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ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士

作者:涙カノ
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第78話 =ラストバトル=


「……このまま寝てもいいかな…」

いや駄目だろ…と自分で自分に突っ込んでベッドからゆっくりと起き上がる。長時間同じ姿勢でいたためか首を回すとゴキッと音がし固まっているのがわかる。
数回首や肩を回して筋肉的なものをほぐすと壁にかけ掛けてあったダウンを羽織って下へと降りる。すると今から出かけようとしていた和人とそれを見送ろうとした直葉が玄関にいた。

「キリ…和人、アスナは?」

「無事に助け出せたよ。…そっちはどうだった?」

「バッチシだね」

軽く拳を上げてこっちも成功したってことを和人に示してから、直葉へ向き直る。和人は本当に待ちきれないのか玄関の扉にすでに手をかけておりせわしなく動いていた。

「あのさ直葉…その、ありがとな。あの世界で出会わなかったらここまで来れなかったよ」

「フフッ……お兄ちゃんと同じ事言ってる。でも、あたしこそありがとうだよ。あたしもあの世界で2人の役に立てたの、ホントにうれしかったもん。………陸也も、ユカさんを取り戻せたんだね」

「あぁ、一歩間違ったら死ぬところだったけどね…」

「…死ぬ?」

「そ、そこら辺は帰ってきてから詳しく話すよ」

危ない危ない、余計なことを話して余計に心配させるところだった。あそこでずっと刺されっぱなしだったら多分あいつの性格のことだ、どんどんペイン・アブソーバ下げてって最後には痛みで死んでいただろう。

「…あ、ちょっと待ってて……」

直葉はそういうとてとてととリビングへと歩いていき1分もしないうちに出てきた。だがその手には行くときには無かったサンドウィッチを優しく掴んでいた。それをありがたく頂戴するととりあえず一口かじって靴を履く。その様子を見た和人は俺の準備が出来た瞬間にドアを開けるのでそのせいで冬の冷たい風が一気に体に当たる。

「…さ、寒っ!!」

ジャケットなんて意味ないんじゃないかっていうくらい冷気が体を襲ってくる。と、突如上から何かが降ってきてそれに対して直葉は小さく口を開いた。

「あ……雪…」

直葉の声に頭上を見上げるとそこには無数の白い塊がフワフワと落ちてきているのが判る。通りで寒いわけだ…寒いの苦手なのにな…。

「…和人、タクシー呼ぼう……」

「いやこれ、自転車で行ったほうが早いだろ」

確かに和人の言うとおり今から呼んでもここに来る時間+向こうに行く時間となるのでそれだったらいろいろ近道使える自転車の方が時間的には短い。俺も無駄金は使いたくなかったのでしぶしぶだがそれに従い外へ出る。

「気をつけてね陸也、お兄ちゃん。…ユカさんとアスナさんによろしくね」

「ああ、今度ちゃんと紹介するよ」

「じゃ、行ってきます」

そう直葉に声をかけて俺と和人はそれぞれの愛車(自転車)のペダルに足をかけて思いっきり踏み込んでこぎ始めた。



―――――――

どんどん降ってくる雪の中を運転をちょっとでもミスったら転んでしまうほどのスピードで失踪させ病院へと向かう。雪のおかげで交通量も少なく横断歩道じゃないところを渡ったり、信号無視をしたりとちょっとした交通違反をしてもそんなに危なくは無かった。そのまましばらく走ると高度医療機関である例の病院が見えてきたので駐車場のさらに奥の端に自転車を止めて、和人とともにナトリウム灯がぼんやりと光る道を走る。

