八条学園怪異譚
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第二十八話 ご開帳その十一
「それはね」
「確かに。殺してるのは実は悪い人達ばかりかも知れないけれど」
「あの先生も外面はよかったけれどね」
「実際は、なのね」
「そうかも知れないしあの不良連中は実際にとんでもない奴等だったし」
四人いたがその全員がそうだったのだ。
「最近街でも暴力団員とか凄い殺され方してるけれどね」
「あれも犯人は?」
「同じだと思うよ」
先生や不良達を殺した犯人とだというのだ。
「間違いなくね」
「というかあんな殺し方する人そうはいないわよね」
「何か首切ったり身体切り刻んだりしてるわよね」
聖花もその謎の犯人について曇った顔で話す。
「誰かはわからないけれど」
「サイコ殺人そのものよね」
「ああいうのをそう言うんだろうね」
一つ目小僧は今度は栗饅頭を食べている、それを食べながらの言葉だ。
「日本では少ないみたいだけれどね」
「そういえば殆どいないわね」
「そうよね」
二人も一つ目小僧の言葉に気付いた。
「猟奇殺人とかね」
「そういうことって日本じゃ少ないわよね」
「外国は結構あるみたいだね、博士が言ってたよ」
あの悪魔博士がだというのだ。。
「社会的な価値観が崩壊した社会では多いらしいね」
「日本は価値観が崩壊してないってこと?」
「これまでのところは」
「うん、そんなことも言ってよ」
「そういえば博士って心理学者でもあったわよね」
「犯罪心理学の権威らしいわね」
博士はその分野にも通じているのだ、とにかく学問ならばあらゆることに通じていると言って過言ではない。
「だからなのね」
「そうしたことにも一家言あるのね」
「みたいだね。それでだけれど」
のっぺらぼうは暑いお茶を飲んだ、夏に暑いものもまたいい。
「お不動さんのある本堂の中がね」
「泉なの?」
「そうなの?」
「そうみたいだよ」
こう二人に話す。
「どうやらね」
「本堂が泉なの、今度は」
「お寺の本堂とか神社のそうしたところって実は結構色々あるんだよ」
「あっ、昔はそうしたところでこっそりと、だったわよね」
「うん、ヤクザ屋さんが賭場を開いたりね」
寺社は寺社奉行の管轄なので普通の奉行所の手の及ぶところではなかった、それでヤクザは寺社で賭場を開き僧侶や神主にショバ代を払っていたのだ。
「テキ屋だってそうだし」
「あっちもヤクザ屋さんよね」
「ヤクザ屋さんって実はお寺や神社と関係が深いんだ」
江戸時代からの伝統である。
「普通の場所じゃないからこっそり賭場を開いてもね」
「よかったのね」
「中にはストリップ劇場も開いたりとか」
お寺の境内で、である。
「そういうのがあったからね」
「ううん、お寺も結構生臭いのね」
「生臭いよ、人間の世界だからね」
人間とは生臭いものだ、それならば僧侶や神主と言えど人間だ。それならば寺社も生臭くて当然だというのだ。
「それも当然だよ」
「そうなるのね」
「うん、人生相談に来る人も多いし」
寺社の本来の役目の一つである。
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