とある星の力を使いし者
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第66話
麻生の放った蒼い光に呑まれたラファルとスターヴァンパイヤは跡形もなく消えていた。
地面に落ちているラファルの手ガ持っている魔道書に麻生は近づき、星の剣を突き刺す。
蒼い炎が剣先から噴き出しラファルの腕ごと魔道書は燃えていった。
星の力を解くと麻生は頭を押えながら膝を折った。
「ちょっと、大丈夫!?」
美琴は急いで麻生に近づいて言葉をかける。
麻生の胸にはラファルの風の魔術を受けたのか切り傷が出来ていた。
星の力で治療しようとしたが。
(傷が治らない?)
どんな傷でも一瞬で治せていた筈だが、何故かこの傷だけは治せなかった。
胸の傷の痛みと頭痛がひどい麻生だが、今はそんな事を気にしている暇はなかった。
(周りの生徒はさっきの一部始終を見ていた。
誤魔化すのも無駄だろうな。
あいつらの魔術は知られる訳にはいかない、どうすればいい。)
頭痛でよく頭が回らない麻生。
本当なら自分が直接干渉して記憶を操作したい所だが、今は頭痛のせいで動く事もできない。
どうすればいいのか、と麻生が途方に暮れている時だった。
「う~ん?
何かあったのぉ?」
生徒達が自分から道を開けていく。
そこから出てきたのは食蜂操祈だ。
麻生は胸の傷を隠しながら操祈の姿を見て、ある事を思いついた。
「操祈、ちょっといいか?」
「なになに?」
麻生に呼ばれたのが嬉しいのかすぐに駆け付けてくる。
小声で操祈に話しかける。
そして、リモコンを星のバッグから取り出すとボタンを押す。
その瞬間、操祈と麻生と美琴以外の生徒達の瞳の色が消えた。
操祈の能力でこの場にいる生徒達を支配しているのだ。
「何やっているのよ!?
早く洗脳を解きなさい!!」
訳が分からない美琴だが、突然生徒達を洗脳する事に黙っていられなかった。
美琴の言葉を無視して麻生は操祈に指示する。
「この場に居る生徒・・・どうせなら全校生徒と教師達にこの出来事についての記憶を消してくれ。
出来るか?」
「出来る、出来る♪
私に任せなさい♪」
「この事件の一部始終を消すって、この校門とか地面の事はどう説明するつもり?」
「それは俺の能力で修復する。」
麻生は片手を地面に置くと、抉れた地面や破壊された校門が時間を巻き戻すようにドンドン元の形に戻って行く。
それと同時に生徒達はゆっくりと歩きながら校舎の中に戻って行く。
「とりあえず彼女達には自分の教室に戻って授業を受けているという事に改竄しておいたわよ。」
「そうか・・・助かった。」
「何がどうなっているのか説明してくれる?」
「ああ、それは・・・」
美琴に説明しようとしたが安心したのか頭痛が酷くなり、そのままゆっくりと地面に倒れていく。
美琴と操祈は驚いた顔をして麻生に近づいてくる。
麻生は美琴に納得のいく説明をしようとしたが出来るとは思えなかった。
なぜなら自分でもここまで記憶を消す事に躍起になったのか分からないからだ。
上条が魔術の存在を知ってもここまでの事はしなかった。
(どうして俺はあいつらの存在や魔術を痕跡を消そうとしたんだ?)
