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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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無印編 破壊者、魔法と出会う
  13話:決戦の火蓋

 



海鳴市付近 海上


降り注ぐいくつもの雷。轟々と唸る水面。そこに渦巻く六つの竜巻。その合間を飛び交う二つの影。

「く、うわっ!」
「フェイト!?」

影の一つは黒い杖を持ち、竜巻の影響でできた突風に煽られながら飛び続ける、フェイトのもの。もう一つはフェイトの使い魔であるアルフのもの。

二人は荒れ狂う海の上で、こんな海を海を繰り出した原因であるジュエルシードを止めるべく奮闘している。
だが、フェイトの方は既に魔力がそこをつき、アルフは入り乱れる雷に行く手を阻まれてた。

「くっ!(このままじゃジュエルシードを封印できない…)」

竜巻や雷を必死に避けるフェイト。

「フェイトォ!」
「え…?――――アァァァァァ!!」

自らに降り注ぐ雷。それにより一瞬意識が飛びかける。体はもう限界近く、まっすぐ海に落下していく。

「フェイトーー!?」

それを見たアルフはフェイトを助けようと前へ出るが、雷が行く手を阻み、動く事ができない。
意識が朦朧としつつも落ちていくフェイト。そこへ追い打ちと言わんばかりに、ジュエルシードでできた竜巻がフェイトに迫る。

(あ……)

必死に避けようと体を動かそうとするが、動かす事ができない。すぐそこまで迫る竜巻に恐怖し、思わず目を瞑る。


だがくる筈であろう痛みが、襲われなかった。しかもさっきまで感じていた落下する感覚も、なんとも言えない浮遊感へと変わっていた。
恐る恐る目をゆっくり開けると、そこには赤い仮面をつけた人物がいた。

「え…えっと……」
「おっ、意識があったか。まぁ、そっちの方がありがたいがな」
「その声は…つか、さ…?」
「声でわかるとは、それまた予想外」

なんとなくうれしそうな声色で話す仮面の男、士。士は音速で移動できるタジャドルの力を使い、なのは達よりも速くフェイトの元へたどり着いたのだ。因にフェイトは今、士にお姫様だっこをされている状態だ。

「あ、あの……」
「この体勢はつらいだろうが、少し我慢してくれ。すぐアルフのところへ行くからよ」

そう言いながら前を見据え直す士。その先には雷に行く手を阻まれているアルフがいた。

















「士!フェイトは!?」
「大丈夫、疲労で体が動きにくくなっているだけだ。安心しろ」
「ごめんねアルフ。心配かけちゃって…」

フェイトを抱え、俺はアルフの元へ飛んでいった。アルフも相当心配していたらしく、すぐに安否を確認する。

「よかった…」

「フェイトちゃん!」
「っ!アイツらぁ!」

そこへ空からなのはとユーノもやってきた。アルフはそれを見て敵対心をむき出しに声を唸らせる。

「アルフ、この間も言ったが、俺達にお前らを捕まえる権利はない。それにアイツだってお前らを捕まえようとしているわけじゃない」
「ぐ、でも……」
「それよか、アレをどうにかしようぜ。このままじゃマズいのは確かだ」

なのはが隣にやってくるのに合わせてフェイトを放す。フェイトもすぐに空中にとどまるが、やはり動きがぎこちない。

「さて…アレをどう止めるかだが…」
「士、僕がアレの動きを止めるから、なのはと士で…」
「いや、それだとお前への負担も、なのはへの負担も大きい。ここはフェイトとアルフにも手伝ってもらう」
「え!?」
「アタシ達かい?!」

俺の言葉に二人は驚きの声を上げる。俺は二人を見てコクッと頷く。そして左腕を前に出し、タジャドルコンボ専用武器『タジャドルスピナー』を出現させる。

「まずはユーノ、アルフであの竜巻の動きをできるだけ止める。そして止めるだけじゃなく、できるだけ一カ所に集めてくれ」
「一カ所に?」
「そうだ。そして俺があの邪魔な竜巻をどかした後、なのはとフェイトの二人でジュエルシードを封印。それでいいな?」
「うん、わかった!」
「問題なし!」