「そういやさ、今警備員に見つかったら俺たちどうなるんだろ」

「怒られて…締め出される?」

ふと気がついて走りながら聞くと和人は冷や汗っぽいのを流しながら小さく答える。まぁ、ほとんど不法侵入だしそのまま見逃してくれるわけもないか…。

「んで、お前は何でラケットバッグ持ってるんだよ」

「……気にしないで」

いつものくせでバッグに入れてしまい、病院に着くといつものように肩に背負って今和人につっ込まれたんだ。いやぁ無意識って怖いね。でも少し走るのには邪魔だが今から戻って置いて来るのも時間かかるしなんだかんだラケットって高価だから今から戻って戻してくるのも気が引ける。ということでこのまま持っていこう。

「…そろそろかな」

「なら、早く行かないとなっ!?」

と、さらに踏み込んだ瞬間左腕に不思議な熱い感覚が走り、思わず腕を押さえながらバランスを崩してズサーっと転んでしまう。地面を見ると紅い液体がゆっくりとだが地面の雪を染めていっている。そしてそのまま顔を上げると俺の目に映ったのはどこかで見たことのあるような…というか絶対に見た顔だった。

「…お前……廣田か…!?」

スーツはだるだるで、髪の毛はぼさぼさ、手にはいくつもの溝のある刃物を紐のようなもので無理やり縛っているという前に会った姿とは別物だがそれでもかろうじてか、廣田だと認識してしまった。だが俺の言葉に答えずに、その手に縛り付けてある銀色に光ったナイフを振り下ろしてきた。なんとかそれを横に転がることで避けて勢いそのままに立ち上がって改めて対峙した。

「…和人、先行って……」

「……でも」

「いいから!……こいつは俺が決着つけないといけないと思うし……」

「…わかった……でも絶対追いついてこいよ!!」

そういう和人に親指を立てるとうしろで何度も地面を蹴る音が聞こえた。どうやらちゃんとアスナのもとへと向かってくれたらしい。まるで「ここは俺に任せて先に行け」という死亡フラグを立てた気がするけど…。

「キヒッ……かっこよく立ちふさがって勇者様気取りかぃ?」

「別に。アンタなんかにあいつとアスナが会う時間とられたくなかったからね…。っていうか何でここにいるんだよ」

「もちろん、復讐するためさぁ……まったく酷いことしてくれるもんだよ…。手の先がまだないみたいだよ」

そういえば手刀だけど思い切りぶった切ったな…。確かにそのところだけを聞くと両腕が無くなった痛みがそのまま残ってるからまだ痛みは残ってるとは思うが…。

「そっちが先にやってきたからそれってただの逆ギレじゃない?…もう終わったんだからさっさと自首したほうが身のためだと思うけど…」

「ふーん…そんなの関係ないね。僕を裁くものなどこの世には存在しないんだよぉ…須郷さん、いや須郷もですらも実験には成功していなかった。だが僕は違う、成功させたんだ…だからその膨大なデータを持ってすれば海外へ行くのは簡単だ…というよりすでに声はかかっているからねぇ…。向こうがかくまってくれるさ」

人を殺しかけておいて海外逃亡だのなんだの、平然と言える人なんか俺全然知らないからどうやったらそんな考えまでたどり着くのか小一時間問い詰めたいところだけどそんな事をしてたらあのナイフの餌食だろう。

「とりあえず、邪魔してくれた君は殺すけどね」

とつとつと呟くと小さな動きで歩み寄ってくると無造作にナイフを突き出してくる。

「っ!」

それを避けるため地を蹴るが転びそうになるので体を強引に捻って肩から落ちることで前回り受身をして距離をとる。武道なんて堅っ苦しくてそんなにやる気も起きなかったけどこんなところで出てくるなんて祖父ちゃん様様だな…。ただ空手とかと違ってこの拳法って自分から攻撃する方法が全然無いんだよな、などと考えているとさらに振り下ろしてくる。

「…危なっ……」

「おい、避けるなよ屑が」

「…いや、死にたくないからさ。避けるよ普通……」

こんな会話をしている間にも腕からは血が滴り落ちている。地面に落ちている血の水滴の量を見ると結構深い傷らしくちょっとやばい気もするが、コイツをどうにかしないと止血も出来ないからどうしようもない。手以外は元気なのか一心不乱にナイフを振り回してくる。

