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蒼き夢の果てに

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第5章 契約
  第61話 騎士叙勲

 
前書き
 第61話を更新します。

 次の更新は、5月20日。『私は何処から来て、何処に向かうのでしょうか?』第4話。
 タイトルは『助っ人二人は転生者だそうですよ?』です。

 その次の更新は、5月24日。『ヴァレンタインから一週間』第19話。
 タイトルは『有希の初陣』です。
 

 
「ブレストに行って、武器や弾薬、それに燃料の風石が消えた事件の解決と、先に調査を行っていた調査員00583号の消息を調べて来て欲しい」

 執務机の前に並んだ俺とタバサを一瞥した後、イザベラが次なる任務の指令を行った。確かに、他の捜査員が捜査の間に行方不明と成って居るのなら、それ以上の能力を持った人間が送り込まれるのは不思議では有りませんか。
 まして、俺がこのハルケギニア世界に召喚されてからタバサに回されて来た仕事は、どう考えても命懸けの仕事ばかり。これまでの仕事の延長線上に有る仕事として考えるのならば、今回の任務も、一筋縄で行くような仕事ではないと思いますね。

 当然、我が主人。捜査員番号00893号に取って、命令に対しての否はない。今までと同じように透明な表情を浮かべたまま、無造作にひとつ首肯く事に因って肯定と為す。

 しかし、

「いや、今回の任務は、そっちのシノブ一人で熟して貰いたいんだよ」

 しかし、イザベラは、タバサではなく俺を見つめた後に、そう告げて来る。
 そして、

「エレーヌの方は、実家に帰って、叔母上の容体を見て来て欲しい」

 ……と告げて来たのでした。
 ……って、タバサの母親が体調を崩した?
 その言葉を聞いた瞬間に、流石のタバサからも驚きの気が発せられる。

「今朝早くにフクロウ便で届けられた情報さ。今朝がたから急に高熱でうなされ出したらしい。水の秘薬は十分に準備して有るから、任務の事は良いからエレーネは、叔母上の元に行ってやりな」

 未だ精神の状態が回復していないタバサの母親ですが、それでも、彼女の母親で有る事に変わりは有りません。まして、感情と精神を支配する湖の乙女の助力を得られるようになった為に、タバサの母親の状態を回復させられる可能性は高まったのですが……。

 タバサが俺を見つめた。その表情は普段通りの透明な表情に、安定した雰囲気。しかし、霊道で繋がった俺だから判る、僅かに伝わって来る不安の色に似た雰囲気。これは、おそらく母親の状態に不安を抱いて居るのだと思うのですが……。

「ウィンディーネ」

 俺は、その彼女に対して、割と強い調子で首肯いて見せた後、青玉に封じられた水の精霊ウィンディーネを現界させる。
 そして、次の瞬間、蒼と銀に彩られたドレスを身に纏ったスレンダーな美女。この場に存在するタバサや湖の乙女の未来の(成長した)姿。伝説に語られる水の精霊ウィンディーネが顕われていた。

「湖の乙女」

 そして、我関せずの姿勢で書籍に瞳を落としたまま、こちらを気にしようとしない少女を呼び掛ける俺。
 そんな俺に対して、

「問題ない」

 呼び掛けた理由がまるで判っているかのような、落ち着いた言葉が返される。
 そして、その深き湖の如き瞳を、自らの手元に開かれた革製の分厚い書籍から、俺の二色の瞳に移した後に、

「水の秘薬は万能の薬。適切な量の投薬を行えば、命運が尽きていない相手の病や怪我、欠損した部分さえも癒す事が出来る」

 そう続ける湖の乙女。そしてこの答えは、俺が彼女に問いたかった内容の答えでも有りました。

 それに、彼女の答え通りの能力を水の秘薬が持っているのならば、何の問題もないでしょう。
 まして、命運が尽きていた場合は、むしろそれ以上、生き続けさせる事の方が天命に逆らう行為となり、其処に悪い気の巡りを作り上げ、結果として周りに不幸を呼び込む事と成るだけですから。

 もっとも、何らかの禁呪を使用したら、それでも蘇らせる事は可能だとは思いますが。

「つまり、水の秘薬の適切な投薬を行っても尚、死亡した場合は、それは天命だったと思えば良い訳やな?」

 俺の問い掛けに、微かに首肯く事に因って答えと為す湖の乙女。
 彼女の言葉を聞き、その仕草を確認した後に、俺はタバサの整った容貌を見つめる。
 そして、

水の精霊(ウィンディーネ)と水の秘薬。それに、タバサ自らが母親の看病に向かう。これでも不安なら、俺も仕事を放り出してでもタバサに付いて行くけど、どうする?」

 ……と、問い掛けた。
 確かに、封建君主制度では、君主からの命令は絶対。しかし、俺に取っては、ガリアよりもタバサの方が大切です。
 まして、真の意味で俺を縛るモノは、この世界の何処にも存在していませんから。

