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久遠の神話

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第四十四話 不老不死その七

「その医者を見つけ出してだ」
「中田さんのご家族を回復してもらえば」
「何の問題もない筈だ」
 工藤はこの確信を上城、そして高橋に話す。
「それで人が救われる」
「中田さんのご家族、それにですね」
「彼自身もな」
 掬われるというのだ。彼もまた。
「だから是非にと思うが」
「そうしたお医者さんを見つける方法は」
「ある」
 工藤は確かな声でまた答えた。
「俺から一佐にお話してだ」
「そこからですか」
「自衛隊にも諜報部はあるしな」
 その詳しい名称は言わなかったが確かにあるというのだ。そしてそれは本当のことだった。組織は全てを公にできるものだけとは限らないのだ。
「そこに頼めばだ」
「見つけてもらえるんですね」
「医者といっても色々だしな」
 工藤はここでこうも言った。
「それこそ漫画に出て来る様な、な」
「医師免許はなくてもですね」
「優れた医者もいるからな」
「ブラックジャックみたいにですか」
「そうした医者もいるのだ」
 工藤は言っていく。表には出ない話を。
「だからだ。あらゆる手を尽くせば必ずな」
「中田さんのご家族は助かるんですね」
「費用はかかるがな」
 工藤はこのことについても言及した。
「しかしだ」
「それでも。誰かが助かるのなら」
「金は大した問題ではない。特にだ」
「特に?」
「今は作戦だ」
 工藤、そして高橋にとってはこの認識があった。高橋は警官なので勤務だがそう考えられることだった。作戦だとだ。
「それで一人の剣士が、戦いを選んでいる剣士がいなくなるならな」
「いいんですね」
「安いものだ」 
「安いですか」
「彼は強い。戦いを止める為の障害の一つが戦いではなくそれで消えるならだ」
「安いですか」
「人命は失わないに越したことはない」
 現代日本の考えではある。これが全体主義国家ならばまた違う考えになるだろうが工藤、そして高橋はこう考える方だった。
「それではな」
「そうですか。それじゃあ」
「そうした医師はこちらで調べる」
 そうするというのだった。
「いるかどうかな」
「じゃあお願いします」
「ただ。見つけ出してここに来てもらうまでにはな」
「それはですか」
「時間がかかることも考えられる」
 それは覚悟しなければならないというのだ。
「このことはわかっておいてくれ」
「そうですか。それは」
「表の世界にいればいいがな」
「本当にブラックジャックみたいにですね」
「ああした医師は中々見つからない」
 実際にいてもそうだというのだ。表の世界にいる人間にとって裏の世界はまさに異世界だ。上城にしろ工藤達にしろ表の世界の人間だからだった。 
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