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連隊の娘

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第二幕その七


第二幕その七

「何があっても」
「トニオ・・・・・・」
「君は誰にも渡さない」
 彼はマリーを己の後ろに護りながら話した。
「絶対に」
「そう。じゃあ私も」
 マリーも言うのだった。トニオの本当の心を知って。
「私もトニオと、皆と離れたくないわ」
「僕と」
「俺達とも」
「私は生まれてからずっと皆と一緒にいたから」
 まずはこのことを言うのだった。
「第二十一連隊にいて皆に育ててもらって」
「皆と」
「じゃあこの人達は」
 客達はその彼女の言葉を聞いて言った。
「この娘にとっては」
「まさに家族なのか」
「はい、そうです」
 今度は客達に答えるマリーだった。
「皆私の家族です。かけがえのない家族です」
「それなら貴女は」
「誰と結婚するのですか?」
「この人とです」
 トニオを抱き締めての言葉だった。
「私はこの人とだけ結ばれます」
「その隊長さんと」
「一緒にですか」
「そうです。一緒にです」
 また言うマリーだった。
「この人とだけです」
「そうだったのか」
「その人と」
「奥様」
 ここでシェルピスが侯爵夫人に顔を向けて声をかけた。
「どうされますか」
「貴方は言いましたね」
 侯爵夫人も彼に顔を向けて言った。
「貴方はあの娘の幸せを望んでいると」
「その通りです」
「それじゃあやっぱり」
「私は確かに今は執事です」
 こうは言う。しかしその足をマリー達のところに向けて。そのうえで言うのだった。
「ですがこの連隊にいました。マリーと共にです」
「では貴方も」
「マリーの幸せはここにあります」
 マリーの側に来ての言葉だ。
「ですから私は」
「そうなの。貴方も」
「そして奥様」
 シェルピスは侯爵夫人に対しても告げてきた。
「奥様もわかっておられる筈です」
「私も」
「そうです。わかっておられますね」
 こう彼女に言うのであった。
「ですから」
「私は」
「さあ、どうされますか?」
 あらためて侯爵夫人に問う。
「貴女は」
「私は」
「マリーの幸福を。どうされますか」
「・・・・・・・・・」
 シェルピスの問いにまずは俯いて沈黙した侯爵夫人だった。しかし今遂に。顔をあげて言うのだった。
 
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