 戒律も。契約も。誓約も。そして、本来は彼女(タバサ)と交わした約束さえも。現在、本当の意味で俺を縛っているのは自らの矜持。自らの矜持だけが俺を縛っているので有って、それ以外の者や物、そして、モノで有ったとしても、俺を縛る事は出来ません。
 しかし、と言うか、矢張り、タバサはゆっくりと三度首を横に振った。
 そして、

「大丈夫。母の様子を見るのなら、わたしだけで充分」

 先ほど、ほんの少しだけ垣間見せて居た不安に似た色を感じさせる事もなく、俺に対してそう告げて来るタバサ。
 そして、その言葉から感じられる部分も陽。少なくとも、タバサが話した内容に関して、彼女は本心からそう思って居ると言う事は感じられる。

 それならば、

「ウィンディーネ。タバサと一緒に行って、彼女の母親の治療を頼めるか」

 それまで、現界させられて(呼び出されて)から、ずっと、俺と紫、そして蒼の少女のやり取りを黙って見つめて居た水の精霊(ウィンディーネ)に対して、そう依頼を行う俺。

 そんな俺の依頼に対して、無言で。しかし、強く首肯いて答えてくれるウィンディーネ。これで、水の秘薬に、俺の連れて居る式神の中では一番の治癒魔法の使い手ウィンディーネ。これだけの陣容ならば、死すべき定めにない人間ならば、間違いなく助ける事が出来るでしょう。
 そして、ウィンディーネの封じられた青玉を差し出されたタバサの手の平の上に乗せる。

 これで、急に容体の悪くなったオルレアン大公夫人に関しての対策は問題ないでしょう。

「それならば、エレーヌは近衛の厩舎から飛竜を借りて大急ぎで叔母上の所に行って来な」

 イザベラの言葉に、普段通り無言で首肯いて答えるタバサ。

「俺も、仕事を終わらせてから、そっちに向かうから」

 最後に、視線を合わせたタバサに対して、俺がそう告げる。
 一瞬、何か言葉を返そうとして、しかし、瞳のみを揺らせた後に、微かに首肯いて答えてくれるタバサ。

 その瞬間に発せられたのは、普段の凛とした雰囲気の彼女ではなく、年相応の少女の雰囲気。その彼女の僅かに揺らめく瞳を見た瞬間、思わず手を差し出そうとして、しかし、済んでのトコロで、自らの動きを止める俺。
 そう。彼女自らが俺に付いて来る必要なし、と言った以上、その言葉を無視して、俺がのこのこと付いて行ってどうしますか。

「そうしたら、ウィンディーネも頼むな」

 少し、自らの想いを押し止める事に精神的な消耗を要した後、俺は、自らの式神。そして、今回のタバサが実家に帰る際の俺の代役のウィンディーネに対して、少し強い想いを籠めてそう言った。
 そんな俺の頼みに、ハイ、と小さな声で答えてから、彼女にしては珍しく強い調子で首肯くウィンディーネ。
 かなり、気合いは入って居るような雰囲気なのですが、精霊は仕事を与えられる事に喜びを感じるはずですし、元々、水属性のタバサとの相性も悪く有りません。

 タバサ自身が、系統魔法を使用しなくなってからかなりの日数も経ちますし、それに、知らない事とは言え、自らの魔法で、多くの精霊の生命を奪って居た事に対しての謝罪も既に終わって居ます。
 もう、タバサと精霊たちとの蟠りも無くなって居たとしも不思議ではないと思いますね。



 そして、そんな事を考えて居る俺の目の前から、タバサ(一人)ウィンディーネ(一柱)は、イザベラの執務室を後にして行った。
 ほんの少しの焦燥感と、そして、タバサと、ウィンディーネにしては珍しい、少し足早の足音を残して。



 そうして、

「そうしたら、次はあんたの叙任の番かね」

 タバサとウィンディーネを見送った後に、俺の方に向き直ったイザベラがそう言った。
 そして、確かにそれは理には適って居るとは思うのですが……。

 ただ……。

「騎士への叙任に関しては、どうしても必要なのですか?」

 俺は、そうイザベラに対して聞き返した。確かに、俺自身がガリアの騎士に成る能力は有して居ると思います。ですが、俺はタバサに対しては、約束と言う形で為された負うべき責任は存在しますが、ガリアに対しては存在しては居ません。
 しかし、ここでガリアの騎士への叙任などと言う物を受け入れて仕舞うと、先々、望まない事態。具体的には、国家間の武力紛争に巻き込まれる可能性が出て来るのですが。

 現在、ルイズや才人がトリステインとアルビオンの戦に巻き込まれているように……。
 確かに、今まで俺は多くの生命を奪って来ては居ます。しかし、それは、こちらも生きる為に行った戦い。
 しかし、国家間の戦争と言う物は、両国の大義名分がぶつかる紛争で有って、その争いに、俺やタバサの生命を脅かす部分が存在する可能性は非常に低い。