なのはは俺の作戦を理解したのか返事をし、ユーノは返事をすると竜巻に向かって飛んでいき、足下に魔法陣を展開。そこからチェーンを作り出し竜巻に巻き付ける。

「……士、本当に信用していいのかい?」
「大丈夫だ。もしお前らを捕まえようって言う輩が出てきても、俺が逃がしてやる」
「それ言っていいのかい?…まぁいいや。それじゃ、アタシは行くよ!」

アルフはそう言い残し、ユーノの横へ移動する。そしてユーノと同様に足下に魔法陣を展開、チェーンで竜巻の動きを制限する。

「さて、後はお前だフェイト」
「え……?」
「なのは」
「うん!フェイトちゃん!」
〈 Divide Energy 〉

なのはがレイジングハートに指示を出すと、レイジングハートから桃色の魔力がフェイトが握るバルディッシュへと流れていく。

〈 Power charge 〉

「二人できっちり、半分こ!」
「………」

なのはの行動に驚きを見せるフェイト。そんなフェイトをよそに笑顔を見せる。

「士!かなり近づけたけど、もう…!」
「アタシもちょっと限界だよ!」

「それだけ固められれば十分。二人とも、行くぞ!」
「うん!」「………」

フェイトの返事が返ってこないが、俺は竜巻に向かって飛んでいく。

「決めるぞ、トリス」
〈はい!〉

竜巻に突っ込みながらも一枚のカードを抜き取る。そしてベルトへ入れ、発動。

〈 FAINAL ATACK RIDE・o o o OOO! 〉
〈タカ、クジャク、コンドル、ギン、ギン、ギン!ギガスキャンッ!!〉

カードの発動と同時にタジャドルスピナーが回転し、音声を発する。その後、俺の体は炎に包まれ、その炎は大きな鳥の形を作り出す。

〈 Magna braze 〉
「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」


そして俺が一カ所に集められた竜巻にぶつかると、爆発が起き竜巻を吹き飛ばす。俺は爆発でできた爆煙から抜け出す。

「なのは、フェイト!今だ!」

「行くよ、フェイトちゃん!せーの!!」

「サンダー……!」
「ディバイィィィン……!」

俺の声と共に二人はお互いのデバイスに魔力を込める。そして――――

「レイジィィィーーー!!」
「バスターーーーー!!」

放たれた二人の攻撃は消えた竜巻の跡地へまっすぐ向かっていく。
そして周りに衝撃と閃光が放たれる。俺達はその二つにより視界が遮られる。

閃光が収まり、衝撃で巻き上げられた海水が雨のように降り注ぐ中、俺は目をゆっくり開ける。
俺の視界の先にはなのはとフェイト、そして二人に挟まれた状態でジュエルシードが輝いていた。

「成功、か……」
〈どうやら、そのようですね〉

俺はその様子を見て、ゆっくり二人に向かっていく。

「友達に…なりたいんだ…」
「っ………」

ようやく落ち着いたと思った頃に、なのはが口を開く。その言葉に、フェイトも遠くにいたアルフも驚く。

そんな中、怪しい雲行きだった空から紫色の雷が俺達に降り注ぐ。

「きゃっ!」
「うわっ!?」
「いきなりなんだ!?」

「っ、母さん!?」

そしてまた新たに雷が……っておい、その方向は!?
俺は急いでフェイトの元へ。そしてフェイトを押しのけ、向かってきている雷をタジャドルスピナーで防ぐ。

「ぐっ!」
「つ、士!」

[俺の事はいい。速くジュエルシードを回収してお前らは逃げろ!]
[え!?で、でも!?]
[いいから行け!管理局の誰かが来る可能性がある!早くしろ!]
[…フェイト、行くよ!]
[あ、アルフ!?]

