ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~
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ALO:フェアリィ・ダンス~両刃の剣と天駆ける龍~
偽物の王と偽物の龍
前書き
ついにクライマックスに!!
あと久々のキリト君視点が入ります。
アルンでは凄まじい現象が起きていた。世界樹から黒い怪物たちが現れ、プレイヤーたちを攻撃する。攻撃されたプレイヤーはスレイヴ・プレイヤーに変貌し、他のプレイヤーを襲う。さらにプレイヤーたちは、アルンの外の五人のプレイヤーたちに襲い掛かる……。
*
「でぁああああ!!」
セモンの双剣が光り、
「だぁあああああ!!!」
シャノンの双巨剣が薙ぎ払い、
「はぁぁああああ!!」
グリヴィネの鎌が引き裂き、
「おぉおおおおおお!!」
ハザードの大剣が叩き潰し、
「てぁああああああ!!」
コハクの長槍が舞う。
二百を超えるスレイヴ・プレイヤーたち。彼らを相手に戦闘を始めてから、早くも二十分近くが経過していた。
倒しても倒しても、湧いてくるスレイヴ達。一体どこからこれだけの人数のプレイヤーたちが集められてきたのだろうか。
セモン達の精神力は限界に近くなっていた。
「まずいぞ…!このままじゃ俺達、やられる!!」
「せめて発生さえ押さえられれば…!!」
その時だ。ハザードが動きを止めたのは。
「どうしたハザード!!」
「―――――――呼んでる」
「え?」
「―――――――――兄さんが。兄さんが俺を呼んでる。行かなきゃ。行かなきゃ……!!」
ハザードは双翼を広げると、その漆黒の大剣に凄まじいまでの赤い輝きを纏わせると、叫んだ。
「どけぇぇえええ―――――――――――――――――!!!!!!」
真紅のエフェクトが飛び散り、ハザードの突進軌道にいたスレイヴ達が粉々になっていく。
対モンスター用《獣聖》剣技、《アンドレアルファス》。
ハザードは周囲のスレイヴ二十人ほどを巻き込むと、そのまま世界樹に向かって飛んで行ってしまった。
「な……!!」
そしてその先にあったのは……
世界樹のてっぺんが、歪む光景だった。
「なんだあれは……」
「ボーっとするなセモン!!やられるぞ!!」
「お、おう!」
セモンは両剣を構えなおすと、スレイヴ達めがけて次のソードスキルを発動させた。
*
「キリト……く…ん…」
「あはははははははははは!!!無様だね、キリト君!!」
キリトは、自身の剣で突き刺されたまま、地面に這いつくばるほかなかった。
ここで……終わりなのか……。
アスナも、三百人の未帰還者達も、この世界…ALOすら救えないまま。
今、もし俺に力を貸してくれるなら――――。
何でもいい。悪魔でもいい。この魂を生贄に捧げてもいい。
あの男を――――須郷を切り倒し、アスナをもと要るべき場所に帰らさせてくれるのであれば―――-。
思い上がっていた。
剣さえあれば、なんでもできると思っていた。俺は、魔王を倒してアインクラッドを、そこに閉じ込められたプレイヤーたちを救った英雄だから。勇者だから。
だが所詮、俺は一人の子どもに過ぎなかったのだ。本当なら、権力のある大人たちに任せるべきだったのだ。しかし俺は、仮想世界の出来事なら自分の力でどうにかできると過信し――――
『逃げ出すのか?』
そうじゃない、現実を認識するんだ。
『屈服するのか?かつて否定したシステムの力に?』
仕方ないじゃないか。俺はプレイヤーで奴はゲームマスターなんだよ。
否定するキリトに、なおも声は言う。
『それは、あの戦いを汚す言葉だな。私に、システムを上回る人間の意志の力を知らしめ、未来の――――人間という生き物の可能性を悟らせた、我々の戦いを』
戦い?そんなものは無意味だ。ただの数字の増減だろう?
『そうではないことを、君は知っているはずだ。さぁ、立ちたまえ。立って剣を取れ』
『――――立ちたまえ、キリト君!!』
「ぐぁぁあああ!?」
その悲鳴が聞こえたのは、その時だった。
「……!?」
目を開けると、須郷の右腕が切り落とされていた。それを成し遂げたのは―――――――漆黒の水晶でできた、大剣。
そしてそれを握るのは、黒い髪に真紅の翼をもった少年。
装いはかつてと違えど、キリトはあの人物を――――あの顔を知っている。
「……ハザード」
「立て、キリト。お前がここで終わる人間じゃないことは、みんな知ってる。兄さんは、だからお前を認めたんだ」
ハザードはキリトに背中に突き刺さっていた剣を抜き取ると、キリトの前にころがした。
そして……聞いたことのない文字の羅列を唱え始めた。
「システムコマンド。アクセスID《ヒースクリフ》、パスワード《**************》。スーパーバイザ権限変更。ID《オベイロン》の権限をレベル0に。ID《キリト》、並びに《ハザード》をレベル10に変更。同時にペイン・アブソーバーをレベル0に」
「なっ……あっ、あああああああああ!!!」
須郷の青いシステムウィンドウが消滅し、同時に須郷が苦痛の悲鳴を上げる。切り落とされた右腕が、リアルな、もしかしたらリアルよりもなおひどい痛みを奴に与えているのだ。
「決着をつけるぞ。偽物の妖精王と、鍍金の勇者と、それにつれられた龍の」
キリトは目の前の剣を握ると、ハザードと共に須郷に切りかかった。
*
「……システムコマンド。スレイヴ・システムを破棄。……これでいいだろ、兄さん」
『ありがとう。秋也』
「……あなたのために、俺は生きてきた。あなたに認めてもらうために。……でもそれも今日で終わりだ。俺は『茅場秋也』ではなく、『京崎秋也』として生きていく」
「……茅場…ヒースクリフ」
『久しいな、キリト君』
「……生きていたのか?」
『そうであるともいえるし、そうではないともいえる。私は茅場晶彦という人間の意識の残像だ』
「相変わらず難しいことを言う人だな……。まぁ、一応礼を言っておくよ」
『礼は不要だ。君と私は無償で助け合う間柄でもないだろう?』
「……何をしろと?」
すると、空に金色の光が生まれ、そこから小さな卵のようなものが出現した。
「……これは?」
『それは世界の種子だ。芽吹けば、どういうものなのか解る。その後の判断は君に任せる。消去し、忘れるもよし……しかし、もし君が、あの世界に憎しみ以外の感情を抱いているというのなら………―――――――さて、私は行くよ。いつかまた会おう、キリト君。そして……今までありがとう、秋也。我が弟よ』
そう言って、茅場は消えた。
*
「スレイヴの発生が…止まった!!」
「一気に決めるぞ!!」
全員の武器が、今までで一番激しい、一番神々しいエフェクトライトを帯びる。
聖剣たちは黒いプレイヤーたちを浄化し、その炎をもとの色に戻した。
色鮮やかなエンドフレイムが、金色のエフェクトライトと共に空に輝くこの光景は、後にアルヴヘイムもっとも有名な事件の一つとなる。
これが、アルヴヘイムで《神話》として語られる物語の、全てである。
後書き
無理やり終了!!『神話剣』組よりキリト君の方が出番が多い……だと!?
次回はいよいよALO編最終回。また一週間後(推測、というかほぼ確実)にお会いしましょう!!
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