 そのような戦いに、俺やタバサのような仙人が関わるのは、道に反する行為に繋がる可能性が存在するのですが……。

「筋を通す必要は有る」

 俺の問い掛けに対して返されたイザベラの答えは(にべ)もなく、木で鼻を括ったような答えで有りました。
 そして、

「まして、現在、存在していないオルレアン家によって騎士に任じられたとしても、そんな物は何処にも通用しやしないよ」

 更に続けられる、かなり冷たい言葉。
 もっとも、俺に取っては、ガリアからだろうが、オルレアン家で有ろうが、どちらから与えられる騎士の称号(シュヴァリエ)で有ろうとも、大きな違いはないのですが。

「私の忠誠心は大きな物ではないので、タバサ以外に対しては向けられない可能性が高いですよ。それでも宜しいのですか?」

 ここで、表面だけを取り繕うような言葉を口にしたトコロで意味は有りません。まして、彼女……。イザベラに対して、そんな八方美人のような台詞を口にしてもあっさりと見破られるでしょう。
 そう考え、正直な俺の考えを口にする。
 その俺の言葉に、やや自嘲気味の笑みを見せたイザベラが、

「現在のガリアに、果たして何人の騎士が居るか、判ったものじゃないけどね」

 ……と、独り言を呟くように囁いたのですが。
 もっとも、この言葉に関しては沈黙を守るべきですか。それに、正直に言うと、西洋の騎士道になど魅力は一切、感じていませんから。
 俺自身が。

「それでも構わないさ」

 イザベラの言葉に反応しようとしない俺に対して、疲れたようにそう答えた。
 成るほど。それならば、これ以上ここで、グズグズ言っても仕方がないですか。

 そう考え、イザベラの前に跪き、如意宝珠を起動。
 次の瞬間、俺の右手の中に現れる七星の宝刀。その宝刀を、イザベラの前に捧げる。

 その宝刀を少し微妙な雰囲気……。具体的に言うと、何かを思い出そうとしているかのような、掴めそうな何かを思い出せずに、少しもどかしく感じて居るかのような気を発した後にイザベラは、

「急場だから、略式で行くよ」

 ……と言った。
 そして、厳かな、とは言いかねる雰囲気ながら、俺のガリアの騎士への叙任式が始まったのでした。



 俺から受け取った宝刀を両手で額よりも高い位置に、まるで何者かに捧げるかのような形で持ち上げ、

「この者が、寡婦、孤児、そしてあらゆる弱者の保護者かつ守護者と成りますように」

 そう言う祈りの言葉にも似た台詞を口にするイザベラ(ガリアの姫)。その声は凛としていて、普段の、少々いい加減な雰囲気の彼女とは一線を画す物。

 もっとも、これでは誰に祈ったのか判りませんが……。
 ただ、彼女は知って居たのでしょう。俺が、ブリミルなどと呼ばれて居る神の事など、髪の毛の先程も信仰もしていない事を。

 そして、

「まさに、騎士になろうとする者よ。真理を守り、孤児と寡婦。そして、あらゆる弱き者と働く人々すべてを守護者と成るように」

 黒拵えの鞘から宝刀を抜き放ち、俺の肩をその宝刀の刀身でそっと叩くイザベラ。その姿は、正に騎士に祝福を与える貴婦人の装い。

 そして、鞘に収めた宝刀を再び、両手で自らの額よりも高い位置に恭しく掲げた後、俺に手渡して来る。

 その宝刀を、こちらも自らの額より高い位置で受け取った俺は、ゆっくりとその場で立ち上がり、そして、鞘から抜き放った。
 俺の霊気と、室内に灯る魔法の光りを受けて、蒼銀に光り輝く宝刀。
 そして、自らの右側を一閃!

 空を断つ斬撃が、イザベラの長い蒼の髪を揺らす。
 そして、一度鞘に戻された宝刀を引き抜き、更に一閃。

 今度は左を斬り裂いた斬撃が、軽い真空状態を起こす。

 そして、もう一度鞘に戻されていた宝刀を抜き放ち最後の一閃。
 輝ける勝利を呼びし宝刀が空を斬る度に、俺と、そして、イザベラの周囲を精霊が舞い、俺の霊気を受けた宝刀が一太刀ごとに蒼き輝きを増して行く。

 最後に鞘に収めた七星の宝刀が、その輝きを鞘へと鎮め俺の左手内に完全に静まった後、イザベラの執務室内に最初に存在していた静寂が支配する。
 そう。この静寂を破るのは、他の誰でもない俺の役目。本来ならば、叙任者と神に対しての誓いを口にする場面。

