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八条学園怪異譚

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第二十七話 教会の赤マントその十二

「やっぱり」
「否定は出来ないな、それは」
「そうですよね」
「しかしだ、暴力を振るう人間がいたのは確かだが」
「愛情がある人もいたんですね」
「しっかりとな」
 いたというのだ。
「むしろそうした人の方が多かった」
「海軍って鉄拳制裁っていいますけれど」
「確かに海軍は殴る組織だった」
 このことは今も言い伝えられている、映画にも出ている。
「だが殴り方に作法があった」
「あっ、殴る前に姿勢を正させてですね」
「目を瞑り歯を食いしばらせてだ」
 そのうえで殴ったのだ。殴られても怪我がない様に。
「それがあった、今の自衛隊では暴力を震えば警務隊に言えばいい」
「警務隊?」
「憲兵と思ってくれればいい」
 役目は大体同じだ。自衛隊の中の警察である。
「私も部下からそうした話を聞いてよく警務隊に通報した」
「通報された暴力振るった人はやっぱり」
「最悪懲戒免職になった」
 そうなったというのだ。
「暴力は軍にあっても存在していいものではない」
「そうなんですね」
「それは文明ではない、野蛮でもない」
「じゃあ何ですか?」
「下賤だ」
 賎しいというのだ。
「それになる」
「何か汚い感じがしますね」
「実際に汚い、刃向かえない者に拳を振るって何になる」
 暴力を振るう者の常だ、自分より腕力や地位が弱い者に振るう。しかしそれは人格がその相手より優れているものでは決してない。
「人格で勝負することだ」
「それが必要なんですね」
「それが出来ない輩は下賤だ」
 日下部は前を見て真剣な顔で言い切った。
「それ以外の何でもない」
「下賤ですか」
「そうだ、下賤だ」
 まさにそれだというのだ。
「私も体罰を振るわれ振るったkとがあるが」
「それでもですか」
「暴力はしなかった」
 己の整然を振り返っての言葉だ。
「振るわない様に己を律してきたつもりだ」
「ですよね、暴力なんて」
「最低ですよね」
「人は理によって己を律し生きるもの」
「暴力じゃなくてですね」
「それで律することはしないで」
「ましてや人を教え導くべき教師が暴力を振るってどうする」
 暴力教師の存在をあくまで否定する日下部だった、忌まわしげに話していく。
「生徒もまた人間だ」
「同じ人間に暴力を振るうことはですか」
「それは」
「そうだ、暴力は否定されるものだ」
「先生がそういうことするって」
「問題外なんですね」
「私もそう思う」
 鉄拳制裁が常だった帝国海軍にいた彼ですらだった、暴力については否定しそのうえで二人に話すのだった。
「それは醜悪だ」
「ですよね」
 愛実も日下部のその言葉に頷く。
「私も気をつけます」
「愛実ちゃん暴力振るったことないでしょ」
 聖花は己を律しようとした愛実にこう言った。 
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