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銀河転生伝説 ~新たなる星々~

作者:使徒
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第7話 ロアキア動乱3


「マルゼアスが戦死した……だと!?」

帝国派の討伐に向かったマルゼアス、メルボド両艦隊の壊滅とその総司令官マルゼアス大将の戦死。

それは、貴族連合軍との戦いにおける勝利に沸いていたロアキア軍にとって驚天動地の出来事であった。
ましてや、腹心であるマルゼアスを失ったオリアスの心境や如何ほどであろうか。

マルゼアス艦隊10000、メルボド艦隊10000を合わせたロアキア軍辺境討伐部隊はルシタール星域にてブルーナ中将を司令官とする辺境軍と交戦。

数はロアキア軍が20000隻、辺境軍が22000隻と互角であったが、実戦部隊である統星艦隊のみで構成されているロアキア軍に対して、辺境軍は統星艦隊の一部と帝国派貴族の私兵から成っているため、練度においてはロアキア軍が圧倒的に上回る。
如何に敵将がブルーナ中将であっても、2000隻程度の兵力差は楽に覆せるはずであった。

だが、今まで沈黙を保っていたガムストン大将の艦隊15000隻が突如背後に現れロアキア軍に攻撃を仕掛けてきたことで形勢は逆転した。

ガムストン大将が帝国派貴族である男爵の従兄であり、中将時代の艦隊副司令官がブルーナ少将(当時)だったことを事前に調べていたなら、この展開を予期して何らかの手を打つことが出来たかもしれない。

しかし、現実は前後から挟撃されのた打ち回るロアキア軍があるのみだ。

程なくして、総司令官のマルゼアス大将が戦死。
メルボド中将が全軍の指揮を引き継いで撤退を成功させたものの、その数は僅か700隻余りであった。

「ええい、奴ら許さぬぞ! 私自らがこの手で引導を渡してくれる!」

激昂するオリアス。
それを諫めたのは戦死したマルゼアスの伯父でもある宰相のプラヌスであった。

「殿下、どうか落ち着きなさいませ」

「先生、マルゼアスが死んだのだぞ! 私に仇を取らせてはくれぬのか!」

「辺境軍の司令官ブルーナ中将と裏切ったガムストン大将は一流の将帥。今の殿下では悪戯《いたずら》に兵を死なせる結果にしかなりませぬぞ」

甥を失ったプラヌスの言葉にオリアスは冷静さを取り戻す。

「それに、エルテピア星系の共和主義者どもに不穏な動きがあります。今は迂闊な動きをするべきではありません」

「……そうだな、すまない先生。マルゼアスを失って頭に血が昇っていたようだ」

「心中、お察しします。……ここは先ず力の弱まった皇帝派を叩き潰し、返す刀で裏切り者の帝国派を討つのがよろしいかと」

「それが最善だろうな。それと、共和主義者どもは今は放置でいいだろうか?」

「下手に摘発すれば各地で反乱の火が上がるでしょう。帝国派は所詮裏切り者。皇帝派を抑えれば奴等の蠢動も治まるかと」

「なるほど……」

エルテピア星系における共和主義勢力の反乱は数年前に一度鎮圧されている。
そのときに要した兵力が10000隻であり、今回の事件で如何にロアキアが弱っていようとその程度の兵力であれば捻出するのは難しくない。
故に、皇帝派を排除して足場を固めれば共和主義者たちも大きな行動は取れないだろうというのがプラヌスとオリアスの考えだった。

オリアスとしては直ちに帝国派勢力の鎮圧を命じたいところであったが、各艦隊はマリウセア星域の会戦を終えたばかりである。
将兵たちの休養に加えて損傷艦艇の修理や人員の補充を含めると1ヶ月は掛る見通しであった。


* * *


宇宙暦806年/帝国暦497年 6月2日。
準備を整えたロアキア軍は皇帝派貴族領の制圧に向けて動き出した。

ストネル少将率いる2000隻程の貴族連合軍部隊が補給路にゲリラ戦を仕掛けてロアキア軍を翻弄したが、それも一局地による戦果でしかなく、大半の貴族領は制圧されていった。