 しかし、

「誰に誓う訳でもない。私は私に誓う。
 私は私の主の為にのみ、剣と成り、盾と成る事を誓う」

 俺は、この世界のブリミル神など信仰してはいません。まして、湖の乙女や崇拝される者の父と言われる、大いなる意思と呼ばれる存在なども信用してはいません。
 俺が誓いを立てられるのは、この場にはいない少女に対してと、自らのみ。

 ならば、自らに対して誓うしか方法はないでしょう。

 誓約の見届け人は、誓約の精霊と、この世界で呼ばれて居るラグドリアン湖の精霊。彼女の前で為される誓いは、この世界では誓約。

 少し、哀しげな瞳に俺を映した湖の乙女が、しかし、それでもそっと首肯く。
 そして、同じように、少し哀の色合いを浮かべたイザベラが、

「これで、略式とは言え、あんたはガリアの騎士として任じられたと言う事だよ。但し、所属は北花壇騎士団。故に、そう、声高に吹聴して回る事は出来ないけどね」

 そう、告げて来る。もっとも、俺自身、ガリアの勲功爵(シュヴァリエ)の身分など欲しては居ませんから、それで充分。
 まして、今回の任務に就く際に必要だから拝命しただけで、返せと言うのなら、直ぐに返上しても問題ないのですから。

 それに、タバサがオルレアン家を正式に継ぐ時に、俺にも彼女の傍に居るのに相応しい騎士階級が彼女の手に因って便宜上与えられると思いますからね。
 彼女に取って、俺は一蓮托生唇歯輔車(いちれんたくしょうしんしほしゃ)の関係。余程の事が無い限り、彼女の方から俺に去れと言う事は有りませんし、俺の方から彼女を見限る可能性は非常に低い。

 そして、霊的な意味での俺達二人の関係は、死がふたりを分かつまで続く関係ですから。

「そうしたら、今回の任務について細かく説明をするから、聞いて置きなよ」


☆★☆★☆


 ガリア西部ブルターニュ半島の西端に存在する港湾都市ブレスト。
 夕刻が近付くこの時間帯故か、それとも季節柄か。もしくは、この地域の特性か、空には薄く雲が掛かり、周囲には薄い霧が掛かった状態。
 およそ、人探しに適した雰囲気では有りませんが……。

 もっとも、霧に沈む港町と言うのは、ある意味、物語の舞台としては相応しい場所では有りますか。
 海から上がり来る乳白色の帳。生臭い魚と、潮の臭い。俗に言う磯臭い臭気に包まれた、と言う表現のしっくり来る街。
 そして、独特の風貌を持つ、街の住人たち……。

 但し、ここブレストの住人の多くは、ごく一般的な、彫りの深い金髪碧眼のガリアの住人で、伝承に伝えられる、丸く大きな目に張り出したエラ。極端に小さな耳。肌は継ぎ接ぎされたかのような斑模様をした鮫肌。……などと言う、最早、異界の住人そのものの姿形をしている訳ではないのですが。
 もっとも、それは当然の事なのですけどね。
 何故ならば、ここはガリア両用艦隊の停泊する港。ここは、ガリア中から集められた軍人が中心となって発展して来た軍用港ですから、そのような、一地方にのみ現れる特殊な風貌の住民ばかりと成る訳は有りませんから。



 そんな、薄い霧では有りますが、それでも少し先の見通しの悪くなったこの地……。ガリアの大空(そら)大海(うみ)の平和を護る艦隊の根拠地に立つ大小ふたつの影。

「どうでも良いけど、この世界には鉄甲船と言う物は存在していないのか」

 空中に浮かぶ桟橋に係留されている飛空船の船底部分を見上げながら、そう独り言を呟く俺。
 そう。其の場所に浮かんで居た船達は、明らかに木製と思しき船底部分をこちらに向けていたのですから。

 錬金術が存在して居るので、それなりの硬度の鉄が存在しているとは思うのですけどね。

 何故ならば、いくら固定化などの魔法が存在するとは言っても、其処は矢張り、元々の物質として持っている強度が高い方が、魔法に因る強度を上げる作用も働き易いと思うのですが。
 そして、その考えを証明するかのように、この世界の騎士達の武器。軍杖は、すべて鉄製でしたから。強化を施せば、木製品も、鉄製品も同じ強度に成るのなら、木の方が細工や加工がし易いはずですから、魔法使いの騎士たちの武器の多くは木剣と成るはずですが、このハルケギニア世界でも、魔法剣士の武器は金属製の剣でした。

 これはつまり、元々の物質の持つポテンシャルが、魔法を掛けられた後でも重要と言う事の現れだと思うのですよね。

「なぁ、ヴィヴィアン(湖の乙女)。確か、ここに集結しているガリア両用艦隊と言うのは、ハルケギニア最強と言われた艦隊だったよな」

 俺の問いに、普段は蒼き吸血姫(タバサ)が居るべき俺の右隣に立つ湖の乙女が、まるでタバサの如き表情と仕草で微かに首肯く。
 ……やれやれ。俺自身が、タバサとのやり取りに慣れていたから、彼女の示す微かな反応にも対処出来るけど、もしも、タバサとの付き合いの経験がない人間だったら、彼女の反応を細かく知るのは至難の業ですよ、これは。

