ソードアートオンライン VIRUS
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徒手格闘
前書き
あー、早くGGOに行かせたい
ログアウトして目をゆっくりと開けた優は身体を起こしてアミュスフィアを外した。体がうまくまだ動かない気がしたのでベットから降りて、身体を動かす。
「うーん、特に問題はない。けど、なんで俺に何のメリットもないのに純の喧嘩を買っちゃったかな~俺。軽い気持ちだったのかな~、今から行くのが嫌になってきた」
そう言って道場のほうに向かう。道場に向かう途中に何人かの子供たちが胴着を着て、庭で遊びまわっていた。多分、しばらく時間があるためかゆっくりと休んでいるのも見られる。
それを眺めながら道場に歩いていく。そして道場まで来ると中にすでに準備運動をしている純が目に入った。その横にはお袋に、義父さんにお義祖父さんが並んで座っている。
「ようやく来たか。遅くはなかったけど、こっちは身体は十分温まったぞ」
「そうなのか?別にそんなことをしてくれと頼んだ覚えはないけど」
「うるさい!すぐにお前のその減らず口を閉じさせてやるよ!」
「どっちが減らず口だ」
優はため息を吐きながら呟いた。そして脱衣所に向かう。その時、お袋が苦笑しながら言った。
「優。純君ね、ああ見えて、本当に強いのよ。優も強いと思うけど二年のブランクがあるからさすがに勝つのは難しいと思うの。だからせめて怪我しないように気をつけてね」
「別に、負ける気なんてないし。大体、ほとんどサボってるやつに負けたくないから」
そう言って、優は脱衣所に入った。素早く着替えてサポーターを装着させると道場に戻る。相変わらずしんとしていて集中するのにはとてもいい場所だ。
「準備が出来たみたいだな、俺が勝ったら絶対に奈美に手を出すなよ!」
「いや、家族に手を出すわけないだろ。ていうより、そもそも、お前のシスコンを治したほうがいいと思うぞ。なら、俺の条件はお前のそのシスコン過ぎるのを治すことだ」
「それは、公平な条件じゃないだろ!なんで、不平等な取引に「よし、じゃあ始めるぞ。二人とも」おい、親父!何勝手に決めてんだ!」
「別にそんな約束しても勝てば結局は意味ないんだから。それとも勝つ自信がないのか、純?」
「そんなんじゃねえよ!あー、もう、それでいい!優、早く試合するぞ!」
そう言って向かい合うと礼をする。そしてある程度の距離を取ると、二人は構えを取った。優は自分のなれているムエタイのスタイルに近い感じの構え、純はこの家の流派の構え。腕を中段に構えて、足を半開きにしている構えだ。
「始め!!」
その声とともに純がいきなり飛び出して蹴りを突き出してくる。それを身体を捻ってかわすと、その足に交差させるようにクロスカウンターを放つ。
「チッ!」
純は舌打ちすると足をまげて無理やりクロスカウンターの拳が届かないようにすると、その腕を掴んで締め技をかけようとするが逆に足を掴んで押す。すると倒れるのを避けるために優の腕を放して足を捻って無理やり腕を放させると距離を取る。
だがそんなことはさせまいと優は片方の足を突き出した。純もそれをたくみに避けるがバランスを崩した。優はその隙を逃さずに掌底で顎を当てるように下から突き上げる。
「食らうか、よッ!!」
純は叫んで掌低を頬に掠る程度に当て、顔を回転させながら避けた。そして手を着くと身体を片手だけで持ち上げて回し蹴りをしてくる。
「っと」
優はそれをものともしないで交わすといったん距離を取った。しかし、この動きを見て、疑問が出てくる。たしか、純は俺が来る前も全然練習してないようだった。しかし、いざ戦ってみればこんなにも鋭い動きをしているし、こちらの攻撃も全て見えているように避けていく。
「なんか、お前を見てるとわかんないことばっかなんだけど」
「何がわからないことばっかりだ!お前こそ、俺にとっちゃ分からんことだらけなんだよ!!」
そう言って今度は先ほどよりも速い移動でこちらに迫ってくる。そして、飛び込んで着ては身体を横に一家移転させてローリングソバットを放ってくる。紙一重で交わすと足を掴んで太ももに肘を下ろす。
ちょうど一番痛い場所にだ。しかし、純はそれでも顔を歪めるだけで優からはなれるようにもう一つの足でヘッドギアの横を蹴る。さすがにこれは相当頭に振動が来て足を離してしまった。しかも、脳が揺らされたため相当目の前がゆれて見える。
「落ちろ!!」
そしてそのまま回し蹴りを放ってきた。見事にそれが肝臓(リバー)に当たって、肺の空気とスタミナが一気に持っていかれる感じがした。
「がはッ!!」
しかし、優も負けたくないという気持ちがあるため、倒れるのを堪えてその回し蹴りで横腹にある足を掴む。すると純はその足を軸に身体を横にして再び頭に蹴りを放ってくる。しかし、優もそこまで同じ手を食らうようなことはなく、蹴りを放っている足を避けると同時に開いている腕で掴んだ。
「マジカ!?」
「勝負中にあんま喋ってるとしたかむぞ?」
優はそのまま、足を掴んだまま倒れて締め技を決める。両足の動きを止めるために両方ともに締め技をかけた。
「離しやがれ!」
