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トーゴの異世界無双

作者:シャン翠
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第三十四話 クィルの家族ってキャラ濃いよなぁ

 王の間に来て、見知らぬ顔があった。
 クィルのような青く綺麗な髪を持つ、見目麗(みめうるわ)しい女性だった。
 その女性が、ギルバニアの隣に座っている。
 そこは王妃の座る席だ。
 ということは、この人がクィルの母親。
 ギルバニアと同じく、とても三人の子供がいるようには見えない。
 整った顔立ち、気品溢れる佇(たたず)まいが、住む世界の違いを見せつけてくる。
 それに、ギルバニアとはまた違う威厳(いげん)がある。
 さぞや、丁寧な話し方もするのだろうと闘悟は一人思っていた。
 すると、そんな闘悟の思いが届いたかのように王妃が口を開く。


「あっら~! 君がトーゴくん!? もう~こんな可愛い男の子だったなんて、もっと早く帰って来れば良かったわ~!」


 …………え? 


「あら? ポカンとしてどうしたの? あ、もしかして私の魅力にやられちゃった? 嫌だわぁ……トーゴくん、私こう見えても人妻よ?」


 知ってるがな。
 と、ツッコミを入れそうになった。
 何だこの関西人のおばちゃんみたいなノリは!?
 見た目は完全に、夫の三歩後ろを歩く大和撫子(やまとなでしこ)タイプ。
 それなのに、喋ると友好感溢れる下町商人娘的な雰囲気。
 グイグイ前に出てくるタイプだ。
 闘悟はあまりのギャップの酷さに目眩(めまい)がした。


「あ、いかんぞトーゴ! コイツは俺のだからな!」


 ギルバニアが王妃の肩を抱く。
 いやいや、いくらオレでも人妻には手は出しませんって。
 それに……


「ん? あれ~? もしかして視姦(しかん)?」


 この性格だぞ……?
 ちょっと観察しただけで、犯罪者に仕立て上げられそうだ。


「お、お母様!」


 母親を窘(たしな)めるように声を出すが、彼女の顔は真っ赤だ。
 もしかして視姦の意味を理解してる? 


「ふふふ、冗談よ冗談。でもからかい甲斐があるわぁ~! ちょっとくらい味見してもいい?」
「「駄目っ!!!」」


 クィルとギルバニアが声を揃える。
 闘悟は闘悟で肩を落とす。
 王妃がなんっつう下ネタを言うんだか……。
 てか、こんな王妃、聞いたこともないぞ。


「それくらいになさってはいかがですかお母様?」


 丁寧な物言いで闘悟達の間に入って来たのは、これまた美しい女性だった。
 クィルと同じ青い髪を腰まで伸ばしている。
 玉座の後ろから姿を現した彼女は、間違いなくクィルと血が繋がっていると感じられた。
 おっとりとして、優しそうな微笑みが、まるで女神のそれのように思われた。
 先程感じた大和撫子タイプそのままだ。
 年齢は二十代前半と言ったところだろうか。
 大人の女性という感じだ。


「おまえがトーゴなのかぁ!」


 今度はえらく威勢のいい声が聞こえた。
 その声の主は、王妃の後ろから姿を現す。
 同じく青い髪を、他の者と違って、パイナップルのように頂点で結んでいる。
 外見は幼稚園生くらいに見える。
 とても瞳が大きくキラキラしている。
 無邪気さが見て取れ、とても可愛い。


「なあなあ、おまえがトーゴなのか?」


 もう一度幼女が聞いてくる。


「これ、いけませんよ。そのような言葉使いははしたないですよ」
「ぶぅ~リーねえはきびしいぞぉ~」


 幼女がふくれっ面になる。


「すみませんトーゴ様。何分この子はまだ子供なので」
「あ、いえいえ。気にしないで下さい」
「そうよ~! トーゴくんはもう家族みたいなものよ? 遠慮なんかいらないわよ! だからトーくんって呼んでもいいわよね?」


 いやいや、アナタはもう少し自重して頂きたい、とは口が裂けても言えそうになかった。
 だって王妃だよ?
 それにフレンドリーさがパねえ。


「それよりもお母様。まずはわたくし達の自己紹介をなさるべきでは?」
「あら、そうね! さっすが私の娘! 気が効くわぁ~」


 なるほど、この親を支えてるのはこの人なのか……。


「それじゃ、私から言うわね。私はニアノエル・フィル・グレイハーツ。知っての通りこの人の愛妻よ」


 ギルバニアの方をチラッと視線を送りながら答える。
 愛妻って自分で言うんだ……。


「あ、私のことはニアお母様って呼んでね? あ、でもトーくんがど~しても呼びたいって言うんなら、ニアでもいいわよ?」


 妖艶な微笑みをぶつけてくる。


「分かりましたニア様」


 軽くいなしておく。
 ていうか、ニアお母様なんて呼べるわけねぇし!


「ぶ~つまんな~い」


 子供か!
 もうそろそろツッコミを入れそうになる。


「では、次はわたくしです。初めましてトーゴ様。わたくしの名はリアウェル・フィル・グレイハーツです。この国の第一王女をさせて頂いております。今後ともよろしくお願い致します」


 王女なのに、丁寧に頭を下げてくる。
 凄く好感の持てる人だと闘悟は感じた。
 礼には礼を。闘悟も頭を下げる。


「こちらこそよろしくお願いしますリアウェル様」
「リアでいいですトーゴ様」
「分かりましたリア様」
「リアです」
「え?」
「リアって呼んで下さい。家族なんですから……当然ですよね?」
「…………リアさん」
「……仕方ありませんね。それでよしとしましょう」


 おお……やっぱり王と王妃の血を引くだけあって、強引さが半端ねえ。
 笑顔なんだけど、拒否できないオーラが放たれている。
 怒らせたら一番駄目な人だ。


「つぎはあたしだな! ハロウィンだ! よろしくなトーゴ!」


 花が咲いたように笑う彼女を見て闘悟は思う。
 ハロウィン……ピッタリの名前だと。
 地球だったら間違いなく十月に仮装してお菓子をせびりに来るだろう。


「おう、よろしくなハロウィン!」
「ハロでいいぞトーゴ!」
「分かったよハロ」
「にししし」


 嬉しそうに笑うハロを見てると、こちらも何だか嬉しくなってくる。
 さあ、次はこちらの自己紹介だ。
 分かりやすいプロフィールを紹介しよう。


「オレのこと知ってるみたいですけど、一応自己紹介します。オレはトーゴ・アカジです。特徴は異世界人です」



 
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