受けきった俺はすぐにフェイトに念話をつなぐ。フェイトは少し渋ったが、アルフがすぐに動きを見せる。狼状態から人型になり、ジュエルシードへ一直線に向かっていく。

ガキィ!
「っ!?」

だが、後少しと言うところで突如現れたクロノに阻まれる。アルフは目つきを変え、自分を阻むクロノのデバイスを強く握る。

「邪魔ぁ…」
「っ!?」
「するなぁぁ!!」

そしてクロノを魔力弾で弾き飛ばす。クロノは海面に二、三回バウンドする。アルフはすぐにジュエルシードの方を確認するが、そこには六つあった筈のものが三つしかなかった。

「三つしかない!?」

遠目でクロノを確認すると、掲げる手の間には三つのジュエルシードがあった。そしてそのジュエルシードは、クロノの持つデバイスへと封印される。

「……ぅぅぅうううううぁぁぁぁあああああああ!!」

感情的に吠えたアルフは、右手に込めた魔力を海へ叩き付ける。それによりできた波が俺達にかかり、俺達は一瞬フェイト達から目を外す。
再びフェイト達を確認しようと周りを見た時には、もう二人の影もなかった。

















で、今はアースラの一室。

「ホントにあなた達ったら…命令無視なんて…」

「すいません…」
「ごめんなさい…」
「…………」

「ちょっと士君?聞いてる?」
「いや、全然」

リンディさんに言われ、閉じていた目を開けて素直に言う。嘘ついてもなんにもならんし、ここは素直にな。

「…怒られてる原因を作り出した本人がこれじゃ、怒る気にもならないわ」
「あんま怒ってるようにも見えないが?」
「いいのよ。建前として怒るだけだから」

と言ってさっきまで眉間によせていたシワを元に戻すリンディさん。

「あの…怒る気がないって…」
「実際のところ、士君が協力の為に提示した条件に今回の事が当てはまるし、色々と得るところもあった訳で……」
「別に普通に怒ってても俺は聞かないと思うけど」

「ただし!以後、今回以上に目を瞑れない事に関しては厳罰に処します。いいですね、士君?」
「てか、なんで俺だけ「いいわよね?」…だからなん「い・い・わ・ね?」……了解した、以後気をつける…」

黒い笑みのま俺にしつこく聞いてくるリンディさんに負け、俺は応える。やばいあの笑顔は…色々と……

「さて、問題はこれからね…。クロノ、今回の事件の大元にについて、何か心当たりが?」
「はい。エイミィ、モニターに」
『はいは~い!』

壁に寄りかかっていたクロノは、俺達の会話が切れたところで歩いてくる。そして別の場所にいるエイミィに言葉をかけると、机の中央にあるモニターに一人の女性の写真が映し出される。

「あら?」
「そう。僕らと同じ、ミッドチルダ出身の魔導師、プレシア・テスタロッサ。専門は、次元航行エネルギーの開発。偉大な魔導師でありながら、違法研究と事故により、放逐された人物です登録データとさっきの魔力波動も、一致しています」

「テスタロッサ…て事はこいつはフェイトの…」
「おそらく、そうだろう…」
「フェイトちゃん、あのとき「母さん」って…」
「親子…ね…」

確かに、あの雷の攻撃を見たフェイトはそう言っていた。だが……

「そ、その…驚いてたって言うより、なんだか怖がってたみたいでした」

そう。なのはの言う通り、あの雷の攻撃に…いや、もしかしたらプレシア・テスタロッサに対して怖がっていたのかもしれない。

「エイミィ!プレシア女史に関して、もう少し詳しいデータを出せる?放逐後の足取り、家族関係、その他なんでも!」
「はいはい、すぐ探します」






しばらくし、資料をまとめてやってきたエイミィによって、詳しい事がわかった。
プレシアは自らの研究が失敗し、地方へ。数年後には行方不明という、何とも謎な経歴だ。

「プレシア女史もフェイトちゃんも、アレだけの魔力を放出した後だと、しばらくは身動きは取れないでしょう。その間にアースラのシールド強化もしないといけないし……。あなた達は、一休みしといた方がいいわね」
「あ、でも……」
「特になのはさんと士君は、あまり長く学校を休みっぱなしでも良くないでしょ。一時帰宅を許可します。ご家族と学校に、少し顔を見せといた方がいいわ」
「……はい…」
「ほ~い」

