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万華鏡

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第二十八話 浴衣その十

「漕ぐのよ」
「ふうん、そんな訓練もあるの」
「あの学校では兵学校の頃からある訓練でね」
「今もしてるのね」
「そうなの」
 里香は琴乃にこのことも話した。
「あの学校の名物訓練の一つよ」
「ふうん、そうなのね」
「ただ。私達は見られるかどうかわからないから」
 このことははっきりしないというのだ。
「向こうの事情だから」
「それでなの」
「そう、けれどね」
「兵学校には入られるのね」
「それで色々と見られるから」
 その色々とはどういったものかというと。
「資料館、博物館みたいなのもあるから」
「海軍の?」
「そう、そこも凄いから」
「ううん、軍事関係の博物館ね」
 琴乃は兵学校にあるからすぐにわかった。
「どんなのかしら」
「それは見てのお楽しみやで」
「凄い場所なのは確かけえ」
「戦艦の砲台の模型がそのままの大きさであるし」
「大和の模型なんか凄いものじゃけえ」
 先輩達は去年自分達がその目で見たことから話した。
「そやから行こな」
「呉とかにも行くけえ」
「そういえば宇野先輩呉にも」
 美優がその宇野先輩に問う。
「よく行かれてたんですか」
「わしは府中じゃけえあまり行ってないけどな」 
 それでもだと、宇野先輩は美優に顔を向けて答える。
「呉にも何度か行っとるけえ」
「じゃあ詳しいですか」
「ある程度じゃけえ。自衛隊の港があって」
 そしてだというのだ。
「道が碁盤みたいになってるんじゃ」
「京都みたいにですか」
「話聞いたら軍港から出来た町じゃから道も整えられたけえ」
「それで碁盤なんですか」
「その方が動きやすいけえ」
 それでだというのだ、少し足をふらつかせながらも確かな声で話す。
「それでじゃ」
「軍隊の町ってそうなるんですか」
「そうらしいけえ」
「成程」
 美優もここで頷いた。
「そういう町なんですね」
「ええ町じゃけえ」
「治安がいいんですか?」
「まあええか」
 治安はこんな感じだった。
「ちゅうかヤクザ屋さん多いけえ」
「それよくないですよ」
「港町で多いんじゃけえ」
「何で港町で多いんですか?」
 そのヤクザがだというのだ。
「神戸と同じ理由ですか?」
「その通りじゃけえ。人夫さんの派遣をしたり実際に港で働くけえ」
「で、そっちの筋の人が多いんですか」
「広島市にも多いけえの」
 その広島人の言葉である。
「名物になってるけえ」
「あまりというか全然いい名物じゃないですね」
「広島名物は牡蠣と紅葉饅頭とカープと海軍とヤクザ屋さんじゃけえな」
 この五つだというのだ。
「まああまりよくないものなのは確かじゃ」
「ですね、本当に」
「そっきの筋の人には気をつけんしゃい」
 ヤクザにはというのだ。 
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