 そう、クダラナイ事を考えながらも、再び、ハルケギニア最強と謳われる艦隊所属の戦列艦に視線を送る俺。
 そこには確かに、海に浮かぶ御船が空中に浮かんで居る、如何にもファンタジー世界か、それとも、科学が進み過ぎたが故に、海に浮かぶべき御船を宇宙に飛ばしたマッドな世界の風景が広がっていた。

 そう。其処には確かに両用艦隊の名前に相応しい、水空両用の木製の帆船が空に浮かんで居たのだ。

「仮にも空中戦を想定しているのなら、船底部分にも、武器や、最悪、防弾板程度は施して置く必要が有ると思うのに、何故か海に浮かぶ船の喫水線以下には何の処置も施されている様子がない」

 しばらく空中に浮かぶその御船を観察した俺が、独り言を呟くように、そう感想を口にした。
 そう。其処に浮かんで居た御船は、正に空海両用船。つまり、殆んど、高低差を利用した戦闘など考慮されていない造りに成って居ます。素直に考えると、この程度の代物が空中戦で役に立つ訳がないと思うのですけどね。

 何故ならば、臼砲や合体魔法……つまり、ヘクサゴン・スペルなどが存在して居る以上、どう考えても、低空域では、地上からの砲火は存在しているはずなのですが。
 まして、同じように空を飛ぶ船に自らの水面以下の部分に潜り込まれた場合は、あっさりと撃沈される事を覚悟すると言う、非常に潔い軍艦と言う事なのでしょうか。

 固定化が施された物質同士がぶつかれば、元々の強度が弱く、更に、魔法を掛けた魔法使い(メイジ)の実力の劣る者の方が負ける。
 そして、この世界にも、おそらく衝角(ラム)を使用した突撃戦法は存在すると思うのですが。
 普通の海戦の場合、相手は同一水平面上での戦いですから、衝角戦闘を想定した場合は、横腹や、正面の装甲を厚くするなり、火力を上げるなりすれば良いのですが、空中戦の場合は、船底に関してもそれなりの防御力を施して置かなければ……。

 そんな、ガリアの将来と、現在起こりつつある、アルビオンとトリステインの空戦に思いを馳せていた俺の目の前で……。
 今まさに、水上から、一隻の船が空中に浮かび上がり、空中で、その帆と翼いっぱいに風を受けて進み始める。その姿は、確かに魔法の世界の光景。
 しかし、同時に矢張り確信する。この戦列艦の実際の戦闘時の実力と防御能力について。

 今、正に浮かび上がろうとする帆船の姿。そして、この目の前に有る空中の桟橋や、ラ・ロシェールで見た桟橋の立体的な形から、空海両用船で有ろうとも、空中専用船で有ろうとも、高度を自在に変える事が出来ると言う事が判りましたから。

 成るほど。ここから導き出される答えはただひとつ。この艦隊は見せかけ。ただ、数を並べて威嚇し、敵国に、ガリアに攻め込む事の愚かさを理解させる為だけに存在する艦隊と言う事ですか。
 ただ、その割にはお金が掛かり過ぎて居るような気がするのですが。

「イザベラに一式陸攻五十機と、その護衛用戦闘機の四式戦疾風か、紫電改の百機でも調達して来て、この艦隊の代わりに売りつけてやろうか。その方が余程、強力やし、対地攻撃能力や対艦攻撃能力も持っている」

 一式陸攻の翼の下には桜花ならぬ、空対空ミサイルでも付けて置けば、巨大な戦列艦数隻を喰う事だって容易いでしょう。それに、疾風や紫電改の翼の下にも同じような対空ミサイルは装備可能でしょうから、俺が考えて居る以上に対艦攻撃能力は高いはずです。

 もっとも、ガリアがホンキになって侵略戦争を開始しだしたら、困るのは俺自身の方ですから、流石にそれは行う訳には行きませんか。
 しかし、この飛空船が各国空軍の標準仕様ならば、コルベール先生が整備していた零戦は超未来の兵器で、あれが一機存在するだけで、敵。今回の場合はアルビオンの戦列艦数隻分以上の戦闘力を持っている可能性は有りますか。

 ウカツにサイドワインダーなどを翼の下に取り付けなくて、本当に良かったと言う事ですね。

「どちらにしても、ここの艦隊司令のトコロに行って、その00583号とか言う人物の事を聞いてみるべきですか」

 タバサの代わりに、臨時の相棒となった湖の乙女にそう問い掛ける俺。
 その二人の間にも、薄く。しかし確実に霧が世界を包み込み、混乱と恐怖が訳もなく頭の中でざわめきを始め、
 何処か遠くで、耳鳴りのような音が鳴り響いていた。