自分に問い掛けるが答えが返ってくる訳がなかった。
夢を見た。
公園に一人の子供がいる。
麻生はこれは夢だとすぐに分かった。
なぜならその子供は昔の自分で意識は公園の上から子供を見下ろしていたからだ。
だから、自分は夢を見ている事がすぐに分かった。
麻生は子供のころの記憶があまりはっきりしていない。
星と繋がり、莫大な情報量と記憶を見せられたので昔の記憶なんてどこかに消えてしまった。
気がつけば学園都市にいて愛穂や桔梗、子供の頃の制理に出会っていた。
今見ている自分はいつの自分なのか全く分からない。
麻生が家に帰ろうとしているのか公園を出ようとした時、一人の男が麻生に近づいてきた。
顔は見えないが身体つきや、服装から判断して男に見える。
歳は少し老けて見える。
男は小さく笑みを浮かべると、子供の麻生に向かって何かを話している。
そして、男が麻生の頭に手を置いた瞬間にまるでテレビを消すかのように見ている映像が消えた。
麻生は目を開けると知らない天井が見えた。
ゆっくりと腰を上げると自分はベットに寝転がっていて、傍には美琴と操祈が椅子に座っていた。
「起きたわね。
気分はどう?」
「少し頭と胸が痛いが大丈夫だ。」
「私が頭を見てあげようかぁ?」
「遠慮しておく。」
即答されて少し膨れっ面になる操祈。
胸の傷には包帯が巻かれていた。
どうやら、出血は出ていたがそれほど傷は深くなかったみたいだった。
美琴はいつも大人な操祈がこんな子供のような表情を見て驚いているが話を進める。
「とりあえず説明しておくわね。
あの後、彼女の能力で大した騒ぎにはならなかったわ。
あんたは気絶してその付添いで私と彼女がずっと保健室で待っていたわけ。」
「倒れた途端に血が出てきた時はさすがに焦ったぞぉ。」
麻生は自分が寝ている間にこの二人がどんな会話をしたのか少し気になった。
だが、聞いても仲良くお話をしている訳がないと分かっているので、あえて聞かないでおいた。
「心配かけたみたいだな。」
「その事に関してはまた今度。
それでどうして記憶を改竄しないといけなかったのか、教えて貰うわよ。」
「私も気になるぅ。」
美琴は納得のいく説明をするまで帰さない、といった感じの表情をしている。
麻生は誤魔化しても仕方がないので正直に答える。
「どうして俺も改竄にあそこまで躍起になったのか分からないんだ。」
簡単にそう告げる。
美琴はじぃ~、と麻生の表情や目を観察している。
少しして美琴は大きくため息を吐いて言う。
「嘘ついているみたいじゃないわね。」
「私はいつでも恭介さんの事を信じているけどね。」
「あんたはどんな答えでも疑わないでしょ。」
「あら、彼が特別な能力なだけで他の人なら普通に頭を覗くし、彼の頭も覗けるのなら覗いているわよ。」
「相変わらず下衆い能力の使い方ね。」
「・・・・・」
「・・・・・」
まさに一触即発の雰囲気に変わる。
麻生は自分が寝ている間に喧嘩にならなかったのかが不思議で仕方がない。
その後、タイミングよく保健医の先生がやってきて、二人は退出していった。
麻生の胸に傷ができている事に対して、保険医の先生は麻生に質問する。
傷は深くないとはいえ、普通に生活していてはまず出来ない傷だ。
その日は特に能力を使った授業はない。
麻生はすまない、と謝りその保険医の先生の頭に触れる。
その瞬間、保険医の糸の切れた人形の様に力が抜け、麻生に倒れ込んでくる。
麻生は保険医を支えて、椅子に座らせる。
包帯を身体に巻き直し服を着ると、保険医の先生が目を覚ました。
「あれ、麻生君じゃない。
てか、私寝てた?」
麻生はいつも通りの表情を浮かべて言う。
「ええ、ぐっすり寝てましたよ。」
「げっ、他の先生にばれるとやばいわね。」
「誰にも言いませんから安心してください。
それでは。」
そう言って麻生は保健室を出て行く。
麻生が出て行った直後に、先生は麻生は何の用で此処に来たのか考える。
少し考えて、それほど気にする事でもないと判断して仕事に戻る。
保健室を出た麻生はもう一度深く保健室に向かって頭を下げて、保健室を離れていった。
その後は特に何もなかった。
ラファルの仲間がやってくるなどいう事もなく、平和な学園生活を送る事が出来た。
平和と言っても、周りの女子生徒や操祈に付き纏われていたが、ラファルの事件に比べると平和だった。
そして、編入最終日。
今日を持って麻生は常盤台中学の一時編入期間が終了する。
最後だからだと言って特別な事をする訳でもなく、時間が過ぎていった。
しかし、放課後になると常盤台の生徒達が麻生の元に駆け寄ってきた。
「麻生様、また来てください!!」
「麻生様ならいつでも歓迎いたしますわ!!」
「此処にいらした時はぜひ、わたくしに会いに来てください!!」
その後も何人も麻生の元にやってきては挨拶をしていく。
正直、誰も挨拶もしないだろうと思っていたので少し驚いていた。
騒ぎが落ち着くと理事長室に向かい、ドアをノックする。
どうぞ、という返事が聞こえて中に入る。
「これを返しに来ました。」
麻生は常盤台の制服を返しに来たのだ。
今は自分の高校の学生服を着ている。
理事長は麻生が持っている常盤台の制服を受け取らずに、にっこりを笑みを浮かべて言う。
「これはあなたが持っていてください。
この学園に男子生徒はいませんので。」
「いいのですか?