リンディさんの提案に、なのはは少し難しい顔をしながら、俺は両手を頭の後ろに置きながら返事をする。
















高町家へ戻って翌日。昨日はリンディさんもこちらにやってきて、桃子さん達にこの十日間の事を放した。まぁ内容はほとんどでっち上げられたものだったが。

そして現在は久しぶりの学校。来て早々アリサやすずかに出くわした。

「そっか、また行かなくちゃいけないんだ…」
「まぁ、そういうことだな」
「大変だね…」
「うん。でも、大丈夫!」

アリサとすずかには、また明日行かなくちゃ行けないことを伝える。

「放課後は?少しぐらいなら、一緒に遊べる?」
「うん、大丈夫」
「俺も予定はねぇな」
「じゃあ家に来る?新しいゲームもあるし」
「え、ホント!?」

アリサよ、そう言う事はあまりそっぽを向いたまま言う事じゃないと思うが。

「あっ、そう言えばね。昨夜怪我してる犬を拾ったの」
「犬?」
「うん。すっごい大型犬で、毛並みがオレンジ色で…おでこにね、こう赤い宝石がついてるの」

その話を聞いたとき、俺となのはは思わず顔を見合わせる。まさか…いや、特徴がかぶりすぎてる。でも、なんで…?

















学校も終え、アリサの家へ。念の為ユーノにも来てもらい向かうと、そこには予想通り狼状態のアルフがいた。

[やっぱり、アルフさん…]
[あんたか…それに士も……]
[一体何があった。その怪我は?]

念話で話しかけてみるも、アルフは俺達に背を向けてしまった。だが、話す気がないと言うようにも見えない。

「あらら、元気ないな。どうした?」
「傷が痛むのかも。そっとしといてあげよう」
「うん…」

そう言って立ち上がる三人。すずかの腕にいたユーノは、降りてアルフがいる檻の前へやってくる。

「ユーノ!こら、危ないぞぉ!」
「大丈夫だよ、ユーノ君は」

[なのは、士。僕が彼女から話を聞いておくから、二人はすずかちゃんとアリサちゃんを]
[うん]
[いや、俺も残る。こいつの口で、直に聞きたい]
[…わかった]

「お前らは先行ってろ。俺ももう少しいたいから、ユーノが食われそうになったら助けておく」
「食われそうって…」
「士が言うならいいけど…すぐに来なさいよ!待ってるから!」
「あぁ」

なのははアリサとすずかを連れバニングス家へ行く。俺も腰を地面に降ろしあぐらをかく。

「…一体、どうしたの?君達の間で、一体何が?」
「アンタがここにいるって事は、管理局の連中も見てるんだろうね」
「…うん」
「それはもう、ばっちり」

[時空管理局、クロノ・ハラオウンだ。どうやら事情が深そうだ。正直に話してくれれば、悪いようにはしない。君の事も、君の主、フェイト・テスタロッサの事も…]
「……話すよ、全部。だけど約束して!フェイトを助けるって!あの子は何も悪くないんだよ!」
[約束する。エイミィ、記録を]
[してるよ]

どうやら向こうは準備万端らしい。音声記録まで取るのか。まるで警察…いや、実際警察の部類なのか?

