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魔法少女リリカルなのはStrikerS~赤き弓兵と青の槍兵

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後日談
  ⑱~イクスヴェリア

 
前書き
ティアナ「一人の少女がいた。その少女は冥王と呼ばれている」

スバル「そんな彼女と出会った私。そして……」

ティアナ「後日談⑱、イクスヴェリア。始まります」 

 
side 士郎


優が生まれてから一年。私の周囲ではティアナが執務官になったり、元ナンバーズたちが手に職を付けたり、ヴィヴィオが修行の一環と称してノーヴェからストライクアーツを習う様になったり、様々な変化があった。そんな中、ミッドではマリアージュ事件と呼ばれるものが起きていた。


「では、今回は執務官に任せる、と……?」
「一応要請はあったが、マリアージュが町中に現れた場合の迅速な破壊を行う、ということで落ち着いた。私生活でも警戒だけはしておいてくれ」
「了解した」


マリアージュ事件に対する特事の対応はマリアージュの迅速な破壊のみ、と言うことに決まった。
それにしてもクロノには苦労を掛けるな。クラウディアのことだけでも忙しいだろうに。
……今度差し入れでもするか。




…………………………………………………………………


それからしばらくして事件を担当していたらしいティアナから事件が解決した、と言う話を聞いた。
それと同時にヴィヴィオからイクスと言う少女と仲良くなった、と言う話も聞いた。
それから一週間ほどたってのことだった。


「通信……スバルから?」


スバルからの通信は珍しい。ティアナからは月に一回くらいの割合で来ているが、スバルはほとんどない。
だからこそ何かがある、と思い気を引き締める。


「私だ。どうした?」
「士郎さん……イクスを助けてください!!」





side ヴィヴィオ


パパに連れられて来た聖王教会。
そこで待っていたのはスバルさんとノーヴェ、そしてまだ画面越しにしか会ったことのない友達。


「待たせたな、スバル」
「いえ、わざわざ来ていただいたんですから……」


パパとスバルの周りの雰囲気はどことなく重い。
それはまるでこれから起こる不幸に耐えようとしているような……そんな感じだった。


「こうして直接会うのは初めてですね、ヴィヴィオ。それと、初めまして、ヴィヴィオのお父様。イクスヴェリアと申します」
「そうか、君が『冥王』か」


パパはイクスを冥王と呼んだ。
冥王は聖王とも関係のある古代ベルカの王の一人だ。


「はい。私は貴方の知る冥王で相違ありません」
「……そうか」


この時のパパがどんな表情だったのかはわからない。
後になって考えてみたらきっと悲しい顔をしていたのだと思う。


「ヴィヴィオ」


そんな二人のやり取りを見ていたらイクスは私に話しかけてきた。


「今日は、あなたにお別れを言いたくてわざわざ来ていただいたんです」


日常会話の如く自然にイクスが言う。しかし、私は意味が分からなかった。


「何を……言ってるの?」
「私はもうすぐ眠りにつきます。いつ目が覚めるかわからない眠りに。ですから『友達』にお別れを言いたかったのです」


そんな、と言おうとした私の言葉を遮るようにスバルが先に話し出した。


「でも!士郎さんの宝具ならなんとかできるんですよね?」
「宝具?」


イクスはパパの宝具の力を知らないようで首を傾げている。


「スバル、あくまで出来るかも知れない、だ。容体によっては無理な場合もある」
「だけど可能性が少しでもあるなら……!」


スバルさんはそれでも、と食い下がる。


「宝具とて万能ではない。過度な期待はするな、ということだ」
「わかりました……」


そこで二人のやり取りは終わり、パパがイクスのところへ。
そして肩に手を置き、一言。


解析、開始(トレース・オン)


パパが魔術を行する。


「む、これは……」
「どうですか?」


渋い顔をするパパに問いかけるスバルさん。


「完全な解析は不能だった。わかったのは彼女の機構がロストロギアであること、損傷は年月による劣化だと言うことのみだ。わかりやすくいえば寿命だな。これではアヴァロンを使ったとしても効果はない。すまないな……何もしてやれない」
「そんな……」


