トーゴの異世界無双
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第六十一話 こ、告白ぅ!?
放課後になって、クィルとミラニの三人で帰っていた時、背後に殺気を感じた。
それはミラニも同じだったようで、ほぼ同時に振り返った。
すると、何かが飛んできていた。
闘悟とミラニは素早くクィルを庇うように立つと、飛んでくるものを闘悟は手で掴み、ミラニは腰に下げていた剣を抜き叩き落とした。
闘悟は反射的に魔力で身体能力を強化したが、ミラニは強化せずに剣だけで防いだので、闘悟は感心した。
やっぱ、さすが魔法騎士団団長だな。
「何者だ! この方をクィルネス王女と知っての狼藉(ろうぜき)か!」
ミラニは良く通る声を張り上げる。
闘悟は掴んだものを見る。
「これは……針?」
見た目は確かに針だった。
しかし、その長さは二十センチくらいあった。
こんな長い針見たことねえな。
すると、持っていた針が急に硬さを失ったかのように柔らかくなる。
そして闘悟はそれを見て理解する。
「これは……髪の毛だ!」
「髪の毛だと?」
闘悟の言葉に反応し、目を見開きながらミラニが聞き返す。
紫色の髪の毛だった。
よく見れば、ミラニが叩き落とした針も、髪の毛に戻っている。
「多分、魔力を流して硬化していたんだろうな。この髪の毛から微かに魔力も感じるしな」
「さっすがだねぇ~!」
そんな気の抜けた声が耳に入って来た。
「あ、あそこなのです!」
クィルが指差す方向には、一本の木があり、そこには一人の少女がいた。
「フシシシ」
まるで子供のように笑う女の子を見て闘悟は目を見張る。
何故なら、彼女の頭には、さも立派なウサミミがついていたからだ。
その少女は、紫色の髪の毛を後ろでスリーテイルに結っている。
木の上で風を感じて揺れている。
身長はそれほど高くは無いが、女性の象徴とも言うべき胸の豊かさは尋常ではなかった。
もう本当にバインバインだった。
「きょ、巨乳……」
闘悟はあまりにも見事な双子山(ふたごやま)に、ついつい声を漏らしてしまった。
「な、ななな何を呟いておるんだ貴様は! 今どういう状況なのか理解しているのか!!!」
ミラニの指摘は最もである。
「ト、トーゴ様……」
やめてくれクィル。
オレが悪かったから、そんな悲しい表情をしないでくれ。
心がとても痛いから。
「フシシシ! いいよん! キミだったら、つつくぐらいなら許してあ・げ・る!」
な、何だとっ!? つつくだとぉ!
そんなことをすれば!
そんな嬉し恥ずかしなことをすれ……ば……え?
闘悟は固まりながらも、近くにいる二人の視線で現実に戻って来た。
「このヘタレ鬼畜(きちく)が!」
この言われよう酷くね?
オレまだ何もしてねえし。
「ちゅ、ちゅちゅくなんていけませんですぅっ!!!」
クィルにいたっては噛んでるし。
まあ、何かすげえ可愛いからいいけどさ。
「フシシシ、おっもしろいねんキミ! やっぱ挨拶に来て大せ~かいだよぉ!」
面白そうに笑う彼女を見て、ミラニが声を上げる。
「貴様、その制服……学園の者がどうして姫様を狙う?」
確かに彼女が着ていたのは、ヴェルーナ魔法学園の制服だった。
「え? 姫? ああ違う違う! 用があったのはそこのカレだよん!」
闘悟のことを指差して答える。
闘悟は何のことか分からず眉を寄せる。
「オレ?」
「そ、一度会って話したかったんだよ」
「いやいや、攻撃されたんだけど?」
「フシシシ、ゴメンねぇ。すこ~し実力が見たくてさ!」
ふざけんなよ!
どこの世界に髪の毛を硬化して、背後から投げつけて実力を試す奴がいるんだよ!
そう叫びたい闘悟だが、それよりも彼女が何のために会いに来たのかを考えることにした。
そして、自分なりの結論を出して口にした。
「アンタも……大会のことか?」
「うわお! やっぱ分かっちゃったぁ?」
大げさに驚いて見せるが、タイミングや、実力うんぬんから見ても、大会関係だとしか思えなかった。
「それで? 試した結果は?」
「んもうサイコ~だよん! 力だけじゃなくて、頭も回るみたいだしねん!」
褒められて悪い気はしないが、まだこの少女が何者か分かっていないので不気味さが残る。
「ねえトーゴちゃん?」
「ちゃ、ちゃん?」
「私の恋人、なってみない?」
「はあっ!?」
闘悟だけでなく、クィルやミラニまでも声を出して驚く。
クィルは「こ、ここここ」と鶏(にわとり)が鳴いているかのように声を発していた。
ミラニは「説明を要求するっ!」と闘悟に詰め寄って来るが、闘悟も急なことで反応し切れないでいた。
「フシシシ!」
闘悟は、瞬(まばた)きを忘れて笑う彼女を見る。
正直言っている意味が分からなかった。
初めて会う女性に告白された。
しかも、スタイルが抜群に良い美少女にだ。
戸惑いを隠せない闘悟は、顔を赤らめる。
「むふ~そういう顔もそそるねん!」
闘悟の照れた表情を見て楽しそうに微笑む。
闘悟はハッとなり、心を落ち着かせる。
そして、ゆっくり息を吐いて、自分の中のスイッチを切り替える。
「ふぅ、悪いけど、得体(えたい)の知れない相手から告白されても、素直に応じれるわけねえだろ?」
「……雰囲気が変わったね」
少女は笑顔を止めて、興味深そうに闘悟を見る。
「でも、得体が知れないって失礼だよぉ!」
「だったらまず名乗れよ?」
「あ、そういや名乗ってなかった? ありゃりゃ、うっかりうっかり!」
少女は可愛く舌を出すが、闘悟は平然と見つめる。
「見て分かる通り、私もヴェルーナの学生。六学年第二ルーム『ブレイヴ』のシャオニ・テイラーだよ!」
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