「……フェイトの母親、プレシア・テスタロッサが全ての始まりなんだ」











アルフの口から語られた真実。
大元がプレシアだって事は、まず間違いないようだ。そしてフェイトはそのプレシアの為に。
俺はアリサの家に入り、執事の鮫島さんにアリサ達がいる部屋を聞いてそこに向かっている。いやはや、家が大きいってのは厄介だ。

そして、アルフの話を聞いたクロノ達が出した結論は。

[プレシア・テスタロッサを捕縛する。アースラを攻撃した事実だけでも、逮捕の理由にはおつりがくるからね。だから、僕達は艦長の命があり次第、任務をプレシアの逮捕に変更する事になる]
[まぁ、それが妥当だわな]

大元を、プレシアを逮捕するということになった。

[なのは、士。君達は……どうするつもりだい?]

唐突、という訳ではないが、クロノがそう聞いてくる。

[私は……私は、フェイトちゃんを助けたい!
 アルフさんの思いと、それから、私の意思。フェイトちゃんの悲しい顔は、私もなんだか悲しいの。だから助けたいの!悲しい事から]

なのはは強くそう言い、決意を新たにする。

[それに…友達になりたいって伝えた、その返事もまだ聞いてないしね]
[…わかった。こちらとしても、君の魔力を使わせてもらえるのはありがたい。フェイト・テスタロッサについては、なのはに任せる。それでいいか、アルフ]

クロノもそれを認め、なのはにフェイトの事を一任するようだ。アルフも、クロノの言葉にうんと答える。

[なのは、だったね?頼めた義理じゃないけど、だけどお願い。フェイトを助けて。あの子、今ほんとに一人ぼっちなんだよ…]
[うん。大丈夫、任せて!]

[さて…なのははこうだが、君はどうする?士]

そう話を振ってくるクロノ。俺は一旦足を止め、目を閉じる。

[無論、フェイトの事は助けたいと思う。だが、俺には俺のやるべき事がある。だから俺は―――――


 ―――――その『やるべき事』を、『全力』でやるだけだ]


[…君は相変わらずだな]
[俺は元々こう言う性分なんだよ]

そして再び歩みを進める。
















時間が経ち、日も落ちてくる時間帯。ゲームをしていた三人にも合流し、そのまま遊んだ俺達。その部屋のテーブルを囲んでくつろいでいた。

「ふぅ、なかなか燃えたわ~!」
「やっぱりなのはちゃんや士君がいた方が楽しいよ」
「それは褒め言葉か?」
「ありがとう。もうすぐ、全部終わるから。そしたら、もう大丈夫だから」

それぞれ目の前にあるジュースを手に取りながら会話を進める。

「なのは。なんか、少し吹っ切れた?」
「え?あ、えっと…どうだろう?」

俺からしてみれば、確かに目の色が前よりも良くなったように見える。フェイトの事で、色々と決意が固まったからだろう。

「心配してた。てか、アタシが怒ってたのはさ、なのはが隠し事している事でも、考え事している事でもなくて。なのはが不安そうだったり、迷ったりしてた事。
 それで時々、そのままもう私達のところへ帰ってこないんじゃないかなって思っちゃうような目をする事…」

胸に抱えていたものを言葉にし、ようやく吐き出せたような、アリサのぽつりぽつりという台詞。すずかはそれを聞いたなのはの顔色をうかがうように見て、なのはは目に涙をためていた。

「…行かないよ、どこにも。友達だもん、何処にも行かないよ」
「…そっか」
「うん…」

その涙をゴシゴシと吹き、席から立ち上がって二人に宣言するなのは。二人も安心したように笑顔になる。それを見てか、なのはも席に戻る。

「……ていうか、一番心配してるのがアンタなのよ、士」
「……俺?」

そこでアリサが唐突に俺に話を振ってきた。なんかしたか?いや、これと言って何も……

「なのはと一緒に休んだと思ったら二人で一緒に行ったっていうし、おかげでノートは二人分やんなきゃいけなくなっちゃったし……」

「そう言えばすずか、ノートありがとな」
「あ、うん。ノートの取り方、アレで良かったかな?」
「いやいや、この上なく綺麗なノートでしたよ。今度お礼として、なんか奢ってやるよ」
「いや、いいよそんなの…」