純は足を無理やり引き剥がそうと暴れるが決まったものを外すことは難しく、身体を譜って何とか離させようとした。その時、また優の顎に蹴りが当たり頭が一瞬真っ白になる。
その瞬間、純は足を素早く抜けださせて大きく距離を取った。優も頭を振って何とか意識を持ってくると素早く立ち上がって、構えを取った。
ラッキーパンチのようなものを数回食らっただけでこんだけ消費されるのは初めてであった。何回も試合していた中でこんなにあたることはなかった。しかし、この家の流派なら体のばねなどを全て使うためこういうものがあるということも納得して純を見る。
(もっと集中しろ、集中すれば何とかなるはずだ)
心でそう思って集中する。すると、純の動きで変わり始めているところを発見した。今までの勢いが失われているかのように肩で息をしている。よく考えれば当たり前だ。純は結構な間、鍛錬をサボリ気味だったため、体力がなくなってきているとこだ。そして脇腹を守るように抑えている。急な運動によるために横腹が痛くなってきたのだろう。
こっちもラッキーが続いては持たないため速めに切り上げるために出し切ることにする。優は純の間合いまで一息で着くと素早く拳を突き出した。しかし、それは簡単に避けられてしまう。しかしこの拳を当てるためではなく掴むために突き出したもので避けることを想定している。素早く胴着を掴むと肘を突く様に放つ。純はそれをまともに食らうと空気を大量に吐き出した。
「ガッ!……」
そしてその状態から動かなくなるとずるずると崩れ去り床に倒れた。
「あー、何とか勝てたけど頭が痛てー」
優も純に食らったものが相当だったようでその場に寝転がる。その時ちょうど奈美が扉を開けて道場に入ってきた。
「ちょっとみんな家のほうに居ないから探しに来たんだけどなにやってんの!?」
倒れている二人を見て驚いた美奈はそう叫んだ。優はなんて説明しようか考えていると変わりにお袋が言った。
「心配しなくていいわよ。ちょっと純君が優をあんまり、好んでなかったみたいだから今日朝に喧嘩売ったから優が買って今の現状になってるのよ」
「ちょ、お義母さん!?それ大丈夫なの!?ていうよりどっちが勝ったの!?」
「気になるのはそこかね、奈美?まあ奈美が思うにどっちだと思う?」
「ええと、二人とも倒れているけど優さんがおきているから優さん?」
「まあ正解だな」
お義祖父さんがそう言って手を叩く。奈美は正解したことに喜んだがすぐに今の状況を思い出したのか、慌て始める。
「そんなことより、二人とも大丈夫なの!?」
「俺は大丈夫だけど純が……結構マジで入れたからどうかわかんねんだよな」
まあ、武術を習っていたから大丈夫だとは思ってる。優はようやく体の調子が戻ってきたため立ち上がる。そして純に近づいてから腕をとって持ち上げる。
「とりあえずこんなとこに寝かせてるのもなんだし部屋に持っていく。どうせこの後、ここ使うんだし」
「そりゃ助かる。じゃあ、純を部屋に持っていくのは頼むよ」
優は純を肩を貸す感じで持ち上げて純の足を引きづりながら部屋へと向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あの、お兄ちゃん大丈夫なんですか?」
奈美は心配そうに純を見ながら言った。
「まあ大丈夫なんじゃないの?もともと体は丈夫なやつだと思うし。俺の最後に当てたの若干身体をずらして芯をずらしてたし」
優がそう言う。たしかに最後の感触は当たったが少しずらされた感覚があった。やっぱりこいつには何かあるのだろうか?
「しかし、優さんって強いんですね。お兄ちゃんも全盛期だったらおじいちゃんよりも強かったのに」
「いや、こいつがサボりすぎて弱くなってただけだろ」
「まあそれもありますね」
奈美はくすくす笑う。そして純の部屋にまで着き、ベットに寝かせる。その時、ふと横にある箱が目に入った。それはアミュスヒィアが入っていた箱だ。それを見た瞬間、優はどうしてあんな動きが出来るのかがわかった。
(こいつ、何かしらのVRMMOであんな動きをしてたのか……)
数ヶ月前、和人がゲームの中での動きを現実でもやっていたのを見て、そういうのが出来るのを最近知ったが純もしているとは驚いた。
「優さん、そういえば今日の晩御飯どうします?一応買い物してきましたが」
「奈美、敬語はいいって。まあ買ってきたんならそれで作るか。先にキッチンで準備しといて」
「わかり……わかった」
そう言って、奈美は部屋を出て行った。優も部屋を出ようとすると後ろから声をかけられた。
「まてよ」
優は足を止めて言った。
「なんだ、純。何か文句でも言いたいのか?」
「文句を言いたいが、正直言ったらかっこ悪いから言わねえよ」
「だったら、何で呼び止めたんだよ」
「次やったら確実に俺が勝つ。首を洗って待っておけよ」
「その台詞、何かもう一度負けそうなやつの台詞だな」
「うるさい!」
「はっはっはっ」
優は笑ってから言った。
「まあ、どっちにしろ受けてってやるよ。今度は万全な状態でいろよ。それと、飯作るからたまにゃお前も手伝え」
そう言って優は部屋を後にした。
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