落胆する私たちだが、イクス自身はそんな素振りは見せなかった。
そんなイクスにパパが語りかける。


「君はこうなることをわかっていたのか?」
「ええ。私は長く生き過ぎました。この時代に動くことができたのは奇跡といってもいいでしょう。ですからもういいのです。彼女たちのような優しい人との記憶が私の最後のものになるのでしたら」


パパの問いかけに答えたイクスが浮かべた表情は微笑。悔いも後悔も何もない優しい表情でした。


「ですから最後のとき……私が眠りにつくそのときまであなた方とともに過ごしたいのです。優しいあなた方と……」


彼女は最初からわかっていたのだ。自分がもう目覚めていることができないことを、どんなに手を尽くしてもその運命を変えることはできないことを。
だからこそ最後のときを後悔のないように過ごしたいと、そう言っているのだ。


「わかった。じゃあ今日はたくさん思い出を作ろう。絶対に忘れられないような、そんな楽しい思い出を!!」


だから私も彼女の意志を尊重しようと思えた。




side イクスヴェリア


ヴィヴィオの提案でそれからたくさん遊びました。大地を駆け、対話に花を咲かせ、お腹がすいたらお菓子を食べる。そしてまた遊ぶ………ただそれだけ。私には得ることのできなかったそれらのことを彼女は与えてくれた。そう、その優しさはまるで……


「……イクス?」


と、思考の海に潜っていた私を心配そうに覗き込むヴィヴィオ。


「いえ、なんでもありません。少し、知り合いのことを思い出していただけですから」


そう、彼女の母体となったオリヴィエのことを……。


「もしかして、オリヴィエのこと?」
「ええ。彼女もあなたのような明るい人でしたよ」
「そっか。じゃあさ、オリヴィエのこと聞かせてよ!」


ヴィヴィオはそう言って私にオリヴィエの話を求める。


「わかりました。ではお話します。彼女と出会ったのは……」





side 士郎


ヴィヴィオとイクスヴェリアの二人を遠目から眺める私とスバル、ノーヴェ。


「行かなくていいのか?」


二人に問うも、


「いいんです。あたしはイクスが幸せなら、それで」
「あたしはちょっと、なぁ。雑談してても楽しい、って言う感覚がね……」


なんだか母親のようなことを言うスバルと、言葉よりも行動、というタイプのノーヴェ。
ただ、それだけではないだろう。あの二人の時間はなんだか割り込んではならないようなものの気がして混ざる気にならないのだ。


そうして二人を見守り続ける私たちだった。




…………………………………………………………………


「それじゃあ、この辺で」


すっかり日も暮れ、別れの時。


「今日はとても楽しかったです。ありがとうございました、ヴィヴィオ」
「私も、とっても楽しかったよ。だから……またね、イクス」


イクスの言葉を聞き、答えるヴィヴィオ。
そんなヴィヴィオに対してイクスはやわらかく微笑み、答えた。


「ええ、またね、ヴィヴィオ」
「……ッ、うん!!」


イクスの答えに対し、少し驚いたヴィヴィオだったが、すぐに満面の笑みを浮かべて返答した。
私は結局何もしてやれなかったが、ヴィヴィオが彼女に与えたものは次いつ目を覚ますかわからない彼女の希望となるだろう。
我が子ながら随分と成長したと思う。


……こうしてイクスヴェリアという少女とヴィヴィオの出会いが終わった。
この出来事はヴィヴィオにとっては忘れられない経験になったのだろう。
それから週一度は聖王教会へと赴き、イクスの見舞いをするようになったヴィヴィオであった。 
 

 
後書き
えー、真にお待たせいたしました。だが短い。

イクスヴェリア回です。今回は完全なるオリジナルです。

なぜならば……作者はドラマCDを聞いていないからだッ!!

すんません。ならなんで書いたとか言わないでください。

ViVid書く時点でイクスをどうするか悩んだ結果がこれなんです。

だが私はめげないッ!!

あとアヴァロンの治癒性能ですが、その人の現在における最善の状態にする、というオリ設定(多分これ以降は出てきませんが)ということで納得してください。

と、だらだらとした後書きにお付き合いいただきありがとうございました。

それではこの辺で。9/15修正をしました。 
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