俺が悪用するとか考えないのですか?」
「信頼していますから。」
笑みを崩さずに答える。
麻生は小さくため息を吐いて制服をバックに入れて、理事長室を出て行こうとしたが理事長に声をかけられる。
「事前に連絡していただければ、いつでも歓迎しますよ。」
「暇があれば、また。」
そう返して、麻生は理事長室を出て行った。
自分が泊まっていた寮に戻り服などが入った鞄を背負う。
寮監に挨拶をして、寮を後にする。
学園から帰る途中でも何人かに声をかけられながらも「学者の園」の出口を目指す。
その途中で取り巻きを連れた操祈に出会う。
「この学園に居ればいいのに。」
操祈は麻生と離れるのが寂しいのか、元気のない声でそう言った。
「そういう訳にもいかないだろ。」
「私の能力で席を作ってあげようか?」
「いらない。
まぁ、お前には助けられたな。
礼を言う。」
「それならキスして♪」
操祈の爆弾発言に周りが驚きながらも必死に止める。
その静止を全く気にすることなく、麻生の首に自分の腕を巻き、唇を近づけていく。
麻生はため息を吐いて、操祈の頭を軽く撫でながら言った。
「そう言う言葉は俺じゃなくて心から信じられる男に言うんだな。」
そう言って、頭を撫でた手で操祈の腕を解き、去って行く。
「あ~あ、上手い事かわされたなぁ。」
「女王、相手をからかうのもいい加減にしてください。」
「そうですよ、相手が本気にしたら面倒ですよ。
まぁ、女王の能力があれば心配ないと思いますが。」
「うん?私は本気だったよぉ♪」
え、と周りの取り巻きは声をあげた。
「次に会った時には本気だぞって事を伝えないとね♪」
「学舎の園」の出口に向かうとその傍に美琴が立っていた。
麻生の姿を確認すると、ゆっくりと近づいてくる。
なぜか、両手は後ろで組んでいた。
「あ、あの・・・・その・・・・」
麻生は美琴の言葉を待っていると、美琴は両手を突き出す。
その手には可愛い袋が手に持っていた。
「何だこれは?」
その袋を見ながら言う。
美琴は顔を赤くしながらも答えた。
「その・・実験の時もロクにお礼も出来なかったし・・・それにあの時の襲撃の時も助けてもらったし・・・・だから・・・・その・・・・」
小さい言葉で何かブツブツと言っている。
麻生は美琴の後ろの手に何を持っているのか確認する。
そこには可愛らしい小さな袋があった。
「それは何だ?」
その袋を見つけた麻生は美琴に聞く。
麻生に袋の存在を知られた美琴は顔を真っ赤にする。
ゆっくりと後ろに回した手を麻生の方に伸ばす。
「こ、これ・・・今までのお礼。」
その言葉を聞いた麻生は袋を受け取って美琴の頭を撫でた。
「ありがとうな、美琴。」
そう告げると麻生は「学舎の園」から出て行った。
美琴は少し呆然としていたが、次の瞬間にはさっきよりも顔を真っ赤にしていた。
美琴に貰った小袋を開けて見ると、中身はクッキーが入っていた。
その中から一枚取り出し、口に運ぶ。
「・・・・・・・・・意外とうまいな。
結構、料理上手いんだなあいつ。」
そう言いつつ、しっかり全部食べる麻生だった。
「そうか、ラファルはやられたか。」
何本もの蝋燭が立ち、火の明かりが少しだけ辺りを照らす。
そこには幾つもの影があった。
「まぁ、あの男ではどう足掻いても無理でしょう。
幹部に昇格するという虚言を信じ、少しでもデータを回収できると思っていましたが有意義な情報は手に入れる事は出来ませんでした。」
ラファルの死に何も感じないのか、冷たい声で麻生恭介についての情報を読み上げる。
「ふむ、あの時私が戦っていれば良かったですかな?」
「樹形図の設計者」の残骸の奪い合いの時に、麻生が出会ったスーツの男もいた。
「そんなのずるいよ!!
私も戦ってみたいのに!!」
そんな中、子供の我がままのような言い方をする者もいた。
「我も同意だ。
久しく強き者と戦っていないのでな。
血が騒いで仕方がない。」
「てかさぁ?
面倒だしさっさと殺さないの?」
「駄目だ、準備が整っていない。
我らが完全に勝つにはまだ準備が必要だ。」
「その通りだ。」
最後に言った声で周りが静まる。
「我らは負ける事は許されない。
故に準備は完璧にし、絶対に勝てる状況を作り出す。
それまで皆の者には退屈かもしれないが我慢してくれ。」
その言葉にその場にいた全員が深く頭を下げる。
その忠誠心を見て教皇、バルズ=ロメルトは笑みを浮かべた。
後書き
感想や意見、主人公の技の募集や敵の技の募集など随時募集しています。
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