「……え?」

余計な怪我を増やしたくないので刺激しないようにナイフを避けていると突然布を裂かれ、さらにうしろで重いものが落ちる音がして振り向くとそこにはベルトが無残に斬られたラケットバッグが。

「さっさと君を殺してあの成功例を連れ出さなきゃいけないんだ。結城悠香…いやあんな実験動物(モルモット)ほどの反応を持つやつもいないから…完全に僕の人形にし、さらに研究するためにねぇ…。だからさくっと殺られちゃってよ」

廣田の突然の言葉を聞いて…というよりユカをモルモットと言った時点で沸々と『こいつを許さない』という意思ではなくただ単にこの男を『殺したい』という願望がどんどん出てくる。さらには悠香の兄で明日奈の兄でもある浩一郎(浩にいちゃん)からもらったバッグを傷つけられたということでさらに拍車がかかって『殺す』ことしか考えれなくなった。

「お前らは…お前らみたいなゲームしか脳のない餓鬼は本当の力は何もないただの屑、全てこの僕よりか劣っているんだよ。それなのにも関わらず足を引っ張るだけで…お前らは死以外は許されないんだ」

「あっそ」

廣田のいいたいことが終わった直後、思い切り踏み込んでその汚い顔面に一撃正拳突きを放つ。さらにその勢いを殺さずにあいた左手でがら空きな鳩尾めがけて中段突きを与える。がたいのいい人間ならともかくあんなもやしみたいな研究者に鳩尾殴られて普通でいられるわけがなく、もちろん廣田も例外ではなく腹を抱えて前かがみになっている。だから右手を腹から引き剥がして紐でくくられているナイフを無理やり右手から抜き取って持ち直す。まだ腕は持ったままだ。

「そういや、さっき『まだ痛む』とか言ってなかったっけ。だったら俺もブッ刺されてまだ違和感あるんだけどっ」

そのまま左手で掴んだ相手の右腕を外側に回して足を後ろに引きながら右手で逃げられないよう手の甲を抑えて引っ張る。すると廣田の体は流れるように地面にうつぶせに地面を滑らさせる。

「よっと」

完全に地面についたところで膝で思い切り背中に乗って動けないよう手で肩を押さえて伸ばしたままの廣田の手をありえない方向へと少しだけチョイと捻る。

「ぎゃぁ!?」

「このまま骨折ってもいいんだけど…このナイフで同じ目にもあわせてやりたいんだよね~」

そういって目のまん前にナイフをグサリとたてつける。すぐに血を流して終了ってわけにもいかないからね、ナイフは最後でいいか。

「…っと…それか、浩にいちゃんの大切にしてたからな~…体で払ってもらおっかなーっ」

「ぎぃっっ!!」

バッグを引き寄せてその中から例の特別重いラケットを取り出して背中の上で体勢を立て直しフレームを肩めがけて振り下ろす。いつもならこんなことしないんだけれど今だけはとてつもなく『楽しい』。こんなにも無防備で力の差がある相手をいたぶるのは最高に気持ちがいい。

「…何しようとしてるの?」

腕を押さえるのも面倒になって地面に叩きつけて俺はその場に立ち上がった。廣田はそれをチャンスだと思って動き出そうとするがその前に頭を思い切り踏みつける。

「それっ!ほらっ!」

背中に向けてさらにラケットを振り下ろしたり踏みつけたり。そのせいか鈍い音が何度も何度も響いてそれと共にうめき声も聞こえる。

「だーから、動かないでよ……お楽しみはこれからだって」

「ぐふっ……!」

「アハハハ!!…ほらほらどうした、俺を殺すんじゃなかったのっ?」

腕を掴んで腹を浮かせるとつま先を食い込ませるように蹴りを入れその腕をラケットで思い切り弾く。どうせ腕に感覚なんてないとか言ってたから無駄かもしれないけど。それにしても、そろそろ暇になってきたな~。と思ったときに先ほど刺したナイフが目に入ったのでラケットをその場に置いた、