☆★☆★☆


 エライ御方は、矢張り高いトコロに居たがるモノなのか、それとも、飛空船乗りだから高いトコロが好きなのか。
 ガリア両用艦隊提督。ピエール・シャルル・ジャン・ヴィルヌーヴ提督の姿は現在、空中に存在するガリア両用艦隊旗艦ビュセンタウル号の艦長室の中に存在していた。

 しかし、ガリア(フランス)で、ヴィルヌーヴ提督で、更にビュセンタウル号ですか。
 悪い事は言いませんから、別の提督に首を挿げ替えた上に、旗艦も別の船に変える事をお勧めしますね。

 もっとも、更迭人事を発動させた瞬間、暴発して、勝手にアルビオンとトリステインの戦争に介入しかねませんか。

 何故ならば、このヴィルヌーヴ提督の支配する地は旧教が完全に掌握している地方で、更に、このヴィルヌーヴ提督自身も熱心な旧教支持派。そして、この新教徒に近いトリステイン王家よりは、旧教徒寄りのアルビオンの聖女(白き国の乙女)の方に助力すべき、と公言して憚らない人物で有るらしいですから。

 若い案内役の士官が重厚なドアに二度ノックを行い、室内より入室の許可を貰う。
 そして、薄暗くて、更に狭い飛空船の廊下からドアひとつ通された先は、魔法の光りに照らされた明るい部屋。しかし、少なくとも華美と言う雰囲気の物ではなく、さりとて、イザベラの執務室のような紙に支配された空間でもない。何と言うか、あまり個性を感じさせない部屋で有りました。

 その部屋の中心に据えられたソファーの上座側に座る僧服の青年と、そして、下座側。つまり、ホスト側に座るやや神経質そうな容貌の太った中年男性がヴィルヌーヴ提督と言う事に成りますか。

 ヴィルヌーヴ提督が、手にした歩兵(ポーン)をひとつ前に進めた後に、こちらに顔を向ける。
 そして、

「久しぶりだな、ルイス」

 ……と、非常に親しげに話しかけて来た。
 態度としては鷹揚。少なくとも、視線や表情から感じるような神経質そうな雰囲気を感じさせる事はなし。
 尚、俺としては初顔合わせなのですが、この場に、見習い士官が訪れる理由を、咄嗟にヴィルヌーヴ提督自体が考え出したと言う事なのでしょう。

 つまり、この場に居る、この僧服の青年には、俺の正体……。北花壇騎士団所属の騎士だと言う事は知らされてはいない、と言う事だと思います。

「はい、お久しぶりで有ります。ヴィル……。提督!」

 俺は、本当の知り合いに対して挨拶を行い掛け、慌てて新任士官に相応しい雰囲気で敬礼を行った人間を演じた。その姿は、かなりぎこちない雰囲気を醸し出し、俺の少年の見た目と相まって如何にも新米の士官と言う様子を見ている人間に与えた事は間違い有りません。

 当然、先ほどの対応からも判る通り、この眼前のガリア両用艦隊のヴィルヌーヴ提督は本来の俺の任務が消えた火薬や武器。そして、船を飛ばす為に必要な風石と言う精霊の力の籠った魔法のアイテムの行方を探っていた前任者。ナンバー00583号と言う人物の消息を追う事と、その人物の仕事の引き継ぎだと言う事は知って居るはずです。それで無ければ、着任と同時に、見習い士官がガリア両用艦隊の提督の元を訪れる訳は有りませんから。

 尚、現在の俺の出で立ちはと言うと、白の詰襟に白のスラックス。陸軍。つまり、東薔薇騎士団の連中が、そろいも揃って、少し派手目の上着にやや懐古主義のベスト。更に乗馬用のキュロット(半ズボン)と言う、かなり古い雰囲気の服装で有ったトコロから考えると、現代の海軍の軍服とそう変わらない斬新なデザイン。肩の階級章は、錨をモチーフにした海軍を示す印の先に点線。所謂、見習い士官と言う階級を示す階級章と服装。
 俺は身長もそれなりに有りますし、白の服装に黒の髪の毛は映えるので、他の人間から見ても結構、似合っているように見えているとは思いますね。

「そうか」

 鷹揚な雰囲気で首肯くヴィルヌーヴ提督。そして、

「それで、御父上のティッサ卿は御健勝かな、ルイス?」

 そう、問い掛けて来る。

 尚、俺に与えられた偽名はルイス・ティッサ。本当のマジャールの地の言葉で表現するのならば、ティッサ・ルドヴィグ。マジャール侯爵麾下の貴族ティッサ家の人間と成るらしいです。
 尚、ティッサ家とは、本来、マジャール侯爵麾下の竜騎士団所属の騎士の家系だそうです。
 確かに、八月に過ごしたマジャール侯爵の領地に住む人々は黒髪黒瞳の住人も多く、更に俺のような東洋的な顔立ち……つまり、彫りの浅い、東洋人風の人間が多く住む地方でしたので、このような偽名が俺に与えられたのでしょうね。

