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久遠の神話

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第四十二話 表と裏その六

 その上で今は戦うことはしなかった。ただ力を使って海から去る為にだ。
 剣はそのまま手に持っている。そのうえで言うのだった。
「じゃあ今は」
「帰られるのですか」
「そうするつもりだけれどな」
 実際にそうだとだ。中田も笑って返す。
「まあ今は平和で行こうな」
「はい。ただ」
「今はだからな」
 中田は上城が何を言いたいかを察してこうも述べた。
「今度はわからないからな」
「そうですね」
「俺だって戦わないといけないからな」
「戦わないと?」
「ああ、そうしないといけないからな」
 笑って言うのだった。
「だからな」
「前から思ってましたけど」
「俺の戦う理由かい?」
「どうしてなんですか?」
 怪訝な顔でだ。上城は中田に問うた。
「中田さんは戦われるんですか?」
「ああ、それな」
「はい、どうしてなんですか?」
「秘密って言ったらどうする?」
 余裕に謎を入れた笑みだった。
「その場合は」
「それは」
「人には言えることと言えないことがあるよな」
「だからですか」
「で、俺のこのことはな」
「仰ることができないことですか」
「そういうことだよ。わかったな」
 中田は今は屈託のなさだけの笑みで上城に話した。
「このことは言えないんだよ」
「ですか。ただ黄金を集めることは」
「生活費プラスだよ」
「そのプラスもですね」
「それも言えないことだからな」 
 中田はここでも屈託のない笑みで語る。
「悪く思わないでくれよ」
「そして最後の一人まで、ですね」
「戦うからな。俺の願いの為にな」
「下りることは」
「全然ないな。ああ、一つ言っておくけれどな」
「一つ?」
「俺は特に戦いが好きじゃないからな」
 このことは前置きしてまで言うことだった。
「まあ。願いの為ってやつだよ」
「そうですか」
「ああ、そういうことだよ」
 こう笑って話すのだった。
「まあ。上城君やそっちの神父さんが下りるならいいさ」
「戦いからですか」
「それならいいさ」
 こう言うのだった。二人が戦いから下りれば構わないと。
「俺は他人の命には興味がないんだよ」
「では興味があるのは」
『願いのことだけさ」
 あくまでだ。そのことだけだというのだ。
「そういうことで宜しくな」
「ですか。けれど」
「上城君達が下りずに戦い続けるのならな」 
 笑みが消えた。戦いの顔になった。
 その顔でだ。こう上城に言ったのだった。
「容赦はしないからな」
「わかりました。では僕も」
 上城はその中田と向かい合ったまま言葉を返した。 
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