また、皇帝派の切り札であるクラフスト艦隊及びパナジーヤ艦隊もオルメ、ロズボーン両艦隊によって抑えられ、救援に向かえずにいた。

レイボルト大将の後を継いで貴族連合軍の総司令官となったウィンディルム中将率いる6000隻の艦隊(内4000隻はマリウセア星域会戦での残存戦力)も、皇帝派盟主であるバクーウェン公爵が自らの守りの為動かさなかったことで最後の勝機を逃すこととなり、僅か3ヶ月で皇帝派貴族領の大半はオリアスの手中に落ちることとなった。

だが、ここでオリアスにとって大きな計算違いが起こる。
バクーウェン公爵が暗殺され、一部の皇帝派貴族たちが帝国派に合流し出したのだ。

更には、皇帝派を見限った軍の将兵も帝国派に鞍替えし30000隻近い艦艇が帝国派に加わることとなった。

「くっ、これでは総力戦ではないか!」

互いの戦力は互角だが、帝国派の後ろには銀河帝国が控えている。
彼らが本格的に参戦してくれば敗北は必至であった。

「一度の戦いで大勝利を収めるしか方法は無い……か」

しかし、そのオリアスの構想は予想しない形で裏切られる。
10月10日、辺境軍が各方面で攻勢に出たのだ。

この報にロアキア政府上層部は騒然となる。

「奴等は何を考えている! これでは各個撃破してくださいと言わんばかりではないか!」

「所詮は脳無し貴族の集まり、特に深い考えなど無いのでは?」

「いや、向こうにはガムストン大将を始めとしてクラフスト、パナジーヤ、ブルーナなど優秀な将帥も多い。何らかの思惑があると見た方が妥当だろう」

ガムストン、クラフスト、パナジーヤ、ブルーナ、ウィンディルムの5個艦隊がそれぞれ別ルートで進撃してくる。

各個撃破の好機であるのだが、それ故に何らかの罠を疑ってしまう。
だが、結局彼らに出来ることは、軍勢を分けて迎撃に出るか各個撃破を狙うかの2択しかない。

そんな中、また新たな一報が送られてくる。

「エルテピア星系にて反乱が勃発しました。隣接するアーミア星系、ダレダン星系、テルジント星系でも反乱の兆しが見られます。どうやらこの4星系が1つの共和制国家として独立しようという模様です」

「このような時に……」

正に内憂外患である。

「よもやこれを狙ってではあるまいな?」

「まさか……むしろ狙ったのは共和主義者たちの方でしょう」

「だがどうする? このままでは身動きがとれんぞ」

「いっそのこと独立を認めてやればいかがでしょうか。銀河帝国は帝政国家、彼らが組むとは思えません。独立と引き換えにこちらを支援させればよろしいのでは?」

「バカな、共和主義者どもに屈せよと言うのか!」

「では、それ以外に良案でもありますかな?」

言い合いが続く中、またしても新たな一報が寄せられる。

「イグディアス王国とオルデラン王国がロアキア陣営からの離脱とティオジア連星共同体への加盟を表明しました」

「何だと!?」

イグディアス王国、オルデラン王国は辺境13国の中でロアキア陣営の貴重な国家であった。
それが、この度の離脱宣言。

これで、ロアキアの銀河辺境地域における影響力は消滅した。
もっとも、この国難にあって辺境への影響力も何も無いのだが……。

「こうなっては是非もない。アーミア、エルテピア、ダレダン、テルジントの4星系の独立を認め後方の憂いを無くす。然る後、迫り来る辺境軍どもを各個撃破にて宇宙の塵にするのだ」

オリアスのこの一声で今後の方針が決まった。

かくして、ロアキア軍も動き出し銀河の混迷の度合いは更なる深まりを見せる。
最後に立っている勝者はいずれであろうか。
この時点では、まだ誰も知る由も無い。




その頃のアドルフは……

「うおおおおおお、回想キター――(゚∀゚)――!!」

……エロゲ中であった。
 
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