銀河転生伝説 ~新たなる星々~
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第6話 ロアキア動乱2
宇宙暦806年/帝国暦497年 4月7日。
ロアキア統星帝国で内乱が勃発。
片方は統星帝を救出するまでの自分たちの盟主として、もう片方は銀河帝国皇帝アドルフに嫁がせることでロアキア統星帝国の皇族の血の存続を図るという自らの行いに対する正当性を得るために。
皇帝派は第六皇女メルセリアを、帝国派は第七皇女オルテシアをそれぞれ旗印として掲げた。
これによって、ロアキアは事実上3つに分裂。
互いに、もはや引き返せない所まで来ていた。
内乱の勃発による余波は、武力たる統星艦隊にも及んでいる。
統星艦隊の司令官であるロイン・クラフスト中将、ランデル・パナジーヤ中将は皇帝派に、ドレアス・ブルーナ中将は帝国派にそれぞれの艦隊ごと付いており、ガラハット・ガムストン大将とその艦隊はどの勢力にも関与せず不気味な沈黙を守っている。
これらを加味した各陣営の戦力は、オリアス派が約77000隻、皇帝派が約54000隻、帝国派が約22000隻である。
そして、それぞれの軍勢の呼称であるが、オリアス派は普段通りロアキア軍、皇帝派は貴族連合軍、帝国派は辺境軍と呼称されることになった。
* * *
オリアス皇子は、皇帝派に付いたクラフスト艦隊とパナジーヤ艦隊にオルメ、ロズボーン両艦隊を当てて抑えることとし、ボムド、エルッケン、ワイルター、ゴスハットの4個艦隊20000隻に皇帝派に属す各貴族領の制圧に向かわせる。
また、マルゼアス、メルボドの両提督に20000隻の軍勢を与え帝国派の討伐を命じた。
これに対し、今こそオリアスを撃つ好機と見た皇帝派はワグナー・レイボルト大将を総司令官とした30000隻の艦隊を帝都ロアキアへと差し向ける。
しかし、それは罠であった。
オリアスは各地に派遣した(と見せかけた)艦隊を反転させ、帝都ロアキアのあるマリウセア星域に集めることに成功した。
兵力差は15000対30000から35000対30000へと逆転。
銀河帝国に負けたとはいえ、オリアスの腕が健在であるとことを内外に証明して見せた。
貴族連合軍もここまで来て退くことはできない。
数の優位が逆転したとはいえ、その差は約5000隻。
決して覆せない差ではないことが彼らに決戦を強要した。
「このまま一気に敵中央を突破する。攻撃を集中させよ」
鶴翼の陣形で包囲殲滅を狙うロアキア軍に対し、貴族連合軍は中央突破で勝負を決めようとする。
「敵の攻勢が苛烈なため、このままでは戦線が維持できません!」
「もうすぐバルディの分艦隊5000が外側から敵の後背に回り込む。それまで距離を適度に保ち連携して敵の突出を阻め」
「はっ!」
貴族連合軍は攻勢を続けるが、オリアス艦隊が一定の距離を保ちながら後退するため、あまり損害を与えられないでいた。
無論、貴族連合軍の司令であるレイボルト大将はオリアスの狙いを正確に読んでいた。
「閣下、敵別動隊が背後に回り込もうとしております!」
「分かっている、ミュッツ提督の部隊を迎撃に回せ」
ロアキア軍の別動隊が貴族連合軍の背後に回り込もうとするが、予め予備兵力として戦線に参加してなかったミュッツ艦隊4000隻が迎撃に出たため背後を突くことは出来なかった。
「防がれたか、まあいい。両翼の部隊を敵に密着させ防御力を削り取るんだ!」
4個艦隊20000隻が貴族連合軍の側面に張り付いて攻撃を加える。
20000隻というのは無視できる数では無く、しかしそちらに構っていては正面のオリアス艦隊へ圧力を掛けきれない。