「よいしょっと……さて、そろそろ死ぬ?」

「ヒッ!?……い、嫌だ……死にたく…」

「そんな駄々こねられてもさぁ、どーせ死ぬの変わらないんだからいいんじゃない?…なーんてね、アハハハハ!」

地面に刺さったナイフを抜いて髪を掴んで顔をあげあらわになった首筋に添えて軽く引く。すると面白いくらいに簡単に切り傷が出来てそこから血がタラりと1つの道を作って少しずつ流れていく。廣田は痛みからか足を暴れさせてここから離れようと必死で動いている。

「ったく、さっきから同じ事言わせないでって!」

「ギャッ!!」

ちょっと鬱陶しいのでまた地面にこすり付けて無理やり動かないようにしてみる。

「ギャッ…だって。そんな可愛い悲鳴上げてもお前じゃ可愛くないしただ気持ち悪いだけだから」

さて、今の時間は…ということで廣田の上にドスンと座ってスマホを見る。ここについてそんな時間経ってないけど遅れも出来ないか…。スマホの画面に光の反射で俺の顔が映り、その表情は唇が楽しそうに歪んでいて人殺しを快楽としているようなそんな人間のものだった。

「遊ぶのもいいけど…これ以上時間かけれないしなー……どうしてほしい、廣田サン」

「し、死にたく……ヤダ……助け「ちなみに生かす気はサラサラないから」……っ!?」

「とりあえずもうちょっとやりますか……ねっと!」

とりあえず人間なら冗談抜きで痛いであろう弁慶の泣きどころや顔や胸などを数回蹴ったり殴ったりしているうちに廣田の体から力が抜けていくのがわかった。だがまだ生きているらしく本当にしぶといヤツだ。

「もしもーし!反応なし、か…もういいや。じゃ、さよならだね」

うつぶせの状態の廣田を足でチョイと動かして仰向けにし、ナイフを逆手に持って心臓めがけて構える。まあ、あっけないけど…気分いいし終わりでいいよね。

「死ぬのってどんな感じなの……か……な……」

だが俺の手にあるナイフが心臓にささることはなくその手前で止まっていた。廣田に斬られた箇所が突然痛み出したと思ったら目の前では廣田がぼろぼろの姿で倒れてて俺の手にはナイフが握られている。

「…俺が…やったの…か…」

と、自問するもその答えはすぐに出る。和人はもう行かせたからこの場にはいない、さらに警備員もここを見回っていないからこの辺りには誰もいないので消去法で俺しかいないし、何より廣田に向けてやったこと全部覚えている。そう思い始めてからどんどん息が荒くなって手も、体全体も震えてくる。

「…ぁぁ……あぁぁ……ああぁ!」

自分で自分が恐ろしくなって頭の中がこんがらがる。何で…俺…夢じゃない…ましてやここはあのデスゲームの中でもないし…なら何で俺はこんなことを?

「誰だ!そこにいるのは!!」

その時、突然光と共に男の人の声が聞こえた。その方向を見るとそこには堅苦しい制服に身を包んだ警備員らしき男の姿が。彼はすぐさま駆け寄ってくると俺と認識したらしく「こんな時間にどうした」と聞いてきた。どうやらいつも病院に来るときに顔をあわせていたあの守衛さんらしい。

「……この人は…?」

「…きゅ、急に襲われて…」

「そうか。……怪我してるじゃないか」

俺の怪我を確認した守衛さんは突然携帯を取り出すとどこかに連絡し始めた。この守衛さん、なんか偉い人らしく無理やりだが怪我の治療をさせろと何度もいっていた。しばらくして話し合いも終わると持っていた手錠で廣田の両腕を固定する。

