八条学園怪異譚
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第二十八話 ご開帳その九
「それで暫く夢に出て追いかけて来たし」
「ナマハゲみたいだね」
一つ目小僧は秋田名物と言っていいこの妖怪のことを思い出した、冬になると悪い子はいないかと叫びながら家の中に入って来る、かなりの迫力がある。
「それって」
「ゴジラっていうかね」
そうしたものだというのだ。
「そんな感じだったわ」
「ゴジラっていうと極端じゃないかな」
「そこまで怖かったのよ」
ゴジラを夢に見る人は多い、今でも。
「子供には怖過ぎるでしょ」
「子供を怖がらせる効果も狙ってるかもね」
のっぺらぼうはその可能性も否定しなかった。
「だってね、子供に悪いことしたらってね」
「明王に怒られるってこと?」
「そう、そういうことでね」
「だから子供に見せてもなのね」
「悪い大人になったら駄目じゃない」
至極当然の言葉だった。
「まあ時々いるじゃない、そういうの」
「確かにね、凶悪犯罪者とかね」
「未成年とかでもね」
未成年だからといって刑罰が軽減されたり実名が公開されないということは果たして正しいのか、のっぺらぼうは言外にその疑問を含ませつつ語る。
「そんな奴いるからね」
「確かにね、そういう奴はね」
「そんなのになったら駄目だから」
それでだというのだ。
「明王を子供に見せてね」
「悪いことしたらそうなる」
「そう教えるのかもね」
「成程、そうなのね」
「僕達妖怪も悪いことしたら退治されるから」
「明王に?」
「そうだよ、人間に退治されることも多いけれど」
こうした話は童話等にある通りだ、源頼光の話にも多い。
「明王にも退治されるよ、降されるんだよ」
「じゃあお寺のお不動さんもかしら」
聖花は寺の本尊の方を見ながら言った。
「この学園の結界の一つかしら」
「うん、そうだよ」
「その通りだよ」
一つ目小僧とのっぺらぼうがそれぞれ話す。
「結界の重要なものの一つだよ」
「あらゆる魔を降すお不動さんだからね」
「やっぱりそうなのね」
「うん、悪い妖怪が学園の中に出たら」
その時はというのだ。
「お不動さんに退治されるよ」
「やっぱりそうなのね」
「僕達が悪いことをしても」
その時もだというのだ。
「出て来てそして退治するから」
「じゃああのお不動さんって」
「意識があるとか?」
「仏像から出て来てそれで退治しに来るんだよ」
一つ目小僧がその辺りの事情を話す。
「そうしてね」
「実体じゃなくて霊体がなのね」
「うん、そうなんだ」
聖花に対してこう話す。
「そういうことなんだ」
「仏様も霊体なのね」
「そうだよ、実態を自由に出せるけれど」
この辺りは力の強さ故だ、仏にはそれだけの強さがあるのだ。
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