「閣下、このまま消耗戦になれば数で劣るこちらが不利です。いったん退きませんか?」
「こちらは半包囲されているのだ。そう易々とは退かせてくれまい。それに、このまま消耗戦になるとは限らん。仮に我々を消耗戦の末打ち破ってもその先には辺境軍や銀河帝国との戦いを控えているんだ。それは向こうも望むところではないだろう」
「なるほど、では敢えて消耗戦も辞さないという形を?」
「そうだ、消耗戦を嫌う敵軍はいったん退いて陣形を再編するだろう。それに合わせてこちらも退く」
この会話から1時間後、両軍はいったん退いて無意味な消耗戦を終了させた。
・・・・・
翌日、再編を済ませた貴族連合軍は速攻に転じ、その勢いにロアキア軍は押され始める。
「中々の勢いだな……左翼は後退、右翼は前進せよ」
ロアキア軍が陣形を斜めにシフトしていく。
「左翼の後退によってこちらの前衛を誘い込み、中堅と右翼を半回転させて側面を突く……か。だがその手には乗らんよ。全艦、敵の動きに惑わされるな! 我らが狙うはオリアスの首ただ一つぞ!」
この動きにレイボルトは惑わされず、ロアキア軍中堅のオリアス艦隊に砲火を集中する。
「ちっ、乗ってこないか……なら、このまま行くまでだ。ワイルター提督に連絡、敵の後背に出て後ろから突けとな」
「敵右翼がこちらの後背に回り込もうとしております」
「バウダー艦隊に敵の頭を抑えさせろ。それにしても、先の戦闘と同じ手で来るとは芸の無いことだな」
その後しばらく両軍の応酬が続いたが、戦況が動いたのは3時間後のことであった。
「敵右翼部隊の更に外側から艦隊が回り込んで来ます! 数、およそ9000」
「バカな!! どの部隊だ?」
「こ……これは敵の左翼艦隊です」
「左翼だと!? くっ……図られたか」
「司令官閣下、どうされますか?」
「このまま攻撃を続行する」
「閣下!」
「背後を取られたとはいえ、その分敵中央は薄くなっている。オリアスさえ討ち取ればこの戦いは我らの勝利だ! 全艦突撃!!」
貴族連合軍の全軍がオリアス艦隊に向け突撃を開始する。
「やはりそう来たか、ここに至っては戦力差で我が方に劣る貴様らが勝利するには私の首を狙うしか無いからな……反撃だ、敵の侵入を許すな!」
そう言って、オリアスは反撃を命じる。
オリアスにとっても、ここで敵の攻勢に耐え切れるかが勝敗の分かれ目であった。
オリアス艦隊が必死に耐えている間に、味方の艦隊が貴族連合軍の艦を次々と落としていく。
艦艇の損傷率が4割を超えても尚、艦隊の統率を維持しているのはオリアスの統率力の高さを物語っていた。
そして……勝利の女神がほほ笑んだのはロアキア軍であった。
貴族連合軍の攻勢を耐え切ったオリアスは反撃を開始する。
この時点でオリアス艦隊の損傷率は5割に達していたが、ロアキア軍の右翼・左翼部隊に散々に叩かれた貴族連合軍の艦艇は10000隻を割り込んでいた。
オリアス艦隊の反撃によって、貴族連合軍旗艦オズノーロが撃沈。
司令官のレイボルト大将が戦死し、勝敗は決した。
指揮権を継いだ副司令官のカスター・ウィンディルム中将は直ちに撤退に移ったが、どうにか追撃を振り切ったとき、艦隊の総数は4000隻にまで撃ち減らされていた。
・・・・・
戦いに勝利し歓喜に沸いていたロアキア軍であったが、その8時間後に入ってきた電報によってその歓喜は打ち砕かれた。
『討伐軍壊滅セリ。マルゼアス大将戦死』
帝国派の討伐に向かったマルゼアス、メルボド艦隊の壊滅とマルゼアス大将の戦死。
それは、ロアキアの命運に一石を投じることとなった。
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