「雄護君、君は早く中に入りなさい。そしてドクターにその怪我を見てもらいな」

「……は、はい…」

守衛さんはそういうと廣田の持っていたナイフをしまい、廣田を担いで病院の入り口とは真反対の方向へと歩いていった。あの方向に関係者以外立ち入り禁止の扉でもあるのかは知らないけど…。
でも、あの人に声をかけられたおかげで何とか気持ちを落ち着かせることが出来た。とりあえず、俺も先に行った和人を追おうことにした。

―――――

寒さのおかげか、もう痛みはない。なのでできる限り全力で病院へ向かい駐車場に差し掛かる。するとそこにはスーツを着た男性がうつぶせで気絶しているのとその横で立っている見覚えのある少年がいた。

「……和人……」

「陸也か……須郷に襲われてさ…」

どうやら和人も俺と同じくここに倒れている人間にちょっかいかけられたらしい。和人の今の姿を見ると結構ぼろぼろだったから俺のように一方的に痛めつけたわけでもないらしいが。
恐らくあの守衛さんは廣田の方で忙しいだろう。ということで逃げられないようにと須郷のネクタイで本人の両腕を後ろで縛って、近くにあったナイフをどこかへ蹴る。

「……よし、行くか」

「…だな」

和人は足を踏み出してもなんだかふらふらしていた。それほどまでに須郷にやられたのか…という時点でさらに殺意が沸きそうになったが今度はそれを押さえ込んで須郷から視線を外して和人に肩を貸す。こうしてゆっくりだが確実に俺たちは病院へと向かっていった。


――――――

もうちょっとバリアフリー心がけようと思わせるほど広くて長い階段を時間をかけて登ると正面エントランスへと繋がる最後の短い道が。そこを歩ききって自動ドアの前に立つも反応はない。だがガラス越しに光は見えるのでまだ人はいるらしい。叩いて気付かせようと思ったがその前に和人がスライドドアを見つけ、押すとありがたいことに開いてくれた。

「あの…すいません!!」

談笑が聞こえるナースステーションへ大声で叫ぶといぶかしむような表情をしたナースが2人出てくる。が、俺たちの格好を見た瞬間にその表情は驚きへと変化する。

「どうしたんですか!?」

「駐車場でナイフを持った男に襲われました。男は白いバンの向こうで気絶してます」

その途端、ナースに緊張が走りドタバタし始めた。数人の警備員とナースが外へ行き、若い方の人もそれに続いてエントランスへと向かっていった。残った看護婦は俺たちを見て何を勘違いしたか知らないけど「結城さんの家族」と言ったが細かいことは言ってる暇ないのでとりあえず肯定しておく。

「ドクター呼んでくるからちょっとここで待っていてください」

そういって最後の一人も姿を消してしまう。ナースステーションで無人は問題だろと思いながらしぶしぶ待っていようとするが和人がそれを許さなかった。

「…あのー和人さん?」

「もう待ってられないからな……ほら、お前の分も」

「…うわぁ」

呆れてものも言えないが待てないのは同じ気持ちなので素直に受け取って看護婦が向かった先とは別の方向へ足を進ませる。運のいいことにエレベータは1階に会ったのでボタンを押して素早くその中へと乗り込む。静かな上昇音が響く中俺はどうしても和人に聞きたかったことがあるので口を開く。

「なぁ和人」

「どうしたんだ?」

「もし…お前の知り合いにためらいもなく人を殺せるやつがいたら…?」

「……それってどうい「ん、やっぱいいや……」…何がしたいんだよ」

ジト目で見られるが正直和人の答えを聞くのが怖い。そして答えを聞いた後、もし俺がまたあんな感じになったらって想像してまた怖くなった。軽く身震いさせるとその瞬間停止して扉が開く。アスナとユカの部屋まではあと数十メートルだがその距離がいつもよりか長く感じ、さらに歩くスピードを遅らせる。