「はい。父からも、提督の御話は良く聞かされて居りました」

 流石に、これ以上、この場に留まるのはボロが出そうで問題が有りますか。それに、この僧服姿の青年が居る場で、俺の身分。北花壇騎士団所属の騎士で有るなどと言う事や、この軍港から、硝石や硫黄。更には黒色火薬などの物資が大量に消えている事実を語る訳には行きませんから。
 どう考えても兵站部門に関わる人間が、裏のルートに軍事物資を流して私腹を肥やしているようにしか考えられませんからね、この事件は。

 現在の硝石、硫黄。それに、火薬などの物資の闇の相場は右肩上がり。元々内戦中だったアルビオンは元より、トリステインやゲルマニアでも戦に備えてすべての物資を買い占めに走っているので、裏の市場に流せば、少々の高い値段を付けた所でいくらでも売れる状態。お金が大好きで、軍の兵站部門に所属していて、更に、アンダーグラウンドに顔の効く人間に取っては、現在は非常に美味しい状況だと思います。
 それに、軍事物資の横流しと言うのは、何処の軍隊でも多かれ少なかれ行われて居る事ですから、珍しくも何ともないですからね。

 その上、今年は食糧に関しても凶作で、生活必需品に関してもジリジリと値上がりが続いて居る状況ですから……。
 もしかすると、食えなくなった農奴や平民が暴動を起こす危険性さえ孕んでいると言う状況なのですが、こんな時に領土欲を剥き出しにして戦争を開始する国家に、その国に対して、裏のルートからちょろまかした軍事物資を売りつける軍人。

 ……やれやれ。湖の乙女が言うように、国家の命運は既に尽きている、と言う事なのかも知れませんね。少なくとも、今が寒い時代だと言う事は間違いないです。

「そうか。では、以後も励むように」

 俺が、このハルケギニア世界の暗い未来について、心の中で秘かにため息を漏らした瞬間に、ヴィルヌーヴ提督が、そう俺に対して告げて来た。
 これは、この場は下がれと言う事。

 新任の士官に相応しい敬礼の後、部屋を去る俺。
 もっとも、結局、何の成果も得られないまま、体よく追っ払われたと言う事なのでしょうが。



 引き続き、旗艦ビュッセンタウル号の廊下。自らに与えられた部屋に案内される途中の俺。
 尚、流石に部屋は一人に一部屋与えられる訳ではないので、この狭い艦内の更に狭い四人一組の部屋に放り込まれる事と成りました。

 もっとも、最大の問題は、先にその部屋に行って、俺の事を待っている湖の乙女に関して……、なのですか。

 先ず大前提。彼女は受肉した存在で有り、宝石や呪符などに封印する事は出来ません。
 そして、此処は海軍。つまり、狭い船の中に始終、顔を突き合わせて一緒に居なければならない以上、女性の船乗りと言う者は存在しては居ません。
 何故ならば、流石に、女性を船に乗せて居ては風紀が保てませんから。

 前にも言いましたが、敵と戦う前に、その女性の軍人が別の存在と戦う必要が出て来る可能性も少なく有りませんから。

 故に現在は、彼女自身が人払いの結界の中心に存在している為に、他者の認識からずらされて居る事に因り見つかる事は有りませんが、俺から彼女を感じる事は、彼女と繋がった霊道を通じて感じる事が出来ます。
 そして、その狭い四人部屋の中で、彼女は他者に感付かれる状態では有りませんが、それでも存在が完全に消えている訳では有りませんから、不可視の人間大の存在が、四人部屋の狭い空間内に、更に一人余分に存在している、と言う事に成りますから……。

 おそらく、常態的に俺に密着した状態で、その場に存在する事と成るのでしょうね。

「オマエ、砲術士官なのに、実家は竜騎士なのか?」

 そんな、この任務をさっさと終わらせないと、俺自身の理性のタガがぶっ飛んで仕舞いかねない状況に頭を悩ましていた時、俺をヴィルヌーヴ提督の元へと案内した若い甲板士官。確か、名前はジャック・ヴェルーニーだったかな。年齢は二十歳過ぎと言う感じですか。
 そのヴェルーニー海軍士官が、俺に対してそう、問い掛けて来た。どうやら、割と気さくな人物らしい。

 もっとも、砲術士官などと言っても、所詮はこの世界の臼砲の砲術士官ですから、大した知識は必要ないですし、そもそも、俺に訓練などが科せられる事は有り得ませんから、大丈夫だとは思いますけどね。
 それに、むしろ、弾込めなどの体力勝負の仕事だったと思いますから。この時代の船の大砲を扱う人間に要求された物は。

