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八条学園怪異譚

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第二十七話 教会の赤マントその九

「そう思うと今は勉強しやすいわ」
「ですね、何か教科書が優しく思えてきました」
 勉強にいつも苦労している愛実の言葉だ。とはいっても彼女の成績は学年でも結構いい方である。大学も行けるまでに。
「そういうお話を聞いていたら」
「私もね」
 聖花も愛実の横で言う。
「何か博士のお話を聞いてたら」
「というか古文書での教科書とかあったら怖いわね」
「全然読めないわよね」
「文字も時代によって変わる」
 博士は二人にこのことも話す。
「今は本当に読みやすいわ」
「百人一首もそれで助かってます」
「今の文字で」
 二人は部活の話もした。お茶を飲みながらだから和風が揃った。
「まず覚えないといけないですから
「それからお札の文字を覚えてですから」
「百人一首もコツがあるんだよね」
 筆に手足と目に鼻と口が生えたものが言ってきた、大きさもそのままだ。
「覚えないとね」
「そうそう、それなの」
「覚えないとね」
「さもないと勝負にならないから」
「そこからだから」
 二人もかるた、百人一首は昔からやっているだけに造詣が深い、伊達に子供の頃から一緒にしてはいない。
「色々なかるたがあるけれどね」
「漫画雑誌の付録でもあったし」
「昔の漫画雑誌と思えばよい」
 博士はここで話を戻してきた。
「赤マント君にしてもな」
「じゃあ今夜行ってみます」
「その教会に」
「ではな。しかし本当にじゃ」
 ここでこうも言う博士だった。
「この学園は色々じゃな」
「色々っていいますか」
「普通学校の中に一緒にお寺と教会はないですよね」
 二人が言うのはこのことだった。
「やっぱり」
「普通は」
「まあそれはな」
 博士もこのことは否定しない。
「日本だけじゃ」
「ですよね、道観もありますし」
「中国の道教も」
「日本ならではじゃ」
 またこう言う博士だった。様々な宗教が共存している日本ならではだというのだ。
「よいことじゃ。実はわしもじゃ」
「えっ、博士ひょっとして」
「宗教の方も」
「わしは宗教学者でもあるのじゃよ」
 こちらの学問にも通じているというのだ。
「僧侶に神主の資格も持っておる。禅宗じゃ」
「両方ですか」
「どちらもですか」
「天理教の教会長の資格も持っておるぞ。キリスト教もな」
 とにかく様々な宗教の聖職者の資格を持っているというのだ。
「こちらは神父じゃがな」
「何かもう多過ぎてわからないんですけれど」
「というか複数の宗教の聖職者になれるんですか?」
「まあそこはあれじゃ」
 この辺りはぼかす博士だった、どうも何か事情があるらしい。
「日本ならではでな」
「またそう仰いますけれど」
「結構無茶苦茶なことですよ」
「だからここは日本じゃ」
 全てはこれに尽きた。
「そうしたことも出来るのじゃ」
「ううん、まあクリスマスお祝いして大晦日に除夜の鐘の音聴いてそれから神社に新年のお参りしますけれどね」
「そこから天理教の教会に行くとかも」
「それでよいのじゃよ。宗教は人の心を救うものじゃ」
 信じることによってだ、だからこそ宗教は素晴らしいのだ。 
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