「……」

「……」

もう、お互いが自分の助けたい人のことで頭がいっぱいなのか歩いている中、会話はない。でもそれでも確実に歩を進めるとようやく俺も和人もそれぞれの部屋の前まで来ることが出来た。和人はもう待ちきれないかのように1回落として慌てながらカードをスリットに差し込んで部屋に入っていく。それを見送ってから俺もカードをスライドさせるために取り出そうとするがなぜか手が全然動こうとしない。

【…緊張……してるのか?】

不意に頭に声が響いてきた。その声に、声を出さずに答える。

『まぁ…そうかも…』

【大丈夫だって。……あいつは絶対に起きてるよ】

『…そう…だな……』

その声に励まされ、ドアを開けるためにカードをスライスさせる。いつものように花の香りが流れるがそれを気にしている余裕はない。室内の照明は消灯時間をとっくに過ぎているため落ちており外の光が優しく光っている。そして変わらずにあるのはジェルベッドとこのフロアを仕切っている白いカーテン。もう俺は何のためらいもなしに端を掴む。

「……やっと」

そんな声がいつの間にか出ていた。薄い診察衣に身を包んだ少女が窓の外に目を向けており足の上には今まで彼女を拘束していた悪魔の道具…ナーヴギアが。

「…来たよ、ユカ」

なんとか声を出して呼びかける。するとその体は大きく震えて振り向いて、一瞬驚いた顔をしたがその顔に薄っすらと涙を浮かべて微笑んだ。

「……リク、ヤ…」

長い間声を出してないせいか、かすれているが数年前に聞いた声とまったく変わらない声だ。俺はユカに近づいて近くの椅子に座るとその手を取った。

「……ようやく…終わった…最後の戦いが…」

ユカは俺の手についた血を見て小さく「そう」と呟くとその上から手を乗せてきた。

「…まだ…アンタの言ってること…上手く聞こえないけど……判るわ……がんばったのね…」

いたわるように顔を撫でられくすぐったく感じる。ちょっと恥ずかしくなってその手を優しく払いのけると改めてユカの顔を見て、俺は口を開いた。

「よし!…辛気臭いのは無しにしてっと……。久しぶり、悠香」

「…うん……3年ぶり…くらいかしら……久しぶり、陸也。…そして………ただいま、リクヤ…!」

「あぁ……お帰り…ユカ…!」

涙が出そうになるのを堪えて、泣いているユカをそっと抱きしめる。その時不意に窓ガラスに目が映り少年が目に入り、その少年が口を開く。

【……ユカのことは任せたよ。じゃあな、陸也】

『あぁ……もちろん…任せろって…。じゃあな…リクヤ』

腰と背中に大きな剣を2本携えており白いロングコートを着ている少年は背を向けて向こうへと駆け出していった。その先には棍を持った少女や小さな竜をつれた女の子、ウェイトレスみたいな格好の少女…そして俺の幼馴染に似た少女のもとへとどんどん遠ざかるように足を進めていった。

『…今までありがとな……』

こうして2年と3ヶ月に及んだ電子世界の騒動は無事ハッピーエンドで終わりを遂げた。

 
 

 
後書き
涙「さぁ、黒リクヤの登場ですね」

リ「何その黒って…っていうかあれ完全に豹変じゃんただの!!」

涙「だってー」

リ「何でこうなったか聞くべき?」

涙「…某線のSNSで王道主人公って言われておぉ!っと思ったけどちょっと違う部分も含めたいなって思って」

リ「別にこうしなくても…」

涙「いいじゃん、僕これ好きだよーww
でも他の人がどんな風に思ってるのか知りたいので感想お願いします。あと長くなったな~…本体次話のも入れたからこうなったんだよねww」

リ「何で入れた!?」

涙「だって…キリよくするためにそうするしかなかったんだもんww次話一応書いてたけど3000字行かなかったし」

リ「文字数出すとかリアルすぎるだろ!!」

涙「まぁ…たまにはいいじゃないかwwということで次ALOラストで恐らくGGOに入ります!!ではっ」
 
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