
ラ「ジェレミア卿?」
ジェ「今の世界でライ様はお幸せでしょうか?」
ラ「?普通に幸せだけど………どうかした?」
ジェ「私はルルーシュ様の死を回避するために友情という誓いを貫き通した貴方様を尊敬しているのです!だからこそ、貴方様の幸せは私にとっては重要なことなのでございます」
ヴィ「なんだ、コイツ?」
ジェ「おお、そう言えば貴方のことも聞き及んでいました!自らの主の為、罪と分かりながらもその身を捧げるように行動を起こした騎士と聞いております!」
ヴィ「まぁ………間違ってねぇーと思うが」
ジェ「その忠義の心は騎士の鏡と言っても過言ではございません!そんな貴方に私は尊敬の念を抱いてります!」
ヴィ「そう言われて悪い気はしねぇーな。お前のこと気に入ったぜ!」
ラ(話が脱線してるけど………楽しそうだからいいか)
ラ「え~~と……あの2人がオレンジ味のアイス食べに行ってしまったので、今日はここで強制終了です。次回は本編がまた進みます。それではまた次回」
ヴィ「このアイス、ギガウメェーーーーーーーー!!!」
ジェ「シャーベットもございます」
後書き
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