「って人の話を聞けーーー!!」

なんだかんやでアリサの叫び声が五月蝿かった件。
















久しぶりに我が家で一夜を過ごし、翌日朝。

なのはは学校の制服、俺はいつもの外に出る時のラフな格好。それぞれの支度を済ませ、高町家を出る。お約束の挨拶も忘れない。
そして途中で怪我が治ったアルフとも合流し、俺達はフェイトとの決戦の地である臨海公園へ走っていく。


到着後、少し息を上げながらも、なのはは声を出す。

「ここなら、いいよね。出てきて、フェイトちゃん!」

海からの風でなびく木々。ふと感じた気配は、俺達の後ろ、なのはと一緒に後ろに振り向く。
そこには公園の街灯の上に、鎌の状態のバルディッシュを持ったフェイトの姿があった。

「フェイト!もう止めよう。あんな女の言う事、もう聞いちゃダメだよ!フェイト、このまんまじゃ不幸になるばっかりじゃないか!だからフェイト!」
「……だけど、それでも私は…あの人の娘だから」

アルフの必死の説得にも、首を横に振るフェイト。それを見たなのはは意を決して、その身をバリアジャケットに包む。

「ただ捨てればいいって訳じゃないよね?逃げればいいって訳じゃ、もっとない。切っ掛けは、きっとジュエルシード。だから賭けよう。お互い持ってる、全部のジュエルシード!」
〈 Put out 〉
〈 Put out 〉

双方のデバイスから聞こえる機械的な音声。それと共にそれぞれのデバイスに収容されていた二十一個のジュエルシードが空中に現れる。

「私達の全ては、まだ始まってもいない。だから、本当の自分を始める為に――――」



 「――――始めよう、最初で最後の、本気の勝負!」











先に動いたのはフェイトだ。魔法を使って自らの体を浮かす。それに伴ってなのはも魔法を使ってフェイトを追いかける。戦場は海上。結界も展開済みだ。

「始まった、か…」
「そうだね」
「私達は、見守る事しかできないのかね…」

それぞれ、思い思いの言葉を放つ。中でもアルフは顔を俯かせて、不安そうに言った。

「……ま、そうでもないようだぜ。アルフ」
「え……?」

そのとき、俺達の背後、公園側に灰色のオーロラが出現。それが動くと同時に、そこは怪人達で埋め尽くされた。

「これは……!?」
「来ると思ってたよ。今の状況は、ジュエルシードを手に入れるのにもってこいのものだ」

そしてその怪人の群れをかき分け、一体の白い体が前に出る。

「またお会いしましたね、仮面ライダー」
「前にも言ったが、俺は会いたくないね。アンタとは」
「それは私に勝てないから、ということかな?」
「アンタとの会話が面倒だと思うからだ」

前に出てきたのは当然、今まで戦ってきて未だ倒せていない奴、ウェザードーパントだ。

「士……」
「あっちの心配したいだろうけど、悪ぃ。こっち手伝ってもらっていいか?どうも人手が必要なようだ」

そう言って俺は右腕のトリスをディケイドライバーへ変える。そして腰に添え、ベルトへと変える。

「そろそろ決着つけようぜ、ウェザードーパント…井坂 深紅郎!」
「……その名前で呼ぶなと言ったでしょう…!」

そしてディケイドのカードを取り出し、ウェザードーパント達を見据える。

「変身!」
〈 KAMEN RIDE・DECADE! 〉

カードを挿入し、発動。俺の周りに九つの虚像が現れ、俺の体と一つとなる。
俺の姿は、仮面ライダーディケイドへと変わる。

「さぁ…行くぜ……」

俺は手を払うように叩き、ゆっくりと怪人の群れへと歩き出す。

「…行けぇ!」
「「「「「「「「「「オオォォォォォォォ!!!」」」」」」」」」」

ウェザードーパントのかけ声と共に、周りに群がっていた怪人達が一斉に俺に向かって襲いかかる。

俺達の決戦も、始まりを告げた。



  
 

 
後書き
 
(六月一日 修正)
  
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