 いや、着弾点に水柱が立たない空中戦では、どうやって至近弾の判断をしているのか……。多少の興味は有りますか。

 まして、流石に、実際に訓練飛行にこのガリア両用艦隊旗艦が練習航海に出航する予定はなかったはずですし、その辺りに付いては北花壇騎士団が上手く取り計らってくれているはずですから大丈夫でしょう。

 多分、なのですが……。

「えぇ。一応、私も歩き出すよりも早く飛竜を扱うように訓練されましたから、おそらくマジャールの地以外の出身の竜騎士程度に飛竜を扱う事も出来ますが、私は次男ですから家を継ぐ事は出来ません。そこで、広く人員を募集していたガリア両用艦隊配属を希望したのです」

 正に立て板に水。口から出まかせをペラペラと喋り続ける俺。まして、その内容。並みの竜騎士程度に飛竜を扱う、と言う部分にウソ偽りは存在していないのも事実ですし。
 俺の正体は五本指の龍。これは、龍としての格は龍神クラス。元々、龍と言う存在の霊格が高い上に、更にその中でも龍神に分類される存在ですから、このハルケギニア世界に存在する三本指の竜を従わせる事など朝飯前。

 まして、直接、竜に対して俺の意志を伝える事が出来る【念話】も使用可能ですから、余程、自らの騎乗する竜と強い絆で結ばれている竜騎士でなければ、俺以上の竜使いに成る事は出来ないはずです。
 おそらく、俺が精霊と契約を交わせる以上、乗騎の能力が並みでも、ハルケギニア基準で超一流の騎士と飛龍の組み合わせが相手でも瞬殺出来るはず。

 俺の答えに、感心したように首肯くヴェルーニー海軍士官。
 そして、

「そう言えば、そんな話を聞いた事が有ったよ。マジャール侯が率いる竜騎士団は、子供の頃から飛竜と共に暮らして居て、騎士それぞれが、自らの飛竜と一心同体のように行動出来ると」

 ……と言って来る。
 もっとも、こんな話は、俺に取っては初耳なのですが。

 ただ、地球世界のハンガリーの始まりは遊牧民だったフン族が起こした国だった記憶が有りますね。元々、中国東北部に暮らして居た匈奴がその祖だと言う説も有り、少なくとも、騎乗弓射を得意とする民族で有った事は確からしいです。
 そして、ヴェルーニー海軍士官が語った内容の、飛竜の部分を馬に置き変えると、それは正に騎馬遊牧民族の生活そのもの。

 その地球世界のハンガリーの地に幻想世界の(設定)が着いて、このハルケギニア世界のマジャールの地が出来上がったのかも知れませんね。

 そんな、現在の状況下ではあまり意味のない地球世界と、ハルケギニア世界の違いに関する考察を頭に浮かべて居た俺に、非常に馴染みの有る感覚が近付いて来ている事が判った。
 いや、今回の場合は彼女の方が近付いて来ている訳ではなく、俺の方が彼女に近寄っているのですが。

 おっと、そう言えば、未だ聞いていない事が有りましたか。

「すみませんが、ひとつ聞いて置きたい事が有るのですが……」

 
 

 
後書き
 もう、フランス語表記とか、マジャール語表記とか。私の乏しい知識では、限界の向こう側の状況なのですが。
 まして、ゼロ魔原作には一切、登場する事の無かった地名などがバンバン登場しますから……。

 それでは、次回タイトルは『海軍食の基本と言えば?』です。

 もっとも、このタイトル程、呑気な内容と成る訳はないのですが。
 一応、忘れているかも知れませんから、ここで記載して置きますが、主人公は仙人です。
 仙人には、仙人に相応しい事件の調査方法と言う物が有ります。

 今までは、それを行わせない為に、色々と制約を付けて来ただけですから。

 そう言えば、最初、地仙だと言って居たのに、その割には能力が高くないか、と思った読者の皆様。
 そんな皆様の疑問に答えるのが、この『タバサと軍港』のこの世界ヴァージョンの御話です。
 ただ、仙人とは神の更に上を行く存在も居ますから、地仙と雖も、数百年クラスの寿命を持って居る連中も居るのですけどね。
 まして、主人公の属性は、更に龍。これは、神話上では『神殺し』の属性を付与される存在の場合が多いですから……。

 追記。
 原作版『タバサと軍港』の重要キャラ。リュシーさんが登場しない事については御容赦下さい。
 この処置は、流石に軍艦内に若い女性を乗り込ませる事の不自然さを解消する方法を、私が持って居なかったから起きた状態です。

 いくら神官とは言っても、若い女性が軍艦に乗り込んでいると、主人公はそれだけで怪しんで仕舞いますから。
 軍艦内とは、密室状態。流石に、そんな狭い空間に、女性一人を放り込む……。
 これでは怪しんでくれ、と言っているに等しい設定ですので。 
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