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万華鏡

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第二十七話 江田島その三

「あそこは」
「そう、ここもいいところだから」
「そうですね、岡山も」
「桃を食べてね」
 高見先輩はこれにこだわりを見せる。
「桃を食べたら長生き出来るのよ」
「西遊記ですか?」
「あれだけど実際に身体に凄くいいから」
 これはマスカットもである。糖分は高いがそれでも健康にいいのだ。
「食べてね」
「あと黍団子ですよね」
 彩夏はこの菓子も話に出した。
「桃太郎で」
「そう、それも忘れないでね」
「あれ美味しいですよね」
 彩夏は無意識の上に卓の上のお菓子を手に取っていた、見ればそれは広島名物もみじ饅頭であった。餡子が中にあるものだ。
「あのお団子も」
「名物だけあってね。けれどね」
「けれど?」
「幾ら美味しくてもね」
 それでもだと、高見先輩はここで首を傾げさせて言った。
「岡山から東京まで飛行機で直輸入したらね」
「高くつきますよね」
「ええ、かなりね」
「というかそういうことす人いるんですか?」
「ある特撮番組のプロデューサーがしたのよ」
 その特撮番組とは何かというと。
「鬼のね」
「ああ、あれですか」
「これでわかったわよね」
「はい、楽器使って山で戦ってた」
「あれでしたのよ」
「何かあの番組ってプロデューサー途中で交代しましたよね」
 彩夏は高見先輩にこのことを言った。
「そうですよね」
「ええ、そういうことばかりしてたからね」
「お金使い過ぎたんですね」
「そうなの。あとスケジュール管理も酷くて」
 他にはスポンサーやスタッフのことも考慮しなかった。確かに素晴らしい番組を作ることは大事だがあまりにも我が強過ぎ周りも見えていなかった。
 スポンサーは資本主義社会では忘れてはならない、綺麗ごとでなくスポンサーがいなければ番組が成り立たないからだ。
「それで何とかしろって言われたけれど」
「何もしなかったんですか」
「それならまだよくて反発したのよ」
 尚悪かった。
「予算もスケジュールもね」
「どちらもですか」
「そう、どっちもね」
「プロデューサーって言うなら顧問の先生ですよね」
 部活に例えるとだった。
「そうですよね」
「そう、顧問の先生がそういうの考るわよね」
 部の予算やスケジュールのことをだ。
「部長もだけれど」
「はい、中学でもそうでした」
「けれど顧問の先生がそこで無茶苦茶やったら部活はね」
「成り立たないですよね」
「部活もお金と時間よ」
 人類社会では絶対のことだ、この二つは。
「顧問の先生が考えてしっかりするものでしょ」
「そこから生徒が動きますから」
「で、プロデューサーがそうだから」
 それでだった。
「交代させられたのよ」
「岡山から黍団子を直輸入とかしてたから」
「そうなのよ。まあ黍団子に罪はないから」
 高見先輩もこのことは保障した。 
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